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連帯債務
分割債権(債務)と不可分債権(債務)~賃料債権は分割できない?
連帯債務~別個独立連帯責任?債務の履行請求・承認・免除・消滅時効の相対効?
連帯債務の相殺と求償~相殺を援用しないと?無資力への求償?様々なケースと注意点
連帯債務者の弁済の事前・事後通知義務~通知忘れは?求償の制限?前後通知忘れが重なると?
連帯債務の債権譲渡による混同と更改?連帯債務が相続されると?
連帯の免除~絶対的免除と相対的免除とその後の求償関係

保証債務
保証債務と付従性~催告・検索の抗弁権/保証額の上限と違約金の約定
保証債務における債権譲渡の通知は主債務者と保証人どちらにすべき?
保証債務&連帯保証と消滅時効~履行の請求・債務の承認をすると?時効完成後の債務の承認?
委託を受けたor受けない保証人~求償の制限と事前求償権
保証債務と相殺~弁済の事前・事後通知義務/主債務者と保証人
複数の保証人:共同保証~分別の利益?保証人間(同士)の求償?
素材62

分割債権(債務)と不可分債権(債務)~賃料債権は分割できない?/分割債権の具体例

▼この記事でわかること
そもそも債権とは
分割債権と不可分債権
建物等の賃料債権は不可分債権?
分割債権(債務)の具体例
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者でもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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債権とは

 債権とは、特定の者が特定の者に対して、一定の行為を請求することを内容とする権利です。
 例えば、Bにお金を貸したAが、Bに対して「金返せ」と請求する権利が、まさしく債権になり、Aは債権者となります。
 反対に、Aからお金を借りたBは、Aに対して「借金を返済しなければならない義務」を負いますが、これは債務になり、Bは債務者となります。

       債権者
        A
(返済義務)債務↑↓債権(金返せ)
        B
       債務者

 ところで、債権債務関係は「特定の者・対・特定の者」ですが、必ずしも1対1の関係に限ったものではありません。
 1個の債権に複数の債権者、または債務者が存在するケースもあります。
 そのようなケースを、多数当事者の債権(債務)関係と言います。

分割債権と不可分債権

 まず、債権(債務)には、分割できるものと分割できないものがある、ということを見ていきます。
 いきなり債権の分割と言われてもピンと来ないと思いますので、より具体的にわかりやすく解説していきます。

・分割債権
 分割できる債権の代表は、お金を請求する金銭債権です。
 例えば、100万円を50万・50万、90万円を30万・30万・30万というように、お金は当然に割ることができますよね。
 つまり「100万円払え」という債権は「50万円払え」「50万円払え」という2つの債権に分けることもできる、という事です。

・不可分債権
 不可分とは、可分できないという意味です。可分できないとは、分けることができないという意味です。
 ここで「なんで分割債権に対して不分割債権じゃないの?」「なんで不可分債権に対して可分債権じゃないの」という疑問がわいた人もいると思います。が、その疑問は華麗にスルーでお願いします。世の中には、わからなくていいこともあるのです(笑)。というより、わかる必要もないので、どんどん進んで参りまっす。
ピアノ2
 不可分債権(分割できない債権)としては「そのピアノをよこせ」のような、物の引渡しを請求する債権があります。
 これは割ること(分割)ができません。じゃあ僕は白鍵だけ、君は黒鍵だけ、なんてできませんよね?ピアノがバラバラになって使い物にならなくなってしまいます。

建物等の賃料債権についての注意点

 先ほど、金銭債権は分割できるとご説明しましたが、実は、お金を請求する債権でも建物等の賃料債権については、分割できないとされています。
 例えば、大家Aが死亡して、相続人がBCDの3人だったとします。すると、大家Aが賃借人(借りて住んでいる人)に対して持つ「家賃払え」という賃料債権を、3人の相続人BCDが相続しますが、この賃料債権を3分割することはできません。
 つまり、家賃が9万円であれば、BCDの3人がそれぞれ3万円ずつ賃借人に請求する、ということができないのです。
 ですので、このような場合は、BCDの3人の誰か1人が代表して9万円の家賃を請求して、受け取った9万円の家賃を3人で分け合う、というような形になります。
 なんかややこしくね
 そんなこともありません。だって賃借人(借りて住んでる人)の立場に立ってみれば、3人の大家から別々に3万円ずつ請求される方がややこしいですよね。
 でもなんで賃料債権はお金を請求する債権なのに分割できないの?
 それは、賃料債権に対する建物の賃貸債務分割できないからです。
 賃貸人(大家)は、賃借人(借りて住んでる人)に対して賃料債権を持つのと同時に、賃借人に対して目的物(建物)を使用収益させる(貸して使わせてあげる)義務があります。その義務というのが、賃貸人の目的物の賃貸債務(それを貸して使わせてあげる義務)です。
 そして、その賃貸債務は分割できないのです。その理由はこうです。
 例えば、Aさんにはリビングだけ貸して、Bさんにはバスルームだけ貸して、Cさんにはキッチンだけ貸して...なんてできないですよね?
部屋
 したがって、賃料債権は分割できないのです。
 なお、賃料債権は分割できない債権なので、不可分債権になります。
 また、賃料債権が分割できないので、当然に賃料債務も分割できません。分割できない債務は、不可分債務と言います。
(賃借人が死亡して、その相続前に未払い賃料が発生していた場合は、その未払い賃料に関しては可分債務となる。詳しくは相続分野にて改めて解説します)。

分割債権(債務)の具体例

 では、ここからは、どのようなケースが分割債権(債務)になるのか、その具体例を見ながら解説していきます。

事例1
AはBに150万円を貸し付けている。そしてAは死亡した。なお、Aには相続人がC・D・Eの3人おり、Aの貸金債権を3人は法定相続した。


 この事例で、C・D・Eの3人は、AのBに対する150万円の貸金債権を相続しました。

 死亡 
  A → B
  貸金債権
 (150万円返せ)
相続↓↓↓
   C D E

 このとき、3人の間で特に取り決めをしなければ、150万円の貸金債権は等しい割合で3分割されます(法定相続)。
 つまり、C・D・Eの3人は、それぞれ、Bに対する50万円の貸金債権を持つことになります(CDEがそれぞれBに対して「50万円返せ」という債権を持つ)。
 この場合の、3分割された債権こそ、まさしく分割債権です。

事例2
BはAから150万円を借金している。そしてBは、150万円の借金を残したまま死亡した。Bには相続人がC・D・Eの3人おり、Aの借金150万円を3人は法定相続した。


 この事例では、C・D・Eの3人は、Aの150万円の借金債務を相続しました。

 死亡 
  B ← A
  借金債務
(150万円返済義務)
 相続↓↓↓
    C D E

 このとき、3人の間で特に取り決めをしなければ、150万円の借金は等しい割合で3分割されます。
 つまり、C・D・Eの3人は、それぞれ50万円ずつ借金を背負うことになります。これが分割債務です。

 以上が分割債権・債務です。
 念のため、再度確認します。

債権者が複数になるのが分割債権
債務者が複数になるのが分割債務

 慣れないうちは紛らわしいですが、問題文や選択肢で読み間違えないよう、くれぐれもご注意ください。

連帯債務~別個独立の連帯責任とは/債務の履行請求&承認&免除と負担部分/消滅時効の相対効とは

▼この記事でわかること
連帯債務とは
債権者が弁済を受けられる額
連帯債務の債権債務関係はそれぞれが別個独立のもの
▽連帯債務の相対効
債務の履行の請求の場合
債務の承認の場合
債務の免除の場合
負担部分とは
連帯債務者の1人の消滅時効
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者でもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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連帯債務とは

 債権とは、特定の者が特定の者に対して、一定の行為(「金払え」「物よこせ」)を請求することを内容とする権利です(詳しくはこちらの記事もご参照ください)。
 そして、請求する側(「金払え」「物よこせ」と言う側)は債権者、請求される側が債務者です。
 ここまでは債権債務の基本中の基本ですが、債権債務の関係は何も一対一とは限りません。
 例えば、ひとつの債権関係に対して債務者が複数になるケースも存在します。
 それが連帯債務です。
 まずは事例をご覧ください。

