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【共有】持分権とは/共有物の使用方法&変更&管理&保存について/解除権の不可分性の例外とは/持分権の主張、共有物の明渡し請求等について
【共有物の分割】3通りの分割協議の基本/共有物分割協議の第三者参加&協議の解除とは
【共有物の管理費用の立替】共有者が負担を履行しない場合は?/共有者と対抗の問題について
【共有物の持分放棄&譲渡】共有者の死亡とその持分が他の共有者に帰属するまでの流れ
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【共有】持分権とは/共有物の使用方法&変更&管理&保存について/解除権の不可分性の例外とは/持分権の主張、共有物の明渡し請求等について

▼この記事でわかること
共有の基本
持分権とは
共有物全体の問題「共有物の使用方法・変更・管理」について
共有物の保存、解除権の不可分性の例外
共有の補足~持分権の主張、共有物の明渡し請求等
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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共有の基本

 1つの物を、1人ではなく複数人で所有することを共有と言います。

共有関係が生まれるとき

 共有関係は、法律の規定によって生じます。
 また、当事者の合意によっても生じます。
 法律の規定によって生じる場合とは、例えば相続です。地主が死亡し、その地主の相続人が二人いれば、法律の規定により、問答無用にその土地は相続人二人の共有になります。その後、相続人の相続放棄や遺産分割協議により相続の内容が変わる可能性はありますが、まずは法律の規定によって、そのようになるのです。(遺言による相続についてはここでは省きます)
 当事者の合意によって生じる場合とは、例えば、夫婦で1000万円ずつ出し合って不動産を購入するような場合です。
 このように、共有関係は、法律の規定による場合と、当事者の合意による場合とがあります。

共有は一物一権主義の例外

 物に対する権利である物権の世界では、一物一権主義というものがあります。「一つの物には一つの物権」という原則です。(排他的支配権)
 そして、共有はその「一物一権主義の例外」とも言われます。なぜなら、一つの物を複数人で共有するからです。
 ただ、共有の場合でも、共有者はそれぞれ持分権というものがあり、各持ち分に対しては一つの持分権しか存在しません。
 そして、持分権は各自で自由に処分できます。例えば、一つの土地をAとBが相続すると、その土地はAとBの共有物になり、AとBはそれぞれ各持ち分に対して持分権を持ちます。このとき、Aが自分の持ち分を売ったりするのは自由です。もちろん、Bが自分の持ち分を売ったりするのも自由です。ただし、AがBの持ち分を売ったりすることはできません。
 ということなので、持分権は、各々の各持ち分に対しては、所有権と同じようなものなのです。そう考えていくと、共有も、一物一権主義にしっかりと則っていると言えます。

持分権

 共有について考える場合は、共有物全体の問題なのか、各持分権の問題なのか、そこを見極めた上で考えていかないと、よく分からなくなってしまいます。ですので「共有物全体」と「各持分権」とを分けた上で、まずは持分権から解説して参ります。
 さて、先ほど持分権は、各持ち分については所有権と同じようなものだとご説明いたしました。実際共有持分権の法的性質は所有権である」と説明されます。その共有持分権の法的性質を表す典型例で、かつ現実にもよくあるのは、分譲マンションです。
マンション
~分譲マンションの性質を考えれば共有持分権の法的性質が分かる?~

 冒頭に、共有のパターンとして相続による共有と夫婦の共有の例を挙げましたが、日常的にもっとも起こっている共有のケースは何か?となると、それはおそらく、分譲マンションのケースになるでしょう。
 分譲マンションでの所有は区分所有とも言われ、その所有権は区分所有権とも言われます。
 分譲マンションにおいてその建物の各区分は、それぞれ別の所有者が存在し、そこには個々独立の所有権が成立しています(一つのマンションに複数の所有権が独立しながら存在、つまり、一つのマンションに複数のオーナーが存在する)。
 じゃあマンションで何を共有しているの?
 分譲マンションにおいて、共有になっているのは土地です。土地というのは、そのマンションが建っている敷地です。
 つまり、ある土地に分譲マンションが建っていて、そのマンションが100の専有部分(わかりやすく言えば100戸)に分かれていれば、その土地には100の持分権が存在することになります。
 もしあなたがその分譲マンションのオーナーだったとすると、通常の場合、あなたが所有しているのは、そのマンションの所有権(区分所有権)と、その土地の100分の1の持分権です。
 そして、あなたがそのマンション(所有権)を誰かに売るのは自由ですよね。
 あなたがそのマンション(所有権)を誰かに売れば、当然それに伴ってその持分権も一緒に売られることになりますが、その際、他の99人のオーナーの承諾はいらないですよね。
 これが「共有持分権の法的性質は所有権」の具体例と説明になります。共有持分権の法的性質、そのイメージは掴んでいただけたかと存じます。

