不動産登記の基本と公示の原則/二重譲渡~登記は早い者勝ち/3つの登記請求権と登記引取請求権とは

▼この記事でわかること
不動産登記の超基本
不動産の二重譲渡
登記請求権
登記引取請求権
3つの登記請求権
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者でもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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不動産登記

 土地や建物といった不動産は、登記をすることによって所有権を取得します。
 この「所有権」とは、物権です。物権とは、物を排他的に支配する権利です。
 排他的に支配する権利とは、噛み砕いて簡単に言うと「他人を蹴散らして堂々とワタシのモノだ」言って所有・使用する権利です(ちなみに民法の世界では、を「モノ」ではなく「ブツ」と読みます。なんだか怪しい読み方ですが(笑)。民法ではそのようになっております)。
 不動産は、登記をしなければ所有権という物権を取得し、排他的に支配することができません。いや、厳密に言えば、登記をしなくても所有権を取得する事はできるので、もう少し正確に申し上げると、不動産は登記をする事によって所有権という物権法律で保護されるのです。

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
民法177条
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律に定めるところに従いその
登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

 上記の条文で「登記をしなければ、第三者に対抗することができない」とあります。物権(所有権)を取得できないとは書いていません。「第三者に対抗できない」と書いています。
 第三者に対抗できないって?
 要するに、法律上登記をしなければ他人(第三者)に所有権(物権)を主張(対抗)できない、ということです。
 法律上主張できないという事の意味は、法律で守ってもらえないという意味です。
 法律で守ってもらえないという事は、実質、所有権(物権)を取得できないのと変わりませんよね。この土地はワタシのモノだ!と堂々と言えないって事ですから。結婚していない彼女を「オレの奥さんだ!」と言えないのと一緒です(笑)。結婚していない彼女のお父さんに「おとうさん」と言っても「オマエのおとうさんになった覚えはない!」と言われてしまうのと一緒です(笑)。しかし、結婚すれば法律上認められた家族になります。彼女のお父さんとも法律上の姻族関係になります。堂々と「お義父さん」と言えるのです(この辺りの家族関係に関しては別途、家族法分野で詳しく解説いたします)。
 なお、不動産登記をして、所有権(という名の物権)が法律で保護されている状態を、対抗要件を備えると言います。
 対抗要件とは、第三者に正当な権利を主張(対抗)するための要件です。
 つまり、対抗要件を備えると、第三者に対し「これはワタシのモノだ」と、法律上堂々と言えるということです。

公示の原則
ここに書いてありまぁす
 不動産の登記のルールは、公示の原則に従って定められたものです。
 公示の原則とは「排他的な権利変動は客観的に認識できる形で権利関係を公に示すべき」という原則です。
 もう少し噛み砕いて分かりやすく言うと「物の権利関係他人から見てわかりやすい形にしよう」という事です。
 そして、不動産の場合はそれを登記という画一的なルールにより行っているのです。
 
 以上、不動産の物権(所有権)における登記というものの基本について解説しました。
 こんなこと資格試験なんかにはあんま関係ないんじゃね?と思われる方もいらっしゃると思います。確かに直接的に試験問題に関わる論点ではないかもしれません。ですが、この辺のことをしっかり覚えておくと、後々民法の学習を進めていくにあたり、学習内容の頭の入り方が全然違ってきます。よりすんなり頭に入りやすくなるのです。急がば回れのひとつの典型とも言えます。加えて、社会のルールの基本として、頭の片隅に入れておいて損のない事でもあります。

不動産の二重譲渡

 不動産の物権(所有権)は、登記をすることによって法律で保護されます。
 したがって、不動産は登記をしないと実質、所有権を取得したとは言えません(対抗要件を備えていないので)。
 以上の基本を踏まえた上で、こちらの事例をご覧ください。

事例
Aは自己所有の甲土地をBに売却した。しかし、Bは登記をせず甲土地の名義はA名義のままだった。その後、Aは甲土地を悪意のCに売却し、Cは登記を備えた。
※登記を備えた、というのは登記をしたということ


 これは、売主Aが甲土地を買主Bと悪意の第三者Cの2人に売却した、という不動産の二重譲渡の事例です。

 売主   買主
 A → B
  ↘
    C
 悪意の第三者
 
 さて、ではこの事例で、甲土地の所有権を取得するのは誰でしょうか?
 正解はCです。
 え?Cは悪意なのに?
 はい。悪意なのに、です。
 Bがかわいそう!
 確かにBは可哀想です。しかし、ここではボサッとしていたBが悪い、と考えます。
 そうです。とかく民法は、取引の安全性を重視してトロイ奴に冷たい傾向があります。
 したがって、この事例の場合は、悪意であろうとCが勝ってしまいます。

 では、ここで再度条文を確認しましょう。

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
民法177条
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律に定めるところに従いその登記をしなければ、
第三者に対抗することができない。

 上記の条文によると「第三者に対抗することができない」とありますが、善意悪意については何も書いていませんよね?
 つまり、第三者の善意悪意は問わないということなのです。
 したがいまして、不動産の登記については、わかりやすく簡単に言ってしまうと「早く登記したモン勝ち!」なのです。
手旗 勝ち~
 要するに、不動産登記について民法は、取引の安全性を重視して早い者勝ちにしていると言えるでしょう。
 その結果、事例では、先に登記をした悪意のCが甲土地の所有権を取得し、Bについては「ボサっとしていたお前が悪い」となってしまうのです。

悪意の第三者の補足

 先述の事例で、Cは悪意であるにも関わらず土地の所有権を取得しました。なぜなら、不動産登記の世界は、民法177条の規定により登記したモン勝ちだからです。
 民法の言い分も分かるけど...ボサッとしていたとはいえやっぱりBがかわいそう
 はい。気持ちはよくわかります。しかし、こう考えてみて下さい。
 民法において悪意というのは「事情を知っている」という意味でしたよね。ならばCが「売主のAが色んな事情をなんとかウマいことやって売ってくれるんだな」と思って、取引に入って来ていたとしたらどうでしょう。
 確かにCは「事情を知っている」という点で悪意ですが、悪人という訳ではありませんよね。
 このように考えていくと、悪意のCの取引に対する信用を保護する必要性がありますよね。
 まあでも、結局、事例で一番のワルは売主Aなんですよね(笑)。ですので、気の毒な買主Bが現実としてできることは、諸悪の根源のAに対し損害賠償を請求する、ということになります。ただ、それがどんな結果になろうと、登記を備えたCの土地の所有権は揺るぎません。
 なお、Cが背信的悪意者の場合は、たとえ登記を備えようが、Cは土地の所有権を取得できません。
 背信的悪意者とは、合法的なとんでもないワルと思ってください。つまり、第三者があまりにも悪質であれば、それはさすがにトロイ奴には冷たい民法でも認めませんよ、ということです。

3つの登記請求権と登記引取請求権

登記請求権

 登記権利者が登記義務者に対して、登記申請に協力するよう請求することができる権利を、登記請求権と言います。
 登記権利者とは、所有権等を取得したことにより登記をする権利を持つ者のことで、不動産売買の場合の買主がこれにあたります。
 登記義務者とは、所有権等を取得したことにより登記をする権利を持つ者に対して、その登記に協力する義務を持つ者のことで、不動産売買の場合の売主がこれにあたります。
「登記権利者は登記義務者に対して登記申請に協力するよう請求することができる」ということの意味は、登記義務者(例:売主)が登記申請に協力しない場合、登記権利者(例:買主)は、裁判を起こして判決を取って登記を実現してしまうことができる、という意味です。

登記引取請求権

 登記権利者に登記請求権がある一方、不動産売買において、売主の方から買主に対して「はよ登記を持っていけや!」という権利もあります。これを登記引取請求権と言います。
 売主の方から買主に対して「はよ登記を持っていけや!」というのは、一見妙な感じがしますが、これは決して妙なことではありません。
 というのは、不動産には固定資産税がかかりますが、それは登記簿上の所有者に課税されます。ですので、売主としては、すでに売却した不動産の登記名義がぐずぐず残ったままなのは、困ったハナシなのです。

3つの登記請求権
三本指
「登記させろ」と請求できる登記請求権の発生原因には、以下の3パターンがあるとされています。

・物権的登記請求権
・債権的登記請求権
・物権変動的登記請求権

 それではひとつひとつ、解説して参ります。

【物権的登記請求権】

 これは、現在の権利関係との不一致を是正する登記請求権です。
 不動産売買が行われた場合の、買主から売主に対して「私が所有者になったのだから登記よこせコラ!」という権利が、この物権的登記請求権にあたります。
 なお、所有権についての物権的登記請求権であれば、それは所有者にしか認められません。
 例えば、不動産が「A→B→C」と転売された場合に、その不動産の所有者はCになりますが、中間地点にいるBからAに対しても登記を請求できます。このときの、中間地点にいるBからAに対する登記請求権は、物権的登記請求権ではありません。なぜなら、所有者はCだからです。Bには、その不動産についての「物権」がないので、それは登記請求権ではあっても「物権的」登記請求権ではないのです。

【債権的登記請求権】

 これは、当事者間の債権関係から発生する登記請求権です。
 例えば「A→B→C」と不動産が転売された場合に、中間地点にいるBからAに対する登記請求権こそ、この債権的登記請求権にあたります。
 所有者はCなので、Bには「物権」はありませんが、AB間には売買契約上の債権関係があり、BにはAに対して登記の協力を請求する「債権」があります。なので「債権的」登記請求権になるのです。
 なお、債権的登記請求権は、債権関係を原因とするものなので、例えば、BがAの土地を時効により取得したようなケースでは、AB間には債権関係がないので、この場合の登記請求権は、債権的登記請求権にはあたりません。

【物権変動的登記請求権】

 これは、物権変動の過程、態様と登記が一致しない場合の登記請求権です。
 例えば「A→B→C」と不動産が転売され、C名義の登記がされた後、AB間の契約が取り消された場合、BのCに対する所有権の抹消登記請求権が、物権変動的登記請求権にあたります。
 Bは所有者ではないので「物権的」ではありません。そして、AB間の売買契約が取消しになったことにより、その効果は遡求し(さかのぼり)、AB間の売買契約の存在を前提とするBC間の売買契約も「なかったこと」となり、BC間の債権関係も消えてなくなるので「債権的」でもありません。したがって、物権「変動的」登記請求権なのです。
 なお、無効の売買契約でAからBへ登記が移転し、さらにAからCへとその不動産が二重譲渡されたケースで、CはBに対して登記の移転を請求できますが、BからCへの「物権変動」は存在しませんので、この場合のBからCに対する登記の移転の請求は「物権変動的」登記請求権にはあたりません。

