【無権代理行為の追認】催告権と取消権とは?その違いとは?/法定追認について

▼この記事でわかること
無権代理行為の追認の基本
不確定無効とは
催告権と取消権
追認と法定追認
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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無権代理行為の追認

事例1
Bは代理権がないのにもかかわらず、お金持ちのAの代理人と称して、軽井沢にあるC所有の甲別荘の売買契約を締結した。Aはその事実を知ると最初はたまげたが、次第に甲別荘を気に入ってしまい値段も悪くなかったので、そのまま購入してしまいたいと考えた。


 さて、いきなり事例から始まりましたが、まずこの事例1は、表見代理が成立するか否かの話ではありません。(表見代理についての詳しい解説は「【代理の超基本】表見&無権代理とは」をご覧ください)。
 なぜなら、本人Aが甲別荘を購入したいと思っているからです。
 これを表見代理として考えてしまうと、表見代理が成立しなければ本人Aは甲別荘を手に入れることができない、ということになります。もし、Bの無権代理行為について、Cが悪意(事情を知っていた)か有過失(落ち度アリ)であったか、または本人Aに全く帰責事由(責任を取るべき理由)がなかった場合、表見代理が成立せず、Aの思いは果たせません。
 そこで民法では、このように、無権代理人による行為であるとはいえ、本人がその結果を望んだ場合は、本人は追認できることを規定しています。※
※追認とは、追って認めること、すなわち後から認めることです。ある法律行為(事例1なら甲別荘の売買契約)を後から「それOK!」と(追認)する、ということです。

(無権代理)
民法113条
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。


 上記、民法113条条文中の「本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない」とは、本人が追認(後からOK)すれば無権代理行為の効力が本人に生じるというこ意味です。
 したがいまして、事例1の本人Aは、無権代理人Bの行為(C所有の甲別荘の売買契約)を追認すれば、甲別荘を手に入れることができます。
 本人Aは無権代理行為の被害者でもありますが、偶然とはいえ、甲別荘が気に入ってしまいました。そして、相手方Cも無権代理行為の被害者ですが、元々「お金持ちのAさんなら買ってもらいたいな」と思い、Aと甲別荘の売買契約をしたはずです。つまり、本人Aがそのまま追認してくれれば、Cも助かります。
 ですので、事例1は、たまたまとはいえ、Aが甲別荘を気に入ってそのまま追認するとなると、みんなウィンウィンでハッピーなんですよね。
 したがいまして、民法では、無権代理行為を本人が追認することができる旨の規定を置いているのです。
 また、補足ですが、民法113条には続きがあります。

民法113条2項
追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。


 この民法113条2項は何を言っているのかといいますと、事例1の本人Aが追認する場合、その追認は、相手方Cに対してしなければ対抗できないということです。
 どういうことかと言いますと、例えば、すでに相手方Cの気が変わってしまい、もうAには売りたくないと思っていて、別の人に売ろうとしていたらどうでしょう?そのような場合、甲別荘が欲しいAは、Cに対して追認しなければ、別の人に売ろうとしているCに対抗できない、ということです。
 民法は、そのようなケースもあらかじめ想定しているのです。

不確定無効

 無権代理行為は、表見代理が成立するか本人が追認しない限り無効です。
 ですので、表見代理が成立しない無権代理行為は、本人が追認するかしないかの結論を出すまでは、どっちつかずの中途半端な状態です。この状態のことを不確定無効と言います。無効が確定しない状態なので、不確定無効なのです。
 無効が不確定、すなわち無い物が不確定、というのもなんだか面白いですよね。まるで釈迦に始まる中観仏教みたいです。
 ちなみに、私は釈迦に始まる中観仏教が大好きです。すいません。思いっきり余談でした(笑)。
奈良の大仏
催告権と取消権

事例2
Bは代理権がないのにもかかわらず、お金持ちのAの代理人と称して、軽井沢にあるC所有の甲別荘の売買契約を締結した。その後、Aに代理権がないことが発覚すると、Cは厄介な法律問題には関わりたくないと思い、さっさと別の買主を見つけて甲別荘をなんとかしてしまいたいと考えた。