共有物全体について

 続いては、共有物全体の問題「共有物の使用方法・変更・管理」について、解説して参ります。

共有物の使用
車
 例えば、1台の車をA・B・Cの3人で共有しているとします。そしてA・B・Cの持ち分はそれぞれ3分の1ずつです。この場合、3人の共有物である車の使用方法は一体どうなるのでしょうか?
 これについて該当する民法の条文はこちらです。

(共有物の使用)
民法249条
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。


 共有物の使用について、民法では上記のような規定を置いています。
 しかし、どうでしょう。正直これだとよくわからないですよね。まさか、車(共有物)を使用するときは常に「ABC3人一緒に仲良くドライブ♫」という訳にもいかないでしょう。
 結局、車(共有物)の使用方法はどうなるの?
 これについては、結局、A・B・Cの3人の協議(話し合い)で決めることになります。
 したがって、共有物の使用方法については一概には言えず、協議による決定内容によって変わってきます。

共有物の変更

 続いて、共有物の車全部を第三者に売る場合について考えて参ります。
 これについて、民法では下記の規定を置いています。

(共有物の変更)
民法251条
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。


 上記、民法251条条文中の「変更」という言葉がわかりづらいと思いますが、共有物の売買は、共有物の「変更」にあたります(農地転用などの地目変更もこの「変更」に含まれます)。
 したがって、共有物の車の売買は、民法251条(共有物の変更)の規定が適用されます。
 また、条文中の「他の共有者の同意を得なければ」というのは、共有者全員の意思表示が必要という意味です。
 ということなので、3人の共有物である車全部を売る場合は、ABC3人全員の「売る」という意思表示が必要になります。
 3人全員が売るという意思を示さない限りは、売ることはできません。

共有物の管理

 続いて、共有物の車を第三者に賃貸する(貸す)場合について、考えて参ります。
 これについて、民法では下記の規定を置いています。

(共有物の管理)
民法252条
共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。


 上記、民法252条条文中の「管理」という言葉には、共有物の賃貸も含まれます。ですので、共有物を賃貸するには、各共有者の持分の価格に従って、その過半数で決定するということです。株主総会の決議に似てますね。
 したがって、共有物の車を第三者に賃貸する場合は、ABCの持分はそれぞれ3分の1ずつですので、3人中2人の賛成で車の賃貸をすることが可能です。

共有物の保存、解除権の不可分性の例外

 共有物を売る場合、共有者全員の意思表示か必要です。(共有物の変更)
 共有物を賃貸する場合、共有者の持分の価格に従い、その過半数の賛成が必要です。(共有物の管理)
 では、共有物が不法占拠されていた場合は、一体どうなるのでしょうか?

共有物の保存

 例えば、一台の車をA・B・Cの3人で共有していて、持ち分はそれぞれ3分の1だった場合に、その共有物である車が第三者に不法占拠されたとき、共有者の意思は、どのように決められるのでしょうか?
 これについての民法の規定はこちらです。

民法249条
保存行為は、各共有者がすることができる。


 上記、民法249条冒頭の「保存行為」という言葉がピンと来づらいと思いますが不法占拠されている物を取り戻すこと」は保存行為になります。(ちなみに自動車の修理なども保存行為です)
「各共有者がすることができる」というのは、各共有者が1人でできるという意味です。つまり、共有物が不法占拠された場合、各共有者がそれぞれ単独で、共有物全体についての返還請求権を行使することができます。
 したがいまして、共有物の車が第三者に不法占拠された場合、ABCの3人は、それぞれが単独で、不法占拠者に対して返還請求をすることができます。

【保存行為の補足】
 なお、保存行為には次のようなものもあります。
・共有物への妨害排除請求
 例→共有地(土地)上の不法建築物の撤去請求など
・不法な登記名義の抹消
 例→すでに消滅した抵当権の抹消登記請求など

共有物の賃貸借契約の解除

 先ほども解説いたしましたが、共有物の賃貸を行うには、各持分の価格に従い、その過半数の賛成が必要です。3人でそれぞれ3分の1ずつの持分で共有している共有物を賃貸するなら、2人以上の賛成が必要です。
 さて、それでは、賃貸している共有物の賃貸借契約を解除する場合は、どうなるのでしょうか?
 共有物の賃貸借契約の解除は、民法252条(共有物の管理)に含まれます。
 つまり、共有物の賃貸借契約を解除する場合は、共有物を賃貸する場合と一緒で、各持分の価格に従い、その過半数の賛成が必要です。例えば、3人で持分3分の1ずつで不動産を共有していて、その不動産を賃貸している場合、その不動産の賃貸借契約を解除する際は、2人以上の賛成が必要ということです。

解除権の不可分性の例外

 本来、解除権は分けることができません。(解除権の不可分性)
 それは次の民法の条文で規定されています。

(解除権の不可分性)
民法544条
当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる。


 なぜ民法で、このように解除権の不可分性を定めているかの理由は、一部の者のみの解除を認めるとその後の法律関係が複雑になるので、その事態を避けるため、とされています。
 しかし、共有物の賃貸借契約の解除については、その例外なのです。
ここがポイント女性
 この点は試験ではよく問われるものなので、資格試験等で民法の学習をされている方は、是非覚えておいてください。

