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民法

民法の超基本
はじめに
契約~諾成/要式/要物/売買/賃貸借/使用貸借/消費貸借/寄託/贈与/請負/委任
動産の物権/占有権/即時取得/占有改定/占有移転
債権の超基本~債務不履行・損害賠償請求権から差押え・強制執行、抵当権・保証債務から相殺・債権譲渡まで

民法総則
錯語、心裡留保、詐欺、強迫、通謀虚偽表示、転得者
制限行為能力
代理、無権代理、表見代理
復代理、無権代理と相続
双方代理、自己契約、使者
時効~取得時効/消滅時効/占有/更新/完成猶予/時効の援用/時効利益の放棄

動産の物権
動産の物権/占有権/即時取得/占有改定/占有移転

不動産物権
不動産登記の基本/時効と登記/共同相続と登記
用益権 地役権 囲繞地通行権
共有

担保物権
抵当権
根抵当権
法定地上権
質権、留置権、先取特権、譲渡担保

不動産賃貸借
不動産賃貸借、賃借権と相続
不動産転貸借(サブリース)
客付 元付 原状回復義務 特約 敷金 礼金 保証金 敷引き 償却

債権
債権の超基本~債務不履行・損害賠償請求権から差押え・強制執行、抵当権・保証債務から相殺・債権譲渡まで
連帯債務 保証債務 連帯保証
契約の解除
売主の担保責任、他人物売買、一部他人物売買、数量指示売買
契約不適合責任(瑕疵担保責任)、危険負担
債権者代位権、詐害行為取消権
代物弁済、第三者への弁済、受領権者の外観を有する者への弁済、選択債権
債権譲渡~対抗要件、譲渡通知と債務者の承諾、譲渡制限の意思表示、確定日付ある証書、債権譲渡と相殺
【契約によらない債権】
不法行為、使用者責任
注文者・土地工作物の責任
不当利得、不法原因給付

民法その他
条件~停止条件・解除条件など
用語解説 原則・例外・要件、時・とき、無効・取消し、強行法規・任意法規
民法改正について

資格試験

行政書士試験
宅建試験
賃貸不動産経営管理士試験

民法改正

~民法改正後(2020年4月1日施行)と民法改正前の条文対照一覧~
【解説】
【総則】3~174条
【物権】284~398条
【債権】400~724条
【相続】1012~1018条

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当サイトの主旨と民法の学習について
遠回りこそ近道~民法の学習はペンキ塗り

 民法はとっつきづらいです。もちろん人によりけりですが、少なくとも私はそうでした。
 中々学習は進まないし理解も深まらない...事例はAがBにどうしただCがどうしただとややこしい...。
 何か手っ取り早く民法を理解できる方法はないのか!?
 ...多くの例に漏れず、私も始めはそんな感じでした。
 しかし、私は今では民法が大好きになってしまいました。
 理解できるようになると、非常に面白いんです。民法。

 さて、そんな紆余曲折を経て現在に至った私ですが、民法の学習は急がば回れ」で進めるのが一番良い、と考えます。
 民法にも暗記的な要素はもちろんありますが、それも基本的な理解の上に行う方が格段に学習効果は高いです。
 少なくとも私の場合はそうでした。
 かのイチロー選手もこう仰っていました。

「遠回りこそ近道」

  民法はその性質上、例えば、ある分野を一回学習して何となく理解した気になっても、中々本当の意味では頭に入りません。
 ですので、ペンキを塗るように何度も何度も繰り返して落とし込んでいって初めて理解が深まっていきます。
 ただし、時間は有限です。ただダラダラやっていてもしょうがありません。
 ですので私は「合理的な遠回り」を推奨します。合理的な遠回りとは、ムダのない遠回りです。
 無駄のない遠回りこそ、近道です。

民法的な頭作り(リーガルマインド)

 私は当サイトで民法の解説を私なりに行なっていますが、時に余談も含めたざっくばらんな解説も行なっています。
 それはなぜかと申しますと、民法的な頭作りのためです。
 スポーツを行うための体作りと同様に、民法を学習するための頭作りです。
 つまり、リーガルマインドを養うためです。
 リーガルマインドは、何も法曹を目指す人や資格試験や法学系科目の勉強のためだけのものではありません。社会を生き抜いて行く上でも確かな力となります。
 少なくとも、私にとっては大きな力となりました。

 そして、これは私自身の経験からなのですが、私は民法を学習するにあたり、たくさんの様々なサイトや本を読み、色んな人のお話も伺いたくさんの情報を集めました。
 そこで私はこう思いました。

もっともっと民法を噛み砕いてわかりやすく解説してくれるサイトがあってもいいんじゃないか?

 したがって、当サイトでは「民法的な頭作り」ができるように、リーガルマインドが養えるように、社会で生き抜く力を得られるように、できるだけわかりやすく丁寧に解説しています。
 ご覧になってくださった方が、本当の意味で学習できるように進めています。
 くわえて、単純に「読み物としても面白いもの」を心掛けています。
 そんな余計な事するな?
 だってどうせ読むなら面白い方がイイじゃないですか(笑)。
 それこそ人生の時間は有限で命は限りあるもの。
 貴重な時間を使う訳ですから、面白く学べたならば、これほど良い事はありません。

 という訳で、今後も引き続き、より良い民法解説サイトへと日々ブラッシュアップして参りますので、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

【親族と親等】【血族と姻族とその違い】【相続と戸籍】【親子関係と戸籍の届出】【家族法と財政問題】

▼この記事でわかること
親族の超基本
親等について
血族と姻族とその違い
相続と戸籍
親子関係と戸籍の届出
民法と扶養制度と財政問題
遺留分制度と財政問題
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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親族の超基本

 親族とは、民法において、一定の血縁者と婚姻によって生じる続柄にあたる者のことを言います。
 では、その親族とは、具体的にどの範囲を指すのでしょうか?
 これは、民法の条文で明確に規定されています。  

(親族の範囲)
民法725条 
次に掲げる者は、親族とする。
一 六親等内の血族
二 配偶者
三 三親等内の姻族


 上記、民法725条の条文中に、親等という言葉があります。
 親等とは、親族間の世代数のことです。(民法726条1項)
 ではここで、親等について具体的に解説します。

