【養子縁組】【縁組障害】【縁組取消しと離縁】【請求権者とその期間】様々な縁組と離縁をわかりやすく解説!

【養子縁組】【縁組障害】【縁組取消しと離縁】【請求権者とその期間】様々な縁組と離縁をわかりやすく解説!

▼この記事でわかること
養子縁組の基本
縁組障害
配偶者ある者(夫or妻がいる者)がする未成年の養子との離縁
法定意思無能力
縁組取消しの請求権者とその期間
配偶者ある者がする縁組
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
01冒頭画像

養子縁組の基本


 養子縁組をすると、養子は縁組の日から養親の嫡出子(婚姻した男女間の子)の身分を取得します。(民法809条)
 つまり、養親である男女の間に生まれた子と同じ身分を取得するということです。

 また、養子縁組により養親子の間のみならず、この関係を介して他の血族との間にも法定血族関係が生じます。
 では、どの範囲で血族関係が生じるのでしょうか。

(縁組による親族関係の発生)
民法727条 
養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。

 この民法727条の意味することとは、こうです。
 養子縁組により血族関係が生じるのは、親子と養親の血族の間であり、養親と養子の血族の間ではありません。

       他人
  養親の親        実親
   (血族)    (血族)
 養親    養子
    (血族)  


 つまり、養親の親と養子の間柄は直系血族2親等になりますが、養親と養子の実親の間柄は、アカ他人です。

 それでは、ここから事例と共に、具体的に解説して参ります。

事例1
AはZの養子となった。その後、Aには子Bができた。


 さて、この事例1で、ZB間に血族関係は生じるでしょうか?

 結論。
 生じます。
 養子縁組後の子(A)の子(B)と、養親(Z)の間には血族関係が生じます。
 つまり、養親ZにとってBは孫になります。
 養親子関係が成立してから出生した養子の子は、一度成立した法定血族関係の延長として、血族関係で結ばれます。

事例2
AはZの養子となった。その後、Aには子Bができた。その後、Aが死亡し、その後さらにZが死亡した。


 さて、この事例2で、子BはAを代襲してZを相続するでしょうか?
 これは、養子(A)が死んだ後に養親(Z)が死亡し、養子の子(B)が、養親を相続できるのか?という問題です。

 結論。
 子Bは養親Zを相続します。
 子が親より先に死亡し、その後に親が死亡したケースで、子に子がいれば、その子(Zから見れば孫であるB)が親を相続します。
 子に代わり孫が相続をする、このケースを代襲相続といいます。
 事例2では、BはAを代襲してZを相続します。

事例3
Aには子Bがいる。その後に、AがZの養子となった。


 さて、この事例3で、ZB間に血族関係は生じるでしょうか?

 結論。
 血族関係は生じません。
 養子の血族(B)と養親(Z)の間には、法定血族関係が生じません。
 つまり、養子の連れ子と養親の間には血族関係は生じないという事です。
 この点、事例1との違いにご注意ください。

事例4
Aには子Bがいる。その後に、AがZの養子となった。その後、Aが死亡し、その後さらにZが死亡した。


 さて、この事例4で、BはAを代襲してZを相続するでしょうか?

 結論。
 BはZを相続しません。
 BはZの血族ではないからです。
 したがって、代襲相続は生じません。
 これは先述の事例3と同じ理屈です。
 子Bが養子Aの連れ子だからです。

参考条文
(子及びその代襲者等の相続権)
民法887条2項
被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。

 上記、887条2項条文中にある、被相続人の子の子であって「被相続人の直系卑属でない者」とは、養子縁組前の養子の子のことを指しています。
 つまり、これは事例3、4のBを指します。
 したがって、Bは代襲相続できないとなるのです。


【補足】実親との関係

 養子縁組をした場合に、養子と実親との関係はどうなるのでしょうか?
 養子が、未成年であれば、養親が親権者となります。
 しかし、養子縁組をしても、養子と実親の血族関係が切れる訳ではありません。
 養子の戸籍には養父母と並んで実父母の名が記載され、相変わらず血族1親等の関係が継続します。
 つまり、養子は養父母の相続人でもあるし、実父母の相続人にも該当することとなります。


縁組障害

NG男性

 養子縁組については、婚姻の規定の多くが準用されていて、基本的な考え方は似ている点が多いです。
 そのひとつが、婚姻障害に類似した縁組障害です。

 縁組障害があるにもかかわらず、縁組届が誤って受理された場合には、次に挙げる4を除いて、縁組取消の問題が発生します。
 縁組取消は、婚姻の取消しの場合と同様、家庭裁判所への訴えによります。