登記請求権の補足
女性講師
 ところで「A→B→C」と不動産が転売された場合に、登記名義がAのままだったとき、Cが(Bをすっ飛ばして)直接Aに対して「私の登記に協力しろ!」と請求できるのでしょうか?
 結論。CはAに対して「私の登記に協力しろ!」と請求できません。なぜなら、CとAは何の契約関係、権利義務関係もないからです。

・Cはどうすればいいのか

 Cが「私の登記に協力しろ!」と請求できる相手はBです。
 CB間は売買契約関係にあり、Cは買主で登記権利者、Bは登記義務者です。
 したがって、CはBに対して登記請求権を持つのです。しかし、CはAに対しては登記請求権を持ちません。Aに対して登記請求権を持つのはBになります。
 したがいまして、Cは、BがAに対して「私(B)の登記に協力しろ!」と請求してくれさえすればいいのです。

・Bが登記請求権を行使しなかったら

 では、BがAに対して登記請求権を行使してくれなかったらどうでしょう?
 Cとしては、自分自身の登記を実現するためには、BがAに対して「私の登記に協力しろ!」と、登記請求権を行使してくれないことにはどうにもなりません。
 そこで、そのような場合、Aには「債権者代位権」という手段があります(債権者代位権については別途改めて詳しく解説いたします)。
 ではAが「債権者代位権」を使って何ができるのかを簡単に言いますと、AはBに代わって(代位して)、Cに対して「Bの登記に協力しろ!」と請求できます。これが「債権者代位権」を使った、Cの登記を実現する方法です。月に代わっておしおきよ!ならぬ、Bに代わって登記しろ!です(笑)。
 なお「A→B→C→D」と不動産が転売された場合に、登記名義がAのままのとき、Dは自分自身の登記を実現するために、CがBに代わって(代位して)、Aに対して「Bに登記しろ」という権利(債権者代位権)を、Cに代わって行使できます。つまり、代位の代位です。月に代わっておしおきするセーラームーンに代わっておしおきよ!という感じです(笑)。


 以上、不動産登記について解説になります。
 多分、あんまり面白くなかったんじゃないでしょうか(笑)。
 どうしても登記関係の話は、より専門的で、つまらなくなってしまいがちです。
 まずは、前半部分の基本を、しっかり押さえていただければと存じます。

時効取得と登記の所有権争い~時効完成前後に現る第三者/さらに二重譲渡と抵当権が絡んだ場合

▼この記事でわかること
~所有権争い~
時効完成前の第三者vs時効取得者
時効完成後の第三者vs時効取得者
時効取得と抵当権と登記
時効取得と二重譲渡
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者でもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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時効取得と登記

 不動産の所有権争いは、基本的に登記したモン勝ちの世界です(不動産登記の超基本はこちら)。
 では、不動産登記に時効取得が絡んでくるとどうなるのでしょう?

時効完成前の第三者vs時効取得者

事例1
BはA所有の甲土地を善意・無過失で9年間、占有を続けた。Bはあと1年の占有で甲土地を時効により取得するところである。ところが、その時効が完成する前に、甲土地がAからCに譲渡され、その旨の登記もされた。


 この事例1では、Bは善意・無過失でA所有の甲土地を占有していますので、短期取得時効により、10年間の占有で甲土地を時効取得します。ところが、その時効が完成する一歩手前で、甲土地の所有権がAからCに移転しています。
 で、何が問題なの?
 はい。まずこの事例1のポイントは、時効完成前に第三者のCが現れ登記もした、という点です。そして問題となるのは、Bがあと1年間、占有を継続して時効が完成した場合、Bは(時効完成前に現れ登記もした第三者)Cに対して甲土地の時効取得を主張できるのか?ということです。
 なぜそれが問題になるかというと、こういうことです。
 
BはA所有の甲土地を善意で9年間占有していますが、C所有になってからの甲土地は1年間しか占有していません。それなのに、Bの甲土地の時効取得の主張が認められるとなると、Cからすれば、たった1年間の占有で甲土地を時効取得されて、その所有権を奪われてしまうことになります。

~「B対C」の所有権争いの結末やいかに~

 さて、このB対Cによる甲土地の所有権をめぐる争い、一体どちらが勝つのでしょうか?
 結論。甲土地をめぐる所有権争いはBの勝ちです。
 Bは甲土地の時効が完成すれば、Cに対して、その時効取得を主張できます。BはCに対して「時効が完成したから甲土地の所有権をよこせ!」と主張できる、ということです。
 Cが気の毒なような...
 確かにそうですよね。しかし、Bに甲土地を時効取得されてしまったことについては、Cにも落ち度があります。
 なぜなら、Aから甲土地を譲渡される前に、甲土地についてしっかりと調査をすれば、Bの占有と時効取得される可能性を事前に知ることはできた、とも考えられますよね。
 加えて、善意で占有しているBは、甲土地を自分の土地だと思って占有しています。そんなBにとっては、甲土地の真の所有者がAなのかCなのかは、あまり関係ないのです。

【判例の考え】
裁判所
 判例の考えでは、BとCは「前主後主の関係」になります。
 本来、不動産登記の世界は「登記した者勝ち」の、早い者勝ちの世界です。
 例えば、ある不動産が二人の者に二重譲渡された場合、その不動産の所有権争いは、早く登記をした方が勝ちます。ですので、普通に考えると、事例1のB対Cの所有権争いは早く登記をしたCが勝ちそうなものです。しかし、BとCは「前主後主の関係」で「どっちが先に登記をするかの関係」ではないと判例は考えます。つまり、甲土地の所有権「前主Cから後主Bに移った」ことになる、ということです。
 なお「どっちが先に登記をするかの関係」は、法律的には、民法177条の「対抗関係」となります(これについて詳しくはこちらをご参照ください)。つまり、BとCは「前主後主の関係」であって「対抗関係」ではない、ということです。これは言ってみれば、Cは「Bとの所有権争いのリング」には立てない、ということです。

時効完成後の第三者vs時効取得者

 さて、続いては時効完成後に第三者が現れたケースについて解説します。

事例2
BはA所有の甲土地を善意・無過失で10年間、占有を続け、時効が完成した。そして、その時効完成後、Bが登記をしない間に、Aは甲土地をCに譲渡し、その旨の登記をした。


 この事例2は、BがA所有の甲土地を占有して時効が完成した後、甲土地の所有権がAからCに移転し、その旨の登記もされた、というケースです。
 さて、ではこの事例2で、時効が完成したBは、Cに対して甲土地の時効取得を主張できるでしょうか?
 結論。Bは甲土地の時効取得をCに対して主張できません。
 この事例2は、実はとても単純な図式になっています。
 どういうことかといいますと、それは、BとCの関係性です。BとCの関係は、単純な「どちらが先に登記をしたかの関係」です。つまり、BとCは、民法177条の「対抗関係」になります。
 したがいまして、事例2では先に登記をしたCの「早い者勝ち」となり、B対Cの甲土地の所有権争いの勝者はCなのです。

Bが所有権争いに負けたのは自分のせい
指さし
 BとCは対抗関係にあり、単純に「早く登記した者勝ち」で、Bよりも早く登記を備えたCが甲土地を取得します。
 では、Bには何かしらの手立てはなかったのでしょうか?
 これは単純な話です。Bは時効完成後さっさと甲土地の所有権登記を済ませれば良かったのです。それだけの話です。つまり、せっかく時効が完成したのに、登記をしないままボサっとしていたBが悪いということです。民法は、基本的にトロいヤツには冷たいのです。
 なお、もしBがさらに甲土地を占有し続けて時効期間を満たすと、再び時効が完成します(時効の起算点Cの登記時)。こうなるとBの逆転勝利で、Bが甲土地を時効取得します。

 では続いて、次の場合はどうなるでしょう?

事例3
BはA所有の甲土地を善意・無過失で9年間、占有を続けた。そして、甲土地がBからCへ譲渡された。それから1年後、Bの時効が完成した後、Cは登記した。


 少しややこしくなっていますが、この事例3は、Bの時効完成前に甲土地がAからCに譲渡され、Bの時効完成後にCが登記をした、というケースです。
 さて、このケースで、Bは甲土地の時効取得を、Cに対して主張できるでしょうか?
 結論。Bは甲土地の時効取得をCに対して主張できます。BとCの甲土地をめぐる所有権争いBの勝ちです。
 ん?Cは時効完成後に登記をしているから、BとCは対抗関係で早い者勝ちにならないの?
 事例3のBとCは、対抗関係ではありません。実は事例3は「時効完成前の第三者」のケースになります。
 確かに第三者のCは、Bの時効完成後に登記をしています。しかし、甲土地の譲渡自体は、Bの時効完成前に行われています。そして、譲渡が行われた時点で甲土地の所有者はAからCへと移っています。
「Cの登記がBの時効完成後に行われた」ということについては、これは単に「Cの行動がノロいだけ」なのです。
かたつむり
 ですので、事例3は、ただ単にCの行動がカタツムリのようにノロいというだけで、あくまで「時効完成前の第三者」のケースになるのです。
 そして「時効完成前の第三者」のケースでは、その土地をめぐる所有権争いは時効により取得する者が第三者に勝ちます。
 したがいまして、事例3の甲土地をめぐるB対Cの所有権争いは、Bが勝つのです。

時効取得と抵当権と登記

 続いては、時効取得に加えて抵当権も絡んでくる様々なケースを見て参ります。

事例4
BはA所有の甲土地を占有し時効が完成したが、その旨の登記はしていなかった。そしてBが登記をしない間に、AはCからの融資を受けるために、その融資の担保として甲土地に抵当権を設定した。


 さて、この事例で、BはAの設定した抵当権の消滅を主張できるでしょうか?
 結論。BはAの設定した抵当権の消滅の主張はできません。
 もしBが、Aの抵当権設定の前にきちんと登記を済ませておけば、Aの抵当権は消滅します。つまり、せっかく時効が完成したのにも関わらず、登記もせずにボサっとしていたBが悪いのです。
 したがって、BはAの抵当権付きの甲土地を取得することになってしまいます。

 では、次の場合はどうなるでしょう?