親等について

・1親等
 これは親子の間柄です。ここは直系しかあり得ません。

・2親等
〈直系の場合〉祖父と孫の関係
〈傍系の場合〉兄弟の関係
 傍系とは、一度、同一の祖先にさかのぼり、その祖先から他の1人に下る関係を言います。
 兄から見て弟は、一度、同一の始祖(親)にさかのぼり(ここまでで1親等)、そこから弟に下ります。(これも1親等)。したがって、合計2親等になります。
 つまり、兄と弟の関係は、民法的に言うと「傍系の2親等の親族」となります。祖父と孫は「直径の2親等の親族」となります。

・3親等
〈直系の場合〉祖父とひ孫の関係
〈傍系の場合〉叔父と甥の関係
 叔父から見て、甥の祖先が兄弟だから、ここまでで2親等、そこから1世代下ると甥に至りますから、合計3親等です。
 つまり、叔父と甥の関係は、民法的に言うと「傍系の3親等の親族」となります。祖父とひ孫は「直径の3親等の親族」となります。

・4親等
〈直系の場合〉曽祖父とひ孫の関係
〈傍系の場合〉従兄弟の間の関係、あるいは叔父と「甥の子」の関係
 つまり、従兄弟同士、あるいは祖父と甥の子の関係は、民法的に言うと「傍系の4親等の親族」となります。曾祖父とひ孫は「直径の4親等の親族」となります。

 以上、親等の数え方についての具体例を挙げましたが、あとは応用です。
 直系であれば、単に世代の数を数えればよく、傍系であれば、同一の祖先に達するまでの世代数と、そこから相手方まで下る世代数を足すことになります。

血族と姻族

 続いて、血族と姻族についての解説をします。
 血族というのは、生理的に血が繋がっている者のことであると、一応は言えます。
 しかし、生理的な繋がりと法律上のそれとは、厳密な意味では必ずしも一致する訳ではありません。
 例えば、生理的に血が繋がっていないのに、法律上の血族関係が生じる制度として、養子縁組があります。
 逆に、生理的に血が繋がっているのに、法律上、血族関係を切ってしまう制度として、特別養子があります。例えば、Aが甲の特別養子になると、結果的にAと実親との血族関係が切れることとなります。

姻族

 姻族とは、婚姻により生じる親族のことです。
 姻族には次の次の2つの種類が存在します。
1・配偶者の血族
2・血族の配偶者
 要するに、結婚してできる嫁さんor旦那さんの親や兄弟などを指します。
 では、姻族とは具体的にどの範囲なのか?解説します。

事例1
Yの妻がA、Aの妹がB、Bの夫がZである。


   兄妹
   /\
Y  =   A    B  =  Z
妻     夫     妻   夫

 このケースで、YとZとは親族にあたるでしょうか?
 結論。YとZとの間に親族関係は生じません。
 Yから見て、A(配偶者)の血族であるBは親族です。
 AとBとは兄妹の関係であり、血族2親等ですから、YとBとの関係は姻族2親等にあたります。
 民法725条は、3親等内の姻族は親族であると定義していますので、YB間には親族関係が生じます。
 しかし、YはZから見て、配偶者の血族の配偶者です。
 これは、姻族の範囲には入らず、したがって、YZ間には親族関係が生じません。

続いてはこちらです。

事例2
甲と乙は兄妹である。甲の息子Yの従兄弟が乙の娘A、乙の娘Aの夫がZである。


  兄妹
  /\
 甲  乙
 |  |
 Y  A = Z(Aの夫)
(息子)    (娘)

 このケースで、甲の息子Yと乙の娘Aの夫Zとは親族にあたるでしょうか?
 結論。YZ間に親族関係は生じません。
 Yから見てAは、血族4親等です。
 民法725条の6親等内の血族にあたります。
 したがって、YZ間には親族関係が生じます。
 そして、乙の娘Aの夫Zは、甲の息子Yから見て、血族であるAの配偶者なので姻族です。
 しかし、それは姻族4親等です。
 民法725条に定義する3親等内の姻族の範囲には入りません。
 よって、YZ間に親族関係は生じません。

姻族と血族の違い
ここがポイント女性
 姻族も血族も、民法725条が規定する親等の範囲内で、親族関係が生じます。
 例えば、姻族も血族もそれぞれの2親等では、そのどちらも親族にあたります。
 しかし、姻族と血族には決定的な違いがあります。

事例3
Yの子がA、Aの妻がZである。Aが死亡し、のちにYも死亡した。


死亡
  Y
  |
  A = Z
死亡

 さて、このケースで、ZはYの相続人となるでしょうか?
 このケースのポイントは、夫Aに先立たれた妻Zが、夫の親であるYを相続するのか?です。
 このケースの具体例としては、Aが長男で、Yと同居していたところ、Aが死亡し、その後、Aの妻であるZが、Aの親の老後の面倒を見ていた、というようなものが考えられます。
 結論。この場合、たとえZがYの老後の面倒をかいがいしくみていたとしても、ZはYの相続人ではありません。
 なぜなら、Yから見てZは息子A(血族)の配偶者であり姻族だからです。
 法律的に、YZ間の関係は、姻族1親等という事になります。
 しかし、姻族は、決して相続人になりません。
 これが、姻族血族決定的な違いです。
 そして、こういったケースが、家族間トラブルに発展しがちな典型です。
 たとえ財産目的でYの面倒をみていた訳ではなくとも、Zには酷ですよね。
 しかし、これは法律上のルールです。
 死者の血族は相続人になり得ますが、死者の姻族は相続人にならないのです。
 また、同じ理由で、妻の連れ子は夫を相続しません。
 夫から見れば、連れ子は配偶者の血族であり、姻族1親等にあたるからです。

相続と戸籍

 先ほど、相続が絡んだケースが出ました。
 それでは、ここからは相続人の範囲について解説して参ります。
 まずは、次の民法の条文をご覧ください。

民放890条前段
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。


民法887条1項
被相続人の子は、相続人となる。


 上記、民法条文から、死者の配偶者と子は相続人になることがわかります。
 さらに、子がいなければ、直系尊属(例えば死者の親)が相続人となります。
 直系尊属もいなければ、今度は兄弟姉妹が相続人となります。
 じゃあこのケースは?あのケースは?と色々疑問も浮かぶかもしれませんが、まずはここまでをしっかり押さえてください。  
 要するに、相続人の範囲と相続分民法により厳格に規定されているということです。

