賃貸借の基本~借地借家法は民法に優先する~特別法と一般法とは

 賃貸借とは、簡単に言うと利用料金が発生する物(動産・不動産)の貸し借りです。レンタルショップでCDを借りるのも賃貸借ですし、レンタカーを借りるのも賃貸借です。そして、不動産の貸し借りも賃貸借です。不動産の場合は特に不動産賃貸借と言います。
 ここで気をつけて頂きたいことがあります。お金の貸し借りは賃貸借にはなりません。お金の貸し借りは消費貸借(金銭消費貸借)になります。そして、利用料金が発生しない物の貸し借りも、賃貸借ではありません。不動産でも、タダで貸し借りをしていれば、それは賃貸借にはなりません。そのようなタダの物(動産・不動産)の貸し借りは使用貸借になります。この点はまずご注意下さい。

不動産賃貸借について考えるときは民法だけでは不十分

 それでは、ここから本格的に不動産賃貸借というものについて考えて参りたいと思いますが、まず最初に申し上げておきたいことがございます。民法における賃貸借についての規定は、それだけでは、不動産賃貸借の問題について考えるときにはあまり役に立ちません。なぜなら、不動産賃貸借については借地借家法という特別法が存在するからです。

借地借家法は民法に優先する

 民法は、私法(民間人(民間企業)同士についてのことを定めた法律の総称)における一般法(ベーシックな法律)です。つまり、民法は私人間(民間人・民間企業同士)のことを定めた法律の中のもっともベーシックな法律(すなわち一般法)ということです。しかし、特別法は一般法に優先します。ですので、同じ事柄について定めた規定で借地借家法と民法が異なる場合は、借地借家法が優先して適用されます。なので、不動産賃貸借について考えるときに、民法だけでは不十分なのです。
 従いまして、不動産賃貸借の問題につきましては、借地借家法を織り交ぜた実践的な解説をして参りたいと存じます。

補足・特別法と一般法

「特別法>一般法」という関係性は、何も不動産賃貸借における借地借家法に限ったことではありません。不動産売買において売主が宅建業者の場合は宅地建物取引業法(自ら売主制限など)が優先して適用されますし、建物の建築においては建築基準法が優先して適用されます。他にも、商行為(商売行為)に関しては商法が優先して適用されたり、より消費者保護に厚い消費者保護法があったり等々、色々ございます。この辺りの法律関係は、機会があれば、民法とはまた別に改めてご説明して参りたいと存じます。
 尚、特別法と一般法の規定が重なる場合は特別法が優先して適用されることはすでにご説明申し上げましたが、一般法の規定が特別法と重ならない場合は、一般法の規定が直接適用されます(民法の規定が借地借家法と重ならない場合は、民法の規定が直接適用されるということ)。念のため申し上げておきます。
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賃貸人たる地位の移転(オーナーチェンジ) 家賃の二重払いの危険性

事例
Aは自己所有の甲建物をBに賃貸し、引き渡した。その後、Aは甲建物をCに売却し、AからCへ登記を移転した。


 これは賃借人(借主)が居住中に家主が代わったというケースです。このようなオーナーチェンジのケースは、住宅用でも事業用でも、賃借人として経験された方はいらっしゃると思います。ケースにもよりますが、ある日、いきなり管理会社からオーナーチェンジの知らせを受け、面食らってしまった方もいらっしゃるかと思います。
 さて、このときに、甲建物を賃借しているBにとって、ある問題が生じます。それは「本当にAからCへオーナーチェンジしたのか?」という問題です。なぜそれが問題になるのかといいますと、それは「家賃を払うべき相手は本当にCでいいのか?」ということに繋がるからです。

家賃二重払いの危険性
 
 もしオーナーチェンジの知らせがウソで、新オーナーと名乗る人物がニセモノで、その自称新オーナーに家賃を払ってしまったらどうなるでしょう?家賃を払った賃借人は、ある日、こんな連絡を受けてビックリするはずです。
〇〇さん!家賃が振り込まれていませんよ!?
 そして、次のようなやり取りが展開されるでしょう。
え?確かに振り込みましたよ?
入金の確認ができていません。振込先を間違えたのではないですか?
え?確かに〇〇口座に振り込みましたが...
〇〇さん!それ、振込口座間違っていますよ!とにかく、指定の〇〇口座にいち早く振り込んで下さい!
 そして賃借人は、家賃の二重払いという事態に陥ってしまうのです。