 なお、共有物を売却した後に、売買契約を解除する場合は、共有者全員の合意が必要になります。
 こちらは同じ解除でも、売買契約の解除なので「共有物の管理」ではなく「共有物の変更」に該当し、共有者全員の合意が必要になるということです。
 この点も併せて覚えておいてください。

共有の補足~持分権の主張、共有物の明渡し請求等
持分権の主張

 共有者が、その持分権を処分・主張するのは自由です。
 また、持分権の取得時効を主張することもできます(つまり持分権を時効取得することも可能ということ)。その場合は他の共有者は無関係です。
  さて、持分権の処分といえば売買や担保設定がありますが、持分権の主張というと、一体どのような場合があるのでしょうか?

【持分確認請求権】
 これは、他の共有者または第三者に対して、自己の持分権の確認を求める権利です。

【持分権の登記請求】
 これは、他の共有者または第三者に対して、自己の持分権の登記を求める権利です。

【持分権による時効の中段】

 共有物が第三者に占有されていて時効取得されそうな場合に、共有者は「自己の持分のみ」の時効を中断することができます。
「自己の持分のみ」ということは、その中断の効果他の共有者の持分には及びません。例えば、ABCの共有物が占有されていて、Aの持分の時効が中断しても、BCの持分の時効は中断しないということです。もし共有物全体、つまり共有物の所有権全体について時効の中段をするには、共有者全員(ABC三人全員)で請求しなければなりません。

【持分権による損害賠償】

 共有物の侵害につき、持分に応じた損害賠償請求ができます。
 ただし、あくまで各共有者が自己の持分に応じた損害賠償請求をできるのであって、他の共有者の持分の分まで賠償請求することはできません。
 なお、損害賠償請求は金銭での賠償を求めるものですが、金銭債権は当然に分割することが可能です。ですので、持分に応じて分割した賠償請求ができるのです。

共有物の占有の明渡し請求

 共有物の使用方法は共有者間の協議によって決められます。
 ところが、なんと、協議によらないで一人の共有者が勝手に共有物を占有してしまっていた場合、他の共有者は、勝手に一人で占有している共有者に対して「勝手に何やってるんだ!明け渡せ!」と、当然に明渡し請求をすることはできません。
 これについては「なんで?」となりますよね、ちょっと納得し難いですよね。しかし、これは判例でこのようになっています。そして、ここは試験などで問われやすい箇所です。
 したがって、資格試験等で民法の学習をしていらっしゃる方は、納得し難いかとは思いますが、このことは強引に覚えてしまってください。
 なお、このような問題を解決するには「共有物の分割」を求めていくことになるのですが、それについては別途解説いたします。

【持分の推定規定】
 各共有者の持分が不明な場合は、民法250条の規定により、その持分は相等しいものと推定されます。ただし、これは「みなす」ではなく「推定」なので、後になって各持分が変わる可能性はあります。(推定の反証可能性)

【準共有】
 所有権以外の財産を共有することを準共有と言います。例えば、抵当権の準共有、地上権の準共有、といったものがあります。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。

【共有物の分割】3通りの分割協議の基本/共有物分割協議の第三者参加&協議の解除とは

▼この記事でわかること
3通りの分割
共有者間の協議が調わなかった場合(協議をすることができない場合)
共有物分割協議への第三者の参加
共有物分割請求ができない場合
共有物分割協議の解除
遺産分割協議の解除
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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共有物の分割

 共有は、一つの物には一つの所有権(物権)という民法の一物一権主義の例外と言われます。
 例外ということは、民法の原則としては、あくまで一物一権ということです。なぜなら、一つの物を複数人が共有するというのは、権利関係が複雑になりがちだからです。民法としては、そのような共有状態をあまり望ましく思わないのです。
 そこで、民法は、そのような共有状態を解消する手段を規定しました。それは、共有物の分割請求です。(分割については後で詳しく解説します)
 各共有者は、いつでも、分割請求をすることができます。
 また、共有物分割請求権は消滅時効にもかかりません。
 したがって、各共有者は、いくら時間が経過しても、いつでも、分割請求ができます。

3通りの分割
三本指
 分割には、3通りの方法が考えられます。

1【現物分割】
 これは言葉のとおりで、共有物を割る方法です。
 例えば、ABCの3者の共有の土地があった場合に、その土地を3つに分割して、各区画をABCそれぞれ1人の単独所有にします。

2【価格賠償】
 これは、共有物を1人の所有物にして、あとはお金で解決する方法です。
 例えば、車がABCの3者共有物だった場合に、分割しようにも、土地のように現物を分割することはできません。
 このような場合に、共有物の車をAの単有にして、BCにはしかるべき価格(金銭)を支払って解決します。

3【代金分割】
 これは、共有物を売却して、その売却代金を共有者間で分け合う方法です。
 例えば、車がABCの3者共有物だった場合、その車を売って、売って得たお金をABCの3者で分け合います(土地のように現物分割ができるものでも、この代金分割の方法で、土地を売却してその売却代金を共有者で分け合うことは可能)。