事例1
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。


 この事例は、連帯債務の典型的なケースです。150万円の借金という債務を、BCDの3人が連帯して負っています。

          B
         ↗︎
A「150万円返せ」→C
         ↘︎
          D

 つまり「150万円返せ」という貸金債権に、B・C・Dという3人の債務者がいる、ということです。
 この場合のB・C・Dを連帯債務者と言います。
 さて、ではこの事例で、BCDの3人の債務者それぞれが負うことになる債務の金額は、一体いくらになるのでしょうか?
 正解は、150万円全額です。
 え?マジで?
 マジです。実は、連帯債務においての各債務者は、ひとりひとりが債務の全部の履行義務(全額の支払い義務)を負います。

(連帯債務者に対する履行の請求)
436条
債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。


 つまり、連帯債務の場合は、分割債務のように債務を分割する(分け合う)訳ではないのです。
 したがいまして、事例1のB・C・Dの3人は、ひとりひとりがそれぞれ150万円全額の支払い義務を負います。
 また、各債務者ひとりひとりが全額の支払い義務を負う、ということは、債権者は各債務者ひとりひとりに対して全額の支払い請求ができるということです。
 つまり、事例1のAは、Bに対してもCに対してもDに対しても「150万円返せ」と、債務の全額が請求できます。
 これは、債権者にとっては非常にメリットが大きいですよね。分割債務であれば、債権者は、各債務者に対して分割された債務を分割された割合でしか請求できません。したがって、連帯債務は分割債務よりも債権者にとって有利なのです。
 なるほど。でも連帯債務にするためにはどうすればいいの?
 ある債権に対する債務を連帯債務にするには、契約の段階でそのような約定をします。つまり、契約の段階であらかじめ「この債務は連帯債務になりますよ」という約束を結んでおく、ということです。
 そして、事例1では、Aはその約束をあらかじめB・C・Dとの間で結んでいた、ということです。Aは中々抜け目ないあなどれないヤツですね(笑)。

債権者Aが弁済を受けられる額はあくまで150万円

 事例のBCDは連帯債務なので、債権者Aは、ひとりひとりに対して150万円全額の請求ができるわけですが、ここで注意点があります。
 債権者Aが弁済を受けられる(返済を受けられる)金額は、あくまで150万円までです。
 もちろん、連帯債務者BCDは、ひとりひとりに150万円全額の支払い義務があります。しかし、だからといって、債権者Aが150万円×3=450万円の弁済を受けられる訳ではありません。
 つまり、連帯債務とは、言ってみれば、債務について債務者が連帯責任を負うものなのです。
連帯責任
 ですので、連帯債務者BCDは、150万円の返済義務について、連帯して責任を負っているということです。
 したがいまして、誰か1人がその責任を果たせば、残りの者の責任もなくなります。つまり、仮にBがAに対して150万円全額を弁済すれば、CとDの支払い義務(債務)はなくなります。

連帯債務ひとつひとつの債権債務関係はそれぞれが別個独立のもの

 例えば、事例1の連帯債務において、AとBの間だけ錯誤などの理由で契約が無効になった場合、他の連帯債務者CDはどうなるのでしょうか?

          B
         ↗︎ ←錯誤により無効 
A「150万円返せ」→C
         ↘︎
          D

AC間、AD間はどうなる?

 このような場合、その契約が無効になるのはAB間だけです。したがって、AとC、AとDの間の連帯債務の契約有効のままです。
 よって連帯債務者C・Dは、引き続き150万円の連帯債務を負い、Bだけがそこからいなくなります。
 つまり、連帯債務における債権者と連帯債務者ひとりひとりとの債権債務関係は、それぞれが別個独立の債権債務関係になっているのです。
 先ほど、連帯債務とは、言ってみれば連帯責任だ、というようなことを申しましたが、その意味は、この点からも言えることなのです。

連帯債務の相対効
債務の履行の請求


事例2
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。やがて月日が経過し、AのBCDに対する貸金債権は、時効による消滅が迫っている。


 この事例2のB・C・Dは連帯債務を負っています(連帯債務者)。
 連帯債務ということは、Aは連帯債務者のBCDひとりひとりに、150万円全額の弁済を請求できます。
 そして、そのAの貸金債権は、月日の経過で時効により消滅しそうになっている、というのがこの事例の内容です。

          B
         ↗︎
A「150万円返せ」→C
        ↘︎
  消滅時効間近  D

 さて、Aとしては、150万円の貸金債権が時効により消滅してしまっては困ります。
 そこで、時効を止めるために(時効の更新等)Aは債務の履行を請求(金払えと請求)しなければなりません。
 ではこのとき、AがBに対して債務の履行の請求をした場合、AC間・AD間についての消滅時効はどうなるのでしょうか?
 結論。AがBに対して債務の履行を請求しても、AB間の消滅時効が止まるだけで、AC間・AD間の消滅時効は止まりません。
 つまり、AからBに対する債務の履行の請求の効果は、AC間・AD間には及ばないのです。
 このような効果を、相対効といいます。
 相対とはつまり「人によって違う」という意味です。すなわち、相対効とは「人によって効果が違う」ということです。
 そして、民法は連帯債務について、相対効の原則を取ります。なので、連帯債務においての債権者と連帯債務者ひとりひとりとの関係は、それぞれ別個独立したものなのです。
 連帯債務者は、ひとりひとり別個独立した関係でありながら、債務について連帯責任を負っている、と考えると理解しやすいかもしれません。
三人
 なお、もし事例の債権者Aと連帯債務者CDとの間で、あらかじめ「Bに対する債務の履行の請求(金払えの請求)は、C・Dにもその効果が及ぶ」と取り決めしていた場合(意思を表示していた場合)、AのBに対する債務の履行の請求の効果は、AC間・AD間にも及びます。
 つまり、そのような取り決めをしていた場合は、AがBに対して債務の履行の請求をすれば、AB間だけでなくAC間もAD間の消滅時効も止まります。
 この点はご注意ください。

(相対的効力の原則)
441条
第四百三十八条、第四百三十九条第一項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。


債務の承認

 それでは今度は、3人の連帯債務者のうち、BだけがAに対して「債務の承認」をしたら、AC間・AD間の消滅時効はどうなるのでしょうか?
 消滅時効において、債権者に対して債務者が債務の承認をすると、消滅時効は更新(リセット)します。
 したがって、BがAに対して債務の承認をすれば、AB間の消滅時効は当然に更新(リセット)します。
 つまり、今ここで問題となるのは、「債務の承認」は相対効なのか絶対効なのか?です。

          B
         ↗︎ ←債務の承認 
A「150万円返せ」→C
        ↘︎
  消滅時効間近  D         
          
AC間、AD間はどうなる?