新オーナーであることを賃借人に法律的に正当に主張するには登記が必要

 さて、ここから再び、事例に戻ってご説明して参ります。
 賃借人Bは、家賃の二重払いの危険性があるので、本当に賃貸人(家主・オーナー)がAからCに代わったのか?ということをきちんと確かめたいところです。そこで、判例では、この賃借人Bのような者を保護するために、Cが新賃貸人(新オーナー)として、賃借人Bに対し正当に家賃などを請求するには登記が必要としています。つまり、CがBに家賃などを請求するには、Cが甲建物の所有権を取得した旨の登記(AからCへの所有権移転登記)が必要ということです。
 従いまして、事例のCは登記を備えていますので、Bに対し正当に家賃を請求できます。逆に、もしCが登記をしていなかった場合は、Bは家賃の請求を正当に拒めます。もし今現在、事例のBのような状況にいらっしゃる方は、管理会社(貸主側の不動産会社)や新オーナーに「登記簿(登記事項証明書)を見せて下さい」と要求するか、自分自身で登記所(法務局)に行って登記簿の交付申請をするか、もしくはオンライン手続きで取り寄せることも可能です。そして登記簿(登記事項証明書)を確認して問題なければ、安心して新オーナーに家賃を振り込めますし、もし登記簿上の所有者が旧オーナーのままなのであれば、旧オーナーの方に家賃を振り込めば、法律上問題なく弁済したことになります(法律的に家賃を払う責任を果たしたことになる)。

補足
 尚、動産の物権変動(所有権の得喪)につきましては引渡しが基準になり、これを公信の原則といいます。一方、不動産については、全国一律に登記というルールが敷かれ、これを公示の原則といいます。この「不動産登記」というものに関しては、こちらの記事をご参照下さい。
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賃借人の対抗要件~新オーナーから出てけと言われたら?

 不動産における物権の対抗要件は登記です。対抗要件とは「法律的な保護のもとに主張するための要件」です。不動産の物権の対抗要件とは、他人に対して「この不動産の所有権はワタシのモノだ!」と、法律の保護のもとに主張するための要件です。つまり、不動産は登記して初めて、その所有権が法律的に保護されます(不動産登記についてはこちらの記事もご参照下さい)。となると、その不動産を借りている者(賃借人)の権利は、どうなっているのでしょうか?
 例えば、A所有の甲アパートを借りて住んでいるBがいて、Bの居住中に甲アパートがAからCへと売却され、その旨の登記もされてから、いきなりCから賃借人Bが「オマエは甲アパートから出てけ!」と迫られたらどうなるのか?つまり、賃貸中の物件がオーナーチェンジしたとき、その物件の賃借人は、新オーナーに対抗できるのか?というハナシです。
 最初に申し上げたとおり、不動産の対抗要件は登記です。新オーナーCには登記があります。そして、民法には次のような規定があります。

(不動産賃貸借の対抗力)
民法605条
不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その後その不動産について物権を取得した者に対しても、その効力を生ずる。


※民法改正後(2020年4月から施行)
(不動産賃貸借の対抗力)
民法605条
不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。

 この条文を読むと、どうやら賃借人は、賃貸借の登記(賃借権の登記)をすれば、後から物権を取得した者、すなわち新オーナーに対抗できるようです。しかし!この条文はハッキリ言ってあまり意味がありません。なぜなら、借地借家法でほとんど骨抜きにされてしまっているからです。

賃借人の対抗要件は引渡し

 先に結論を申し上げておきますと、先ほど挙げた例の賃借人Bは、新オーナーCに対し、甲アパートの賃貸借を対抗できます。つまり、新オーナーCから「甲アパートから出てけ!」と言われても、Bは「甲アパートは私が借りて住んでいるのだ!」と主張できます。その根拠となる条文はこちらです。

(建物賃貸借の対抗力等)
借地借家法31条
建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。


 この借地借家法31条によって、前述の民法605条の規定が骨抜きにされているのです。借地借家法は不動産賃貸借における特別法です。一方で民法は一般法です。そして、特別法は一般法に優先して適用されます(これについて詳しくはこちらの記事をご参照下さい)。従いまして、借地借家法31条の規定により、賃借人Bはその旨の登記をしていなくても、すでに甲アパートの引渡しを受けて住んでいるので、新オーナーCに対して甲アパートの賃貸借を対抗できるのです。

なぜわざわざ借地借家法(特別法)でそのような規定を置いたのか

 もちろん、民法605条の規定に従って賃貸借の登記をして、新オーナーCに対抗することも可能です。しかし、それを行うためには、Cに協力してもらわなければ、することができません。しかも、Bの賃貸借の登記について、Cに協力義務はありません。そしておそらく、賃借人の賃貸借の登記に協力する賃貸人(オーナー)はほぼいないでしょう。なぜなら、そんなことをしても、賃貸人にとっては何のメリットもないからです。ましてや法的な協力義務すらないのですから。私がオーナーでも、賃借人の賃貸借の登記に協力することはないでしょう(笑)。つまり、民法605条の規定はハッキリ言ってザルなんです。そこで、賃借人Bのような者を保護するために、特別法として借地借家法31条の規定を設けたという訳です。
 もし、今現在、賃貸物件に住んでいて、その物件の家主がオーナーチェンジにより変わった、という状況にある方も、賃借人としての地位借地借家法により保護されておりますのでご安心下さい。まあ、実際はオーナーによって色々と対応が変わったりするので、法律以外での問題もあるんですけどね...。
 いずれにしても、オーナーと賃借人、管理会社も含め、良好な関係でいたいものです。
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借地権~賃借権と地上権、土地を借りる権利には2種類ある。その特徴と違い