 これら3つの手段のどれかをとって、共有物の分割をすることができます。
 こうした共有物の分割は、共有者全員の協議で行います。

共有者間の協議が調わなかった場合(協議をすることができない場合)

 必ずしも、共有物の分割について、共有者間の協議が整うとは限りません。また、そもそも協議をすることができない場合もあるでしょう。
 では、もし共有者間の協議が整わなかった場合や、そもそも協議をすることができない場合は、一体どうすればいいのでしょうか?
 民法の条文はこちらです。

(裁判による共有物の分割)
民法258条
1項 共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2項 前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。


 上記、民法258条の規定により、共有者間の協議が整わないときは、裁判所に分割を請求することができます。

裁判による分割は現物分割が原則
裁判所
 民法258条2項を読むとわかりますが、裁判による共有物の分割は、現物分割が原則であり、例外的に競売による代金分割の方法をとります。
 あれ?価格賠償は?
 そうなんです。実は民法では、裁判による共有物の分割について、価格賠償の方法は想定していないのです。
 そして、そのようになっていることには理由があります。その理由はこうです。例えば、ABCの三人の共有物について、裁判所が「共有物をAに取得させ、AはBCに対し価格の賠償をせよ」と判決を下したとします。しかし、現実にAが価格の賠償をしなかったとき、裁判所としてはその責任を負えないという事情があるのです。ですので、民法の規定上、裁判による共有物の分割に、価格賠償の方法が想定されていないのです。
 ただし、そうした懸念がないなど、特段の事情がある場合は、裁判による分割でも価格賠償をすることができるとした判例があります。
 したがいまして、裁判による共有物の分割は、原則は現物分割で、例外的に代金分割の方法をとり、民法の規定上、価格賠償は想定していません。ただし、特段の事情がある場合は、価格賠償の方法をとることもできる、ということになります。

共有物分割協議への第三者の参加

 共有物分割の協議は、共有者間で行うものです。
 しかし、民法260条1項の規定により、共有物について権利を有する者と各共有者の債権者は、協議に参加することができます。

(共有物の分割への参加)
民法260条
共有物について権利を有する者及び各共有者の債権者は、自己の費用で、分割に参加することができる。


※共有物について権利を有する者とは
→共有物が土地の場合、その土地の抵当権者(担保物権)や地上権者(用益物権)
※共有者の債権者とは
→共有者に金銭等を貸付している債権者(一般債権者)や、共有物の賃借人(共有物が土地なら、その土地の借地人)

 この民法260条1項の規定により、 共有物について権利を有する者各共有者の債権者は、協議に参加することができます。
 しかし!この規定、実は、実際にはあまり役に立たないザル規定なんです。
 その理由は以下です。

・協議に参加する費用は権利者および債権者側が負担
 例えば、東京で行う共有物分割協議に北海道に住む権利者が参加するには、その行き帰りの旅費は全て自己負担ということ。
 これはイタイ!
・共有者側に権利者および債権者に対する告知義務がない
 つまり、権利者および債権者にはヒミツにして、こっそり勝手に共有物分割協議ができてしまうということ。
 これだけでも役立たずのザル規定なのは明白じゃね!?
・協議に参加しても権利者および債権者側の意見に拘束力はない
 権利者および債権者が協議に参加して意見を述べたところで、共有者側はその意見をシカトしてもまったく問題ないということ。
 意味ナーイじゃーん!

 以上のことから、民法260条1項の第三者の共有物分割協議への参加についての規定はほとんど役立たずなのです。
 ただ、決してその規定がまったく意味がないという訳ではありません。もし第三者が協議への参加請求をしたのにもかかわらず、共有者側がその参加請求を無視して勝手に分割してしまったら、共有者側はその分割を参加請求者に対して対抗できなくなる、という法的効果があります。
 しかし、これも結局、参加請求者にはしっかりと協議に参加させた上で、その意見をシカトすれば良いだけのことなので、やはり役立たずのザル規定なのは否めないでしょう。

共有物分割請求ができない場合
バツ 女性
 当然、共有物だからといって何でもかんでも分割請求できる訳ではありません。
 次に挙げるものは、共有物の分割請求ができせん。

・境界線上の境界標など(民法229条の共有物)
 境界標とは、土地の境界を示す標のことです。要するに「境界標からこっちはAさんの土地。境界標からあっちはBさんの土地」というものです。
 この境界標は、分割することはできません。なぜなら、分割してしまったら境界標の意味がなくなるからです。
・区分建物の敷地利用権
 これは分譲マンションの専有部分の所有権(区分所有権)と一体になっている土地の持分権(敷地利用権)です。それを分割するというのは訳の分からない話で、そんなことは当然できません。
・区分建物の共有部分
 これはマンションのエレベーターや階段部分のことです。
 当たり前ですが、そんなものが分割できる訳ないですよね。