 結論。債務の承認相対効です。
 したがって、BがAに対して債務の承認をすると、AB間についての消滅時効だけが更新(リセット)し、AC間・AD間の消滅時効は更新(リセット)しません。
 ですので、もしAがそのまま放ったらかしていたら、C・Dの債務については時効により消滅してしまいます。

債務の免除
連帯債務者の1人が債務の免除を受けた場合

事例3
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた(各自の負担部分は均一)。その後、AはBに対して債務の免除をした。

 
 この事例3は、連帯債務を負っているB・C・D(連帯債務者)のうち、AがBに対してだけ債務の免除をした、というケースです。
 AがBに対してだけ債務の免除したとは、AがBに対してだけ「あなたは返済しなくていいよ」と許した、という意味です。
 
           B
         ↗︎ ←債務の免除 
A「150万円返せ」→C
         ↘︎
          D

 さて、このとき、AがBに対して債務の免除をした(返済を許した)ことにより、AB間の債権債務関係は消滅します。
 したがって、Bは連帯債務の枠から抜けることになります。
 では、AがBに対して債務の免除をしたことにより、AC間・AD間の債権債務関係への影響はあるのでしょうか?
 結論。債務の免除による効果も相対効です。
 したがって、AがBに対して債務の免除をしても、AB間についての債権債務関係だけが消滅するだけで、AC間・AD間の債権債務関係は何も変わらず、C・Dの連帯債務はそのまま残ります。

補足:負担部分とは
 これは、連帯債務者内部で決めた各自の債務の分担割合です。
 事例3では、その分担割合(負担部分)は各自均一なので、B・C・Dの各自の負担は3分割の50万円ずつです。
三人 不満げ
 ただし、これはあくまで、連帯債務者内部で「最終的には誰がいくら負担するか」を決めたものであって、債権者としては連帯債務者ひとりひとりに対して債務の全部の履行を請求できます(BCD各自の負担部分がどう決められていようと、AはBCDのいずれに対しても150万円全額の支払い請求ができる、ということ)。

 以下、事例3の債務免除のケースを簡単に図でまとめると、このようになります。

(Bの債務免除前)
          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          D

(Bの債務免除後)
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          D

連帯債務者の1人の消滅時効

事例4
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた(各自の負担部分は均一)。やがて月日が経ち、Bの債務が時効により消滅した。


 さて、今度は、B・C・Dの連帯債務のうち、Bの債務だけ時効により消滅した、というケースです。
 ではこのとき、Bの債務が時効により消滅したことにより、C・Dの債務はどうなるのでしょうか?

          B
         ↗︎ ←時効により消滅 
A「150万円返せ」→C
         ↘︎
          D

C・Dの債務はどうなる?

 結論。連帯債務者の1人のために時効が完成したときの効果は、相対効です。
 したがって、Bの債務が時効により消滅しても、Bの債務だけが消滅するだけで、AC間・AD間の債権債務関係は何も変わらず、C・Dの連帯債務はそのまま残ります。
 先述の債務の免除と結果も内容も全く一緒ということですね。

(Bの時効完成前)
          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          D

(Bの時効完成後)※Bは連帯債務から離脱
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          D

債務の承認・免除と消滅時効の補足

 もし事例2と事例3と事例4のケースで、債権者Aと連帯債務者CDとの間で、あらかじめ「AB間の債務の承認・免除・消滅時効は、C・Dにもその効果が及ぶ」と取り決めしていた場合(意思を表示していた場合)、AB間の債務の承認・免除・消滅時効の効果は、AC間・AD間にも及びます。
 つまり、このような取り決めしていた場合は、AB間で債務の承認・免除、消滅時効の完成があれば、その効果はAB間だけでなくAC間もAD間にも及びます。
 これは債務の履行の請求のときと同様で、民法441条の規定によるものです。この点もご注意ください。

連帯債務の相殺と求償~相殺を援用する&しないとどうなる?/無資力者がいるときの求償問題など様々なケースと注意点

▼この記事でわかること
相殺について
連帯債務者の1人が反対債権を持っている場合
連帯債務での求償について
他の連帯債務者が相殺の援用をしない?
負担部分と相殺(反対債権)の注意点
▽連帯債務の求償の様々なケース
中途半端に弁済した場合
連帯債務者の1人が無資力(金がない状態)の場合
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者でもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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連帯債務の相殺
相殺について

 債務者が債権者に対して同種の債権(これを反対債権と言う)を持っている場合、相殺ができます。
 相殺とは、互いの債権を打ち消し合う仕組みです。
 例えば、債権者Aが債務者Bにお金を10万円貸していて、債務者Bは債権者AにPCを10万円で売ったとします。このとき、AはBに対して「金返せ」BはAに対して「金払え」という債権を持っています(債権者Aは債権、債務者Bは反対債権)。その互いの債権を打ち消し合う仕組み、それが相殺です(相殺についての超基本はこちら)。
 なお、相殺をすることを、相殺の援用と言います。
 まずはここまで、押さえてください。

連帯債務者の1人が反対債権を持っている場合

 ここから、本題に入ります。
 連帯債務において、連帯債務者の1人が債権者に対して反対債権を持っている場合、相殺できるのでしょうか?
 結論。相殺できます。
 それでは事例とともに、連帯債務における相殺について解説していきます。

事例1
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。BCD各自の負担部分は均一である。なお、BはAに対して150万円の反対債権を持っている。

※負担部分とは連帯債務者内部で決めた負担割合。BCDは均一の負担なので各自50万ずつ負担し合っていることになるが、それはあくまでBCD内部での決め事でありAには関係ない(Aは各自に150万円全額請求できる)→詳しくは後で解説します。

 この事例1では、債権者Aに対して連帯債務を負っている3人の債務者(連帯債務者)BCDのうち、BがAに対して反対債権を持っています。

  (150万円払え)
 ↙反対債権   ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          D

 したがって、Bはその反対債権を使って相殺すること(相殺の援用)ができます。
 ここまでは、先ほど述べたとおりです。問題はここからです。
 Bが相殺した場合、その効果は他の連帯債務者CDにどのような影響を与えるのでしょうか?
 
  (150万円払え)
 ↙相殺     ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          D

AC間・BD間はどうなる?

 まず、Bが150万円の反対債権を使って相殺すると、AのBCDに対する150万円の債権は消滅します。
 つまり、Bが反対債権で連帯債務150万円の全額を相殺したことにより、BがBCD3人で負っている連帯債務150万円の全額を弁済(全額返済)したことになります(相殺の絶対効)。
 てことはCとDは1円も払わずに済んでラッキー!
 いやいや、そうはイカンのです。Bはその相殺で連帯債務を全額弁済したことにより、他の連帯債務者C・Dに対して求償権を得ます。

求償について

 求償権とは、求償する権利です。求償とは、わかりやすく簡単に言うと「私が君の代わりにアイツに払ってあげた分を君は私に払いなさい!」です。
 つまり、事例1のBがその反対債権で相殺をすると、連帯債務150万円全額を弁済(全額返済)したことになり、連帯債務は消滅しますが、それは「BがC・Dの負担分を立て替えて払ってあげた」という意味にもなります。
 したがって、BはC・Dに対して、立て替えてあげた負担分の請求ができるのです。これを民法的に言うと「BはC・Dに求償できる」となるのです。

(B相殺前)
          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          D

(B相殺後)
B「立て替えた負担分払え」→C
            ↘︎
             D

 そして、各自の負担分が均一ということは、BはC・Dそれぞれに対して50万円を求償することができます。
 
B「50万円ずつ払え」→C
          ↘︎
           D

 なお、この連帯債務における求償の仕組みは、なにも連帯債務者の1人が相殺した場合に限ったものではありません。
 例えば、Bが相殺ではなく、普通に150万円全額を支払って弁済すれば、そのときもBはC・Dに対して同じように求償できます。
 なんか求償ってややこしい!
頭をかかえる
 確かに、この求償という仕組みは、ややこしく感じるかもしれません。
 しかし、連帯債務の場合、債権者は連帯債務者ひとりひとりに対して、債務の全額が請求できます。
 つまり、連帯債務者のひとりが債権者から連帯債務の全額を請求されて、その連帯債務者がひとりで全額を弁済することは、連帯債務の制度上、当然に起こることなのです。
 そこで、不公平にならないためにも、他の連帯債務者の負担分まで弁済した連帯債務者が、他の連帯債務者に求償することができる仕組みになっているのです。
 これが求償という仕組みを活用する意味です。
 ちなみに、もし求償ができないとしたら、債権者からの連帯債務者ひとりに対する債務の全額の請求は、言ってみればロシアンルーレットみたいになってしまいます(笑)。誰が請求されるか?されたら終わり!みたいな(笑)。
 まあ、そんな不公平な制度だったら、そもそも誰も利用しなくなるでしょうが(笑)。
 なお、求償権については「不法行為の使用者責任」でも触れていますので、宜しければそちらもご覧いただければと存じます。