 不動産賃貸借は、何も建物・家屋に限ったものではありません。土地の賃貸借もあります。土地を目的とする賃貸借の権利を借地権といいます。

借地権には2種類ある

 借地権とは、簡単に言うと「土地を借りて使用する権利」ですが、この借地権には2つの種類があります。それは賃借権地上権です。

賃借権とは

 土地の所有者(賃貸人)の承諾を得て、土地を間接的に支配し利用できる借地権を、賃借権といいます。「間接的に支配」というのは、土地の所有者の承諾を必要とするからです。土地の所有者の承諾が必要とは、自由に借地権(賃借権)を譲渡したりすることができないということです。これは土地に限ったことではありませんが、例えば、アパートを借りて住んでいる人が、勝手に他人にそのアパートを譲渡したり又貸ししたりすることはできません。もし譲ったり又貸ししたりするのであれば、大家(賃貸人)の承諾が必要です。それと一緒で、土地の賃借権を持っていても、土地の所有者の承諾なしで、勝手に借地権(賃借権)を譲渡したりすることはできません。従いまして、賃借権とは「間接的に」土地を支配し利用する権利なのです。

地上権とは

 土地の所有者の承諾なしに、土地を直接的に支配し利用できる借地権を、地上権といいます。「直接的に支配」というのは、土地の所有者の承諾を必要としないからです。つまり地上権の場合、賃貸人(土地の所有者)の承諾なしに自由に地上権を譲渡したりすることができるのです。従いまして、地上権は賃借権よりも強い権利になっています。

賃借権は債権的権利、地上権は物件的権利

 賃借権も地上権も同じ借地権ですが、その権利の強さが全然違うのは、ここまでのご説明でもおわかり頂けたと思います。その違いを民法的に表現しますと、賃借権は債権的権利なのに対し、地上権は物権的権利です。といっても、これだけではわかりづらいと思いますので、もう少し詳しくご説明いたします。
 債権とは、人に対する権利です。特定の人に対して「金払え」「それをよこせ」「使わせろ」などと主張できる権利です。そして賃借権は、土地の所有者に対し「使わせろ」という債権です。従いまして、賃借権は債権的権利になります。
 一方、物権とは物に対する権利で、物の排他的支配権です。物の排他的支配権とは全ての他人に対して「これはワタシのモノだ!」と主張できる権利です。全ての他人に対して主張できるということは、土地の所有者に対してだけでなく、隣人に対しても、土地を購入しようとしている人に対してでも、その権利を主張できるということです。したがって、地上権は「ワタシのモノ」として、土地の所有者の承諾なしに自由に譲渡したりすることができるのです。地上権の権利の強さは、借地権というよりも「準所有権」といった方が良いかもしれません。それぐらいに強い力を地上権は持っています。

 2種類の借地権、賃借権と地上権、それぞれの特徴と違い、おわかりになって頂けましたでしょうか。尚、現実に利用されている借地権のほとんどは賃借権です。というのも、地上権は権利が強すぎるからです。権利が強すぎるということは、それだけ土地の所有者に不利になるということです。不利になる地上権の設定を、土地の所有者が望まないのは言うまでもありませんね。
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借地人の対抗要件~地主(土地オーナー)が代わって出てけと言われたら?

事例
BはA所有の甲土地を借りて、甲土地上にある自己所有の建物に住んでいる。その後、Aは甲土地をCに売却し、その旨の登記をした。


 これは、借地人が土地を利用中に、土地の所有者(地主)が代わったというケースです。
 さて、この事例で、借地人Bがいきなり新地主Cから「甲土地から出てけ!」と言われた場合、Bはどうすればいいでしょうか?

(不動産賃貸借の対抗力)
民法605条
不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その後その不動産について物権を取得した者に対しても、その効力を生ずる。

※民法改正後(2020年4月から施行)
(不動産賃貸借の対抗力)
民法605条
不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。

 この民法605条の条文によれば、賃貸借はその旨の登記をすることで、新たな所有者にも対抗できる(法律の保護のもと権利を主張できる)ようです。すると事例の借地人Bは、土地の賃貸借の登記をしている訳ではありませんので、このままだと新地主Cの言われるがままに、甲土地を出ていかなければならなくなりそうですが...。
 結論。借地人Bは、甲土地の賃貸借の登記をしていなくても、甲土地の上にある建物の登記があれば、甲土地の賃貸借を新地主Cに対抗できます(法律の保護のもと権利を主張できる)。つまり借地人Bは、甲土地に建てた建物の登記をしていれば、新地主Cから「甲土地から出てけ」と言われても「ワタシが借りて使っているのだ!」と主張・対抗できます。そしてその根拠となる条文はこちらになります。