厳格な規定の理由 

 相続人の範囲が民法によりきっちりと法定されている理由、それは、相続問題が典型的に元々紛争の多いものだからです。

 つまるところ、人間関係のトラブルの原因の多くは、金に行き着きます。
 相続問題は、その「金」が、身内が死んだ事により突然舞い込んで来る話です。
 ギャンブルでも投資でも、確実に儲かるという保証はありません。
 しかし、相続は違います。その権利さえあれば、確実にお金(財産)が転がり込んで来るのです。
 相続する財産が多ければ多いほど、相続人の目の色も変わるでしょう。
 結果、相続人同士の争いはとかく激化しやすい傾向にあるという訳です。
 ということで、もし相続人の範囲が曖昧であれば、相続がらみの紛争は、現在のその数を2倍にも3倍にもするかもしれません。いえ、高い確率でそうなるでしょう。
 そうなったら、裁判所もパンクしてしまいますし、世の中のドロドロ度も増してしまいます。
 そこで、民法は、相続人の範囲を戸籍を見ればわかる範囲に限定する努力をしているのです。
 では、その民法の努力を、事例共に具体的に解説します。

事例4
A男はB子と50年に渡り事実上の夫婦生活を続けた。しかし、婚姻届は出していない。


 さて、この事例で、A男が死亡した場合、B子はその相続人となるでしょうか?
 結論。B子はA男を相続しません。理由は、B子はA男の戸籍上の妻ではないからです。
 婚姻届が受理されれば法律上の配偶者です。しかし、婚姻届が出されていなければ、法律上はアカの他人です。
 したがって、事例4のA男とB子は、結局のところ法律上はアカの他人なのです。二人がいかに愛を育んでこようが、関係ありません。
 逆に、二人の愛がいかに冷え込んでいようが、婚姻してさえいれば、二人は法律上の夫婦です。

 続いて、こちらの事例もご覧もください。

事例5
死の床にあったA男は、死の前日にB子と婚姻する約束をし、B子はその日のうちに婚姻届を出した。


 さて、この事例で、B子はA男を相続するでしょうか?
 結論。B子はA男を相続します。理由は、B子はA男の戸籍上の妻だからです。
 昔、ある人が「恋愛と結婚の一番の違いは何か?それは法律で保護されるかどうかだ!」なんて言ってましたが、そういう事なんです。
 婚姻とは、婚姻届により成立する関係です。
 その他の個別の諸事情は、相続人の確定作業とはなんの関係もないのが原則です。
 事例5のケースは、死の前日に婚姻届を出したB子に対して遺産を渡したくないという他の相続人が現れそうなニオイがプンプンしますが、B子に婚姻の意志があれば、A男の相続権は法律上、認められることになります。
 根拠となる民法の条文はこちらてす。

(婚姻の届出)
民法739条 
婚姻は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。


 ちなみに、婚姻届が役所で受理されれば、婚姻は成立します。戸籍に記載された時点で婚姻成立というわけではありません。

 以上、ここまでの解説で、婚姻届の受理されていない法律上の婚姻というものはあり得ないということがお分かりになりましたよね。
 これは、戸籍の届出の有無という客観的な基準で身分関係を規律し、ひいては相続関係をも単純化するための国家政策であるのです。
 つまり、ある人の身分関係は、戸籍を見ればすぐ分かるという状態を理想として、届けをすることにより婚姻という身分関係が発生するというルールを作ったという訳です。

【補足1】
 事実上の夫婦関係(実際には婚姻していない関係)にある者が、婚姻をする意思のもとに婚姻届を作成した場合、届けが受理されるまでの間に、完全に昏睡状態になった場合でも(届出の時点では意思能力がないケース)、その前に翻意したなどの特段の事情がなければ、婚姻は有効に成立するという判例があります。
 これなどは、先述の事例5における死の床での婚姻の実例であると言えるでしょう。
 なお、このような判例の存在そのものが、この死の床での婚姻により、相続分を減らされる結果となる他の相続人が存在し、そして、猛烈にこの婚姻の無効を争ったことを示しています。(最高裁までいった)

【補足2】
 生存中に婚姻届を郵送したが、受理の段階でその一方が死亡している、というケースも存在します。
 戸籍法は、この場合も、婚姻の成立を認めています。届出人の死亡の時に届出があったものとみなすとしています。

親子関係と戸籍の届出
妊婦(胎児)
 ここからは親子関係について解説して参ります。
 先述の婚姻の場合の考え方は、親子関係の発生についても同様に採用されています。
 もちろん、出生による親子関係は届出を待たずに発生します。
 出生届は、子が出生したという事実を報告する趣旨であって、届けを出すことにより、子が出生するわけではありません。
 しかし、その旨の届出をすることにより、親子関係が創設されることがあります。
 以下に、その実例の代表例を2つ挙げます。

・養子縁組届
 生理的な血の繋がりを持つ自然血族に対して、法定血族と言われるのが養子縁組により発生する血族関係です。
 養親と養子の合意による養子縁組は、役所への養子縁組届けにより、効力が生じます。(民法799条、民法739条)

・認知届
 認知は、婚姻によらない子と、その父または母との親子関係を創設します。
 逆に言えば、生理的に血が繋がっていても、そのことだけでは法律上の親子ではなく、したがって、親族ですらありません。
 たとえDNA鑑定をしても、認知がなければ法律上の親子ではありません。
 父または母が生前にする認知も、戸籍の届出により有効に成立します。(民法781条1項)
 ちなみに、父に認知されない非嫡出子の戸籍は、父の欄が空白になります。父に認知されない非嫡出子とは、わかりやすく言えば、婚姻していない男女間にデキちゃった子(非嫡出子)で、その男に「認知」されていないということです。
 
 以上に解説した、養子縁組、認知は、いずれも当事者の戸籍に記載されます。
 これも、相続関係を明確な基準(戸籍の届出)により規律しようという民法の考え方と言えるでしょう。

【補足】身分関係の解消
 姻族関係を解消するための離婚届、縁組により生じた血族関係を解消する離縁届についても、当事者の協議によるものは、創設的な届出です。
 例えば、夫婦が長年別居し、夫婦としての共同体の実績が存在しなくても、離婚届が出ていなければ法律上は婚姻関係にあります。