 では、以下に、民法が規定する7つの縁組障害を列挙します。

1・養親は成年者であることを要する。(民法792条)
 
2・尊属または年長者を養子とすることはできない。(民法793条)
 例えば、甥が叔父を養子にすることはできません。
 これに対して、孫を養子にするとか、妹を養子にするということは可能です。

3・後見人が被後見人を養子とする場合、家庭裁判所の許可を要する。(民法794条)
 この許可を欠けば、縁組の取消事由となります。

4・配偶者のある者が未成年者を養子とするには、配偶者とともにしなければならない。
(民法795条、ただし、一方が意思表示できない場合は別論)

 民法は、縁組の問題に関しては、特に未成年者を養子とする場合に細かい規則を置きます。
 成年者を養子とする場合には、基本的に当事者間で合意に達すれば、国家が口を挟む筋合いはありません。

 しかし、未成年者を養子にする場合の話は別です。
 家庭裁判所は子の福祉を第一に考えるからです。
 そして、民法は、未成年者はなるべく二親そろった家庭で育てたいと考えています。
 そこで、この規則を置きました。

 しかし、配偶者の嫡出子を養子とする場合、夫婦そろって縁組はする必要はありません。
 例えば、妻に先夫との嫡出子があり、その子を連れ子として再婚したケースです。この場合には再婚相手の後夫が単独で子と縁組をすることができます。

 しかし、妻の連れ子が非嫡出子であれば、夫婦共同縁組が必要です。
 そうしないと、子が夫の嫡出子、妻の非嫡出子となり、バランスが悪いからです。

【補足】
 養子が成年者であれば、夫婦の片方が養親となる縁組をすることができます。


妻のみが養子となるケース


 養子は養親の氏を称するのが民法の決まりですが(民法810条)、婚姻により夫の氏を称している妻が、単独で養子になる場合はどうでしょう。
 この場合、妻が養親の氏を称すれば、夫婦別姓になってしまいます。
 現行法では夫婦別姓は認められません。
 そこで、このケースのみは、養子は養親の氏を称せず、夫の氏を名乗ることになっています。(民法810条ただし書)


配偶者のある者(夫or妻がいる者)がする未成年の養子との離縁


 養親が夫婦である場合において未成年者である養子と離縁をするには、夫婦が共にしなければなりません。(民法811条の2 ただし、一方が意思表示ができない場合は別論)。
 これは、夫婦共同縁組の逆バージョンです。

 なお、養子が成年者であれば、夫婦である養親の片方とだけ離縁をすることができます。
 離縁をすると、妻子の氏は縁組前の氏に戻るのが原則です(民法816条1項本文)が、この場合、つまり、夫婦の片方との離縁であれば復氏はしません。
 他方との養親子関係が持続しているからです。(民法816条ただし書)

 縁組障害のうち、民法795条(配偶者のある者が未成年者を養子とする縁組)のみ、縁組の取消事由となっていません。
 基本的に、配偶者と共にしなかった未成年者との縁組は、取り消すまでもなく無効です。

5・配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意を得なければならない。(民法796条 ただし、一方が意思表示できない場合は別論)

 配偶者が養子縁組をすると、相続関係が悪化します。
 そのため、他方配偶者の同意を要するのです。
 例えば、ABが夫婦である場合、他に相続人がいないとすれば、BはAの全財産を相続します。
 しかし、AがCを養子とすれば、Aが死亡した場合の相続財産は、BとCが2分の1ずつ取得することになります。
 これは、ほんの一例ですが、夫婦の片方の縁組は、相続関係に変化を及ぼすことになりますので、他方配偶者の同意が必要となります。
 この同意を欠く縁組は、同意をすべき者から取り消すことができます。

6・養子となる者が15歳未満の場合、その法定代理人が未成年者に代わって縁組の承諾をする。(民法797条1項)

 この場合、妻子となる者の父母でその監護をする者または、養子となる者の父母で親権を停止されている者が他にあれば、その者の同意を要します。(民法797条2項)

 民法において、親権者監護者別の概念であり、例えば、父母の離婚後に父が親権者で母が監護者ということがあり得ます。
 この場合、15歳未満の子の、縁組の代諾をするのは親権者(法定代理人)である父ですが、監護者である母の同意がなければ代諾をすることはできません。
 この同意を欠けば、母が縁組を取り消すことが可能です。
 また、父母の双方が親権者でも、例えば、母の親権が停止されているときは、養子縁組の代諾は父が行いますが、これについて母の同意を要することとなります。