事例5
BはA所有の甲土地を占有し時効が完成したが、その旨の登記はしていなかった。そしてBが登記をしない間に、AはCからの融資を受けるために、その融資の担保として甲土地に抵当権を設定した。その後、Bはさらに甲土地の占有を続けて、再び時効が完成した。


 この事例5で、BはAの抵当権設定の時を起算点とした甲土地の時効取得を、Aに対して主張できるでしょうか?
 結論。BはAに対して、その抵当権設定の時を起算点とした甲土地の時効取得を主張できます。これはBの時間をかけた逆転勝利です。

 さらに事例をもうひとつ。

事例6
BはA所有の甲土地を占有し時効が完成したが、その旨の登記はしていなかった。そしてBが登記をしない間に、AはCからの融資を受けるために、その融資の担保として甲土地に抵当権を設定した。その後、Bは所有権登記をして、甲土地の占有を続けた。


 この事例6で、Bは甲土地を占有し続ければ、再び時効が完成して、Aの抵当権の消滅を主張できるでしょうか?
 結論。BはAの抵当権の消滅を主張できません。なぜなら事例6では、再びBの時効が完成することはないからです。

なぜ事例6では、再びBの時効が完成することはないのか
考え中
 なぜ再びBの時効が完成しないのかと言いますと、事例6のBは、Aの抵当権設定後に所有権登記をしているからです。
 これについて判例では「一度、時効取得して所有権登記をしたものを再び時効取得することはできないだろう」と説明しています。まあ、確かにそのとおりと言えばそのとおりですよね。
 この事例6のオモシロイところは、Bの所有権登記が仇になっている、というところです。
 所有権登記をしていない事例5では、時効が再び完成し、Bは逆転勝利を果たしています。しかし、事例6では、Bが所有権登記をしたがために、再度の時効完成が認められず、Bの逆転勝利は叶いません。
 普通、不動産の権利に関する問題は、登記をした方が有利になります。それが逆に働くという事例6は、実に面白いレアケースと言えるでしょう。

時効取得と二重譲渡

 それでは最後に、時効取得と二重譲渡が絡んだケースについて解説します。

事例7
BはA所有の甲土地を買い入れ引渡しを受けたが、移転登記はまだ行っていなかった。それからすぐ、CもAから甲土地を譲り受け、その旨の登記をした。その後、Bは甲土地を占有し続けた。


 これは、不動産の二重譲渡のケースです。
 このような不動産の二重譲渡では、その不動産の所有権争いは、基本的に早く登記した者が勝ちます。ですので、事例でのB対Cによる甲土地の所有権争いは、登記をしたCが勝ちます。
 しかし!この事例7では、そこからさらにもう一捻りあります。
 甲土地をめぐるB対Cの所有権争いは、登記をしたCが勝ちますが、この事例7では、所有権争いに負けたBが、それでも甲土地の占有をし続けています。
 さて、ここからが本題です。
 そのままBが甲土地の占有をし続けた場合、Cの登記時を起算点として、Bは甲土地を時効取得することができるでしょうか?
 結論。Bは甲土地を占有し続ければ、甲土地を時効取得することができます。
 ただし!時効の起算点は「Cの登記時」ではありません。時効の起算点は「Bが甲土地の引渡しを受けた時」になります。
 したがいまして、甲土地の二重譲渡による所有権争いに負けたBは、甲土地を占有し続ければ、引渡しを受けた日を起算点として、甲土地を時効取得することができます。Bの逆転勝利です。

共同相続と登記~遺産分割協議と相続人&相続放棄者の勝手な不動産譲渡問題/遺言による相続と登記について

▼この記事でわかること
相続と登記の超基本
共同相続と登記
遺産分割協議とは
共同相続人の勝手な不動産譲渡?と登記
相続放棄者が相続財産を譲渡?と登記
遺言による相続と登記
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者でもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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相続と登記

 登記の問題に相続が絡んでくる場合とは、一体どのようなケースでしょう? 

事例1
BはAに甲不動産を譲渡した後、死亡した。その後、Bの唯一の相続人であるCは、甲不動産をDに譲渡した。


 これがまず、不動産登記に相続が絡んだ場合の基本的なケースでしょう。
 この事例の流れはこうです。

BがAに甲不動産を譲渡

Bが死亡

BをCが相続

CがDに甲不動産を譲渡


 この事例1について考えるときのポイントは、BとCは同一人物だと考えることです。
 CはBを相続しています。そして、相続は包括承継です。わかりやすく言うと、CはBそのものを引き継いでいるのです。
 したがって、事例1は、C(=B)が、AとDに甲不動産を譲渡している、という不動産の二重譲渡のケースになります。
 さて、ではこの事例1で、甲不動産を取得できるのは、Aでしょうか?それともDでしょうか?
 答えは簡単です。これは不動産の二重譲渡のケースなので、単純に早く登記した方が甲不動産を取得します。

共同相続と登記

事例2
Aが死亡し、A所有の甲土地をBとCが共同相続した。相続分は同一(半々)である。その後、BC間で、甲土地はBが単独で所有するという遺産分割協議が成立した。ところが、Cは甲土地の全部につき自己名義の登記をした上、Dに甲土地を譲渡し、その移転登記をした。


 さて、ここからが「相続と登記」の本格的な内容になります。
 状況の整理をしないとややこしいので、まず、この事例2の流れを確認しましょう。

A死亡

甲土地
BC共同相続(持ち分半分ずつ)

BC間の遺産分割協議により

甲土地の所有権全部
B単独所有


ところが

甲土地の所有権全部
Cが自己名義登記

Dに譲渡

甲土地
Dが登記


 事例2の流れと状況はこのとおりです。
 さて、ではこの事例2で、そもそもCに、甲土地の所有権全部について自己名義の登記(甲土地の所有権全部をC名義で登記)をして、そこからさらに甲土地をDに譲渡する権利があるのでしょうか?

遺産分割協議とは
アヒルの話し合い
 相続財産を、相続人間の話し合いで分けることを遺産分割と言います。
 例えば、長男は土地、次男は株、三男は預金、といった具合です。
 そして、遺産分割の効力についての、民法の規定はこちらです。

(遺産の分割の効力)
民放909条
遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。


 この条文を見ると、遺産分割の効力は、相続開始の時にさかのぼるとあります。
 ということは、事例2は、BC間の遺産分割協議が成立して、その効力はAの死亡時(相続が開始した時)にさかのぼります。
 となると、甲土地の所有権は、Aが死亡して相続が開始した時からBのものだったことになります。
 こう考えていくと、そもそも、Cには甲土地についてどうこうする権利などない、ということになります。
 しかし!判例の考えは、民法909条の遺産分割の遡及効(遡って生じる効力)を制限します。これはどういう事かといいますと、甲土地について、Cの権利を全く認めない訳ではないのです。

共同相続人の勝手な不動産譲渡

 ここで今一度、事例2の流れと状況を確認しましょう。

A死亡

甲土地
BC共同相続(持ち分半分ずつ)

BC間の遺産分割協議により

甲土地の所有権全部
B単独所有


ところが

甲土地の所有権全部
C単独で自己名義登記

Dに譲渡

甲土地
Dが登記


 さて、ではこの事例2で、無権利者のように思われるCから甲土地を譲渡されたDに対し、Bは「遺産分割により甲土地の所有権全部が私のものとなった!なので返せ!」と、甲土地の所有権を主張できるでしょうか?

~Dの救いの道~

 本来、遺産分割されると、その効力は相続開始の時まで遡ります。
 つまり、BC間の遺産分割協議により遺産分割されると、Aが死亡して相続が開始した時から甲土地の全部はBのものだったことになります。
 しかし、判例はこの原則を曲げて、遺産分割の遡及効(遡って生じる効力)を制限します。そして、遺産分割の遡及効を制限することにより、Dには救いの道が開かれます。Dに救いの道が開かれるということは、Aが泣くことになる可能性を意味します。
 Aの主張の雲行きが怪しくなってきましたね。

甲土地をBの持ち分とCの持ち分とに分けて考える
真っ二つ
 まず、Aが死亡すると、甲土地はBとCへ相続されます。その際、甲土地の持ち分は半々となっています。ここで、Bの持ち分をb土地、Cの持ち分をc土地とします。
 そして、Cは甲土地の所有権全部について自己名義の登記をしてDに譲渡します。つまり、Cは、b土地とc土地の両方を合わせた甲土地に自己名義の登記をした上でDに譲渡した、ということになります。
 さて、ここからは甲土地の行方を、b土地とc土地に分けて考えていきます。

・Bの持ち分:b土地

 こちらは、相続により直接Bに帰属します。
 つまり、b土地の所有権は、相続によりダイレクトにBのものになります。ですので、b土地については、Cは一回もその権利を取得したことはなく、全くの無権利者です。
 したがいまして、b土地について全くの無権利者のCから譲渡されたDがb土地を取得することはあり得ません。

〈Bの持ち分:b土地〉

↓直接

(Cの入る余地なし)

 なので、CD間のb土地(Bの持ち分)の譲渡は無効であり、Dの登記も無効です。
 よってBは、b土地については登記がなくともDに対抗できます。
 したがって、Bはb土地については登記をしていなくとも、(無効な)登記をしているDに対して「b土地を返せ!」と主張することができます。

・Cの持ち分:c土地

 こちらは、相続によりいったんCに帰属します(判例により遺産分割の遡及効が制限されるので)。つまり、c土地の所有権は相続によりいったんCのものとなり、その後、遺産分割により、Bのものとなります。
 そして、ここからがポイントです。
 c土地は相続によりいったんCのものとなり、その後、遺産分割によりBのものとなる訳ですが、Cがc土地をDに譲渡したことにより、c土地がBとDに二重譲渡されたと考えます。

〈C持ち分:c土地〉



二重譲渡


 不動産の二重譲渡は、民法177条の規定により、第三者(事例だとD)の善意・悪意も関係なく、単純に早く登記をした方が勝ちます。
 したがいまして、事例2のDは登記をしていますので、c土地については、その所有権はDが取得します。
判決
 以上のように、判例では、C持ち分:c土地に関しましては、Dに救いの道を示したということです。逆にBは、B持ち分:b土地については登記がなくともDに対抗できますが、C持ち分:c土地に関しましては、先に登記をされてしまったDに対しては、もはや泣くしかありません。
 ということで結論。
 BはDに対して「甲土地の所有権の全部を私に返せ!」と主張しても、c土地に関しましては「私(D)が登記したから私のモノだ!」というDに対抗することができません。
 したがいまして、BがDから取り戻せるのは「B持ち分:b土地のみ」となります。

相続放棄者が相続財産を譲渡?