家庭裁判所の関与

 当時者の合意による身分関係の創設および解消(婚姻や離婚など)は、戸籍の届出を要するという形式で制度化されています。
 これは、身分関係の確定には明確な基準を要するという考えによるものです。
 さて、ここで一つ、ある問題が生じます。
 それは、当事者の合意によらない身分関係の問題です。
 例えば、身分関係の創設としては、子の側から父に認知を迫る強制認知という制度が存在します。(民法787条)
 逆に、身分関係を解消したい場合もあります。
 協議によらない離婚や離縁です。(民法770条1項、民法814条1項)
 民法は、このようなケースでは、家庭裁判所の裁判により身分関係を確定するという形で、その基準の明確化を図ります。
 したがって、強制認知や協議によらない離婚、離縁は、いずれも訴えによってのみ行うことができます。
 そして、裁判により身分関係が生じまたは解消するケースにおいては、裁判の確定によりその効力が生じます。
 つまり、その後にする戸籍の届出は、例えば「私達は裁判により離婚しました」という事実を報告するための届出です。
 なので、このようなケースでは、裁判の確定から届出までの間、離婚はしたがその届けはされていないという事態、つまり、離婚の効力は生じているがその事実の届出はしていないという状況も生じ得ることになります。

財政問題

 民法における親族、相続に関する規定は、家族法と総称されます。
 そして、実は家族法の裏には、国家財政の問題が存在します。
 それはどういう事なのか?まずは、扶養の問題を見ながら解説して参ります。

 扶養についての民法の条文はこちらです。

(扶養義務者)
民法877条 
1項 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2項 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。


 上記、民法877条の「扶養義務」とは、文字通り扶養料を支払えという意味です。
 例えば、不況の影響で弟が路頭に迷っている場合、その兄には、当然に扶養義務が発生し、裁判所から「弟に対して月々◯円を支払え」と命ぜられることがあるということです。

扶養の問題と国家財政の関係
指差し男性
 実は、国の生活保護と、先に挙げたような私人間の扶養義務には、優先劣後の関係があります。
 すなわち、ある人が路頭に迷った場合には、その者に民法877条に該当する親族がいれば、その扶養義務の問題が最初に発生します。
 そして、扶養をすることができる親族がいない場合に限り、国家が生活保護を行うことになります。
 みなみに、朝日訴訟という憲法における有名な判例があり、生活保護を受けていた朝日氏に実兄が見つかったため、国家が生活保護を打ち切った事が、その事件の発端となっています。
 生活保護などの社会保障政策についてはよく議論になりますが、そんな簡単に誰でもかんでもすぐ生活保護という訳にはいきません。
 生活保護は「公助」になりますが、「助」の順番は、あくまで、1に自助、2の扶助、3に公助となります。
 (考え方は色々あるかと思いますが)これは当然といえば当然の事で、生活保護には財源が必要です。そして、その財源は無限ではありませんよね。  
 以上のように、民法上の扶養の問題は、生活保護の財源の問題と密接に関係しているのです。

[参考条文]
生活保護法4条
民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。


遺留分制度と国家財政の関係

 さらに、遺留分の制度にも、国家財政との関係性が存在します。
 遺留分とは、一定の相続人には必ず留保される、遺産の一定割合のことを言います。
 この説明ではちょっとわかりづらいので、具体的にご説明します。
 例えば、ある資産家の男が、全財産をある団体に寄付をするという遺言をしてから死亡したとします。このケースで、その男に妻と子供がいた場合、各相続人(妻と子供)は、自己の法定相続分(法律で規定された相続できる割合)の半分を遺留分として主張、つまり「その半分私によこせ!」と主張することができます。
 つまり、もし全員が遺留分の主張をすれば、その亡くなった資産家の資産のうち半分は、相続人の手元に残ることになります。
 本来であれば、死者が、自己の財産をどのように処分しようが、それは自由であるはずです。
 民法における私的自治の大原則に照らせば、むしろ遺留分の制度の方がおかしいと言えます。
 では、なぜそんなおかしな遺留分の制度が存在するのでしょうか?
 それは、相続人に一定割合の遺産を与えることにより、路頭に迷う相続人を減らして、生活保護のための財政負担を減らそうという国家政策としての目的があるという訳です。
 また、離婚における財産分与の制度にも、同様の目的があります。


 以上、親族から相続、戸籍、扶養について、その基礎的な部分を解説して参りました。
 民法における家族法と国家財政の問題には関連性がある、という事実は、民法(家族法)の学習、理解をする上での手助けともなるのではないでしょうか。
 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。

この世の中は契約社会~民法は私達の生活に直結している

 皆さんは、民法と聞いて何かピンと来ますか?
 おそらく、法学生や仕事で法務に携わっている方以外は、中々ピンと来ないのではないかと存じます。
 民法とは一体何なのでしょう。

この世の中は契約社会

 当サイトをご覧になってくださっている方で、アパートやマンションあるいは一軒家を借りて住んでいる、いわゆる賃貸不動産にお住いの方は多いと思います。実はその不動産賃貸借に関する規定が、民法の中に存在します。
 民法の条文は、全部で1050条存在します。その中に賃貸借というカテゴリーがあり、そこに不動産賃貸借(家の貸し借り)に関係する規定が存在します。
 例えば、賃貸人(貸主、つまり家主・大家のこと)は賃貸物(賃貸している物件のこと)の修繕義務を負うとか、賃貸人に無断で転貸(また貸し)してはいけない等々。
 ちなみに、今挙げた例は、皆さんが家を借りる(貸す)時に交わした契約書の中にも、盛り込まれていると思います。もしご面倒でなければ、今一度ご覧になってみてください。
 民法というものはこのように、実は我々の生活に密接に関わっています。
 先ほど挙げた不動産賃貸借の例ですが、これは不動産賃貸借契約になります。つまり、契約の一種ということですね。

 ところで皆さん。この世の中は契約社会というのはご存知でしょうか?
 まあ、いきなり契約社会と言われても、はぁ?て感じですよね(笑)。
 ですので、具体例を挙げてご説明いたします。
素材101
 皆さんも普段、当たり前にコンビニなどで買い物をしますよね。実はこれも契約です。その契約の流れはこうです。

1、購入の申し込みをする(レジに商品を持っていく)
2、申し込みの承諾を受ける(店員が商品をスキャンする)
3、代金を支払う
4、商品の引渡しを受ける(買った商品を受け取る
)


 コンビニでモノを買うということは、実はこのような流れの売買契約になります。
 え?こんなことも契約になるの?
 はい。これも立派な売買契約という契約なのです。
 それではここで問題です。上記の「コンビニでモノを買う」という売買契約ですが、この契約が成立するのは、契約の流れの中の1~4の内、一体どの時点だと思いますか?
 正解は2です。つまり、購入の申し込みの承諾を受けた時点で契約が成立します。
 このような契約を民法上、諾成契約といいます。読み方は「だくせいけいやく」です。承諾の諾に成る契約ということですね。
 契約には民法上、他にも◯◯契約というものが複数存在します。

 さて、どうでしょうか。何となく、民法が身近なものに感じて来たのではないでしょうか?