(借地権の対抗力等)
借地借家法10条
借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。


 借地借家法は不動産賃貸借における特別法です。一方、民法は一般法です。そして特別法は一般法に優先します。ですので、借地借家法は民法に優先して適用されます。(これについて詳しくはこちらの記事をご参照下さい)
 従いまして、前述の民法605条の規定ではなく、上記の借地借家法10条の規定が適用され、借地人はその土地の賃貸借の登記がなくても、借地上にある建物の登記があれば、地主が代わっても、その土地の賃貸借を対抗できる(法律の保護のもと権利を主張できる)という訳です。
 これは建物の賃貸借の場合と一緒なのですが、借地借家法の規定に関わらず、前述の民法605条の規定に従って、借地人は、土地の賃貸借の登記をして、新地主に対抗することも可能です。しかし、土地の賃貸借の登記をするには、土地所有者(地主)の協力が必要になります。そして土地所有者に、借地人の賃貸借の登記に協力する義務はありません。つまり、土地所有者は、借地人の賃貸借の登記を拒否しても何も問題ありません。ですので、ハッキリ言って民法605条役立たずのザル規定なんです。そこで、借地人をもっとしっかり保護するために、借地借家法10条の規定が設けられたということです。
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借地人の対抗要件~建物滅失や親族名義など様々なケース

 借地人は、その土地の賃貸借についての登記をしていなくても、借地上の建物の登記があれば、その土地の賃貸借の権利を法律の保護のもと主張できます。(これについて詳しくはこちらの記事をご参照下さい)
 
建物が滅失するとどうなるか

事例
BはA所有の甲土地を借りて、甲土地上にある自己所有の登記をした建物に住んでいる。その後、Aは甲土地をCに売却し、その旨の登記をした。その後、B所有の建物が火災により滅失した。


 さて、この事例において、借地人のBは、借地上の建物の登記があります。ということは、新地主のCに対し、甲土地の賃貸借を対抗(賃貸借の権利を法律の保護のもと主張)できます。たとえ新地主のCから「甲土地から出てけ!」と言われても「ワタシは甲土地の借地人だ!だから甲土地を利用する権利がある!」と主張することができます。
 しかし、この事例には、ひとつ問題があります。それは、借地上の建物が滅失してしまった、ということです。建物が滅失してしまったということは、登記をした建物が消滅してしまったということです。存在しない建物の登記などはありえません。つまり、建物が滅失したことによって、その建物の登記は無効のものになってしまうのです。すると、借地人Bは、借地上に建物も無ければ登記も無い、という状態になってしまう訳です。となると、このような状態で借地人Bは、新地主Cに対して、甲土地の賃貸借を対抗(賃貸借の権利を法律の保護のもと主張)できるのか?ということが、この事例2で考える問題になります。
 結論。借地人Bは、借地借家法10条2項の規定により、次のような対処をすれば、甲土地の賃貸借を対抗できます。

1・建物滅失の日と新建物築造の旨等を、その土地上に掲示する。
(甲土地上に掲示するとは、甲土地上に看板を立てるという意味。つまり、建物滅失の日と新建物築造の旨等を記載した看板を甲土地上に立てる、ということ)
2・建物滅失後、2年以内に、実際に新建物を築造し、その旨の登記をする。

 以上の対処をすれば、借地人Bは、甲土地の賃貸借を対抗することができます。
 従いまして、事例2の借地人Bが取り急ぎやらなければならないことは、甲土地に必要事項を記載した看板を立てることです。そして、それから2年以内に新しい建物を建てて登記をすれば、万事OKとなります。

その他のケース

建物滅失以外でも、借地人の対抗力(法律的な権利)について様々なケースが存在しますので、それらについて簡単に解説して参ります。

・建物の改築・増築等の変更登記をしていない場合
 建物の改築・増築などをしたときは「建物表題部変更登記」をしなければなりません。この建物表題部変更登記をしていない場合、借地人の対抗力(法律的な権利)がどうなるのかですが、建物の同一性が認められれば、借地人の対抗力(法律的な権利)は維持されます。「建物の同一性」という要件が気になりますが、極端な改築・増築でなければ問題はないと思われます。

・所有権保存登記はせず表示登記のみの場合
 建物の登記には、どんな建物かを示す表示登記(建物表題登記)と、建物の所有権などの権利関係がどうなっているかを示す権利部の登記があります。このうち、権利部の所有権保存登記をせず、表示登記(建物表題登記)のみで借地人の対抗力がどうなるのかですが、この場合、借地人の対抗力は認められます。

・土地を分筆して新番の土地に建物が存在しなくなった場合
 分筆とは、土地を分けることです。例えば、Aという土地を2つに分割して、小さくなったAという土地と新たなBという土地に分けるようなことです。つまり、借地が分筆されて、その借地が建物の建っている部分とそうでない部分とで所有者が別になったような場合に、借地人の対抗力がどうなるのか?ということですが、建物が建っていない部分の土地ついても借地人の対抗力は認められます。

・親族名義の登記の場合
 これは例えば、借地上の建物の登記が、借地人本人ではなく、借地人の親名義の登記だったような場合に、借地人の対抗力がどうなるのか?ということです。このような場合、借地人の対抗力は認められません。対抗力が認められるためには、借地人本人名義の登記でなければなりません。
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賃借権の譲渡・転貸~借りてる物の譲り渡しとまた貸し