他の連帯債務者が相殺の援用をしない場合

 連帯債務において、連帯債務者が債権者に対して反対債権を持っている場合、その反対債権で相殺できます。
 では、反対債権を持っていない連帯債務者のひとりが債権者から支払い請求を受けた場合に、例えば、反対債権を持っている他の連帯債務者がそれを使って相殺するまで(相殺を援用するまで)支払いを待ってもらうことはできるのでしょうか?
 事例に当てはめるとこうです。

  (150万円払え)
 ↙反対債権   ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          D

CがAから支払い請求を受けた場合に、CはAに、Bが反対債権を使って相殺するまで(相殺を援用するまで)支払いを待ってもらえないのでしょうか?
 結論。Cはその負担部分の限度でBが相殺を援用するまで支払いを拒むことができます(履行拒絶)。
 つまり、Aから支払い請求を受けたCは「Bが相殺を援用するまで負担部分50万円の限度で払いましぇーん!」と支払いを拒むことができる、ということです。

(連帯債務者の一人による相殺等)
439条
2項 前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して
債務の履行を拒むことができる
 
※負担部分の注意点

 連帯債務者の各自の負担割合は、連帯債務者内部での決めごとに過ぎません。
 なので、仮にBの負担部分が弁済されたことになっても(Bが自分の負担部分50万円返済しても)、Bは相変わらず連帯債務者の1人のままで、債権者Aは相変わらずB・C・Dに対してそれぞれ全額の支払い請求ができます。ただその金額が50万円減って100万円になるだけです。

(B負担分50万弁済前)
          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          D

(B負担分50万弁済後)
          B
         ↗︎
A「100万円払え」→C
         ↘︎
          D

 したがって、債権者Aと連帯債務者B・C・Dの関係性は何も変わりません。
 そしてもし、その後、CがAに対して残りの100万円を弁済すると、連帯債務は全額弁済されて消滅します。
 すると、CはDに対して求償権を持つことになります。
 Bに対しては?
 ありません。なぜなら、Bは自分の負担部分50万円をすでに弁済しています。ということは、Cが残りの連帯債務100万円を弁済すると、Dだけが1円も弁済していないことになりますよね。

(C残り100万弁済後)
 求償
C → D(1円も弁済してない)><
  ↘
    B(すでに負担分弁済済み)^^

 したがって、Dの負担分も弁済したCは、Dに対してだけ求償権を取得するのです。 

※相殺(反対債権)の注意点
ここがポイントだよ
 なお、もしBが相殺を援用しないで連帯債務150万円全額が弁済された場合、BのAに対する反対債権残ったままです。
 なぜなら、この反対債権の存在は、連帯債務の消滅とは関係ないからです。
 この点もご注意ください。

求償の様々なケース
中途半端に弁済した場合

 連帯債務者の1人が債務を全額弁済した場合、その連帯債務者は他の連帯債務者に求償することができます。
 では、次のような場合はどうなるのでしょうか?

事例2
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。各自の負担割合は均一である。その後、BはAに45万円を弁済した。


 この事例2では、BはAに45万円を弁済しました。各連帯債務者の負担割合は均一=50万円ずつです。
 つまり、Bは負担割合の50万円のうち45万円を弁済した、ということです。

          B
   45万弁済↙↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          D

 さて、この場合、BはC・Dに求償することができるのでしょうか?
 結論。BはC・Dに対して15万円ずつ求償できます。
 なぜ15万円ずつ求償できるか?その意味は、Bの45万円の弁済により、連帯債務全体が150万ー45万円=105万円に減少するからです。

(B45万円弁済前)
          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          D

(B45万円弁済後)
          B
         ↗︎
A「105万円払え」→C
         ↘︎
          D

 そしてB・C・D各自の負担部分は50万円から15万円減少して、35万円ずつになります。
 つまり、Bの45万円の弁済は、BCD全員の、すなわち連帯債務者全員の利益になるのです。
 したがって、BはC・Dに対して45万÷3=15万円ずつ求償することになるのです。

(B45万円弁済後)
B「15万円ずつ払え」→C
          ↘︎
           D

 どうでしょう。この結論は、意外に思う方も多いかもしれません。
 実は、連帯債務における各連帯債務者の負担部分は、数値ではなく割合と考えられています。
 数値で考えれば、Bは自分の負担部分50万円のうち45万円しか弁済していません。それなのに、BがC・Dに対して求償できるのはオカシイですよね。
 しかし、各連帯債務者の負担部分は割合です。
 Bの45万円の弁済によって連帯債務全体が
150万ー45万=105万円となり、
105万円をB・C・Dが均一の割合(すなわち35万円ずつ)で負担することになるのです。
 すると、C・Dはそれぞれ負担部分が50万円から15万円ずつ減少=実質Bのおかげで15万円の利益を得たことと同じ意味になるので、その利益分をBはC・Dに対して求償できるというわけです。
素材115なるほど
 以上が、事例2のケースでの求償についての解説になります。
 決して難しい話ではないんですが、一見するとややこしく、ちょっと混乱しやすい部分ではありますので、しっかり覚えておいてください。

連帯債務者の1人が無資力(金がない状態)の場合

 続いては、連帯債務者の1人が無資力(金がない状態)の場合について解説します。

事例3
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。各自の負担割合は均一である。その後、BはAに150万円を弁済した。そしてBは、C・Dに対して求償しようと考えているが、Dは無資力だった。


 この事例3は、連帯債務150万円を1人で弁済したBがC・Dに対して求償しようとしたところ、Dにはお金がなかった(無資力)というケースです。

          B
    全額弁済↙↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          D

(B全額弁済後)
 求償
B → C
  ↘
    D(金が無い)

 さて、Bの求償はどうなるのでしょうか?
 通常、連帯債務150万円を1人で弁済したBは、C・Dに対して「50万円ずつ支払え」と求償することができますが、無資力のDから50万円の支払いを受けることは事実上困難です(無い袖は振れない=無一文は払いようがない)。
 となると、Cが1人で
自己負担分50万+D負担分50万=100万円
をBに対して求償しなければならなくなるのでしょうか?
 しかし、それは明らかに不公平ですよね。Cだけが本来の負担割合を超えた債務を負担してしまうことになります。
 そこで民法は、連帯債務者の1人の無資力は、他の連帯債務者全員で、各自の負担部分に応じて公平に分担せよ、と規定します。
 したがって、事例3では、Dの無資力は、BとCが各自の負担部分に応じて公平に分担することになります。
倒れる二人
 そして、B・C各自の連帯債務の負担部分は均一です。
 ではどうなるのか?
 Dの負担部分50万円BとCが25万円ずつ分担して負担します。
 その結果、連帯債務150万円をB・Cが50万+25万=75万円ずつ負担することになります。
 したがいまして、BはCに対して「75万円支払え」と求償することができます
 ただし、もしB(求償者)に過失(落ち度・ミス)があった場合は、Cに(Dの無資力の)分担を請求することができません。
 つまり、Bに過失(落ち度・ミス)があれば、BはDの負担分50万円を、B(自分)だけで負担しなければなりません。
 
 以上が連帯債務者の1人が無資力だった場合の解説ですが、こちらもまた少々ややこしく感じたかもしれません。
 元も子もない言い方かもしれませんが、要するに噛み砕いて簡単に言ってしまうと、
「連帯債務者の1人が無資力の場合、無資力のヤツはいないものとして考えろ!」ってことです。
 つまり、事例3は、無資力のDはいないものとして「連帯債務150万円はBとCの2人で負っている」と考えると、わかりやすくなると思います。
 すると「150万円の連帯債務をB・Cで75万円ずつ均一に負担していて、150万円全額弁済したBが、Cに対して75万円を求償する」という実に簡単な話になります。

補足
 連帯債務は、登場人物が多くなるのもあって最初はややこしく感じるかもしれません。
 ですが、慣れてくれば決して複雑な訳でもなく難しい話という訳でもないので、今一つよくわからないという方も不安になる必要はありません。
 慣れて来さえすれば、全然問題ナッシングですので、ご安心ください。