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【債権譲渡の対抗要件】確定日付ある証書/債務者の承諾/債権譲渡と相殺

▼この記事でわかること
債権譲渡の対抗要件の基本
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債務者の承諾
債権譲渡と相殺
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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債権譲渡の対抗要件の基本

 債権は自由に譲渡できます。
 そして、債権譲渡の対抗要件(法律の保護のもと主張するための要件)は、債務者への通知または債務者の承諾です。
 では、次のような場合は、一体どうなるのでしょうか?

事例1
AはBに対して500万円の貸金債権を持っている。Aはこの債権をCに譲渡しBにその事実を通知した。つぎに、Aはこの債権をDにも譲渡し、Bに確定日付ある証書でその事実を通知した。


 さて、この事例1で、Bの債権者はCになるのでしょうか?それともDになるのでしょうか?
 Aは、Bに対する貸金債権を、CにもDにも譲渡しています。
 つまり、これは債務者Bへの債権をめぐるCvsDの対決です。
 もっと正確に言えば
(ただの通知あり)BvsD(確定日付ある証書の通知あり)
です。

債権譲渡前
債権者 債務者
 A → B

[債権譲渡が行われる]
譲渡人 譲受人
 A → C
   ↑
債権譲渡(通知あり)

[さらに債権譲渡が行われる]
譲渡人 譲受人
 A → D
   ↑
債権譲渡(確定日付ある証書通知あり)

債権譲渡後
債権者 債務者
 C → B

債権者 債務者
 D → B

Bの債権者はC or D?

 これが不動産であれば、先に「登記」を備えた者が勝ちます。不動産においては「登記」が対抗要件だからです。
 では、債権譲渡においての対抗要件とは何になるのでしょう?
 まずは、民法の条文を見てみましょう。

(債権の譲渡の対抗要件)
民法467条2項
前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の
第三者に対抗することができない。

 この民法467条2項の条文によると「確定日付のある証書によってしなければ~対抗することができない」とあります。
 確定日付とは、当事者が後に変更することの不可能な公的な日付です。わかりやすい具体例としては、公正証書の日付、内容証明郵便の郵便局が記載する日付などがあります。
 つまり、確定日付のある債権譲渡の通知を備えた方が勝つということです。
 なんで確定日付が必要なの?
 確定日付ある証書(債権譲渡の通知)を対抗要件にすれば、例えばBとCが結託して「Cの方が先でしたよ」とウソをつくこともできなくなります。
 このような形で、CvsDの公平な対決ができることになります。

 では改めて、事例1で、Bの債権者はCになるのでしょうか?それともDになるのでしょうか? 
 もう答えは出ましたね。
 結論。Bの債権者は、確定日付のある通知を具備したDになります。
 債務者Bへの債権をめぐるCvsDの対決の勝者はDになります。
 よって、債務者Bが支払い義務を負うのはDに対してです。Cではありません。
 たとえCがBに請求書を送ったところで、Bは応じる必要はありません。
 あれ?じゃあCにした確定日付のない債権譲渡の通知は無意味なの?
 そういう訳ではありません。
 確定日付のある債権譲渡の通知は「債務者以外の第三者」に対する対抗要件です。なので、確定日付のない通知でも、債務者に対しては対抗できます。
 したがって、Dに対しては対抗できないCですが、確定日付はないものの譲渡の通知はあるので、債務者Bに対しては債権譲渡を対抗することができます。
 なので、もしD(第三者)が登場しなければ、Cは堂々とBの債権者としてその債権を行使することができます。

AC間とAD間の債権譲渡の通知
どちらも確定日付ある証書でされた場合

?女性
 債務者以外の第三者に対する債権譲渡の対抗要件は、確定日付のある証書による通知です。
 では、DだけでなくCも確定日付ある証書による通知を受けていた場合、どうなるのでしょう?
 この場合、早い者勝ちとなります。
 では、早い者勝ちの「早い」とは、何が早いことを指すのでしょうか?
 次の2つの考え方ができます。
1、確定日付の「日付」の前後
2、確定日付ある証書が債務者に「到着した時間」の前後
 結論。判例は2の考え方を採用します。
 え?でもそれってちょっと曖昧じゃね?
 そうかもしれません。しかし、民法は債権譲渡の対抗要件については、あくまで債務者を不動産においての登記簿のように考えています。  
 不動産は早く登記した者勝ちです。したがって、登記簿である債務者に早く着いた者の勝ちという2の考え方に帰着するという訳です。
 なお、対抗問題は国のルールです。契約自由の原則が立ち入れることではありません。

【補足】債権譲渡登記
 実は、法人の金銭債権については、債権譲渡の登記をすることができます。
 この登記は、確定日付ある証書による通知とみなされ、これによって第三者対抗要件を備えることができます。
 しかし、この場合でも、債務者に対する対抗要件は債務者への通知または承諾になります。

ちょこっとコラム
債権譲渡通知の同時到達


 ところで、CD両者に送った確定日付ある債権譲渡の通知が2通同時に到着した場合はどうなるのでしょうか?
 つまり、AC間の債権譲渡とAD間の債権譲渡の関する通知が、同時に郵便局から配達されたケースです。
 そしてなんと、民法はこの事態を想定していません。
 なので、こうなると困った事態になります。
 このケースで、判例は、債務者は同順位の譲受人が他に存在することを理由として弁済の責任は免れるとはできないとしています。
 しかし、これが、債務者に「二重払いをせよ」という意味であるわけがありません。
 そのため、その先の解決法をどうするかが不明という事態になっています。