事例
BはA所有の甲建物を賃借している。


 これだけでは、BがAから甲建物を借りて使用している、というだけの何の変哲もない不動産賃貸借ですが、問題はここからです。この事例で、AとBは、A所有の甲建物の賃貸借契約を結んでいます。そして、A所有の甲建物の賃借人となったBは、甲建物の賃借権という権利を取得します。賃借権とは、借りて利用する権利です。つまり、賃借人Bは、甲建物を借りて利用する賃借権を持っています。
 さて、それでは賃借人Bは、その賃借権を、他の誰かに譲り渡したり、また貸ししたりすることはできるのでしょうか?

(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
民法612条
1項 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2項 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。


 これについては、上記の民法612条が適用されます。そして、これは条文を読めば一目瞭然かと思います。賃借権を譲り渡したり転貸(また貸し)したりするには、賃貸人の承諾が必要です。
 ということで結論。賃借人Bは、賃貸人Aの承諾なしに、甲建物の賃借権を、他の誰かに譲り渡したり転貸したりすることはできません。もしそれに違反して、賃貸人Aの承諾なしで、勝手に賃借権を譲り渡したり転貸したりした場合は、上記の民法612条2項の規定により、賃貸人Aは、賃借人Bとの賃貸借契約を解除することができます。

なぜ勝手に賃借権を譲渡・転貸することができないのか

 例えば、家を借りて住もうとするとき、申し込みを入れてから契約に至るまでに、入居審査がありますよね?それはつまり、オーナー(賃貸人)は入居者を選んでいるということです。
 なぜ選ぶの?
 それは、家賃滞納や夜逃げ、その他トラブルを避けたいからです。当たり前の話です。つまり、今、賃貸物件を借りて住んでいる人は、オーナーが「この人だったら大丈夫だな」と思ったので、入居できた訳です。となると、せっかくオーナーが「この人だったら大丈夫だな」と入居者を選んだのに、賃借権を他の誰かに勝手に譲り渡されたり、他の誰かに勝手にまた貸しされたりして、入居者が素性のわからない別の人に代わってしまったら、そもそも入居者審査をした意味がなくなります。もし、賃借権を譲り渡した相手、また貸しした相手が、ヤ◯ザだったりなど、とんでもない人だったらどうしましょう?という訳なので、賃貸人(オーナー)の承諾なしに、賃借権の譲り渡しや転貸を勝手にすることはできないのです。

例外的に無断譲渡・転貸が認められる(賃貸人の解除権が制限される)こともある

 賃貸人の承諾なしに賃借権を譲渡(譲り渡すこと)、転貸することができないのが、民法の原則です。しかし、それが原則ということは、例外の場合もあります。
 例外ってどんな場合?
 これは民法の条文上でも借地借家法の条文上でもなく、判例で、次のような場合には、賃借権の無断譲渡・転貸も認められるとしています。
「背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるとき」
 これはどういう場合を指しているのかといいますと、賃貸人に実害がないであろうことが確実と言えるような場合です。例えば、個人で事務所を借りている人が法人化して、結果的に賃借権が個人から法人に移っても、経営の実質は何の変わりなく、事務所の使用にも何の影響もないような場合です。「背信的行為」というのは「ルールにそむく行為」という意味です。この場合のルールとは「無断譲渡・転貸はダメ」ですよね。つまり、「個人で事務所を借りている人が法人化して、結果的に賃借権が個人から法人に移っても、経営の実質は何の変わりなく、事務所の使用にも何の影響もないような場合」は背信的行為とまでは言えないから、例外的にこれを認め、このような場合には、賃貸人の解除権は制限されます。
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賃借権の譲渡・転貸 借地上の建物の売却、 賃貸人の承諾に代わる裁判所の許可など

 賃借人(借り手)は、賃貸人(貸し手)の承諾なしに、借りて利用する権利(賃借権)を他の誰かに譲り渡したり(無断譲渡)、また貸ししたり(無断転貸)することはできません。もし、賃借権の無断譲渡・転貸が行われてしまった場合、賃貸人は、その賃貸借契約を解除することができます(こちらの記事もご参照下さい)。

借地上の自己所有の建物を借地人は自由に売れる?

 土地を借りて、その土地(借地)上にある自己所有の建物を利用している、という方(借地人)もいらっしゃるかと思います。さて、そのような場合、借地人は、その借地上にある自己所有の建物を、地主の承諾なしに売ることはできるのでしょうか?
 結論。借地人は、地主の承諾なしに借地上の自己所有の建物を自由に売ることができます。なぜなら、建物はあくまで借地人の自己所有物だからです。従いまして、借地人が、借地上にある自己所有の建物を売るのは自由なのです。

ワシは、借地上にある自己所有の建物を孫に贈与したんじゃが...