連帯債務者の弁済の事前&事後通知義務~通知忘れのペナルティと求償の制限/前後の通知忘れが重なった場合

▼この記事でわかること
弁済の事前通知義務
事前通知忘れのペナルティ~求償の制限
弁済の事後通知忘れ
事後通知忘れのペナルティ
事前通知忘れと事後通知忘れが重なった場合
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者でもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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連帯債務者の弁済の事前通知義務

 連帯債務において、連帯債務者の1人が弁済等(お金を支払う等)をする場合、債権者から履行の請求(例→金払え)を受けたことを、事前に他の連帯債務者に通知する義務があります。
 なぜなら、他の連帯債務者が、債権者に対して何らかの抗弁(例→債権)を持っている可能性があるからです。

事例1
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。負担部分は各自均一である。また、CはAに対する150万円の反対債権を持っている。そして、BはAから履行の請求をされた。


 さて、この事例1で、債権者Aから「金払え」と履行の請求をされた連帯債務者Bが、同じく連帯債務者Cに連絡をせずに債権者Aに150万円を弁済したらどうなるでしょう?
 まず、そうなるとCが困ってしまいます。なぜなら、連帯債務者Cは債権者Aに対して反対債権を持っているからです。
「反対債権を持っている」というのは、連帯債務者Cも債権者Aに対して債権を持っているという意味です。

         B
        ↗︎
A「150万支払え」C「150万支払え」
        ↘︎  (反対債権
         D

 反対債権を持っているということは、Cはその反対債権をもって、Aに対し相殺をしようと考えているかもしれません(連帯債務の相殺)。
 Bが事前に知らせてくれれば、Cは「弁済するのはちょっと待ってくれ。連帯債務は私の反対債権で相殺したいんだ」と、Bの弁済を止めることができます。
 つまり、Bが弁済することをCに事前に知らせてくれないと、Cは相殺したくてもできなくなってしまうのです。
 そもそもなんでCは相殺できなくなると困るの?
 それは、もしAが無資力の状態(お金がない状態)であれば、Cは相殺しない限り、その反対債権を回収することができないからです。
 ん?どゆこと?
 どういう意味かというとこうです。
 連帯債務者C.には債権者Aに対する150万円の連帯債務があると同時に、Aに対して「150万円支払え」という債権(反対債権)も持っていますよね。そして、Aが無資力(お金がない状態)になったとします。
 すると、CはAから150万円の支払いを受けることができなくなります。なぜなら、Aにはそのお金がないからです。「ない袖は振れない」というヤツです。
 しかし、CにはAに対する150万円の連帯債務は残ったままでです。そこで、Cはこう考えます。
「Aから150万円の支払いを受けることは無理だ。でも、その150万円の債権と連帯債務150万円を相殺して、その後、B・Dに負担分を求償すれば、結果的にAから150万円を回収したのと同じことになる!」
 つまり、相殺ができれば、Cは無資力になってしまったAからも、実質的に150万円を回収したのと同じ効果を得られるのです。
 逆に相殺ができなければ、Cは無資力になってしまったAからは150万円の回収が不可能になる上、Aに対する150万円の連帯債務は残ったままです。
 この違いは相当デカイですよね。
素材109なるほど
 さて、なぜ反対債権を持っている連帯債務者Cが、同じく連帯債務者Bの弁済について事前連絡がないと困るのか、その理由ははハッキリしました。
 そして、ここで冒頭に申し上げたことに戻ります。
 民法443条1項では、Cのような者を保護するために、連帯債務者の1人が債権者から履行の請求を受けた場合、そのことを事前に他の連帯債務者に通知をする義務を定めています。
 つまり、債権者Aから「金払え」と履行の請求をされた連帯債務者Bは、その請求に応じてAに弁済する前に、債権者Aから履行の請求をされたことを他の連帯債務者C・Dに知らせなければならない、ということです(事前通知義務)。

事前通知忘れのペナルティ~求償の制限

 連帯債務者が弁済の事前通知を忘れてしまった場合のリスクはまだ他にもあります。
 事例のBが弁済の事前通知をし忘れてしまうと、その後の「Aに弁済した内の各自負担分50万円を僕(B)に支払え!」というBからCへの求償(連帯債務者から連帯債務者への求償)に対して、なんとこう主張できます。
「アンタは私(C)に事前に通知しなかったよね。だから私はアンタの求償には応じないよ。そのかわり、私(C)がAに対して持っている反対債権のうち50万円分をアンタにあげるから、アンタが自分でAに取り立てなさい!」
 ちなみに「反対債権のうち50万円分」というのは、連帯債務のCの負担部分、すなわちBがCに対して求償できる金額です。

(事前通知せず弁済)
       ↗︎ 求償しても...
A「150万支払え」C「150万支払え」
        ↘︎   (反対債権
         D ↗
C<これを使って50万円分を
  自分でAから取り立てろ!
  Bからの求償に対し主張可


 つまり、事前の通知を怠ったBは、Cに対して求償しても、Cが先ほどの主張をした場合は、Cから50万円の支払いを受けることはできず、かわりにCのAに対する反対債権のうちの50万円分の反対債権をもらって、Cに代わってBは自分でAから50万円を回収しなければならなくなるというわけです。

         B
        ↗︎
A「150万支払え」C「150万支払え」
        ↘︎   (反対債権
         D  ↗
   この内の50万円分を
Cに代わってBがAから取り立てる


 民法443条1項に規定された事前通知を怠った連帯債務者Bには、このようなペナルティがあるのです。
(なお、相殺についての超基本はこちら、連帯債務における相殺についての基本はこちらをご参照ください)

弁済の事後通知忘れ

 連帯債務者の弁済の事前通知義務の必要性と理由はわかりました。
 では、連帯債務者の1人が弁済をした後に、それを知らずに他の連帯債務者も弁済をしてしまった場合はどうなるのでしょうか?

事例2
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。負担部分は各自均一である。そして、BはAに150万円を弁済した。しかし、Bがその通知をしない間に、CもAに150万円を弁済してしまった。


 この事例2は、連帯債務者Bが債権者Aに150万円を弁済した後に、それを知らずに同じく連帯債務者Cも債権者Aに150万円を弁済してしまった、というケースです。
 要するに、BもCもAに150万円(合わせて300万円)を弁済をしてしまった、ということです。

         B
        ↗︎   
A「150万支払え」→C
        ↘︎     
         D

    B
  ↙ 150万弁済(合計300万円)   
A  C 
           
    D

 この場合、Cはすでに債務が存在しないのに弁済してしまったことになります(これを非債弁済と言う)。
 つまり、Cはもはや支払う必要のない150万円をAに支払ってしまったということです。
 ですのでこの場合、CはAに対して150万円を不当利得として返還請求ができます(不当利得について詳しくははこちらへ)。
素材112債権
 要するに、CはAに対して「すでにBから弁済を受けていた君が、私からさらに150万円の支払いを受けるのはオカシイから、その150万円は返せ!」と請求できる、ということです。

 さて、連帯債務者の1人が弁済等(お金を支払うなど)をする場合、債権者から履行の請求(例→金払え)を受けたことを、事前に他の連帯債務者に通知する義務があることはすでに解説いたしました。
 実は、このような通知義務は、何も事前のものだけではありません。事後通知の義務もあります(民法443条2項)。
 つまり、連帯債務者の1人が連帯債務について弁済をした場合、その後、弁済したことを他の連帯債務者に通知しなければならないということです。
 その理由って?
 それは、まさしく今回の事例2のような事態を避けるためです。もし連帯債務者Bが弁済したことをしっかりと同じ連帯債務者Cに通知していれば、Cはわざわざ債権者Aに支払わなくてもいい150万円を支払ってしまうようなミスを犯さないで済みますよね。
 でもその150万円はどうせAから返してもらえるんだから別によくね?
 これがそうでもないんです。なぜなら、もし債権者Aがその後すぐに無資力(金がない状態)になってしまったらどうでしょう?
 その場合、CはAからその150万円を返してもらえなくなる可能性が高くなります。
 それはCとしてはマズイですよね。大損もいいとこです。
 したがって、連帯債務者の1人が連帯債務について弁済をした場合、弁済したことを他の連帯債務者に通知しなければならない事後通知義務が定められている、という訳です。