差押通知と債権譲渡通知の同時到達

 上記に続いて、差押通知と債権譲渡通知の同時到達というケースも存在します。
 つまり、AB間の債権をCが差押えをし、またAD間の債権譲渡を確定日付ある証書でし、その両通知が同時になされたケースです。
 この場合、判例では次のような論理を展開します。
1・裁判所からの差押命令とAからの債権譲渡通知が債務者Bに送付された
2・だがその到達の前後が不明
3・この場合は同時到達とみなす
4・なのでCとDはお互いに優先権を主張できない
5・債務者Bがその債務にあたる金員を供託した場合、CとDは相互の債権額に按分して供託金の還付を(つまり支払いを)受けることになる

債務者の承諾

 債権譲渡の対抗要件には、債権譲渡の通知だけでなく、債務者の承諾もあります。

事例2
債務者Bは、Aに対して弁済をした。その後、Aがその債権をCに譲渡し、それを債務者Bは承諾した。


 さて、この場合、債務者Bは、Aに弁済した事をCに対抗することができるでしょうか?
 結論。債務者BはCに対抗することができます。
 なんか当たり前じゃね?
 はい。ですが実は、民法改正前は、事例2のケースで債務者Bが「異議を留めずに承諾」した場合、なんとBは、Aに弁済した事をCに対抗することができませんでした。
 しかし、民法改正により、その「異議を留めない承諾」による抗弁の喪失の仕組みは廃止となりました。
 債権譲渡の当事者でもない債務者が、単にこれを承諾したのみで、その債務者に予期しない結果が生じることを不当と考えたからです。
 なお、債務者の承諾は、譲渡人と譲受人、どちらに対してしても有効です。
 
債権譲渡と相殺
女性講師
 続いて、債権譲渡に相殺が絡んだケースを解説して参ります。
(相殺についての詳しい解説は「【相殺の超基本】自働債権と受働債権って何?」をご覧ください)
 まずは事例をご覧ください。

事例3
Bを債務者とする債権(甲債権)を、AがCに譲渡した。その債権譲渡の通知の前に、Bが譲渡人Aへの反対債権(乙債権)を取得した。


 さて、この事例で、債務者Bは、Aに対する反対債権(乙債権)による相殺を、譲受人Cに対抗できるでしょうか?

[債権譲渡前(甲債権)
債権者 債務者
 A → B

[債権譲渡が行われる(甲債権)]
譲渡人 譲受人
 A → C
   ↑
[この債権譲渡通知の前に]
譲渡人 債務者
 A ← B
   ↑
反対債権取得(乙債権)
この債権による相殺をBはCに対抗できる?

 結論。債務者Bは、譲受人Cに対し相殺を対抗できます。
 したがって、債務者Bは、譲受人Cから(甲債権による)弁済を請求をされても拒むことが可能です。
 なお、Bが相殺を対抗することについて、甲債権と乙債権どちらも弁済期の前後は問いません。

さらに保証債務が絡んだケース

 続いては、こちらの事例をご覧ください。

事例4
Bを債務者とする債権(甲債権)を、AがCに譲渡した。その債権譲渡の通知より前に、BはAの委託により第三者と保証契約をしていた。その後、債権譲渡の通知より後に、Bが保証債務を履行し、Aに対する求償権(乙債権)を取得した。


 今度は保証債務も絡んできて、なんだかかなりややこしくなって来ました。
 ですので、まずは、わかりやすくするため簡単に事例を整理します。
債権譲渡前、AはBの債権者です。

債権者 債務者
 A → B
   (甲債権)

同時に、Aは第三者に対する(乙債権)の債務者でもあります。

債務者 債権者
 A ← 第三者
   (乙債権)

くわえて、Bは、Aの委託により乙債権の保証人、すなわちAの保証人です。そして、これはAからCへの甲債権の債権譲渡の通知より前(対抗要件具備時より前)のことです。

[債権譲渡が行われる(甲債権)]
譲渡人 譲受人
 A → C
   ↑
[この債権譲渡の通知前]
債務者 債権者
 A ← 第三者
   ↙(乙債権)
  B
 保証人

 その後、AからCへの甲債権の債権譲渡の通知の後(対抗要件具備時より後)に、Aの保証人でもある債務者Bが第三者に対してその保証債務を履行します。そして、債務者Bが主債務者でもあるAに対し求償権(乙債権)を取得する、というのが事例4の一連の流れになります。

[債権譲渡通知後(甲債権)]
(主債務者)
 譲渡人 債務者
  A ← B
    ↑
 求償権取得(乙債権)

 さて、ではこの事例4で、債務者Bは、Aに対する乙債権(求償権)を自動債権とする相殺を、譲受人Cに対抗することができるでしょうか?
 結論。債務者Bは乙債権による相殺を譲受人Cに対抗することができます。
 なお、この仕組みは、民法改正により新設されたものです。
 改正後の民法では、次の場合、債務者が譲渡人への相殺を、譲受人に対抗できます。

1・B(債務者)のA(債権者)への反対債権(乙債権)の発生原因がある
2・対抗要件具備(債権譲渡の通知または債務者の承諾)
3・その後に乙債権が生じた

 上記は、1から3へ時系列順となっています。
 改正民法は、債務者が相殺できる場面を拡大しました。
 債務者の相殺への期待権をより強く保護したしたという訳です。
  
 続いて、今度はこちらの事例をご覧ください。

事例5
B(注文者)を債務者とする将来の請負代金債権(甲債権)を、A(工務店)が、Cに譲渡した。その対抗要件具備の後に、AとCがその請負契約をした。


 では、この事例5で、Bはその請負契約によって生じたAへの損害賠償請求権(乙債権)による甲債権の相殺をCに対抗することができるでしょうか?
 結論。対抗できます。
 これも、民法改正により新設された仕組みです。
 次の時系列の場合、債務者は譲渡人への相殺を対抗することができます。

1・AB間の契約(Z契約とする)により生じる将来債権(甲債権)をAがCに譲渡する
2・対抗要件具備(債権譲渡の通知または債務者の承諾)
3・その後にABが契約を締結する
4・BがZ契約による反対債権(乙債権)を取得する

 この仕組みは、AB間の取引の継続を前提にしています。
 同一契約から生じる反対債権による相殺(事例では請負代金債務の相殺)への期待は、より強く保護されるべきであるという思想に基づく規定です。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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【債権譲渡の通知と債務者の承諾】【譲渡制限の意思表示】【将来債権の譲渡性】をわかりやすく解説!