共有物不分割特約

 各共有者はいつでも共有物の分割請求をすることができますが、民法256条1項但し書きの規定により、共有物を分割しないという契約を共有者間ですることができます。
 ただし、分割しない期間は5年を超えてはなりません。分割しない期間を6年間と定めたら、その定めは無効になります。分割しない期間は5年以内でなければ有効になりません。
 なお、この共有物不分割特約は登記事項です。その旨の登記をすることで、その不分割を第三者に対抗することができます。

共有物分割協議の解除

 共有物分割協議により共有関係は終了します。現物分割であれば、各共有者は分割された物の単独の所有者になります。
 ところで、もし共有物分割協議の内容に、当事者が意図しないような不公平が発生してしまった場合、一体どうなるのでしょうか?
 当事者が意図しないような不公平が発生した場合とは、例えば、共有物が土地で、その土地を各共有者ごとに等分に分割したら、そのうちの一区画だけが地盤が弱くて、財産価値が他の区画よりも著しく劣ることが後から判明したようなケースです。
 そのようなケースで、財産価値が著しく劣る区画の所有者になってしまった者が「こんな分割協議はおかしい!この協議はナシだ!」と、分割協議を解除して、協議自体をなかったことにできるでしょうか?
 結論。共有物分割協議の解除は可能です。その根拠となる民法の規定はこちらになります。

(分割における共有者の担保責任)
民法261条
各共有者は、他の共有者が分割によって取得した物について、売主と同じく、その持分に応じて担保の責任を負う。


 この民法261条の条文だけだとちょっとわかりづらいですが、要するに、共有者は分割した物について「売主の担保責任」と同じ責任を負うということです。
「売主の担保責任」は、売買した物について、場合によって買主から売主に対する損害賠償請求や代金減額請求や契約解除を認める規定です。(売主の担保責任についての詳しい解説は「【売主の担保責任】全部&一部他人物売買と数量指示売買/履行の追完&解除&代金減額&損害賠償の請求について」をご覧ください)
 したがって、共有物分割協議の解除は可能なのです。
 ただし!裁判により共有物の分割が行われた場合は、その解除はできません。
 裁判による判決を、一般私人の一方的な意思表示で「なかったこと」にできてしまったら、世の中の秩序が乱れておかしなことになってしまいますよね。そんなことは日本のような法治国家ではあり得ません。

遺産分割協議の解除

 共有物の分割に似た制度に、遺産分割があります。(遺産分割についての解説は「【共同相続と登記】遺産分割協議と相続人&相続放棄者の勝手な不動産譲渡問題」もご参照ください)
 そして遺産分割の場合も、遺産分割協議というものがあります。
 ところで、遺産分割協議の解除はできるのでしょうか?
 遺産分割協議後にもめそうなケースとしては、夫が亡くなり、相続人が妻と息子二人で、長男には母の介護を条件として多めの財産を与えていたのに、長男がその義務を果たさなかったような場合です。このような場合に、遺産分割協議を解除することができるのか?
 結論。遺産分割協議の解除はできません。なぜなら、それができてしまうと法的安定性が損なわれるからです。
 というのは、遺産分割は、特定の資産を分割する共有物分割よりも、分割する資産の規模がずっと大きいことの方が多いでしょう。それだけ大きい資産となると、そこに絡む第三者の存在などの法律問題、そのややこしさも、特定の資産の共有物分割の比ではありません。
 ですので、遺産分割協議が解除されてなかったことになってしまうと、ややこしい法律問題が一気に噴出してしまうのです。それはまさしく、法的安定性を損なうことになります。
 したがって、遺産分割協議の解除はできないのです。
 なお、遺産分割協議の合意解除可能です。
 合意解除とは、相続人間で「この遺産分割協議はなかったことにしよう」とする新たな契約です。こういった形の解除であれば可能になります。

【補足】

 ある財産の分割が、共有物分割なのか遺産分割なのかを見極める基準として、両分割には以下の違いがあります。

共有物分割→地方裁判所の管轄
遺産分割→家庭裁判所の管轄

 共有物分割の裁判であれば地方裁判所を利用することになり、遺産分割であれば家庭裁判所を利用することになります。

 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。

【共有物の管理費用の立替】共有者が負担を履行しない場合は?/共有者と対抗の問題について

▼この記事でわかること
超基本と共有者が負担を履行しない場合
他の共有者の管理費用を立て替えた場合
共有者と対抗の問題
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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共有物の管理費用の立替

 共有物の管理費用などの負担は、どうなるのでしょうか?(共有の基本についての詳しい解説は「【共有】持分権とは」をご覧ください)
 まずは民法の条文をご覧ください。

(共有物に関する負担)
民法253条1項
各共有者は、その持分に応じ管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。


 この民法253条の条文だけではイメージしづらいと思いますので、具体例を挙げます。
 共有物が建物や土地などの不動産の場合、その固定資産税修繕費用管理費用は、各共有者は各自の持分に応じて負担を負います。

