【婚姻】【届出意思と婚姻意思】【婚姻障害と婚姻の取消し】【婚姻の取消権者と取消期間】をわかりやすく解説!

▼この記事でわかること
婚姻の超基本
婚姻意思(届出意思と婚姻意思)の問題
婚姻障害と婚姻の取消し
重婚の禁止(民法732条)
近親者間、直系姻族間、養親子等の婚姻の禁止
婚姻の取消権者と取消期間
当事者の一方の死亡後の婚姻取消し
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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婚姻の超基本

 婚姻とは、わかりやすく言うと結婚の事です。
 つまり、民法的(法律的)に結婚とは、婚姻になります。 
 では、婚姻とは、どのように成立するのでしょうか?
 その要件は次の2つです。

・戸籍の届出
・婚姻意思の存在

 民法の意思主義の大原則から、婚姻意思、すなわち結婚する意思の存在しない婚姻は無効です。
 婚姻意思(結婚する意思)が存在しなければ、(それは意思の欠缺の問題であり)婚姻は無効です。
 一方で、詐欺強迫による婚姻は、いったん有効に成立します。つまり、取り消すことのできる婚姻となります。

婚姻意思の問題

 婚姻における当事者の意思の問題は、2つの段階に分けて考える必要があります。
 それは、届出意思の問題と、事実上の夫婦になる意思の問題です。

届出意思のケース

 まずは届出意思の問題から解説いたします。

 届出意思の問題として考えられるものに、届出意思を欠くのに婚姻届が出されたケースがあります。
 具体例としては、事実上の夫婦関係(いわゆる内縁関係)にある当事者のうち、一方(例えば夫)が他方(妻)に無断で婚姻届を出したケースが典型です。
 この場合、妻に届出意思が存在しません。
 したがって、その婚姻は無効です。
 以上、まずはここまでが基本です。
 では、ここからは少し微妙なケースを考えてみましょう。

事例1
事実上の夫婦の一方が他方に無言で婚姻届を出した。他方の配偶者は届出の事実を知ったが問題を放置し、生活関係を継続した。


 これは、ほぼ結婚しているのと同じような状態の男女(すなわち事実上の夫婦関係)の片方が、相手に無断で婚姻届を出し、相手はその事実を知ったがそのまま放置し、二人は引き続き現状の関係のまま生活していた、という話です。
 つまり、届出の時点では、他方配偶者に届出意思が存在しないということです。そして、届出の事実を知り、しかも、生活関係を継続すれば、一方配偶者の届出を追認したことになるのか?というのがこの事例の問題です。

 さて、ではこの事例で、この事実上の夫婦の婚姻は成立するでしょうか?
 結論。この婚姻は成立します。届出時にさかのぼって婚姻は有効となります。
 つまり、届出の後に、婚姻届を認める意思が生じ、結果として届出意思の一致が見られれば、さかのぼって有効な届出があったと解釈できるということです。

[参考条文]
(婚姻の無効)
民法742条 
婚姻は、次に掲げる場合に限り、無効とする。
一 人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき。
二 当事者が婚姻の届出をしないとき。ただし、その届出が第七百三十九条第二項に定める方式を欠くだけであるときは、婚姻は、そのためにその効力を妨げられない。


 ちなみに、条文中の「民法739条2項に定める方式」とは、「婚姻の届出は、当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面で、またはこれらの者から口頭で、しなければならない」という方式のことです。

婚姻意思のケース

 続いては、婚姻意思の問題について解説します。
 これは、婚姻届を出す意思は存在するが、事実上の夫婦になるという意思の存在しないケースです。
 わかりやすく言えば、婚姻届を出そうとは思っているが結婚したいとは思っていないケースです。
 これ、すでにピンと来た方もいらっしゃいますよね。
 そうです。いわゆる偽装結婚のケースです。
 典型的な例としては、外国人が日本で就労するために、日本人との婚姻届を出すというケースです。
 この問題について、判例は、当事者間に夫婦としての共同生活をする意思がない場合、たとえ婚姻届を出す意思があっても、婚姻は無効であると結論づけています。
 したがって、婚姻意思のない婚姻は無効です。

【補足】離婚意思の問題

 では、離婚届を出す意思は存在するが、現実に夫婦共同生活を解消する意思のない離婚の場合はどうでしょうか?
 これは、わかりやすく言えば、本当は離婚する気がないのに離婚届を出そうという、いわゆる偽装離婚のケースです。
 判例では、生活保護を受けるための便法として離婚届が提出されたケース(すなわち生活保護を受けたいがため偽装離婚したケース)について、法律上の婚姻関係を解消する意思の合致があるから、離婚は有効であると判示しています。
 偽装結婚の場合には、夫婦共同生活の実態がないので婚姻は無効でした。しかし、偽装離婚の場合は、法律上の夫婦を卒業して、事実上の夫婦関係になるという意思はあり得るということです。
 わかりやすく言うと、離婚することで法律上の夫婦ではなくなって、だけど内縁関係は続けようという意思はあり得るということです。