法定意思無能力


 養子縁組に関して、15歳未満の者には意思能力が認められません。
 なので、これらの者が縁組をしても、それは取り消すことのできる縁組ではありません。
 無効な縁組です。
 そういうわけで、15歳未満の者が縁組をする場合には、その法定代理人が縁組の承諾をします。

 ところで、承諾をした者に代諾権がなかったらどうなるでしょう?
 判例のケースは、他人の子を実子として届け出た者の代諾による縁組です。
 この場合、縁組は無効となりますが、それは無権代理による無効だという考え方になります。
 したがって、子が15歳に達して、縁組を追認すれば有効な縁組に転化することとなります。

7・未成年者を妻子にする場合、家庭裁判所の許可を要する。(民法798条)

 家庭裁判所は、未成年者の福祉の問題には厳格な対処をします。
 例えば、幼児と養子縁組をしようというようなケースであれば、家庭裁判所のスタッフは、養親の候補者である夫婦の自宅を訪ね、その夫婦の人柄から職場、さらには、どこに幼児を寝かせるのかまで細かく調べあげて、縁組が子供の幸せに繋がるかどうかを綿密にチェックします。

 しかし、未成年者を養子とする場合にも、家庭裁判所の許可が不要な場合があります。
 それは、自己または配偶者の直系卑属(子、孫等)を養子とするケースです。
 この場合には、子の福祉の上での問題点はないと思われ(他人の養子となるわけではない)、したがって、家庭裁判所の許可が不要なのです。

 なお、自己の子を養子にするという意味がよくわからないかもしれませんが、自己の子が非嫡出子の場合、これと養子縁組をすれば、子が嫡出子の身分を取得できるので、この点に意味と実益があります。


縁組取消しの請求権者とその期間


 まず、基本として、縁組取消しの場合は検察官請求権者に入っていません。
 ここが急所です。(検察官は風紀委員だから性風俗には口を出すが縁組は管轄外)

 次に、縁組取消しの場合、請求期間が6ヶ月というものが多いです。
 この点、婚姻取消しは3ヶ月を基本とすることと比較しましょう。

・詐欺または強迫による縁組の取消しの場合(民法808条1項、747条)

請求権者 詐欺または強迫により縁組をした者
請求期間 詐欺を発見し、強迫を免れてから6ヶ月以内

 上記は、詐欺または強迫により、民法792条2項の同意(法定代理人が代諾する場合の監護者の同意)をした者の取消権についても同様。

・養親が未成年者である場合(民法804条)

請求権者 養親またはその法定代理人
請求期間 養親が成年に達して6ヶ月以内(または追認するまで)

 上記は、養親側の保護を制度趣旨とします。
 ですので、養子側の請求は認められません。
 養子も当然に未成年であろうが、こちらの保護は他の制度で十分に図られているからです。

・尊属養子、年長者養子(民法805条)

請求権者 各当事者またはその親族
請求期間 定めなし→瑕疵の治癒があり得ない

・後見人と被後見人の無許可縁組(民法806条)

請求権者 養子またはその実方の親族
請求期間 管理の計算終了後6ヶ月以内(または追認するまで)

 上記は、被後見人の保護を制度趣旨とします。
 提訴権者に「実方」を入れるのは、「養方」の親族を排除する趣旨です。

・配偶者の同意のない縁組(民法806条の2)

請求権者 同意をしていない者
請求期間 縁組を知った後6ヶ月以内(または追認するまで)

・子の監護をすべき者の同意がない場合(民法806条の3)

請求権者 同意をしていない者
請求期間 養子が15歳に達した後6ヶ月以内(または追認するまで)

・養子となる者の父母で親権を停止された者の同意がない場合(民法806条の3)

請求権者 同意をしていない者
請求期間 養子が15歳に達した後6ヶ月(または追認するまで)

・養子が未成年である場合の無許可縁組(民法807条)

請求権者 養子、その実方の親族または養子に代わって縁組の承諾をした者
請求期間 養子が成年に達した後6ヶ月以内(または追認するまで)


配偶者のある者の縁組

主婦

事例5
B女は前配偶者のC子を連れ子としてA男と婚姻をした。なお、子Cは未成年者である。

 
 さて、この事例5で、AがCと縁組する場合、Bの同意を要するでしょうか?