 実は、このケースは少し微妙です。というのは、建物を孫に贈与するということは、建物を孫に譲渡することになり、建物を譲渡するということは、それにともなって、その土地の賃借権も譲渡されることになります。ということはつまり、賃借権の無断譲渡ということになってしまうのです。となると、地主に土地の賃貸借契約を解除されてしまう可能性があります。そうなると、せっかく建物を贈与された孫が困ってしまいます。
 結論。借地上の自己所有の建物を孫に贈与したケースでは、「背信的行為と認めるに足りない特段の事情」※が認められ、例外的に、地主の解除権を制限し、建物を贈与された孫は無事、その借地を使い続けることができます。
※ 「背信的行為と認めるに足りない特段の事情」について詳しくは、こちらの記事をご参照下さい。尚、この「背信的行為と認めるに足りない特段の事情」の立証責任賃借人(借地人)の側にあります。

賃貸人の承諾に代わる裁判所の許可

 土地の賃借権の譲渡が伴う、借地上の自己所有の建物を譲渡・転貸をする場合に、その譲渡・転貸をしても、借地権設定者(賃貸人・地主)にとって、不利になるおそれがないのが明らかなのに、借地権設定者(賃貸人・地主)がその譲渡・転貸を承諾しないとき、賃借人(借地人)は、裁判所にかけあって「賃貸人の承諾に代わる裁判所の許可」を得ることができます。これを得ると、賃借人(借地人)は、借地権設定者(賃貸人・地主)の承諾を得たことと同じことになり、問題なく、借地上の自己所有の建物を譲渡・転貸することができます。当然、この場合は、借地権設定者(賃貸人・地主)は、その土地の賃貸借契約を解除することはできません。
 また、この「賃貸人の承諾に代わる裁判所の許可」の仕組みは、借地上の建物が競売※された場合にも規定があります。(借地借家法20条)。
※競売については、抵当権などの担保物権についての解説の際に、別途改めてご説明いたします。ここでは割愛いたしますので、ご了承下さい。(抵当権についての超基本はこちらへ</a>)
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賃貸人(貸主・オーナー)の解除権 家賃滞納と信頼関係破壊の法理(理論)

事例
AはB所有の甲建物を賃借している。AはBに無断で、Cと甲建物の転貸借契約を結んだ。尚、Aはまだ甲建物をCに引き渡していない。


 これは、借り手である賃借人Aが貸し手である賃貸人Bの承諾なしに甲建物をまた貸しする契約をCと結んだ、つまり借り手の勝手なまた貸しという無断転貸のケースです。そして、この事例のポイントは「まだ甲建物をCに引き渡していない」ところです。
 さて、この事例で、賃貸人Bは、無断転貸をしたがまだその引渡しはしていない賃借人Aとの、甲建物の賃貸借契約を解除できるでしょうか?
 結論。賃貸人Bは、賃借人Aとの甲建物の賃貸借契約を解除することはできません。
 これはちょっと意外な結果ではないでしょうか?本来であれば、賃借人の無断転貸に対して、賃貸人は原則その賃貸借契約を解除できます(無断転貸について詳しくはこちらの記事もご参照下さい)。しかし、今回の事例の場合、賃借人Bは、無断転貸をしたとはいえ、まだ甲建物をCへ引き渡していません。そこで判例では、このような場合、無断で賃借人が転貸借契約をしたとはいえ、まだその引渡しを行なっていない以上、賃貸人と賃借人の「信頼関係は破壊されていない」ので解除できない、としています。

信頼関係破壊の法理

 先ほど「信頼関係は破壊されていない」ので、その賃貸借契約は解除はできない、という旨のお話をいたしましたが、これを信頼関係破壊の法理(理論)といいます。
 ところで、不動産賃貸借契約は、実はそう簡単に解除することはできません。よく不動産の「立ち退き問題」という言葉を耳にすることがあると思いますが、この「不動産の立ち退き問題」を難しくしている原因に、実は「信頼関係破壊の法理」が影響しています。どういうことかといいますと、例えば、AがB所有の甲アパートを借りて住んでいるとします。そしてAが1ヶ月分の家賃を滞納します。すると、賃借人Aは債務不履行に陥ります。債務不履行に陥るとは、簡単に言うと約束を守らなかったということです。そして債務不履行にはペナルティがあります。そのひとつが契約解除です。債務不履行は契約の解除の原因になります。債権者は債務不履行に陥った債務者に、相当の期間を定めて催告した上で、その契約を解除することができます。しかし!不動産賃貸借の場合は、そう簡単にはいきません。賃貸人B(大家・オーナー)は、賃借人A(借主)が1ヶ月分の家賃を滞納した、というだけでは、甲アパートの賃貸借契約を解除することはできません。なぜなら、それだけでは「信頼関係が破壊されていない」と判断されるからです。
 このようにして、信頼関係破壊の法理が働くのです。

じゃあ賃借人Aはいつまでも家賃を滞納できちゃうの?