事後通知忘れのペナルティ

 もしAが無資力になってしまった場合、Cは150万円を返還してもらえない危険を背負います。
 でも、これってどうでしょう?Cがそんな危険を背負わなければならなくなったのは、そもそも、事後通知義務を怠ったBに責任がありますよね?それなのに、その危険をCが背負うのはオカシイと思いませんか?
 ということで、民法443条2項では、連帯債務者の1人が事後通知を怠ったために他の連帯債務者も弁済してしまった場合、後から弁済した他の連帯債務者自己の弁済した方を有効とすることができるとしています。
 これはどういう意味かと言いますと、Cが自分の弁済の方を有効な弁済とみなして、Bの弁済の方を非債弁済(余計な弁済)にすることができる、という事です。
 要するに、Cが自分で「自己の弁済を有効」とみなせば、Cの弁済が有効になりBの弁済は非債弁済(余計な弁済)となるので、もしAが無資力(金が無い状態)になってしまった場合は、Aの無資力という危険Bが背負うことになる、という訳です。
ペナルティ
 Bには厳しいルールですが、これはいわば、事後通知を怠った連帯債務者へのペナルティです。つまり、事後通知を忘れてしまったBへのペナルティなのです。

事前通知忘れと事後通知忘れが重なった場合

 弁済の通知義務は、事前と事後の両方あることがわかりました。
 では、事後通知忘れと事前通知忘れが重なった場合はどうなるでしょう?
 先ほどの事例2で、Bは弁済の事後通知を怠っています。それはBのミスです。
 でもどうでしょう。その後、Cが事前に「これからAに弁済します」とBに知らせていれば、Bは「あ、わたし、弁済しましたよ」とBに伝えることもできますよね?
 結論。Bの事後通知忘れとCの事前通知忘れが重なった場合は、Bの弁済が有効になります。

〈どちらの弁済が有効か一本勝負〉
事後通知忘れB vs 事前通知忘れC  

 この対決の勝者はBということです。
 したがって、この場合は、Cの弁済は非債弁済(余計な弁済)になり、もしAが無資力(金が無い状態)になった場合、Aからお金を回収できない危険はCが背負うことになります。

連帯債務での債権譲渡による混同と更改/連帯債務者の死亡による連帯債務の相続の問題

▼この記事でわかること
連帯債務の債権譲渡
債権譲渡による混同
債権譲渡による更改
連帯債務者の1人が死亡(連帯債務の相続)
債権者は連帯債務者の相続人に対していくら請求できるのか
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者でもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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債権譲渡による混同と更改

 連帯債務者の1人が、債権者から債権譲渡を受けた場合、その連帯債務はどうなるのでしょうか?(債権譲渡については詳しくはこちらをご参照ください)。

事例1
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。各自の負担割合は均一である。その後、BはAから当該貸付金債権の譲渡を受けた。


 この事例1では、連帯債務者の1人のBが債権者Aから、その連帯債務についての債権を譲渡されました。
 つまり、債権譲渡により連帯債務者の1人が債権者になってしまった、というケースです。

混同の場合

 事例1で、債権者Aから連帯債務者Bに債権譲渡されたことにより、AB間の債権債務関係は消滅します。
 なぜなら、債権者と債務者が同一人物となり、その債権債務関係の意味がなくなるからです。
 これを混同と言います。
 つまり、事例1で起こる結果を民法的に言えば、AB間の債権債務関係はABの債権譲渡により混同が生じて消滅する、となります。
 そして民法440条では、混同の絶対効が規定されています。
 これは何を意味しているかと言いますと、AB間の債権譲渡により混同が生じてAB間の債権債務関係が消滅すると同時に、それは連帯債務者Bが債権者Aに対して150万円全額を1人で弁済したのと同じことになります。
 ということは必然的に、連帯債務者Bは同じく連帯債務者のC・Dに対する求償権を取得することになります(連帯債務の相殺について詳しくはこちらをご覧ください)。
 したがいまして、AB間の債権譲渡前と債権譲渡後の当事者の関係を図で示すと、次のようになります。

(債権譲渡前)
          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          D

(債権譲渡後)
B「50万円ずつ払え」→C
          ↘︎
           D

 ここでひとつ注意点があります。
ここポイント  
 債権譲渡後にBがC・Dに対して50万円ずつ請求する権利は、あくまで求償権です。
 AB間の債権譲渡により、AからBに連帯債務の債権者が移ったわけではありません。
 AB間の債権譲渡により混同が生じて、混同の絶対効によりBが求償権を得たのです。 
 だからこそ、債権譲渡後は「150万円払え」ではなく「50万円ずつ払え」なのです。
 細かい話ではありますが、この点はくれぐれも間違えないようにご注意ください。

更改の場合

 では、続いては、連帯債務者の1人が債権者と契約更改をした場合について解説します。

事例2
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。各自の負担割合は均一である。その後、BはAと債務の契約更改をした。


 この事例2では、連帯債務者の1人のBが、Aとの間で債務の契約更改をしました。
 さて、ではAB間で債務の契約更改が行われたことにより、AC間・AD間の連帯債務はどうなるのでしょうか?
 まずはその前に、更改とは何なのか?ご説明します。

 更改とは、既存の債務を消滅させ、別の新しい債務を成立させる契約です。
 もっとわかりやすく言うと、元々あった契約を新しい契約で上書きすることです。
 ポイントは、契約更改は上書きなので、元々の契約は消滅します。ですので、当然に債務も、元々の債務に新しい債務が上書きされ、元々の債務は消滅します。
 したがって「更新」ではなく「更改」なのです。

 それでは話を事例2に戻します。
 AB間で債務の契約更改が行われたことにより、AC間・AD間の連帯債務はどうなるのでしょうか?
 結論。AB間で契約更改が行われたことにより、AC間・AD間の連帯債務は消滅します。
 民法438条では、連帯債務者の1人と債権者の間に更改があったときには、連帯債務についての債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅すると規定されています(更改の絶対効)。
 そして、AB間での債務の更改は、連帯債務者Bによる債務の全額弁済と同じ効果をもたらします。
 つまり、連帯債務者Bは債権者Aと債務の契約更改をしたことにより、150万円全額をB1人で弁済したのと同じ意味になるのです。
 したがって、AB間の契約更改により、AとBCDとの間の150万円の連帯債務は消滅し、BはC・Dに対して「50万円ずつ払え」という求償権を得ます。

(更改前)
          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          D

(更改後)
B「50万円ずつ払え」→C
          ↘︎
           D

連帯債務者の1人が死亡した場合

 連帯債務において、連帯債務者の1人が死亡した場合、どうなるのでしょうか?

事例3
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。負担部分は各自均一である。その後、Dが死亡した。Dの相続人は、Dの子供E・Fである。


 このような場合、気になるのが、EとFがDを相続して、連帯債務がどうなるのか?ということです。

          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          (死亡)
        相続↓↘相続
          E  F
     Dの連帯債務はどうなる?