 続いては、共同相続人の相続放棄が絡んだケースを解説します。

事例3
Aが死亡し、A所有の甲土地をBとCが共同相続した。相続分は同一(半々)である。しかし、Cはすぐに相続放棄した。その後、Cは甲土地の全部につき自己名義の登記をした上、Dに甲土地を譲渡し、その移転登記をした。


 事例の前に、まず「相続放棄」について、簡単にご説明いたします。
 相続放棄とは、相続人としての地位そのものを放棄することです。相続人としての地位そのものを放棄するということは、そもそも最初から相続人ではなかったとみなされます。
 そして一度、相続放棄をして相続人ではなかったとみなされると、もう二度と相続人に戻ることはありません(「みなす」という言葉はそれぐらい強力なのだ。その後の反論も一切許さないのである)。
 したがって、相続放棄をした者は、もはや相続人ではないので、当然、相続人としてカウントされなくなります。
 なぜそんな制度があるの?
 相続は、死亡した人間の財産上の地位をまるごと引き継ぎます(包括承継)。
 財産上の地位をまるごと引き継ぐということは、プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産(負債)も、まとめて引き継ぐということを意味します。ですので、もし親が大借金を抱えて亡くなると、相続人となる子供は、親の作った大借金をそのまま丸ごと引き継ぐことになります。
 しかし、それでは相続人が困ってしまいますよね。それどころか、その借金があまりにも莫大なものだったとしたら、子々孫々まで延々とその借金を背負わされてしまい兼ねません。そこで「相続放棄」という制度があるのです。
 なお、プラスの財産しかない場合でも相続放棄することは可能です。実際、相続争いに巻き込まれるのは勘弁ということで、プラスの財産でも相続放棄するケースは多々あります。

 さて、それではここから、事例3について考えていきますが、今一度、事例の流れと状況を確認します。

A死亡

甲土地
BC共同相続(持ち分半分ずつ)

Cが相続放棄

甲土地の所有権全部
B単独所有


ところが

甲土地の所有権全部
C単独で自己名義登記

Dに譲渡

甲土地
Dが登記


 以上が事例の流れと状況です。
 それでは事例について本格的に見ていきましょう。
 Aの相続人はBとCです。甲土地はBとCに共同相続されます。
 しかし、すぐにCは相続放棄します。すると、Cは最初から相続人ではなかったとみなされ、甲土地は最初からBが一人で相続したことになります。そして、相続放棄の効果は絶対です。ですので、一度、相続放棄をしたCには、もはや甲土地の何もかもについてどうこうする余地は1ミリもありません。
 相続放棄をしたC完全な無権利者です。したがって、Cが相続放棄をするとこうなります。

〈甲土地〉

↓直接

(相続人としてのCの存在は最初からいなかったことになる)

 したがいまして、相続放棄をして、甲土地について最初から完全な無権利者となるCに、甲土地をDに譲渡することなどは当然できず、CD間の甲土地の譲渡完全に無効なもので、Dの登記も無効です。
 よってBは、登記を備えたDに対して、登記なくとも甲土地の所有権の全部について対抗できます。つまり、Bは甲土地について登記をしていなくても、登記をしたDに対して「甲土地の所有権全部、私に返せ!」と主張できます。
 事例3の場合、Dが甲土地の所有権争いに勝つ可能性は全くありません。

遺言による相続の場合
紙とペン
 最後に、遺言による相続のケースを解説します。

事例4
Aが死亡した。そしてAの遺言により、A所有の甲土地をBが持ち分3分の1、Cが持ち分3分の2で相続した。その後、Cは甲土地の全部につき自己名義の登記をした上、Dに甲土地を譲渡し、その移転登記をした。


 これは、遺言により相続分が指定されたケースです。
 そして、Cが遺言による指定を無視して、甲土地の所有権全部について自己名義の登記をした上、Dに譲渡して移転登記もした、というものです。
 さて、この事例で、Dは甲土地を取得できるのでしょうか?
 結論。Dは甲土地を取得できます。ただし、Dが取得できる甲土地は、3分の2のC持ち分のみです(論理・考え方は遺産分割の事例2と一緒です)。
 Bの持ち分は?
 甲土地の3分の1のB持ち分については、Dが取得することはあり得ません。なぜなら、B持ち分については、Cがそもそも完全な無権利者だからです。完全な無権利者のCから、B持ち分がDへ譲渡されることがあり得ないんです。つまり、CD間のB持ち分の譲渡は無効です。

〈B持ち分〉

↓相続

(Cの入る余地なし/Dの登記は無効)

 なお、Bは登記がなくとも、B持ち分については、Dに対抗できます。よってDは、B持ち分については、登記のないBから「返せ!」と迫られたら、大人しく返還しなければなりません。
 
事例5
Aが死亡した。そしてAの遺言により、A所有の甲土地をBが持ち分3分の1、Cが持ち分3分の2で相続した。その後、Cは相続放棄した。ところが、Cは甲土地の全部につき自己名義の登記をした上、Dに甲土地を譲渡し、その移転登記をした。


 これも、遺言により相続分が指定されたケースで、相続放棄をしたCが、甲土地の所有権全部につき自己名義の登記をした上、Dに譲渡しその移転登記もした、というものです。
 さて、ではこの事例5で、Dは甲土地を取得できるでしょうか?
 結論。Dは甲土地を取得することはできません。論理・考え方は相続放棄の事例3と一緒です。
 Cの持ち分は?
 はい。DはCの持ち分すら取得することはできません。なぜなら、Cが相続放棄したということは、Cは最初から相続人ではなかったとみなされます。Cが相続人ではなかったとみなされると、最初から甲土地はB1人で相続したことになります。それは遺言による相続分の指定があろうと関係ありません。

〈甲土地〉

↓相続

(相続人としてのCの存在は最初からいなかったことになる)

 相続放棄の効果は絶対です。一度、相続放棄をしたCが、再び相続人に戻ることもありません。相続放棄したけどやっぱナシ!とはできないのです。
 したがいまして、相続放棄をしたCは、もはや相続人ではないので、甲土地に関しては全くの無権利者です。全くの無権利者CからDに甲土地が譲渡されることはあり得ません。よってCD間の甲土地の譲渡は無効であり、Dの登記も無効です。
 ということなので、Bは登記がなくとも、Dに対し甲土地の全部について対抗できます。つまり、Bは登記をしていなくとも、(無効な)登記をしたDに対し「甲土地の所有権全部返せコラ!」と主張することができます。
 事例5でDが勝つ可能性はゼロです。それだけ、Cの相続放棄の効果が絶対ということなのです。

カテゴリ別項目一覧

▼各項目のページへのリンクになっています。

共有~持分権とは/共有物の使用方法&変更&管理&保存について/解除権の不可分性の例外とは/持分権の主張、共有物の明渡し請求等について
共有物の分割~3通りの分割協議の基本/共有物分割協議の第三者参加&協議の解除とは
共有物の管理費用の立替~共有者が負担を履行しない場合は?/共有者と対抗の問題について
共有物の持分放棄&譲渡とは/共有者の死亡とその持分が他の共有者に帰属するまでの流れ
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共有~持分権とは/共有物の使用方法&変更&管理&保存について/解除権の不可分性の例外とは/持分権の主張、共有物の明渡し請求等について

▼この記事でわかること
共有の基本
持分権とは
共有物全体の問題「共有物の使用方法・変更・管理」について
共有物の保存、解除権の不可分性の例外
共有の補足~持分権の主張、共有物の明渡し請求等
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者でもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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共有の基本

 1つの物を、1人ではなく複数人で所有することを共有と言います。

共有関係が生まれるとき

 共有関係は、法律の規定によって生じます。
 また、当事者の合意によっても生じます。
 法律の規定によって生じる場合とは、例えば相続です。地主が死亡し、その地主の相続人が二人いれば、法律の規定により、問答無用にその土地は相続人二人の共有になります。その後、相続人の相続放棄や遺産分割協議により相続の内容が変わる可能性はありますが、まずは法律の規定によって、そのようになるのです(遺言による相続についてはここでは省きます)。
 当事者の合意によって生じる場合とは、例えば、夫婦で1000万円ずつ出し合って不動産を購入するような場合です。
 このように、共有関係は、法律の規定による場合と、当事者の合意による場合とがあります。

共有は一物一権主義の例外

 物に対する権利である物権の世界では、一物一権主義というものがあります。「一つの物には一つの物権」という原則です(排他的支配権)。
 そして、共有はその「一物一権主義の例外」とも言われます。なぜなら、一つの物を複数人で共有するからです。
 ただ、共有の場合でも、共有者はそれぞれ持分権というものがあり、各持ち分に対しては一つの持分権しか存在しません。
 そして、持分権は各自で自由に処分できます。例えば、一つの土地をAとBが相続すると、その土地はAとBの共有物になり、AとBはそれぞれ各持ち分に対して持分権を持ちます。このとき、Aが自分の持ち分を売ったりするのは自由です。もちろん、Bが自分の持ち分を売ったりするのも自由です。ただし、AがBの持ち分を売ったりすることはできません。
 ということなので、持分権は、各々の各持ち分に対しては、所有権と同じようなものなのです。そう考えていくと、共有も、一物一権主義にしっかりと則っていると言えます。

持分権

 共有について考える場合は、共有物全体の問題なのか、各持分権の問題なのか、そこを見極めた上で考えていかないと、よく分からなくなってしまいます。ですので「共有物全体」と「各持分権」とを分けた上で、まずは持分権から解説して参ります。
 さて、先ほど持分権は、各持ち分については所有権と同じようなものだとご説明いたしました。実際共有持分権の法的性質は所有権である」と説明されます。その共有持分権の法的性質を表す典型例で、かつ現実にもよくあるのは、分譲マンションです。
マンション
~分譲マンションの性質を考えれば共有持分権の法的性質が分かる?~

 冒頭に、共有のパターンとして相続による共有と夫婦の共有の例を挙げましたが、日常的にもっとも起こっている共有のケースは何か?となると、それはおそらく、分譲マンションのケースになるでしょう。
 分譲マンションでの所有は区分所有とも言われ、その所有権は区分所有権とも言われます。
 分譲マンションにおいてその建物の各区分は、それぞれ別の所有者が存在し、そこには個々独立の所有権が成立しています(一つのマンションに複数の所有権が独立しながら存在、つまり、一つのマンションに複数のオーナーが存在する)。
 じゃあマンションで何を共有しているの?
 分譲マンションにおいて、共有になっているのは土地です。土地というのは、そのマンションが建っている敷地です。
 つまり、ある土地に分譲マンションが建っていて、そのマンションが100の専有部分(わかりやすく言えば100戸)に分かれていれば、その土地には100の持分権が存在することになります。もしあなたがその分譲マンションのオーナーだったとすると、通常の場合、あなたが所有しているのは、そのマンションの所有権(区分所有権)と、その土地の100分の1の持分権です。そして、あなたがそのマンション(所有権)を誰かに売るのは自由ですよね。そして、あなたがそのマンション(所有権)を誰かに売れば、当然それに伴ってその持分権も一緒に売られることになりますが、その際、他の99人のオーナーの承諾はいらないですよね。
 これが「共有持分権の法的性質は所有権」の具体例と説明になります。共有持分権の法的性質、そのイメージは掴んでいただけたかと存じます。

共有物全体について

 続いては、共有物全体の問題「共有物の使用方法・変更・管理」について、解説して参ります。

共有物の使用
車
 例えば、1台の車をA・B・Cの3人で共有しているとします。そしてA・B・Cの持ち分はそれぞれ3分の1ずつです。この場合、3人の共有物である車の使用方法は一体どうなるのでしょうか?