 そういう訳ではありません。通常は、賃借人の家賃滞納については、3ヶ月分は滞納しないと賃貸人は賃貸借契約の解除はできないとされています。つまり、賃借人Aの家賃滞納が3ヶ月分までいけば、そこで「信頼関係が破壊された」と判断され、賃貸人Bは、賃借人Aとの甲アパートの賃貸借契約を解除できます。もちろん、家賃滞納以外に信頼関係を破壊するような事由があれば、家賃滞納があろうがなかろうが、賃貸借契約を解除できます。
 ざっくりと噛み砕いて簡単にまとめますと、信頼関係破壊の法理が働くことにより、賃貸人は、家賃滞納のみでは、少なくとも3ヶ月分の家賃滞納がなければ、その賃貸借契約を解除できない。つまり、賃借人の滞納家賃が3ヶ月分までいって初めて、賃貸人は賃借人に対し「出てけ!」と言える、ということです。

補足
「背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるとき」とは、言葉を変えれば「信頼関係が破壊されたとは認められないとき」ということです。
 不動産賃貸借について考えるとき、「信頼関係破壊の法理」は非常に重要になりますので、是非頭に入れておいて頂ければと存じます。
 尚、不動産の家賃滞納、立ち退きの問題は、まだまだ深い問題がございます。ですので、その問題につきましては、また別途改めて取り上げたいと思います。
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賃借権の適法な譲渡~借りて利用する権利を譲り渡すと敷金や滞納家賃はどうなる?

事例
AはB所有の甲建物を賃借している。その後、AはBの承諾を得て、その賃借権をCに譲渡した。


 これは、借り手である賃借人Aが、貸し手である賃貸人(オーナー)Bの承諾を得て、適法に甲建物を借りて利用する権利(賃借権)をCに譲渡した、というケースです。
 さて、この事例で、Aは賃貸人(オーナー)Bに対し、敷金の返還請求ができるでしょうか?
 結論。AはBに対し、敷金の返還請求ができます。
 この結論の法的な論理はこうです。賃借人Aは、適法にCへ賃借権を譲渡したことにより、賃貸借契約から離脱します。すると、Aは甲建物の借り手、すなわち賃借人ではなくなります。甲建物の賃借人ではなくなるということは、甲建物を借りて利用するため(賃借するため)の担保として賃貸人Bに預けている敷金は、その役割がなくなります。敷金は家賃不払いなどのための担保として、借り手である賃借人から貸し手である賃貸人へと預けるお金です。もはや賃借人ではなくなり、賃借人としての債務(借り手としての義務)もなくなったAが、賃貸人Bに、賃借人の債務の担保として敷金を預けておく、というのはおかしな話です。従いまして、Cへ適法に賃借権を譲渡して、甲建物の賃貸借契約から離脱したAは、Bに対し敷金の返還請求ができるのです。
 尚、適法に賃借権が「旧賃借人→新賃借人」と譲渡されても、敷金についての権利義務関係が当然に「旧賃借人→新賃借人」と引き継がれることはありません。特段の事情がない限りは、AB間の「敷金についての権利義務関係」が終了して、BC間に新たな敷金の権利義務関係ができる、という形になります。だからこそ、AはBに対し敷金返還請求ができるという訳です。ここはオーナーチェンジの場合とは異なっていますので、ご注意下さい。
 ちなみに、現実の実務においては、賃貸人(オーナー)のBが、賃借権の譲渡の承諾を与える際に、新たに賃借人となるCから敷金を受領すること(Cに敷金を払わせること)を条件としますので、旧賃借人のAに敷金を返還しても、賃貸人(オーナー)のBには何の問題もありません。

滞納家賃はどうなる?

 適法に賃借権が譲渡された場合、旧賃借人は賃貸借契約から離脱します。冒頭の事例の場合、Aが賃貸借契約から離脱し、BC間の賃貸借契約がスタートします。
 さて、では冒頭の事例で、適法に賃借権を譲渡する前に、Aに滞納家賃があった場合、その滞納家賃の行方はどうなるのでしょうか?これについては、AからCに債務引受などがされない限り、Cに引き継がれることはありません。従いまして、オーナーBは、賃借権の譲渡前の滞納家賃については、Aに対して請求することになります。つまり、賃貸借契約から離脱したとはいえ、Aには賃借権の譲渡前の家賃支払い債務は残るので、それで滞納家賃がチャラになるわけではないのです。世の中それほど甘くありません。

補足・必要費(修繕費)や有益費は?

 必要費とは、建物の修繕費です。賃借人が支出した必要費は、直ちに賃貸人に償還請求できます。では、事例のAに、賃借権の譲渡前に支出した必要費があった場合、その必要費の行方はどうなるのでしょうか?これについては、AからCに債権譲渡がされない限り、Cに引き継がれることはありません。従いまして、賃借権の譲渡前に支出した必要費がある場合、その償還請求は、AがBに対して行います。
 また、有益費についてですが、有益費とは、建物の価値を増大するための費用です。通常、有益費は、賃貸借契約終了時に、その償還請求ができます。となると、冒頭の事例で、賃借権の譲渡前に、Aに有益費の支出があった場合、その償還請求を行うのはAとC、どちらになるのでしょうか?これについては、争いがあります。争いがあるということは、結論が割れているということです。この問題については、これ以上のご説明はいたしませんが、とりあえず「結論が定まっていない」ということだけ、頭に入れておいて頂ければと存じます。
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賃借権の相続~賃借人(借主)が死亡したら?内縁の妻(同棲中の彼女)は?