婚姻障害と婚姻の取消し
NG男性
 婚姻意思の合致があれば、婚姻は有効です。
 つまり、お互いが結婚したいと思っていれば、その婚姻は有効ということです。
 しかし、その婚姻成立時に瑕疵(欠陥)が存在する場合があります。
 その場合とは、例えば、詐欺による婚姻が典型です。
 この場合、民法は、契約などの財産法のケースと同様に、詐欺によって意思表示をした者に、取消権を与えます。
 しかし、この取消権は、次の2点においては、財産法の場合とその内容が異なります。

・第三者詐欺のケースで、婚姻の相手方が善意であっても、取消権を行使可能(不本意な婚姻関係に縛り付けるのは非人道的だから)
・家庭裁判所への請求によらなければ、取消権の行使をする事ができない

 なお、婚姻の取消事由には、詐欺以外にも、強迫、そして公益上の理由によるものも存在します。
 これは、国家の立場から、成立した婚姻自体に瑕疵(欠陥)があると判断するケースです。
 こうした事由を婚姻障害と言います。
 では、具体的に婚姻障害のケースとはどのようなものでしょうか?

事例1
18歳のA男と17歳のB子の婚姻届が受理された。


 さて、この事例のA男とB子の婚姻は有効でしょうか?
 これは民法というより社会の常識ですが、婚姻は、男女共に18歳に達しないとできません。(民法731条:婚姻適齢)
 したがって、この事例では、本来、戸籍係員は婚姻届を受理してはいけません。
 しかし、誤って受理をしてしまった場合はどうなるのか?というのがこの事例で考える問題です。
 で、結論は?
 はい。まず、この事例1のA男とB子には婚姻意思の合致はあります。(結婚する意思はある)
 なので、婚姻は有効です。
 しかし、この婚姻は国家の立場から認められません。
 当然です。民法の規定に反しているのですから。
 そこで、これは取り消すことのできる婚姻となります。

【補足】
 契約などの場合、取消しの効果は遡及します。(民法121条)
 しかし、婚姻の取消しには、民法の特則が存在します。

(婚姻の取消しの効力)
第748条 
婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生ずる。


 この民法748条は、仮に、夫婦の間に子が生まれた場合、後に婚姻が取り消された場合であっても、その子が嫡出子の地位(婚姻をした親の子供としての地位)を失わないという重大な事実を規定しています。
 なお、嫡出子とは、婚姻により生まれた子供のことです。

重婚の禁止(民法732条)

 我が国には、一夫多妻制も一妻多夫制もありません。
 配偶者のある者は、重ねて婚姻することはできません。
 しかし、例えば、AとBが離婚をし、その後、BとCが婚姻をした場合、その後に、ABの離婚が、詐欺・強迫を理由に取り消される事はあり得ます。
 この場合の法律関係は以下のようになります。

1、離婚の取消しの効力は遡及するか?(さかのぼるか?)
  遡及します。離婚の取消しの場合、遡及効(さかのぼってを発する効力)を制限する条文が存在しません。したがって、民法121条本文により離婚の取消しの効力は遡及します。
2、よってAB間の離婚は、もともと存在しないことになります。
3、結果として、さかのぼって、AB間の婚姻継続中にBC間の婚姻がされたことになります。
4、したがって、BC間の婚姻の成立に瑕疵(欠陥)が存在します。
 婚姻解消は、婚姻成立時の瑕疵を問題とします。AB間の婚姻の成立時には瑕疵がないので、AB間の婚姻には取消事由は存在しません。
5、BC間の婚姻が重婚となり、取消事由が発生します。

再婚禁止期間(民法733条)

 女性は、前婚の解消(離婚と死別)または取消しの日から100日を経過しなければ、再婚をすることができません。
 これは、女性が子を産んだ場合に、とちらの夫の子であるか不明であるという事態を避けるための規則です。
 再婚禁止期間の規定に反してなされた婚姻は取消事由が発生します。

近親者間、直系姻族間、養親子等の婚姻の禁止

 ここから上げる3つは、生物学的あるいは道徳上などの理由から禁止される婚姻です。

・近親者間の婚姻の禁止(民法734条1項)
 直系血族と3親等内の傍系血族は婚姻することができません。
 いわゆる、血が濃くなるというのが生物学的にまずいからです。
 
・直系姻族間の婚姻の禁止(民法735条)
 こちらは血の問題ではなく、道徳上の問題です。
 例えば、妻と離婚後に、妻の母と婚姻することができません。
 一度、義理の親子関係になった者同士の婚姻は道徳的にマズいという訳です。

・養親子等の婚姻の禁止(民法736条)
 これも同様に道徳上の問題です。
 例えば、養女と離婚後に、養親が養女と婚姻するようなことは許されません。これも、一度、義理の親子関係になった者同士の婚姻は道徳的にマズいという事です。
 この場合も、傍系の法定血族との婚姻は禁止されておらず、問題になるのは、直径の法定血族間の婚姻です。