(共有物の使用)
民法249条
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。


 共有物の使用について、民法では上記のような規定を置いています。
 しかし、どうでしょう。正直これだとよくわからないですよね。まさか、車(共有物)を使用するときは常に「ABC3人一緒に仲良くドライブ♫」という訳にもいかないでしょう。
 結局、車(共有物)の使用方法はどうなるの?
 これについては、結局、A・B・Cの3人の協議(話し合い)で決めることになります。
 したがって、共有物の使用方法については一概には言えず、協議による決定内容によって変わってきます。

共有物の変更

 続いて、共有物の車全部を第三者に売る場合について考えて参ります。
 これについて、民法では下記の規定を置いています。

(共有物の変更)
民法251条
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。


「変更」という言葉がわかりづらいと思いますが、共有物の売買は、共有物の「変更」にあたります(農地転用などの地目変更もこの「変更」に含まれます)。
 したがって、共有物の車の売買は、民法251条(共有物の変更)の規定が適用されます。
 また、条文中の「他の共有者の同意を得なければ」というのは、共有者全員の意思表示が必要という意味です。
 ということなので、3人の共有物である車全部を売る場合は、ABC3人全員の「売る」という意思表示が必要になります。
 3人全員が売るという意思を示さない限りは、売ることはできません。

共有物の管理

 続いて、共有物の車を第三者に賃貸する(貸す)場合について、考えて参ります。
 これについて、民法では下記の規定を置いています。

(共有物の管理)
民法252条
共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。


 条文中の「管理」という言葉には、共有物の賃貸も含まれます。ですので、共有物を賃貸するには、各共有者の持分の価格に従って、その過半数で決定するということです。株主総会の決議に似てますね。
 したがって、共有物の車を第三者に賃貸する場合は、ABCの持分はそれぞれ3分の1ずつですので、3人中2人の賛成で車の賃貸をすることが可能です。

共有物の保存、解除権の不可分性の例外

 共有物を売る場合、共有者全員の意思表示か必要です(共有物の変更)。
 共有物を賃貸する場合、共有者の持分の価格に従い、その過半数の賛成が必要です(共有物の管理)。
 では、共有物が不法占拠されていた場合は、一体どうなるのでしょうか?

共有物の保存

 例えば、一台の車をA・B・Cの3人で共有していて、持ち分はそれぞれ3分の1だった場合に、その共有物である車が第三者に不法占拠されたとき、共有者の意思は、どのように決められるのでしょうか?

民法249条
保存行為は、各共有者がすることができる。


「保存行為」という言葉がピンと来づらいと思いますが不法占拠されている物を取り戻すこと」は保存行為になります(ちなみに自動車の修理なども保存行為です)。
「各共有者がすることができる」というのは、各共有者が1人でできるという意味です。つまり、共有物が不法占拠された場合、各共有者がそれぞれ単独で、共有物全体についての返還請求権を行使することができます。
 したがいまして、共有物の車が第三者に不法占拠された場合、ABCの3人は、それぞれが単独で、不法占拠者に対して返還請求をすることができます。

【保存行為の補足】
 なお、保存行為には次のようなものもあります。
・共有物への妨害排除請求
 例→共有地(土地)上の不法建築物の撤去請求など
・不法な登記名義の抹消
 例→すでに消滅した抵当権の抹消登記請求など

共有物の賃貸借契約の解除

 先ほども解説いたしましたが、共有物の賃貸を行うには、各持分の価格に従い、その過半数の賛成が必要です。3人でそれぞれ3分の1ずつの持分で共有している共有物を賃貸するなら、2人以上の賛成が必要です。
 さて、それでは、賃貸している共有物の賃貸借契約を解除する場合は、どうなるのでしょうか?
 共有物の賃貸借契約の解除は、民法252条(共有物の管理)に含まれます。
 つまり、共有物の賃貸借契約を解除する場合は、共有物を賃貸する場合と一緒で、各持分の価格に従い、その過半数の賛成が必要です。例えば、3人で持分3分の1ずつで不動産を共有していて、その不動産を賃貸している場合、その不動産の賃貸借契約を解除する際は、2人以上の賛成が必要ということです。

解除権の不可分性の例外

 本来、解除権は分けることができません(解除権の不可分性)。それは下記の条文で規定されています。

(解除権の不可分性)
民法544条
当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる。


 なぜ民法で、このように解除権の不可分性を定めているかの理由は、一部の者のみの解除を認めるとその後の法律関係が複雑になるので、その事態を避けるため、とされています。
 しかし、共有物の賃貸借契約の解除については、その例外なのです。この点は試験ではよく問われるものなので、資格試験等で民法の学習をされている方は、覚えておいてください。
ここポイント
 なお、共有物を売却した後に、売買契約を解除する場合は、共有者全員の合意が必要になります。こちらは同じ解除でも、売買契約の解除なので「共有物の管理」ではなく「共有物の変更」に該当し、共有者全員の合意が必要になるということです。
 この点も併せて覚えておいてください。

共有の補足~持分権の主張、共有物の明渡し請求等

持分権の主張

 共有者が、その持分権を処分・主張するのは自由です。
 また、持分権の取得時効を主張することもできます(つまり持分権を時効取得することも可能ということ)。その場合は他の共有者は無関係です。
  さて、持分権の処分といえば売買や担保設定がありますが、持分権の主張というと、一体どのような場合があるのでしょうか?

【持分確認請求権】
 これは、他の共有者または第三者に対して、自己の持分権の確認を求める権利です。

【持分権の登記請求】
 これは、他の共有者または第三者に対して、自己の持分権の登記を求める権利です。

【持分権による時効の中段】

 共有物が第三者に占有されていて時効取得されそうな場合に、共有者は「自己の持分のみ」の時効を中断することができます。
「自己の持分のみ」ということは、その中断の効果他の共有者の持分には及びません。例えば、ABCの共有物が占有されていて、Aの持分の時効が中断しても、BCの持分の時効は中断しないということです。もし共有物全体、つまり共有物の所有権全体について時効の中段をするには、共有者全員(ABC三人全員)で請求しなければなりません。

【持分権による損害賠償】

 共有物の侵害につき、持分に応じた損害賠償請求ができます。
 ただし、あくまで各共有者が自己の持分に応じた損害賠償請求をできるのであって、他の共有者の持分の分まで賠償請求することはできません。
 なお、損害賠償請求は金銭での賠償を求めるものですが、金銭債権は当然に分割することが可能です。ですので、持分に応じて分割した賠償請求ができるのです。

共有物の占有の明渡し請求

 共有物の使用方法は共有者間の協議によって決められます。
 ところが、なんと、協議によらないで一人の共有者が勝手に共有物を占有してしまっていた場合、他の共有者は、勝手に一人で占有している共有者に対して「勝手に何やってるんだ!明け渡せ!」と、当然に明渡し請求をすることはできません。
 これについては「なんで?」となりますよね、ちょっと納得し難いですよね。しかし、これは判例でこのようになっています。そして、ここは試験などで問われやすい箇所です。したがって、資格試験等で民法の学習をしていらっしゃる方は、納得し難いかとは思いますが、このことは強引に覚えてしまってください。
 なお、このような問題を解決するには「共有物の分割」を求めていくことになるのですが、それについては別途解説いたします。

【持分の推定規定】
 各共有者の持分が不明な場合は、民法250条の規定により、その持分は相等しいものと推定されます。ただし、これは「みなす」ではなく「推定」なので、後になって各持分が変わる可能性はあります(推定の反証可能性)。

【準共有】
 所有権以外の財産を共有することを準共有と言います。例えば、抵当権の準共有、地上権の準共有、といったものがあります。

共有物の分割~3通りの分割協議の基本/共有物分割協議の第三者参加&協議の解除とは

▼この記事でわかること
3通りの分割
共有者間の協議が調わなかった場合(協議をすることができない場合)
共有物分割協議への第三者の参加
共有物分割請求ができない場合
共有物分割協議の解除
遺産分割協議の解除
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者でもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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共有物の分割

 共有は、一つの物には一つの所有権(物権)という民法の一物一権主義の例外と言われます。
 例外ということは、民法の原則としては、あくまで一物一権ということです。なぜなら、一つの物を複数人が共有するというのは、権利関係が複雑になりがちだからです。民法としては、そのような共有状態をあまり望ましく思わないのです。
 そこで、民法は、そのような共有状態を解消する手段を規定しました。それは、共有物の分割請求です(分割について後で詳しく解説します)。
 各共有者は、いつでも、分割請求をすることができます。また、共有物分割請求権は消滅時効にもかかりません。
 したがって、各共有者は、いくら時間が経過しても、いつでも、分割請求ができます。

3通りの分割
三本指
 分割には、3通りの方法が考えられます。

1【現物分割】
 これは言葉のとおりで、共有物を割る方法です。
 例えば、ABCの3者の共有の土地があった場合に、その土地を3つに分割して、各区画をABCそれぞれ1人の単独所有にします。

2【価格賠償】
 これは、共有物を1人の所有物にして、あとはお金で解決する方法です。
 例えば、車がABCの3者共有物だった場合に、分割しようにも、土地のように現物を分割することはできません。
 このような場合に、共有物の車をAの単有にして、BCにはしかるべき価格(金銭)を支払って解決します。

3【代金分割】
 これは、共有物を売却して、その売却代金を共有者間で分け合う方法です。
 例えば、車がABCの3者共有物だった場合、その車を売って、売って得たお金をABCの3者で分け合います(土地のように現物分割ができるものでも、この代金分割の方法で、土地を売却してその売却代金を共有者で分け合うことは可能)。

 これら3つの手段のどれかをとって、共有物の分割をすることができます。
 こうした共有物の分割は、共有者全員の協議で行います。

共有者間の協議が調わなかった場合(協議をすることができない場合)

 必ずしも、共有物の分割について、共有者間の協議が整うとは限りません。また、そもそも協議をすることができない場合もあるでしょう。
 では、もし共有者間の協議が整わなかった場合や、そもそも協議をすることができない場合は、一体どうすればいいのでしょうか?