 結論。
 同意を要します。

 このケース、一見すると、Bにとっては自分の連れ子を再婚相手の養子にしてもらうのはありがたい話であって文句を言う話ではないように思えます。
 しかし、そうではありません。
 A死亡時の相続関係が変化するので、Bには同意権があります(民法796条)。Bの同意なく縁組をすれば、縁組の取消事由となります。

 なお、このケースは、Aは養親として、Bは実親として子、共にCに対する親権を共同して行うことになります。
 ただし、本事例には例外があり、仮にBがその意思を表示することができない場合は同意を要しません。(民法796条ただし書)

(配偶者のある者の縁組)
民法796条 
配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意を得なければならない。ただし、配偶者とともに縁組をする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。

 事例5で、AがCと縁組をする場合にBの同意を要することはわかりました。
 では、家庭裁判所の許可は必要でしょうか?

 結論。
 AがCと縁組をするのに家庭裁判所の許可は不要です。
 Aは自己の配偶者(B)の子Cと養子縁組をするからです。(民法798条ただし書)

事例6
B女は婚姻外の子Cを連れ子としてA男と婚姻をした。なお、子Cは未成年者である。


 では、この事例6でも、事例5と同じ問題を考えて参ります。  
 まず、AがCと縁組をする場合にBの同意を要するのか?です。

 結論。
 同意は不要です。
 この場合は、CがBの非嫡出子であるため、未成年子(C)との縁組は、A男とB女の夫婦による共同縁組となるからです。(民法795条本文)
 つまり、Bは縁組に同意をする立場ではなく、自らもCと縁組をすべき立場です。

 続いて、家庭裁判所の許可を要するのかどうか?
 ですが、これも不要です。
 Aは自己の配偶者(B)の子と養子縁組をするからです。(民法798条ただし書)

事例7
B女は子Cを連れ子としてA男と婚姻をした。なお、子は成年者である。


 さて、この事例7で、子CがB女の嫡出子である場合、A男と子Cが縁組をする場合、B女の同意を要するでしょうか?

 結論。
 同意を要します。(民法796条)

 では、子CがB女の非嫡出子の場合はどうでしょうか?
 その場合もB女の同意を要します。(796条)
 この事例7では子Cが成年であるため、夫婦共同縁組が強制されません。
 A男と子Cの単独縁組が可能となります。
 そのAC間の単独縁組に対しBが同意権を持つということです。
 同意の結果、子Cは養親Aの嫡出子になり、かつ、実母Bの非嫡出子でもあるという結論になります。

事例8
A男は非嫡出子である子Cを連れ子として、B女と婚姻をした。


 さて、この事例8で、子Cが成年者である場合に、A男が子Cと養子縁組をするにはB女の同意を要するでしょうか?
 結論。
 同意を要します。(民法796条)
 子Cが成年であるため、夫婦共同縁組が強制されません。
 A男と子Cの単独縁組が可能です。
 同意の結果、子Cは養親かつ実親Aの嫡出子となり、BC間の関係は親子ではなく親族1親等となります。

 では、子Cが未成年者である場合はどうでしょう?
 その場合は同意を要しません。
 事例8は養子が未成年者でありかつA男の非嫡出子ですから、A男とB女の夫婦による共同縁組となるからです。(民法795条本文)
 つまり、B女は縁組に同意をする立場ではなく、自らも子Cと縁組をすべき立場です。

 養親が夫婦である場合に未成年者と縁談をするには、夫婦が共にしなければなりません。(夫婦の一方がその意思を表示することができないときを除く。民法811条の2)
 この規定は、未成年者は二親がいる環境で育てたいという考え方が基本となっています。

 なお、未成年者が離縁をするときに家庭裁判所の許可を要するという規定はありません。
 この点、未成年者の縁組の場合と相違するので注意が必要です。


補足:
情交関係にある者との養子縁組


 縁組が有効であるか無効であるかが争われた事実があります。
 縁組の当事者に男女の情交関係があったという事案です。
 判例は、情交関係が偶発的で、事実上の夫婦同然の関係とはいえず、いわゆる、人目をはばかる関係であったのであれば、この縁組を、縁組意思を欠くとして無効とすることはできないと判示しました。
 情交関係がある者の間でも、養親子関係を構築しようという意思はあり得るという判断です。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
⇒⇒LECで宅建試験・行政書士試験・公務員試験の合格講座&テキストを探す!
関連記事