▼この記事でわかること
債権譲渡の基本
債権譲渡の通知と債務者の通知
譲渡制限の意思表示とは
債務者の履行拒絶権
譲渡制限と供託
譲渡制限と破産、差押え、転付命令
銀行の預貯金債権について
将来債権の譲渡性
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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債権譲渡の基本

 債権は譲渡することができます。
 債務者に無断で譲渡することも可能です。
 つまり、債権は自由に譲渡することができます。
 では、
債権者A
債務者B
 とする債権があった場合に、債権者Aが、債務者Bに無断でその債権をCに譲渡したとします。(債権を譲り渡したAは譲渡人、債権を受け取ったCは譲受人となります)
 この債権譲渡は有効です。しかし、債務者Bは債権者がAからCへ代わったことを知りません。

債権譲渡前
債権者 債務者
 A → B

[債権譲渡が行われる]
譲渡人 譲受人
 A → C
   ↑
 債権譲渡

債権譲渡後
債権者 債務者
 C → B

しかしBはこのことを知らない...

(なお、債権譲渡の超基本についての解説は「【債権譲渡の超基本】債権は譲れる?」をご覧ください)
 このまま何の知らせもなければ、債務者Bは間違って、C ではなく元の債権者Aに債務を弁済してしまいますよね。
 そこで、民法では次のように規定しています。

(債権の譲渡の対抗要件)
民法467条
債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。


 債権は、債務者に無断で譲渡することは可能です。ただし、その譲渡を対抗するには(法律の保護のもと主張するには)、その譲渡について債務者に通知するか、債務者の承諾が必要です。
 つまり、まとめるとこうです。
 債権者Aは債務者Bに無断でその債権をCに譲渡することは可能です。
 しかし、その債権譲渡を債務者Bに対抗するには、AはBに債権譲渡の通知をするか、債務者Bの承諾を要します。
 そして、債権譲渡の通知または債務者Bの承諾がない場合は、たとえ債務者Bが間違って元の債権者A(譲渡人A)に弁済してしまったとしても、その弁済は有効になります。
 この場合、譲受人Cは債務者Bに弁済を求めることはできません。
 譲受人Cは、譲渡人Aの責任を追求するしかありません。

債権譲渡の通知をするのは譲渡人
ここがポイント女性
 債権譲渡の通知のポイントとして、債務者に通知するのは「譲渡人」です。譲受人ではありません。
 これは債権譲渡の制度において大事なポイントです。
 というのも、もし譲受人からの債権譲渡の通知に対抗力を与えてしまったら、自称譲受人を語る輩がわらわらと出てくる可能性があり、そうなると債務者は誰に弁済していいかわからなくなり、結果として債務者に二重払いの危険性が生じてしまいます。
 でも譲渡人がウソをつく可能性もあるんじゃね?
 確かにそうですね。しかし、債権譲渡の通知は、譲渡人にとっては、自らは債権を失う通知です。そんな自らが損をする通知を譲渡人自身がわざわざすることになる訳ですから、それは信憑性が高いと言えます。
 よって、債務者の二重払いの危険性は生じづらいと考えられます。

 以上のような形で、債務者の保護がはかられているのです。
 なお、譲渡人Aから譲受人Cに債権譲渡があったのに、債務者Bが、譲受人Cではなく譲渡人Aに弁済してしまった場合、これは有効な弁済にはなりません。債権者でない人への弁済だからです。(非債弁済)
 したがって、この場合は、譲受人Cは債務者Bに対し「私に弁済しろ」と請求することができます。そして、債務者Bは、その請求に対し応じる法的な義務があります。結果、債務者Bは二重払いの事態に陥ってしまうことになります。
 じゃあBはどうすれば…
 そのケースで債務者Bができることは、まず譲受人Cに弁済をし、それから譲渡人Aに対しては不当利得返還請求をすることです。
 債務者Bにとっては非常に面倒臭い事態ですが、それは弁済相手を間違えたBの自業自得です。

【補足1】債務者の承諾
 債権譲渡の通知は「譲渡人」から債務者に対し行うものですが、債務者の承諾は、債務者から「譲渡人」または「譲受人」に対し行うものです。
 そうです。債務者の承諾は、譲渡人と譲受人のどちらに対してしても有効です。(どちらに対してしても対抗要件を備えるということ)
【補足2】債務者の事前の承諾
 債権譲渡における対抗要件としての「通知」「承諾」の制度趣旨は債務者の保護(二重払いを防ぐ)にあります。
 なので、債権譲渡の「通知」「承諾」を要しない、という特約は無効になります。
 また、「将来の債権譲渡の一切に承諾します」という「承諾」も効力を生じません。
 ただし、事前の承諾であっても、誰が誰にという辺りの事に具体性があれば、債務者の利益を侵害しないので、有効な承諾になるとされています。

【補足3】通知の時期
 債権譲渡の通知は、譲渡と同時でなくとも問題ありません。

譲渡制限の意思表示
NG男性
 債権は自由に譲渡することができます。
 これが原則です。
 しかし、譲渡できない場合も存在します。
 まずは民法の条文をご覧ください。

(債権の譲渡性)
民法466条2項 
当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。


 上記、民法466条2項の条文中にある「当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示をしたとき」というのが、債権を譲渡できない場合になります。
 そして、この「当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示」を譲渡制限の意思表示と言います。
 これは、民法改正以前は「譲渡禁止特約」と言われていましたが、民法改正により名称が変更となりました。
 改正前の民法で覚えていた方は、まずはこの点ご注意ください。

 さて、問題はここからです。
 では、譲渡制限の意思表示がなされているのにもかかわらず、債権者が第三者に債権を譲渡したらどうなるのでしょか?
 結論。この場合でも、譲渡の効力は妨げられません。(民法466条2項)
 これは、債権を受け取った第三者の善意無過失は問いません。
 債権者から債権を譲渡された第三者が、その債権の譲渡制限の意思表示について悪意または重過失であっても、債権譲渡は有効です。