(裁判による共有物の分割)
民法258条
1項 共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2項 前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。


 上記の規定により、共有者間の協議が整わないときは、裁判所に分割を請求することができます。

裁判による分割は現物分割が原則
裁判所
 民法258条2項を読むとわかりますが、裁判による共有物の分割は、現物分割が原則であり、例外的に競売による代金分割の方法をとります。
 あれ?価格賠償は?
 そうなんです。実は民法では、裁判による共有物の分割について、価格賠償の方法は想定していないのです。
 そして、そのようになっていることには理由があります。その理由はこうです。例えば、ABCの三人の共有物について、裁判所が「共有物をAに取得させ、AはBCに対し価格の賠償をせよ」と判決を下したとします。しかし、現実にAが価格の賠償をしなかったとき、裁判所としてはその責任を負えないという事情があるのです。ですので、民法の規定上、裁判による共有物の分割に、価格賠償の方法が想定されていないのです。
 ただし、そうした懸念がないなど、特段の事情がある場合は、裁判による分割でも価格賠償をすることができるとした判例があります。
 したがいまして、裁判による共有物の分割は、原則は現物分割で、例外的に代金分割の方法をとり、民法の規定上、価格賠償は想定していません。ただし、特段の事情がある場合は、価格賠償の方法をとることもできる、ということになります。

共有物分割協議への第三者の参加

 共有物分割の協議は、共有者間で行うものです。
 しかし、民法260条1項の規定により、共有物について権利を有する者と各共有者の債権者は、協議に参加することができます。

(共有物の分割への参加)
民法260条
共有物について権利を有する者及び各共有者の債権者は、自己の費用で、分割に参加することができる。


※共有物について権利を有する者とは
→共有物が土地の場合、その土地の抵当権者(担保物権)や地上権者(用益物権)
※共有者の債権者とは
→共有者に金銭等を貸付している債権者(一般債権者)や、共有物の賃借人(共有物が土地なら、その土地の借地人)

 この民法260条1項の規定により、 共有物について権利を有する者各共有者の債権者は、協議に参加することができます。
 しかし!この規定、実は、実際にはあまり役に立たないザル規定なんです。
 その理由は以下です。

・協議に参加する費用は権利者および債権者側が負担
 例えば、東京で行う共有物分割協議に北海道に住む権利者が参加するには、その行き帰りの旅費は全て自己負担ということ。
 これはイタイ!
・共有者側に権利者および債権者に対する告知義務がない
 つまり、権利者および債権者にはヒミツにして、こっそり勝手に共有物分割協議ができてしまうということ。
 これだけでも役立たずのザル規定なのは明白じゃね!?
・協議に参加しても権利者および債権者側の意見に拘束力はない
 権利者および債権者が協議に参加して意見を述べたところで、共有者側はその意見をシカトしてもまったく問題ないということ。
 意味なーいじゃーん!

 以上のことから、民法260条1項の第三者の共有物分割協議への参加についての規定はほとんど役立たずなのです。
 ただ、決してその規定がまったく意味がないという訳ではありません。もし第三者が協議への参加請求をしたのにもかかわらず、共有者側がその参加請求を無視して勝手に分割してしまったら、共有者側はその分割を参加請求者に対して対抗できなくなる、という法的効果があります。
 しかし、これも結局、参加請求者にはしっかりと協議に参加させた上で、その意見をシカトすれば良いだけのことなので、やはり役立たずのザル規定なのは否めないでしょう。

共有物分割請求ができない場合
バツ 女性
 当然、共有物だからといって何でもかんでも分割請求できる訳ではありません。
 次に挙げるものは、共有物の分割請求ができせん。

・境界線上の境界標など(民法229条の共有物)
 境界標とは、土地の境界を示す標のことです。要するに「境界標からこっちはAさんの土地。境界標からあっちはBさんの土地」というものです。
 この境界標は、分割することはできません。なぜなら、分割してしまったら境界標の意味がなくなるからです。
・区分建物の敷地利用権
 これは分譲マンションの専有部分の所有権(区分所有権)と一体になっている土地の持分権(敷地利用権)です。それを分割するというのは訳の分からない話で、そんなことは当然できません。
・区分建物の共有部分
 これはマンションのエレベーターや階段部分のことです。
 当たり前ですが、そんなものが分割できる訳ないですよね。

共有物不分割特約

 各共有者はいつでも共有物の分割請求をすることができますが、民法256条1項但し書きの規定により、共有物を分割しないという契約を共有者間ですることができます。
 ただし、分割しない期間は5年を超えてはなりません。分割しない期間を6年間と定めたら、その定めは無効になります。分割しない期間は5年以内でなければ有効になりません。
 なお、この共有物不分割特約は登記事項です。その旨の登記をすることで、その不分割を第三者に対抗することができます。

共有物分割協議の解除

 共有物分割協議により共有関係は終了します。現物分割であれば、各共有者は分割された物の単独の所有者になります。
 ところで、もし共有物分割協議の内容に、当事者が意図しないような不公平が発生してしまった場合、一体どうなるのでしょうか?
 当事者が意図しないような不公平が発生した場合とは、例えば、共有物が土地で、その土地を各共有者ごとに等分に分割したら、そのうちの一区画だけが地盤が弱くて、財産価値が他の区画よりも著しく劣ることが後から判明したようなケースです。
 そのようなケースで、財産価値が著しく劣る区画の所有者になってしまった者が「こんな分割協議はおかしい!この協議はナシだ!」と、分割協議を解除して、協議自体をなかったことにできるでしょうか?
 結論。共有物分割協議の解除は可能です。その根拠となる規定はこちらになります。

(分割における共有者の担保責任)
民法261条
各共有者は、他の共有者が分割によって取得した物について、売主と同じく、その持分に応じて担保の責任を負う。


 この条文だけだとちょっとわかりづらいですが、要するに、共有者は分割した物について「売主の担保責任」と同じ責任を負うということです。
「売主の担保責任」は、売買した物について、場合によって買主から売主に対する損害賠償請求や代金減額請求や契約解除を認める規定です(売主の担保責任についてはこちらの記事をご参照ください)。
 したがって、共有物分割協議の解除は可能なのです。
判決
 ただし!裁判により共有物の分割が行われた場合は、その解除はできません。裁判による判決を、一般私人の一方的な意思表示で「なかったこと」にできてしまったら、世の中の秩序が乱れておかしなことになってしまいますよね。そんなことは日本のような法治国家ではあり得ません。

遺産分割協議の解除

 共有物の分割に似た制度に、遺産分割があります(遺産分割についてはこちらの記事もご参照ください)。
 そして遺産分割の場合も、遺産分割協議というものがあります。
 ところで、遺産分割協議の解除はできるのでしょうか?
 遺産分割協議後にもめそうなケースとしては、夫が亡くなり、相続人が妻と息子二人で、長男には母の介護を条件として多めの財産を与えていたのに、長男がその義務を果たさなかったような場合です。このような場合に、遺産分割協議を解除することができるのか?
 結論。遺産分割協議の解除はできません。なぜなら、それができてしまうと法的安定性が損なわれるからです。
 というのは、遺産分割は、特定の資産を分割する共有物分割よりも、分割する資産の規模がずっと大きいことの方が多いでしょう。それだけ大きい資産となると、そこに絡む第三者の存在などの法律問題、そのややこしさも、特定の資産の共有物分割の比ではありません。
 ですので、遺産分割協議が解除されてなかったことになってしまうと、ややこしい法律問題が一気に噴出してしまうのです。それはまさしく、法的安定性を損なうことになります。
 したがって、遺産分割協議の解除はできないのです。
 なお、遺産分割協議の合意解除可能です。
 合意解除とは、相続人間で「この遺産分割協議はなかったことにしよう」とする新たな契約です。こういった形の解除であれば可能になります。

【補足】

 ある財産の分割が、共有物分割なのか遺産分割なのかを見極める基準として、両分割には以下の違いがあります。

共有物分割→地方裁判所の管轄
遺産分割→家庭裁判所の管轄

 共有物分割の裁判であれば地方裁判所を利用することになり、遺産分割であれば家庭裁判所を利用することになります。

共有物の管理費用の立替~共有者が負担を履行しない場合は?/共有者と対抗の問題について

▼この記事でわかること
超基本と共有者が負担を履行しない場合
他の共有者の管理費用を立て替えた場合
共有者と対抗の問題
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者でもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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共有物の管理費用の立替

 共有物の管理費用などの負担は、どうなるのでしょうか?(共有の基本はこちらをご覧ください。)

(共有物に関する負担)
民法253条1項
各共有者は、その持分に応じ管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。


 条文だけではイメージしづらいと思いますので、具体例を挙げます。
 共有物が建物や土地などの不動産の場合、その固定資産税修繕費用管理費用は、各共有者は各自の持分に応じて負担を負います。

共有者が負担を履行しない場合

 例えば、建物や土地などの不動産の共有者の一人が、自己の負担分の費用を支払わない場合、どうなるのでしょうか?
 もし共有者が一年以内にその負担義務を履行しない場合は、他の共有者は、相当の賞金を支払ってその持分を取得することができます
「相当の賞金」という言葉が一瞬わかりづらくさせますが これはつまり、不動産の共有者の一人が一年以内に自己の負担分の費用を支払わないような場合は、その共有者の持分を他の共有者が、事実上、買い取ってしまうことができ、その者との共有関係を解消してしまうことができる、ということです。