共有者が負担を履行しない場合

 例えば、建物や土地などの不動産の共有者の一人が、自己の負担分の費用を支払わない場合、どうなるのでしょうか?
 もし共有者が一年以内にその負担義務を履行しない場合は、他の共有者は、相当の賞金を支払ってその持分を取得することができます
「相当の賞金」という言葉が一瞬わかりづらくさせますが これはつまり、不動産の共有者の一人が一年以内に自己の負担分の費用を支払わないような場合は、その共有者の持分を他の共有者が、事実上、買い取ってしまうことができ、その者との共有関係を解消してしまうことができる、ということです。

他の共有者の管理費用を立て替えた場合

 さて、ここからがいよいよ今回の本題です。
 例えば、AとBが不動産を共有していて、AがBの負担すべき管理費用を立て替えた場合、どうなるでしょうか?
 この場合、当然にAはBに対して立て替えた費用を請求できます。
 では、Bがその持分権をCに売却してしまった場合はどうなるのでしょうか?
 この場合、AはCに対して、その立て替えた費用の請求ができます。
 その理由は、Bから持分権を譲渡されたCは、Aの立替金の恩恵を受けていると考えられるからです。(要はAが費用を立て替えた事でCが得したんじゃね?ということ)
 なお、今ご説明した、AがCに対して立替金を請求する権利ですが、公示はされません。
 公示されないということの意味は、つまり、誰にでも見える形で表に出ないということです。
 ですので、もしCがその事実を知らなかったのなら、不測の損害を受けることになります。
 それって制度的な不備じゃね?
 確かにそうなのですが、実はCがその事実を知らなかったというような状況は、ちょっと考えにくいです。
 というのは、Bがその共有不動産の持分権をCに売却する際、BC間の売買契約の間に入る不動産業者が、その管理費用の滞納状況(Bの負担すべき管理費用をAが立て替えたままの状況)を「重要事項説明」の一項目としてCに説明しているはずだからです。
 そして、この不動産業者の「重要事項説明」は法的な義務です。つまり、法的義務として実務上も必須な重要事項説明という形で、制度的な不備が補完されているのです。

【参考】
(重要事項の説明等)
宅地建物取引業法35条
宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。

 上記、条文中の「次に掲げる事項」の中に、先ほど解説した「重要事項説明」が含まれます。
説明
 したがって、上記条文の規定に基づいて、不動産業者は管理費用の滞納状況を宅建士に「重要事項説明」の一項目として説明させなければなりません。

共有の補足:共有者と対抗の問題

 共有者と対抗の問題というのは、共有について考えるときの主要な問題からは外れます。
 したがいまして、ここからの解説は、共有についての理解を深めるための補足的なものとして、頭に入れておいていただければと存じます。
 まずは事例をご覧ください。

事例
AとBとCは、甲不動産を共有している。Cはその持分をDに譲渡したが、その旨の登記はしていない。


 さて、この事例でAとBは、Cの負担すべき甲不動産の管理費用を、誰に請求すべきでしょうか?
 結論。AとBが甲不動産の管理費用を請求すべき相手はになります。なぜなら、Dが登記をしていない以上、登記名義人はあくまでC(登記上の共有者はあくまでC)だからです。
 なお、登記をしていないDは、AとBに対して、甲不動産の共有者の1人となったことを対抗できません。これも先ほどと理由は一緒で、Dが登記をしていない以上、登記名義人はあくまでC(登記上の共有者はあくまでC)だからです。

補足

 実は、本来の不動産登記の対抗問題の原則から考えると、AとBに対し、Dが甲不動産の共有者の1人となったことを、登記をしていないことを理由に対抗できないとするのは、少し変に感じます。
 というのは、A・BとDの関係は、そもそも登記の有無が問題になるような対抗関係にあるのでしょうか?

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
民法177条
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。


 この民法177条の条文により、不動産の所有権(物権)争いは「早く登記した者勝ち」になります。
 しかし、これは1つの不動産を奪い合う場合です。今回の事例は、1つの不動産を奪い合っている訳ではありません。1つの不動産を持分ごとに所有し合っているだけです。対抗関係でなく共有関係なのです。AとBは、ただ管理費用を請求したいだけなのです。
 こう考えていくと、今回の事例には民法177条は当てはまらないはずで、Dは登記がなくとも甲不動産の共有者の1人であることを主張できるはずです。
 しかし、判例では、今回の事例のようなケースでも、民法177条の規定が適用し、登記が必要だと考えます。
 判例は、登記を要する物権変動には制限がないと考えます(無制限説)。
「登記を要する物権変動には制限がない」と考えるということは、不動産の所有権が移転するようなケースでは、それが通常の対抗関係になるようなケースだけでなく、共有関係のようなケースでも、そこに所有権移転といった物権変動があれば、民法177条の範囲内と考えるということです。
 したがって、登記がないDは甲不動産の共有者の1人であることをAとBに対抗できず、AとBが管理費用を請求する相手は登記名義人であるCとなるのです。
 理屈としては少しややこしく感じるかもしれませんが、以上が結論に至るまでの論理になります。