債務者の履行拒絶権
バツ 女性
 次の事例をご覧ください。

事例1
AのBに対する債権に、譲渡制限の意思表示がなされている。債権者Aは、この債権を、悪意重過失の第三者Cに譲渡した。そして、Cは債権譲渡の対抗要件を具備した。

 
 この事例で、AC間の債権譲渡は有効なので、債務者Bは、Cに弁済すれば免責されます。
 では、債務者Bは、Cの請求を拒んで、Aに弁済することはできるでしょうか?
 結論。債務者Bは、債権の譲受人Cの請求を拒んで、譲渡人Aに弁済することもできます。
 よってBは、Aに弁済しても免責されます。
 そもそも、譲渡制限の意思表示は、債権者を固定するという債務者の利益のために付されるものです。
 なので、この利益を尊重し、債権の譲受人(債権を受け取った者)が悪意•重過失の場合、債務者の履行拒絶権が認められています。
 なるほど。債務者は悪意•重過失の譲受人の請求を拒絶できるんだね。でも、そうなると、もしCの請求を拒絶した債務者Bが、Aにも弁済しなかった場合はどうなるの?
 このままだと八方塞がりですよね。
 そこで、民法は、債権の譲受人に催告権を与えました。
 譲受人Cが、弁済しない債務者Bに対し、相当の期間を定めてAへの履行を催告した場合、その期間内に履行がないときは、債務者Bは、譲受人Cへの履行拒絶権を失います。
 その結果、債権の譲受人Cは、債務者Bに対して履行を請求することができるようになります。

供託

 続いて、こちらの事例をご覧ください。

事例2
AのBに対する債権に、譲渡制限の意思表示がなされている。債権者Aは、この債権を、悪意重過失の第三者Cに譲渡した。


 さて、この事例2で、債務者Bは、供託をすることはできるでしょうか?
 結論。債務者Bは、供託をすることができます。
 債務者Bが供託をするにあたり、譲受人Cの善意・無過失は問われません。
 そして、供託をした債務者Bは、遅滞なく、譲渡人Aおよび譲受人Cに供託の通知をしなければなりません。(民法466条の2 2項)
 なお、供託とは、簡単に言うと、法務局にお金を預けることです。
 例えば、誰が債権者かわからない場合に、だからといってそのまま弁済しないと債務不履行になってしまいますよね。そんなときに、供託することで有効な弁済とすることができます(つまり免責される)。その後は、真の債権者がその供託金の還付を受ければ解決、という訳です。

譲渡人の破産

 続いては、こちらの事例をご覧ください。

事例3
AのBに対する債権に、譲渡制限の意思表示がなされている。債権者Aは、この債権の全部を、悪意重過失の第三者Cに譲渡した。その後、債権者Aについて破産手続きの開始があった。


 この事例3では、譲渡人Aに破産開始の手続きがありました。
 となると、譲受人Cにはある懸念が起こります。
 それは、債務者Bが破産したAに弁済してしまう事態です。
 もし、Bが破産したAに弁済してしまうと、Cは、その破産財団に支払いを求めることになり、その債権の回収はきわめて困難になります。これは、いわばブラックホールに吸い込まれたお金を取り戻すようなものです。
 さて、ではこの事例3で、譲受人Cは、債務者BのAへの弁済を防ぐことはできるのでしょうか?
 結論。方法はあります。
 それは、譲受人Cが債務者Bに債権全額の供託を請求するという方法です。
 それでBが供託すれば、Cは供託金を還付することによって、その債権を回収することができます。
 結果的に、その債権は破産手続きから逃れることとなる訳です。
(破産についての詳しい解説は「破産の超基本~債務者に財産がなかったらどうなるのか」をご覧ください)

差押え、転付命令

 AのBに対する金銭債権に、譲渡制限の意思表示がなされているとき、Aの債権者Zは、AのBに対する債権を差し押さえ、また転付命令を得ることはできるのでしょうか?
 民事執行手続において、金銭債権の差押えがされると、原則として、債権者Zは第三債務者(債務者Bのこと)から直接に取り立てることができます。
 また、転付命令とは、債権執行において、支払いに代えて券面額で被差押債権を被差押債権者に転付する執行裁判所の決定のことです。
 わかりやすく簡単に言うと、裁判所の手によって、AのBに対する債権を、強制的にZに移転し執行手続を完了するものです。
 これは、いわば国家の手による強制的な債権譲渡です。
 したがいまして、債権者Zは債務者Bから直接債権の回収ができることになります。
(差押えについての詳しい解説は「差押え・強制執行の超基本」をご覧ください)

銀行預金
銀行
 実は、銀行預金には、譲渡制限の意思表示がなされています。
 これを前提として、銀行の顧客管理システムは作られています。
 このように聞くと小難しく聞こえますが、要するに、銀行預金についての債権者である預金者が、勝手に預金債権を譲渡できないということです。
 もっとわかりやすく言えば、夫が勝手に預金債権を妻に譲渡することはできないのです。この場合、夫の預金口座を解約し、新たに妻名義の口座を開設することになります。つまり、口座の書き換えは不可ということです。もしこれが可能となれば、システムの変更のために、銀行に膨大なコストがかかってしまいます。

 以上のことから、預貯金債権につきましては、その譲渡は無効となります。
 なお、預貯金債権の譲渡制限の意思表示については、周知の事実との判例があります。周知の事実ということは、基本的にみんなが悪意になるということです。

【補足】
 いかに預金債権でも、差し押さえることはできます。(民法466条の5 2項)

将来債権の譲渡性

 債権は、将来発生する債権(将来債権)についても譲渡することができます。(民法466条の6)
 では、将来債権を譲渡すると、譲受人はその債権をいつ取得するのでしょうか?
 それは、その債権が発生した時です。譲受人は、発生した債権を当然に取得します。(民法466条の6 2項)
 では、その将来債権に譲渡制限の意思表示が付されていた場合に、債務者は、それを取得した悪意重過失の譲受人からの支払いを拒絶することはできるでしょうか?
 この問題は、次の区分けで対処します。

a、対抗要件具備時(債権譲渡の通知時または債務者の承諾時)までに譲渡制限の意思表示がなされたとき
 この場合、債務者は譲受人への履行を拒絶できます。

b、対抗要件具備時より後に譲渡制限の意思表示がなされたとき
 この場合、債務者は譲受人への履行を拒絶できません。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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