他の共有者の管理費用を立て替えた場合

 さて、ここからがいよいよ今回の本題です。
 例えば、AとBが不動産を共有していて、AがBの負担すべき管理費用を立て替えた場合、どうなるでしょうか?
 この場合、当然にAはBに対して立て替えた費用を請求できます。
 では、Bがその持分権をCに売却してしまった場合はどうなるのでしょうか?
 この場合、AはCに対して、その立て替えた費用の請求ができます。
 その理由は、Bから持分権を譲渡されたCは、Aの立替金の恩恵を受けていると考えられるからです(要はAが費用を立て替えた事でCが得したんじゃね?ということ)。
 なお、今ご説明した、AがCに対して立替金を請求する権利ですが、公示はされません。公示されないということの意味は、つまり、誰にでも見える形で表に出ないということです。ですので、もしCがその事実を知らなかったのなら、不測の損害を受けることになります。
 それって制度的な不備じゃね?
 確かにそうなのですが、実はCがその事実を知らなかったというような状況は、ちょっと考えにくいです。
 というのは、Bがその共有不動産の持分権をCに売却する際、BC間の売買契約の間に入る不動産業者が、その管理費用の滞納状況(Bの負担すべき管理費用をAが立て替えたままの状況)を「重要事項説明」の一項目としてCに説明しているはずだからです。
 そして、この不動産業者の「重要事項説明」は法的な義務です。つまり、法的義務として実務上も必須な重要事項説明という形で、制度的な不備が補完されているのです。

【参考】
(重要事項の説明等)
宅地建物取引業法35条
宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。

 上記の条文中の「次に掲げる事項」の中に、先ほど解説した「重要事項説明」が含まれます。
説明
 したがって、上記条文の規定に基づいて、不動産業者は管理費用の滞納状況を宅建士に「重要事項説明」の一項目として説明させなければなりません。

共有の補足:共有者と対抗の問題

 共有者と対抗の問題というのは、共有について考えるときの主要な問題からは外れます。
 したがいまして、ここからの解説は、共有についての理解を深めるための補足的なものとして、頭に入れておいていただければと存じます。
 まずは事例をご覧ください。

事例
AとBとCは、甲不動産を共有している。Cはその持分をDに譲渡したが、その旨の登記はしていない。


 さて、この事例でAとBは、Cの負担すべき甲不動産の管理費用を、誰に請求すべきでしょうか?
 結論。AとBが甲不動産の管理費用を請求すべき相手はになります。なぜなら、Dが登記をしていない以上、登記名義人はあくまでC(登記上の共有者はあくまでC)だからです。
 なお、登記をしていないDは、AとBに対して、甲不動産の共有者の1人となったことを対抗できません。これも先ほどと理由は一緒で、Dが登記をしていない以上、登記名義人はあくまでC(登記上の共有者はあくまでC)だからです。

補足

 実は、本来の不動産登記の対抗問題の原則から考えると、AとBに対し、Dが甲不動産の共有者の1人となったことを、登記をしていないことを理由に対抗できないとするのは、少し変に感じます。
 というのは、A・BとDの関係は、そもそも登記の有無が問題になるような対抗関係にあるのでしょうか?

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
民法177条
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。


 この条文により、不動産の所有権(物権)争いは「早く登記した者勝ち」になります。
 しかし、これは1つの不動産を奪い合う場合です。今回の事例は、1つの不動産を奪い合っている訳ではありません。1つの不動産を持分ごとに所有し合っているだけです。対抗関係でなく共有関係なのです。AとBは、ただ管理費用を請求したいだけなのです。
 こう考えていくと、今回の事例には民法177条は当てはまらないはずで、Dは登記がなくとも甲不動産の共有者の1人であることを主張できるはずです。
 しかし、判例では、今回の事例のようなケースでも、民法177条の規定が適用し、登記が必要だと考えます。
 判例は、登記を要する物権変動には制限がないと考えます(無制限説)。
「登記を要する物権変動には制限がない」と考えるということは、不動産の所有権が移転するようなケースでは、それが通常の対抗関係になるようなケースだけでなく、共有関係のようなケースでも、そこに所有権移転といった物権変動があれば、民法177条の範囲内と考えるということです。
 したがって、登記がないDは甲不動産の共有者の1人であることをAとBに対抗できず、AとBが管理費用を請求する相手は登記名義人であるCとなるのです。
 理屈としては少しややこしく感じるかもしれませんが、以上が結論に至るまでの論理になります。

共有物の持分放棄&譲渡とは/共有者の死亡とその持分が他の共有者に帰属するまでの流れ

▼この記事でわかること
共有物の持分放棄・持分譲渡の基本
持分放棄後に持分譲渡?
共有者が死亡した場合
相続人なく共有者が死亡してからその持分が他の共有者に帰属するまで
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者でもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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共有物の持分放棄・持分譲渡

 共有物の持分は放棄することができます。
 共有物の持分を放棄するとは、共有物の持分権を手放して、その共有物の共有者ではなくなることです。
 これが共有物の持分放棄です。
 では、共有物の持分放棄をすると、放棄された持分権はどうなるのでしょうか?

(持分の放棄及び共有者の死亡)
民法255条
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する


 共有者の1人が持分放棄をすると、その持分は他の共有者に帰属します。他の共有者に帰属するとは、他の共有者の持分に加わるという意味です。
 それでは、ここからは事例とともに解説して参ります。

事例1
AとBとCは、甲不動産を共有している。各自の持分は3分の1ずつである。その後、Cはその持分を放棄した。


 これは、AとBとCの持分は3分の1ずつで、Cが持分放棄をした、という事例です。
 共有者の1人が持分放棄をすると、その持分は他の共有者に帰属します。つまり、Cの放棄した持分はAとBに帰属します。
 このとき、放棄された持分が他の共有者に帰属する割合は、人数で割るわけではなく、他の共有者が元々持っている持分の割合に応じて決定します。
 すると、AとBの持分の割合は3分の1ずつで一緒です。ですので、Cの放棄した持分は等分にAとBに分かれて帰属します(事例1はAとBの持分割合が一緒なので、結果的には人数で割るのと同じになる) 。

A持分  B持分  C持分
3分の1 3分の1 3分の1

[C持分放棄]
AとBの持分割合に応じてAとBに帰属

C持分
3分の1÷2=6分の1→Aに帰属
           →Bに帰属
            
結果

A持分
3分の1+6分の1
B持分
3分の1+6分の1

A持分  B持分
2分の1 2分の1

 したがいまして、放棄されたCの持分はAとBの持分に加わり、その結果、甲不動産はAとBが持分半分ずつでの共有になります。

 続いて、次のようなケースではどうなるでしょう?

事例2
AとBとCは、甲不動産を共有している。各持分は、Aが6分の1、Bが6分の2、Cが6分の3である。その後、Cがその持分を放棄した。


 この事例2も、ABCの三者共有となっていますが、各持分が違っています。
 さて、Cが持分放棄したことにより、その持分6分の3はAとBに帰属することになりますが、その割合はどうなるのでしょうか?
 甲不動産の持分は、Aが6分の1、Bが6分の2です。ですので、その比率1対2になります。
 ということは、C持分6分の3がその比率に応じて、Aに3分の1、Bに3分の2、と分かれて帰属します。

A持分  B持分  C持分
6分の1 6分の2 6分の3

[C持分6分の3放棄]
AとBへその持分割合(比率)に応じて帰属

Aに帰属する持分
6分の3×3分の1=18分の3
Bに帰属する持分
6分の3×3分の2=18分の6

 したがいまして、Cの持分放棄により、Aの持分とBの持分は次のようになります。

Aの持分
6分の1(元々の持分)+18分の3=18分の6
Bの持分
6分の2(元々の持分)+18分の6=18分の12

ということは

Aの持分は18分の6=3分の1
Bの持分は18分の12=3分の2

となる。

持分放棄後に持分譲渡

 共有者の各持分は放棄することができますが、譲渡することもできます。

事例3
AとBとCは、甲不動産を共有している。各自の持分は3分の1ずつである。その後、Cはその持分を放棄した。さらにCは、その放棄した持分をDに譲渡し、その旨の登記をした。


 さて、この事例3で、Dは譲渡された持分を取得することができるでしょうか?
 結論。登記を備えたDは、譲渡された持分権を取得します。
 したがいまして、甲不動産はABDの共有になり、Cの持分がABに帰属することはありません。
 Dが登記をしていなかったら?
 登記のないDは、譲渡された持分を取得することはできません。
 したがって、Dが登記をしなければ、Cの持分はAとBに帰属することになり、Dが甲不動産の共有者になることはありません。
ここがポイント女性
 ここでひとつ注意点です。
 相続放棄した者が、相続放棄後に、相続した不動産を譲渡した場合は、結果は全く違います。
 相続放棄の効果は絶対なので、相続放棄後に相続財産を譲渡することは完全に不可能です。譲受人が登記をしていようとそんなものは無効です。この点は、(共有の)持分放棄と相続放棄でごっちゃにならないようご注意ください(相続放棄について詳しくはこちらの記事をご参照ください)。

共有者の死亡

 共有者が死亡すると、その持分は相続人に相続されます。
 例えば、ABが甲不動産を共有していて、Bが死亡します。そして、Bの相続人がCとDだった場合、Bの持分はCとDに相続されます。その結果、甲不動産はA・C・Dの共有になります。
 さて、では死亡した共有者に相続人がいなかった場合、どうなるのでしょうか?
 その場合、死亡した共有者の特別縁故者に、その持分は相続されます(特別縁故者等、この辺りの問題は相続分野で改めて詳しく解説します)。
 それでは、死亡した共有者に相続人がなく、特別縁故者もいなかった場合は、どうなるのでしょうか?
 その場合、死亡した共有者の持分は他の共有者に帰属します。そして、そうなった場合、共有者が持分放棄をしたケースと考え方はまったく一緒です。

事例4
AとBとCは、甲不動産を共有している。各持分は、Aが6分の1、Bが6分の2、Cが6分の3である。その後、Aが死亡した。なお、Aには相続人も特別縁故者もいない。


 共有者が持分放棄をした場合と考え方が全く一緒ということは、この事例4のAが相続人なく死亡したケースは、Aが持分放棄をした場合と、考え方も結論も同じになるということです。
 じゃあどうなるん?
 死亡した共有者の持分は、他の共有者に、各自の持分割合(比率)に応じて帰属します。
 Bの持分は6分の2、Cの持分は6分の3です。ということは、BCの持分割合の比率2対3なので、死亡したAの持分6分の1は、Bに5分の2、Cに5分の3の割合で帰属することになります。

A持分6分の1
BCにその持分割合(比率)に応じて帰属

Bに帰属する持分
6分の1×5分の2=30分の2
Cに帰属する持分
6分の1×5分の3=30分の3

 したがいまして、Aが死亡して、Bの持分とCの持分は次のようになります。

Bの持分
6分の2(元々の持分)+30分の2=30分の12
Cの持分
6分の3(元々の持分)+30分の3=30分の18

ということは

Aの持分は30分の12=5分の2
Bの持分は30分の18=5分の3

となる。

相続人なく共有者が死亡してからその持分が他の共有者に帰属するまで
講師とホワイトボード
 共有者の1人が死亡すると、その持分は相続人に相続され、相続人がいないと、特別縁故者に相続され、特別縁故者もいない場合は、他の共有者に帰属します。
 それでは、相続人なく共有者が死亡した場合の流れを簡単にご説明します。