 この問題については、債権者Aの立場から考えるとわかりやすいので、そのような形で解説して参ります。

債権者Aは相続人EFに対してはいくら請求できるのか

 債権者Aとして一番気になるのが、EとFに対していくら請求できるのか?です。
 他の連帯債務者と同様に150万円請求できるのか?あるいは?
考える
 これについては、次の2つの考え方が存在します。

1・EとFは150万円の債務の連帯債務者になる
2・EとFは(死亡した)Dの債務を相続分で分けた限度で連帯債務者になる

 それでは上記の2つの考え方について、ひとつひとつ解説します。

1・EとFは150万円の債務の連帯債務者になる
 この考え方の場合、債権者AはC・D・E・Fに対して、各自それぞれに150万円全額を請求することができます。
 つまり、債権者Aとしては、連帯債務者が1人増えたような感じです。

          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↓↘︎
         F E

 この考え方による結論は、債権者Aとしてはむしろありがたい展開かもしれませんね。
 連帯債務者が1人増えたということは、150万円を請求できる相手が1人増えたということなので、それだけ150万円を回収しやすくなります。

2・EとFは(死亡した)Dの債務を相続分で分けた限度で連帯債務者になる
 この考え方の場合、債権者Aは、B・Cに対しては従来どおりそれぞれに150万円請求できますが、E・Fに対してはそれぞれに75万円ずつしか請求できません。
 
なぜそのようになるのか?その理由は、EとFは連帯債務150万円を相続分に応じて相続した、と考えるからです。
 そしてE・Fの相続分は2分の1ずつです(法定相続)。つまり、EとFは連帯債務150万円を75万円ずつ相続したと考えるわけです。
 したがって、債権者AはE・Fに対してはそれぞれに75万円しか請求できないのです。

          B
         ↗︎
  「150万円払え」→C
A〈
  「75万円払え」→E         
         ↘︎
          F

 なお、この場合のB・C・E・Fの債務も連帯債務です。
 ただ、Dの死亡による相続で、その中身が通常の連帯債務とは異なっただけです。
 注意点として、AとB・CAとE・Fで、債権債務関係が別々になる訳ではありません。Dの死亡による相続後も、あくまでB・C・E・Fの債務は連帯債務のままです。
 この点はくれぐれもお間違いないようお気をつけください。

 それで結局どっちの考え方が正しいの?
 結論。判例は2の考え方を採用しています。
 したがって、事例3の債権者Aは、B・Cに対しては従来どおりそれぞれに150万円全額請求できますが、E・Fに対してはそれぞれに75万円ずつしか請求できません。

連帯の免除~絶対的免除と相対的免除とは/連帯免除後の求償関係について

▼この記事でわかること
連帯の絶対的免除
連帯の相対的免除
相対的免除の事後処理(求償関係)について
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者でもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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連帯の免除

 連帯債務は、その連帯を免除することができます。
 そして、連帯の免除の仕方には絶対的免除相対的免除の2種類があります。

絶対的免除

事例1
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。負担部分は各自均一である。その後、AはBCDの連帯を免除した。


 これは連帯債務者全員の連帯を免除したケースです。これが絶対的免除です。
 そして連帯が絶対的免除されると、その債務は分割債務となります。
 分割債務になるということは、相互に別個独立の債務となります。

(連帯免除前)
          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          D

(連帯免除後)
   「50万円払え」→B
A〈 「50万円払え」→C 〉連帯関係なし
   「50万円払え」→D

 このようになります。
 したがって、連帯免除後は、AはB・C・Dに対して各自それぞれに50万円ずつしか請求できません。なぜなら、BCDの連帯が免除されたからです。
 なお、連帯が免除されて分割債務になったことによって、BCDは求償関係もなくなります。なぜなら、分割債務は相互に別個独立のもので連帯関係にないからです。
 この点もご注意ください。
(分割債務について詳しくはこちら、連帯債務の求償について詳しくはこちらをご覧ください)

相対的免除

事例2
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。負担部分は各自均一である。その後、AはBの連帯を免除した。


 これは連帯債務者の一部だけ連帯を免除したケースです。これが相対的免除です。
 そして一部が免除されるということは、分割債務と連帯債務が併存する形になります。

(連帯免除前)
          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          D

(Bの連帯免除後)
  「50万円払え」→B
A〈           〉連帯関係なし
  「150万円払え」→C
         ↘︎   〉連帯関係
          D

 このようになります。
 Bの連帯が免除されたことにより、Bの債務は分割債務になります。
 分割債務になるということは、Bは連帯関係から外れて、Bの債務だけ別個独立のものになります。

相対的免除の事後処理(求償関係)

 事例2で、Bの連帯が免除され、Bの債務だけ別個独立の分割債務となりました。
 ということは、例えば、連帯債務者Cが1人で債権者Aに150万円全額を弁済した場合に、Cが「私(C)が弁済した金額のうちいくらかはオマエも私に払え」と求償できるのは、Dに対してだけとなるのでしょうか?
 
(Bの連帯免除後)
  「50万円払え」→B
A〈           〉連帯関係なし
  「150万円払え」→C
         ↘︎   〉連帯関係
          D   ←↑
Cが全額弁済すると求償できるのはDだけ?

 結論。この場合でもCはDに対してだけでなくBに対しても求償し得ます。
 このときの求償できる額は、それぞれに対して(各自負担分の)50万円ずつです。

Dが無資力(金がない状態)の場合
金欠
 では次のような場合はどうでしょう。
 先ほどのように、事例2のケースでCが150万円全額弁済した場合に、Dが無資力(金がない状態)だとCの求償はどうなるのでしょうか?

(Bの連帯免除後)
  「50万円払え」→B
A〈           〉連帯関係なし
  「150万円払え」→C
         ↘︎   〉連帯関係
          D(無資力)   
        Cの求償はどうなる?

 BCDが通常の連帯関係であれば、Dが無資力(金がない状態)になってしまった場合、Dの無資力(金が無いこと)について、BとCは連帯債務の負担割合に応じて、Dの無資力を分担して負担します。つまり、負担割合が均一なのであれば、Dの負担部分50万円をBとCで分担して25万円ずつ負担します。その結果、BとCの連帯債務は75万円ずつの負担ということになります(これについて詳しくはこちらをご覧下さい)。
 ところが、今度の場合、Bは連帯から外れてしまっていますよね。つまり、CはDの無資力(金が無いこと)について、Bに分担して25万円を負担してもらうことを求めることができない。となると、Cは1人でDの無資力の負担(その結果150万円全額の債務)を背負わなくてはならなくなってしまう。。
 しかし!この場合も、CはBに対して求償することができます。このときの求償できる金額は75万円です。つまり、実質BCDが通常の連帯関係でDが無資力になった場合と一緒です。
 したがって、Bが連帯を免除されDが無資力になったケースでも、Cが150万円全額弁済したような場合は、CはBに対して
「各自負担分50万✛D無資力の分担分25万=75万円を私(C)に払え」と求償することができます。

保証債務と付従性~催告&検索の抗弁権とは/保証額の上限と違約金の約定について

▼この記事でわかること
保証債務とは
保証債務の性質
保証人の催告の抗弁権
保証人の検索の抗弁権
保証債務の金額の上限と違約金の約定について
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者でもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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保証債務とは

 これはもう事例を見ちゃうのが手っ取り早いので、まずは事例をご覧ください。
 
事例1
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。


 このように、保証人を立てる債務を保証債務と言います。
 そしてこの場合、AB間の債務を主債務と言い、AC間の債務が保証債務となります。
 また、Cが保証人なのは言うまでもありませんが、債権者Aに対して、Bは主債務者という立場になります。

債権者       主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎
          保証人
           C

 そして保証人は、主たる債務者(主債務者)がその債務を履行しないときに、その債務を履行する責任を負います。
 したがって、上記の事例1では、主債務者のBが債権者Aに150万円を返せなかったとき、保証人のCがその借金150万円を肩代わりすることになります。
 なお、ここでひとつ注意点があります。
 保証人Cが保証債務の契約を結ぶ相手は債権者のAです。主債務者のBではありません。
 したがって、事例1は「AB間の主債務の契約」「AC間の保証債務の契約」が並立するような形になります。

      並立
      ∧
主債務の契約 保証契約
  A―B    A―C

 この点はくれぐれもご注意ください。

保証債務の性質

 それではここから、今回の本題である保証債務の性質についての解説に入ります。
 保証債務は、主たる債務(主債務)の存在を前提とします。
 当たり前ですよね。主債務を保証するのが保証債務ですから。主債務が存在しなければ、保証しようにもしようがありません。
 このように、主債務の存在を前提として成り立っている性質を、保証債務の付従性と言います。
 では、ここからさらに、保証債務の付従性について掘り下げていきます。

事例2
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。その後、AB間に要素の錯誤※があったことがわかり、Bの主債務は取消しになった。

※要素の錯誤について詳しくはこちらをご覧ください

 さて、この事例2で、Bの主債務が要素の錯誤で取消しになったことにより、Cの保証債務はどうなるのでしょうか?