 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。

【共有物の持分放棄&譲渡】共有者の死亡とその持分が他の共有者に帰属するまでの流れ

▼この記事でわかること
共有物の持分放棄・持分譲渡の基本
持分放棄後に持分譲渡?
共有者が死亡した場合
相続人なく共有者が死亡してからその持分が他の共有者に帰属するまで
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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共有物の持分放棄・持分譲渡

 共有物の持分は放棄することができます。
 共有物の持分を放棄するとは、共有物の持分権を手放して、その共有物の共有者ではなくなることです。
 これが共有物の持分放棄です。
 では、共有物の持分放棄をすると、放棄された持分権はどうなるのでしょうか?
 民法の規定はこちらです。

(持分の放棄及び共有者の死亡)
民法255条
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する


 上記、民法255条の規定により、共有者の1人が持分放棄をすると、その持分は他の共有者に帰属します。他の共有者に帰属するとは、他の共有者の持分に加わるという意味です。
 それでは、ここからは事例とともに解説して参ります。

事例1
AとBとCは、甲不動産を共有している。各自の持分は3分の1ずつである。その後、Cはその持分を放棄した。


 これは、AとBとCの持分は3分の1ずつで、Cが持分放棄をした、という事例です。
 共有者の1人が持分放棄をすると、その持分は他の共有者に帰属します。つまり、Cの放棄した持分はAとBに帰属します。
 このとき、放棄された持分が他の共有者に帰属する割合は、人数で割るわけではなく、他の共有者が元々持っている持分の割合に応じて決定します。
 すると、AとBの持分の割合は3分の1ずつで一緒です。ですので、Cの放棄した持分は等分にAとBに分かれて帰属します(事例1はAとBの持分割合が一緒なので、結果的には人数で割るのと同じになる) 。

A持分  B持分  C持分
3分の1 3分の1 3分の1

[C持分放棄]
AとBの持分割合に応じてAとBに帰属

C持分
3分の1÷2=6分の1→Aに帰属
           →Bに帰属
            
結果

A持分
3分の1+6分の1
B持分
3分の1+6分の1

A持分  B持分
2分の1 2分の1

 したがいまして、放棄されたCの持分はAとBの持分に加わり、その結果、甲不動産はAとBが持分半分ずつでの共有になります。

 続いて、次のようなケースではどうなるでしょう?

事例2
AとBとCは、甲不動産を共有している。各持分は、Aが6分の1、Bが6分の2、Cが6分の3である。その後、Cがその持分を放棄した。


 この事例2も、ABCの三者共有となっていますが、各持分が違っています。
 さて、Cが持分放棄したことにより、その持分6分の3はAとBに帰属することになりますが、その割合はどうなるのでしょうか?
 甲不動産の持分は、Aが6分の1、Bが6分の2です。ですので、その比率1対2になります。
 ということは、C持分6分の3がその比率に応じて、Aに3分の1、Bに3分の2、と分かれて帰属します。

A持分  B持分  C持分
6分の1 6分の2 6分の3

[C持分6分の3放棄]
AとBへその持分割合(比率)に応じて帰属

Aに帰属する持分
6分の3×3分の1=18分の3
Bに帰属する持分
6分の3×3分の2=18分の6

 したがいまして、Cの持分放棄により、Aの持分とBの持分は次のようになります。

Aの持分
6分の1(元々の持分)+18分の3=18分の6
Bの持分
6分の2(元々の持分)+18分の6=18分の12

ということは

Aの持分は18分の6=3分の1
Bの持分は18分の12=3分の2

となる。

持分放棄後に持分譲渡

 共有者の各持分は放棄することができますが、譲渡することもできます。

事例3
AとBとCは、甲不動産を共有している。各自の持分は3分の1ずつである。その後、Cはその持分を放棄した。さらにCは、その放棄した持分をDに譲渡し、その旨の登記をした。


 さて、この事例3で、Dは譲渡された持分を取得することができるでしょうか?
 結論。登記を備えたDは、譲渡された持分権を取得します。
 したがいまして、甲不動産はABDの共有になり、Cの持分がABに帰属することはありません。
 Dが登記をしていなかったら?
 登記のないDは、譲渡された持分を取得することはできません。
 したがって、Dが登記をしなければ、Cの持分はAとBに帰属することになり、Dが甲不動産の共有者になることはありません。
ここがポイント女性
 ここでひとつ注意点です。
 相続放棄した者が、相続放棄後に、相続した不動産を譲渡した場合は、結果は全く違います。
 相続放棄の効果は絶対なので、相続放棄後に相続財産を譲渡することは完全に不可能です。譲受人が登記をしていようとそんなものは無効です。この点は、(共有の)持分放棄と相続放棄でごっちゃにならないようご注意ください。(相続放棄についての詳しい解説は「【共同相続と登記】遺産分割協議と相続人&相続放棄者の勝手な不動産譲渡問題」をご覧ください)