 さて、この事例2では事例1のときとは違い、無権代理行為の相手方Cは、無権代理人Bとの甲別荘の売買契約をナシにしてしまいと考えています。
 では、甲別荘の売買契約がナシになる場合というのは、どういうケースがあるでしょうか?
 それは、本人Aが追認しないか、表見代理が不成立になるかです。
 しかし、これだと相手方Cは困りますよね。なぜなら、まず本人Aが追認するかしないかの決断を待たなければなりません
 本人の決断が出るまでは、不確定無効の状態が続きます。Cとしては、その間にも別の買主を探したいでしょう。もちろん、その間にも別の買主を探すことはできますが、もし本人Aが追認したならば、途端にBの無権代理行為は有効になり、Cには甲別荘の引渡し義務が生じます。なので、Cとしては動きづらいんです。
 そして「なら他の買主は諦めてAに買ってもらおう」と思っても、Aが追認してくれるならいいですが、そうでない場合は、表見代理が成立しなければなりません。そのためにお金と時間を使って裁判して立証して...となると、Cも大変です。
 そもそも事例2で、Cは法律問題には関わりたくないと考えています。
 そこで民法では、このように無権代理行為で困ってしまった相手方に、そのような状況を打破するための権利を用意しました。
 それが、無権代理行為の相手方の催告権取消権です。

催告権

 これは、無権代理行為の相手方が、本人に対して相当の期間を定めた上で「追認するか、しないか、どっちだコラ」と答えを迫る権利です。そしてもし、期間内に本人が返事を出さなかったらそのときは、本人は追認拒絶したとみなされます。無権代理行為の相手方の、本人に対する催告権には、このような法的効果があります。
 従いまして、事例2の相手方Cは、本人Aに対して相当な期間を定めた上で「追認するか、しないか、どっちだコラ」と催告し、本人Aが追認すれば、無権代理人Bが行った甲別荘の売買契約が有効に成立し、本人Aが追認しないかあるいは期間内に返事をしなかった場合は、本人Aは追認拒絶したとみなされ、無権代理人Bが行った甲別荘の売買契約は無かったことになり、Cはさっさと次の買主探しに専念できます。

取消権

 無権代理行為の相手方が本人に対して取消権を行使すると、無権代理行為は無かったことになります。すると当然、本人は追認ができなくなります。
 したがって、事例2で、法律問題には関わらないでさっさと他の買主を見つけたい相手方Cは、本人Aに取消権を行使すれば、手っ取り早く解決できます。

補足

 無権代理行為についての追認について、民法ではこのような条文があります。

民法113条2項
追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。


 この民法113条2項の条文がまさに、事例2で重要になってくるのです。
 というのは、もし本人Aが追認したいと考えていた場合はどうでしょう?
 相手方Cは、むしろ別の買主に売りたいと考えていますよね。すると、状況としては「本人Aの追認が先か相手方Cの取消権行使が先か」というバトルになります。
 そしてこのときに、本人Aが無権代理人Bに追認の意思表示をしていたらどうなるでしょう?
 それだと相手方Cは、本人が追認したかどうかがわかりませんよね。その間に相手方Cが本人Aに対して取消権を行使したら、そのときは相手方Cの勝ちです。
 以上、といったことを、民法113条2項では規定しているのです。

追認と法定追認
女性講師
 最後に、追認についての補足的な内容を記します。

催告権行使と取消権行使の違い

 実は、この2つの権利行使には大きな違いがあります。
 その違いは、取消権善意の相手方しか行使できませんが、催告権悪意の相手方でも行使できます。
 なぜそのような違いがあるのか?
 これは、2つの権利の性格を考えればわかりやすいです。
 取消権は「取り消します!」と相手方が自分自身の意思をぶつけるのに対し、催告権は「追認しますか?どうしますか?」と本人の意思決定を伺う行為です。取消権は相手方自身が結論を出しているのに対し、催告権は「追認するかしないか、どっちだコラ」といくら迫っても、あくまで結論を出すのは本人です。つまり、催告権は取消権に比べて力の弱い権利なのです。
 したがって、結論を出すのはあくまで本人の催告権については、悪意の相手方でも行使可能となっている、ということです。

【内容証明郵便と返事】
 実際に現実に「追認しますか?どうしますか?」という内容証明郵便が送られてきたときに、追認する気がない場合、これに返事を書く必要があるのでしょうか?
 その場合、返事の必要はありません。そのまま、その催告をシカトしておくと、それがそのまま民法114条の追認拒絶となります。

無権代理行為の追認と法定追認

 無権代理行為の追認においては、民法125条の法定追認の適用があるのでしょうか?
 この問題について判例では、民法125条の規定はあくまで「制限行為能力、詐欺、強迫」を理由として取り消すことができる行為の追認についての規定であるため、その適用(類推適用)を否定しています。
 ということなので、もし無権代理においての本人が、民法125条に規定されている行為をしたとしても、法律上、追認したとみなされることはありません。(無権代理の本人が民法125条に規定される行為をしたときに、その行為が黙示の追認と判断されてしまう可能性はあります)

【追認の効力】
 追認の効果は、別段の意思表示がなければ遡及します。
 つまり、追認の効力は原則として遡って発生します。
 念のため申し上げておきます。

 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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