 以上、ここまでの解説で挙げた5つの婚姻障害
・重婚の禁止(民法732条)
・再婚禁止期間(民法733条)
・近親者間婚姻の禁止(民法734条1項)
・直系姻族間の婚姻の禁止(民法735条)
・養親子等の婚姻の禁止(民法736)
 上記に婚姻適齢を合わせて合計6つの婚姻障害がある場合には、いずれも、戸籍係員は婚姻届を受理してはいけません。
 もし間違ってこれが受理されてしまった場合には、婚姻は有効に成立し、その後に婚姻取消しの問題が生じるのです。

【補足】
 身分行為は一般に代理になじみません。
 なので、事理弁識能力に欠く状況にある成年後見人が、婚姻、離婚をすることは通常はありえません。(判断能力のない者の代理人が本人を代理して婚姻or離婚する事はまずありえない)
 しかし、例外的に、成年被後見人が本心に復した場合、自らの意思でこれをなすことができる。
 本心に復することがない場合には、かろうじて、訴訟による離婚の可能性だけが存在します。
 裁判上の離婚については民法770条をご参照ください。

(裁判上の離婚)
第770条 
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。


婚姻の取消権者と取消期間
裁判所
 婚姻の取消しをするためには、家庭裁判所に請求しなければなりません。(民法7441項、民法747条1項)
 この場合の、取消権者と、取消しの請求ができる期間について、ひとつひとつ解説して参ります。

1、私益的な取消し事由の場合
 詐欺・強迫による婚姻の取消しの場合、取消権者は、詐欺強迫による意思表示をした当事者です。
 もともと、表意者の私の利益を保護する制度だからです。
 この場合の提訴期間は、詐欺を発見し、もしくは強迫を免れてから3ヶ月に限ります。

2、公益的な取消し事由の場合
 婚姻障害に該当する取消しの場合に裁判所に取消しを請求できる者を以下に挙げます。

・各当事者
・その親族
・検察官

 なお、取消事由が重婚の場合には、前婚の配偶者が取消権者に加わります。また、女性の再婚禁止期間に違反した場合には、前配偶者が取消権者に加わります。

【取消期間】
 さて、婚姻の取消期間はどうなっているのでしょうか?
 これについて、時の経過により瑕疵が治癒される性質の取消事由に限り、出訴期間が法定されています。
 どういう事かといいますと、当初は存在した婚姻の瑕疵が消滅した時点で、取消権も消滅します。つまり、婚姻の瑕疵(欠陥)が無くなってマトモな婚姻になった時、取消権も消滅するという事です。 
 では、取消権についての具体例見てみましょう、

・婚姻不適齢ケース
 例えば、18歳の男性と17歳の女性が婚姻した場合、婚姻不適齢に該当するのは、17歳の女性の方です。
 この場合、女性が18歳に達すれば、瑕疵は治癒され(婚姻不適齢という欠陥が無くなり)、婚姻の取消しの請求はできなくなります。 
 ただし、不適齢だった女性の方だけは、18歳に達するまでだけでなく、18歳に達してから3ヶ月の間、婚姻取消の請求をすることができます。
 これは、その婚姻が、果たして軽はずみだったかどうかを、婚姻適齢に達してからよく考えるための猶予期間と考えられます。

・女子の再婚禁止期間違反ケース
 前婚の解消または取消しから6ヶ月を経過すれば、婚姻の取消しの請求はできなくなります。
 また、女性が再婚後に懐胎した場合も同様に、取消請求をすることができません。

当事者の一方の死亡後の婚姻取消し

 婚姻障害がある場合、当事者の一方が死亡しても、他方当事者なり、双方の当事者の親族なりが婚姻取消しを請求することは可能です。
 死後に婚姻取消しをしても、何ら実益がないように思われますが、そうではありません。婚姻の取消しにより死後の相続関係が大きく変わるのです。
 さて、ここで一点、重要な問題が生じます。
 死後の婚姻取消しの実益が上記の相続争いにある以上、一方当事者の死後に検察官の取消権を認める実益がないことになる。
 したがって、検察官は、一方当事者の死後においては、婚姻取消しを裁判所に請求することができなくなります。(民法744条1項ただし書)
 もともと、なぜ、検察官が、婚姻取消しの請求権者に加わっているのでしょうか?
 それは、公益の代表としての立場です。
 どういう意味?
 よく、学園モノで「そんなハレンチ許しません!」みたいな風紀委員長キャラや学級委員キャラがいますが、要はそんな立場です(笑)。
 つまり、「その婚姻はアカンやろ?」と公益の立場からツッコむ役割ということです。
 本来、一方当事者が死亡した後においてまで、どうこう言う必要はないはずですよね。

 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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Author:根本総合行政書士
東京都行政書士会所属
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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