共有者の死亡

 共有者が死亡すると、その持分は相続人に相続されます。
 例えば、ABが甲不動産を共有していて、Bが死亡します。そして、Bの相続人がCとDだった場合、Bの持分はCとDに相続されます。その結果、甲不動産はA・C・Dの共有になります。
 さて、では死亡した共有者に相続人がいなかった場合、どうなるのでしょうか?
 その場合、死亡した共有者の特別縁故者に、その持分は相続されます(特別縁故者等、この辺りの問題は相続分野で改めて詳しく解説します)。
 それでは、死亡した共有者に相続人がなく、特別縁故者もいなかった場合は、どうなるのでしょうか?
 その場合、死亡した共有者の持分は他の共有者に帰属します。そして、そうなった場合、共有者が持分放棄をしたケースと考え方はまったく一緒です。

事例4
AとBとCは、甲不動産を共有している。各持分は、Aが6分の1、Bが6分の2、Cが6分の3である。その後、Aが死亡した。なお、Aには相続人も特別縁故者もいない。


 共有者が持分放棄をした場合と考え方が全く一緒ということは、この事例4のAが相続人なく死亡したケースは、Aが持分放棄をした場合と、考え方も結論も同じになるということです。
 じゃあどうなるん?
 死亡した共有者の持分は、他の共有者に、各自の持分割合(比率)に応じて帰属します。
 Bの持分は6分の2、Cの持分は6分の3です。ということは、BCの持分割合の比率2対3なので、死亡したAの持分6分の1は、Bに5分の2、Cに5分の3の割合で帰属することになります。

A持分6分の1
BCにその持分割合(比率)に応じて帰属

Bに帰属する持分
6分の1×5分の2=30分の2
Cに帰属する持分
6分の1×5分の3=30分の3

 したがいまして、Aが死亡して、Bの持分とCの持分は次のようになります。

Bの持分
6分の2(元々の持分)+30分の2=30分の12
Cの持分
6分の3(元々の持分)+30分の3=30分の18

ということは

Aの持分は30分の12=5分の2
Bの持分は30分の18=5分の3

となる。

相続人なく共有者が死亡してからその持分が他の共有者に帰属するまで
女性講師
 共有者の1人が死亡すると、その持分は相続人に相続され、相続人がいないと、特別縁故者に相続され、特別縁故者もいない場合は、他の共有者に帰属します。
 それでは、相続人なく共有者が死亡した場合の流れを簡単にご説明します。

1【相続財産の法人化】
 まず、相続人が明らかでないときは、相続財産は法人になります。
 相続人が明らかでないとは、相続人が誰なのかわからないとき、相続人がいるのかいないのかもわからないような場合です。

2【家庭裁判所による相続財産管理人の選出】
 相続財産が法人になると、家庭裁判所が相続財産管理人を選出します。
 相続財産管理人の権限は、相続財産の保存・利用・改良行為に限られます。

3【公告】
 相続財産管理人が選出されると、次は「公告」が以下の要領で行われます。
(1)相続財産管理人選任の公告
→これは家庭裁判所が行います(最低2ヶ月間)
(2)相続債権者および受遺者への公告
→これは相続財産管理人が行います(最低2ヶ月間)
(3)相続人の捜索の公告
→これは家庭裁判所が行います(最低6ヶ月間)

 ここまでの手続きが終了すると、相続人の不存在が確定します。
 公告というのは、公に告知することです。わかりやすく噛み砕いて言うと、公に向けた「相続財産管理人が選任されましたよ~」「相続人いませんか~?」というお知らせです。つまり、そのような公告を経て「相続人が1人もいない」という事実が確定します。
 ちなみにここまで、つまり、相続人不存在が確定するまでに、被相続人の死亡から、最低でも10ヶ月はかかります。

4【特別縁故者の申し立て】
 相続人の不存在が確定すると、そこから今度は「特別縁故者への財産分与申し立て期間」になります。その期間は、相続人の不存在が確定してから3ヶ月間です。
 被相続人と特別の縁故があった者は、この期間中に、財産の分与を家庭裁判所に請求することができます。わかりやすく噛み砕いて言うと、この期間中に特別縁故者は「相続人がいないなら私にその財産ちょーだい!」と、家庭裁判所に請求できます。
 そして、特別縁故者が存在し、家庭裁判所への財産の分与の請求があり、特別縁故者への財産分与が認められたとき、その財産は特別縁故者へ分与されます。

5【特別縁故者がいなかった場合/特別縁故者がいたが財産分与の請求がなかった場合/特別縁故者への財産分与が認められなかった場合】
 ここまで至ってようやく、被相続人(死亡した共有者)の持分が他の共有者へ帰属します。
 したがいまして、共有者の1人が死亡し、その持分が他の共有者へと帰属するまで少なく見積もっても1年ちょっとかかるということです。

 なお、共有者もいなかった場合はどうなるのか?ですが、その場合、相続財産は国庫に帰属します(国の物になるということ)。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。

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Author:根本総合行政書士
東京都行政書士会所属
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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