1【相続財産の法人化】
 まず、相続人が明らかでないときは、相続財産は法人になります。
 相続人が明らかでないとは、相続人が誰なのかわからないとき、相続人がいるのかいないのかもわからないような場合です。

2【家庭裁判所による相続財産管理人の選出】
 相続財産が法人になると、家庭裁判所が相続財産管理人を選出します。
 相続財産管理人の権限は、相続財産の保存・利用・改良行為に限られます。

3【公告】
 相続財産管理人が選出されると、次は「公告」が以下の要領で行われます。
(1)相続財産管理人選任の公告
→これは家庭裁判所が行います(最低2ヶ月間)
(2)相続債権者および受遺者への公告
→これは相続財産管理人が行います(最低2ヶ月間)
(3)相続人の捜索の公告
→これは家庭裁判所が行います(最低6ヶ月間)

 ここまでの手続きが終了すると、相続人の不存在が確定します。
 公告というのは、公に告知することです。わかりやすく噛み砕いて言うと、公に向けた「相続財産管理人が選任されましたよ~」「相続人いませんか~?」というお知らせです。つまり、そのような公告を経て「相続人が1人もいない」という事実が確定します。
 ちなみにここまで、つまり、相続人不存在が確定するまでに、被相続人の死亡から、最低でも10ヶ月はかかります。

4【特別縁故者の申し立て】
 相続人の不存在が確定すると、そこから今度は「特別縁故者への財産分与申し立て期間」になります。その期間は、相続人の不存在が確定してから3ヶ月間です。
 被相続人と特別の縁故があった者は、この期間中に、財産の分与を家庭裁判所に請求することができます。わかりやすく噛み砕いて言うと、この期間中に特別縁故者は「相続人がいないなら私にその財産ちょーだい!」と、家庭裁判所に請求できます。
 そして、特別縁故者が存在し、家庭裁判所への財産の分与の請求があり、特別縁故者への財産分与が認められたとき、その財産は特別縁故者へ分与されます。

5【特別縁故者がいなかった場合/特別縁故者がいたが財産分与の請求がなかった場合/特別縁故者への財産分与が認められなかった場合】
 ここまで至ってようやく、被相続人(死亡した共有者)の持分が他の共有者へ帰属します。
 したがいまして、共有者の1人が死亡し、その持分が他の共有者へと帰属するまで少なく見積もっても1年ちょっとかかるということです。

 なお、共有者もいなかった場合はどうなるのか?ですが、その場合、相続財産は国庫に帰属します(国の物になるということ)。

地役権とその性質/地役権の登記と放棄/未登記でも対抗できる場合/永小作権とは

▼この記事でわかること
地役権とその性質
地役権の登記
登記のない地役権が対抗できる場合
永小作権
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者でもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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地役権とその性質

 土地を利用するための物権といえば、所有権です。
 ですが、それ以外にも、土地を利用するための物権を民法は規定しています。
 それは「地上権、永小作権、地役権、入会権」です。
 そして、これらの権利を用益権と言います(宅建などの資格試験で出題される用益権のほとんどは地上権と地役権になります)。
 ここでは、地役権永小作権ついてご説明いたします。
 なお、地上権についてはこちらの記事をご参照ください。

地役権とは

 地役権とは、自分の土地を利用するために他人の土地を利用する権利です。
 このとき、自分の土地のことを要役地、他人の土地のことを承役地と言います。読み方は「ようえきち」「しょうえきち」です。
 この地役権は物権であり、登記をすることで、第三者への対抗力を持ちます。
 う~んなんか今ひとつよくわからん
 この説明だけだと分かりづらいですよね。もう少し具体的にご説明いたします。
 例えば、Aが自宅から公道に出るために、Bの土地を通る必要があるときに、AB間の契約で、Bの土地に通行地役権を設定します。
 つまり、AがBの土地を通行のために利用する権利が地役権です。そして、このときのAの土地要役地Bの土地承役地となります。また、要役地の者(Bの土地を利用するA)を地役権者、承役地の者(Aの通行のために土地を利用されるB)を地役権設定者と言います。

A→地役権者    B→地役権設定者
Aの土地→要役地  Bの土地(隣地)→承役地

 なお、地役権は通行地役権だけではありません。
 例えば、Aが眺めの良い別荘を建てていて、すぐ隣のB所有の土地に建築物が建ってしまうと、その別荘の眺望が損なわれて困ってしまうような場合、AはBの土地(承役地)に「高さ〇〇メートル以上の建物を建ててはいけない」という地役権を設定します。これを眺望地役権と言います。このような地役権も存在します。

地役権の性質

 地役権は、所有権などの他の物権とは違う性質があります。
 というのは、地役権は「人に付着した権利」というより土地に付着した権利」という性質が強いのです。
 土地に付着した権利という性質とは、例えば、A所有の甲土地とB所有の乙土地が隣地で、Aが甲土地にある自宅から公道に出るまでに乙土地を通行する必要があるとき、通行地役権を設定することができますが、これは「Aのため」ではなく、あくまで「甲土地の便益のため」です。ですので、Aが生物学者に憧れていて、昆虫採集をライフワークにしているからといっても、そのための地役権を乙土地に設定することはできません。なぜならそれは「Aのため」であって「甲土地の便益のため」ではないからです。
 また、地役権は、それのみを譲渡することはできません。なぜなら、地役権は土地に付着しているからです。
 したがって、Aが甲土地の地役権のみをCに譲渡することはできません。なぜなら、甲土地の地役権は、所有者であるAではなく、甲土地に付着しているからです。これも、地役権が土地に付着した権利という性質の所以です。

地役権の付従性

 地役権には付従性があります。付従性とは「付いて従っていく」という性質のことです。
 例えば、A所有の甲土地の所有権がCに移転すると、それにくっ付いて地役権もCに移転します。すると、Cは甲土地の所有者となるのと同時に(甲土地という要役地のための)地役権者にもなります。
小道
地役権の登記

 地役権は、その登記をすることにより対抗力を持ちます。
 地役権を対抗するときって?
 例えば、このような場合です。

事例
Aは、自己所有の甲土地上にある自宅から公道に出るために、隣地のB所有の乙土地を通る必要があり、B所有の乙土地に通行地役権を設定し、その旨の登記をした。その後、BはCに乙土地を譲渡しその旨の登記をした。


 このようなケースで、Aが乙土地(承役地)の譲受人Cに対して地役権を主張するような場合です。

  [地役権設定&登記]
  地役権者  地役権設定者
  A       B   
 甲土地       乙土地       
  (要役地)     (承役地) 

    [乙土地をCに譲渡]
  地役権者  地役権設定者
  A       C   
 甲土地       乙土地       
  (要役地)     (承役地) 

 このとき、Aは登記をしているからこそ、乙土地を堂々と通行することができます。
 たとえCから文句を言われても、Aは「地役権の登記がある!」と法的に正当な主張ができます。
 地役権の登記があるということは、Bから地役権の登記をされた乙土地を譲渡されたCは、地役権設定者という地位譲り受けることになるのです。
 したがって、Cは乙土地を、Aの通行のために利用される義務があるのです。逆に、地役権の登記がない場合、Aはこのような主張ができません。
 これが、地役権は登記をすることにより対抗力を持つ、ということの意味です。

登記のない地役権も対抗できる場合がある

 判例では、次の2つの要件を満たした場合においては、地役権者(事例でのA)は地役権の登記がなくとも、承役地の譲受人(事例でのC)にその地役権を対抗できるとしています。

1・譲渡のときに、承役地が要役地の所有者により継続的に通路として使用されていたことが客観的に明らかであること
→例えば、事例のA(地役権者)が、乙土地を通路として使用していることが客観的に見て明らかであること、という意味。

2・譲受人がそのことを認識していたがまたは認識することができたこと

→例えば、事例のCが、乙土地が甲土地の通行のために使用されていたことを認識していたか、少し調べれば認識できたであろう、という意味(善意・無過失とほぼ同義)。

 上記2点は、要するに「承役地の譲受人(事例のC )は、その土地に、客観的に見て明らかにわかるような地役権が付いていることぐらい自分で確認しとけ!」ということです。
 したがいまして、もし事例のAが地役権の登記をしていなかったとしても、上記2点の要件を満たした場合、Aはその地役権をCに対抗できます。Cは乙土地に地役権が付いていることぐらいちゃんと確認しとけ!ということです。

補足:地役権の放棄

 地役権設定者(通行などで利用される側)は、地役権の設定契約により、地役権行使のための工作物の設置やその修繕義務を負うことがあります(その旨の登記が必要)。
 つまり、通行地役権の場合、地役権設定者は、自分の土地を通行のために利用されるだけでなく、そのための設備を設置する義務を負うこともあるのです。
 これは地役権設定者にとっては中々酷なことですよね。そこで、民法287条では、承役地の所有者(利用される側の土地の所有者)が、いつでも、地役権に必要な土地の部分を放棄して地役権者(通行などで利用する側)に移転し、この義務を免れることができるとしています。
 これを地役権の放棄と言います。

永小作権
農業
 用益権のひとつに永小作権があります。
 まず、永小作権についての民法の条文はこちらです。

(永小作権の内容)
民法270条
永小作人は、小作料を支払って他人の土地において耕作又は牧畜をする権利を有する。


 永小作権とは、小作料を支払って、他人の土地で耕作・牧畜をする権利です。
 小作料は、永小作権の要素です。小作料が要素ということは、タダの永小作権を設定することはできないということです。
 この点は、地代をタダに設定できる地上権とは異なります(地上権の場合、地代は要素ではない)。
 また、永小作権は物権です。したがって、永小作人(永小作権を有する者)が、その権利を自由に譲渡・賃貸することができます。
 この点は地上権と一緒です。ただし、永小作権の場合、永小作権の設定契約の際、その権利の譲渡・賃貸を禁止する特約をし、その旨の登記をすることができます。これは地上権ではできないことです。

永小作権の存続期間

 永小作権には、存続期間の定めがあります。

【永小作権の存続期間】

 20年以上50年以下
→設定行為で50年を超える期間を定めても、その期間は50年になります。つまり、もし永小作権の存続期間60年という設定契約をしても、その期間は問答無用で50年となります。

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