 不動産の所有者が死亡したら、その不動産の所有権は、相続人に相続されます。では、不動産の賃借人(借主)が死亡した場合は、その賃借権(借りて利用する権利)はどうなるのでしょうか?
 結論。賃借権は相続されます。ですので、例えば、賃貸マンションに住んでいる家族の世帯主が死亡しても、残された家族が賃借権を相続するので、賃貸人(オーナー)から立退き請求されることもなく、残された家族はそのマンションに住み続けることができ、路頭に迷わずに済みます。というか、路頭に迷わずに住めます(笑)。

同居人が世帯主の相続人ではなかった場合

 さて、ここまでは何も問題ないはずです。しかし、賃借権の相続についての、真の問題はここからになります。 先ほど、賃貸マンションに住んでいる家族の世帯主が死亡しても、残された家族が賃借権を相続するので問題ない、という旨のお話をいたしました。では、残された家族(同居人)が、世帯主の相続人ではなかった場合、一体どうなるのでしょうか?

事例
BはA所有の甲建物を賃借して、内縁の妻Cと共に住んでいる。その後、Bは死亡した。尚、Bには別れた先妻との間の子供Dがおり、DはAの唯一の相続人である。


 まず、本来の問題についての説明に入る前に「内縁の妻」について、簡単にご説明しておきたいと思います。
 内縁の妻とは「男女が婚姻の意思をもって共同生活(いわゆる同棲のこと)を送っているものの、婚姻届を提出していない場合の女性」のことです。よく「内縁関係」とか「事実婚」とか呼ばれる状態にある女性が、まさにこの「内縁の妻」にあたります。もっと噛み砕いて言えば、将来の結婚を考えて同棲しているカップルは「内縁関係」にあり、そのカップルの彼女が「内縁の妻」です(内縁について詳しくは、別途「家族法」分野の「親族」についての解説で、詳しくご説明申し上げたいと存じます)。

オーナーAは内縁の妻Cに出てけと言えるのか

 内縁の妻については、おわかりになって頂けましたよね。という訳で、ここから事例の話に入って参りますが、今回の事例は、登場人物が4人いて、少し複雑に感じるかもしれません。ですので、ここで事例の状況を、噛み砕いて記してみましょう。

「将来の結婚を考えているB男とC子というカップルが、A所有の建物で同棲していたが、ある日、B男が死亡した。そして、死亡したB男には、以前に離婚した奥さんとの間の子供Dがいて、なんと、そのDが、B男の唯一の相続人だった!」

 噛み砕くと、こんな話です。これならわかりやすいかと思います。そして、なんだか一悶着ありそう臭いがプンプンしますよね(笑)。
 さて、それではこの事例で、甲建物のオーナーAは、内縁の妻Cに対して「甲建物から出てってくれ」と、立退き請求ができるでしようか?
 結論。甲建物のオーナーAは、内縁の妻Cに対して、立退き請求をすることはできません。なぜなら、内縁の妻Cは、Bの相続人Dの賃借権援用できるからです。

あくまでBの賃借権を相続するのはD

「BからDが相続した甲建物の賃借権を援用できる」というのは、簡単に申しますと、内縁の妻Cは「他人(相続人D)のふんどしで相撲を取れる」ということです。つまり、オーナーAから「甲建物から出てってくれ」と立退き請求をされても、相続人Dの賃借権を盾に「わたしはここに住み続けます」と正当に主張することができます。内縁の妻Cは「相続人Dの賃借権」という名のバハムートを召喚できるのです(笑)。
 また「Bの持っていた甲建物の賃借権を相続するのはあくまでD」ということはつまり、甲建物の賃料支払い義務内縁の妻Cではなく相続人Dが負います。従いまして、甲建物の家賃を払わなければならないのは、相続人Dになります。
 え?意味がわからん!
 ですよね。ただ、これは判例で、なんとか内縁の妻を救い出すために出された結論なのです。

なぜそこまでして内縁の妻を救う必要があるのか

 もし、内縁の妻が救われない結論を出してしまうと、同棲するリスクが高まってしまうと考えられます。それは将来の結婚を考えたカップルには酷な話ですよね。そして、同棲のリスクが高まると、それに伴って婚姻率・出生率も下がってしまって、ひいては「国家の繁栄を阻害することにも繋がりかねない」というようなことまでも、大袈裟ではありますが、考えられなくもないのです。したがって、強引ではありますが、このような結論になるのかと思われます。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
東京都行政書士会所属
根本総合行政書士です。
宜しくお願いします。

保有資格:
行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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