債権者       主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎
          保証人
           C
  取消し
債権者主債務者
 A → B
   ↘︎←どうなる?
    保証人
     C

 これはすぐわかると思います。
 保証債務は主債務の存在を前提に成り立っています。保証債務の付従性ですね。
 結論。Bの主債務が取消しなので、Cの保証債務は成立しません。
 
 続いてこちらの場合はどうでしょう?

事例3
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。その後、AC間に要素の錯誤があったことがわかり、Cの保証債務は取消しになった。


 今度は、AC間の保証債務が取消しになったケースです。
 さて、この場合、AB間の主債務の成立への影響はあるのでしょうか?

債権者       主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎
          保証人
           C
  どうなる?
債権者主債務者
 A → B
   ↘︎←取消し
    保証人
     C

 結論。AB間の主債務の成立への影響はありません。
 したがって、AB間の債権債務関係だけが存続することになります。

 事例2のように、主債務が無くなると、それに伴って保証債務も無くなります。
 一方、事例3のように、保証債務が無くなっても主債務は存続します。
 この違いはくれぐれもご注意ください。

補足・保証契約は様式契約

 保証契約は、書面(または電磁的記録)でしなければ、その効力を生じません(要式契約)。つまり、債権者が保証人と保証契約を結ぶには、書面(または電磁的記録)で行わなければ成立しない、ということです。
 それがなにか?
 これは売買契約と比べるわかりやすいと思います。
 売買契約は「買います」という申し込みと「売ります」という承諾の意思表示だけで成立します(諾成契約)。つまり、民法上、売買契約は口約束だけでも成立します。
 それに対して保証契約は、意思表示(口約束)だけでは成立しません。つまり、法律上、保証契約は売買契約に比べて慎重に扱われているということです。
 その理由は、保証人の責任が重いからです。
 保証人は、それこそヘタしたら、主債務者の借金を肩代わりして財産を根こそぎ持っていかれて人生どん底に突き落とされる可能性もあります。
あああ!
 そんな重~い責任を背負わされる保証契約が、口約束だけで成立してしまったら、世の中混乱してしまいますよね。
 したがって、保証契約は書面(または電磁的記録)で行われなければ成立しないのです。
 こういった部分にも、保証人の責任の重さが表れていると言えます。

保証人の催告の抗弁権

事例4
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。そしてAは、Cに対して保証債務の履行を求めてきた。


 これは、債権者のAが、主債務者のBに対して主債務の履行を求めるよりも先に、保証人のCに対して保証債務の履行を求めてきた、という事例です。

債権者       主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎先に請求
          保証人
           C

 さて、この場合に、保証人Cは債権者Aに対して「私よりも先に主債務者のBに請求しろよ」と主張できるでしょうか?
 結論。保証人Cは債権者Aにたいして「私よりも先に主債務者のBに請求しろよ」と主張することができます。
 そして、この保証人Cの主張を、催告の抗弁権と言います。
 これは保証人としての当然の主張ですね。なぜなら、保証人はあくまで主債務者が債務不履行(金が払えなくなった等)になった場合にその責任を負うわけですから。債権者がいきなり主債務者をすっ飛ばして保証人に請求するのはスジ違いな話です。保証人がいきなり請求されても「オレかよ!?」」となっちゃいます。
 ただし、主債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、またはその行方が知れないときには、保証人は催告の抗弁権を主張できません。
 なぜなら、いずれの場合もすでに主債務者は、事実上、債務不履行に陥っているようなもので、もはや主債務者が弁済することは現実的に相当厳しいからです。
 したがって、もし事例4の主債務者Bが、破産手続開始の決定を受けたか、その行方が知れないときは、保証人のCはいきなり債権者Aから「オマエが金返せ」と保証債務の履行を求められても「私よりも先に主債務者のBに請求しろよ」と、催告の抗弁権を主張することはできません。

保証人の検索の抗弁権

事例4
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。そしてAは、Cに対して保証債務の履行を求めてきた。


 再び先ほどの事例です。
 さて今度は、保証人Cは債権者Aに対して「私に請求する前に主債務者のBの財産に強制執行しろよ」と主張できるでしょうか?
 結論。保証人Cは債権者Aに対して「私に請求する前に主債務者のBの財産に強制執行しろよ」と主張することができます。
 そして、この保証人Cの主張を、検索の抗弁権と言います。
 ここで注意点です。
ここポイント
 保証人が検索の抗弁権を主張するには、一定の要件を満たさなければなりません。その要件とは「主債務者に弁済する資力があり、かつ、執行が容易であることの証明」です(民法453条)。
 したがって、保証人Cは債権者Aに対して検索の抗弁権を主張するには、主債務者であるBに弁済する資力があること(Bに150万円の借金を返すだけの財産があること)、そして、Bに対する執行が容易なこと証明しなければならない、ということです。
(強制執行とは何かについて詳しくはこちらをご覧下さい)

補足・催告の抗弁権と検索の抗弁権は現実にはほとんどありえない

 さて、保証人の2つの抗弁権について解説して参りましたが、ここで身も蓋もないことを申し上げます。
 現実には、保証人が催告の抗弁権と検索の抗弁権を主張できることはほとんどありません。
 え?そうなの?
 はい。それはなぜなら、現実の保証契約はそのほとんどが連帯保証だからです。
 ここまで、保証債務について解説して参りましたが、それらは全て連帯保証ではなく、連帯ではないただの保証契約についてです。
 そもそも連帯じゃない保証契約なんてあるんだ!
 そう思いますよね。むしろそう思うのが普通だと思います。
 したがいまして、当サイトの解説で「連帯保証(契約・債務)」とは記さない保証(契約・債務)は、現実ではほとんど見ることのない、ただの保証契約だということをあらかじめご了承いただければと存じます。
 ただ、そんなただの保証契約も、民法の学習には必須になりますので、そこは割り切って学習してください。

保証債務の金額の上限と違約金の約定について

 保証債務とは、主債務が履行されない場合に、主債務者の代わりに、保証人がその債務を履行する責任を負うものです。わかりやすく言えば、保証債務は、主債務者がその借金を返せないとき、保証人がその借金を肩代わりする、というものです。
 ところで、保証債務の金額には上限があるのでしょうか?
 例えば、主債務を超えた金額を、保証債務の金額にすることはできるのでしょうか?

事例
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。


 この事例で、主債務者Bの債務の金額、すなわち主債務の金額は150万円です。この場合に、保証人Cの債務、すなわち保証債務の金額を200万円にすることは可能なのでしょうか?
 結論。Cの保証債務の金額を200万円にすることはできません。
 あくまで保証債務は、主債務が履行されない場合に、主債務者に代わって保証人が責任を負うものです。
 したがって、保証債務の責任主債務の責任よりも重くなるなどあり得ません。
 もし保証債務の金額を、主債務の金額を超えたものにしてしまった場合は、主債務の限度に減縮されます(民法448条)。つまり、Cの保証債務を200万円にしても、150万円に減縮されます。
 ただし!ここでひとつ注意点があります。
ここがポイントだよ
 民法447条1項では「保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他の債務に従たるすべてのものを包含する」とあります。
 これはどういう意味かと言いますと、もし主債務者の債務不履行により遅延損害金などが発生していた場合、その分も保証人は責任を負う、ということです。
 つまり、事例で、主債務者のBの債務不履行により遅延損害金などが発生していて、その分も加えた債務の額が200万円になってしまった場合は、Cは保証人として、その200万円全額の支払い義務を負うことになるのです。
 保証債務の責任は、主債務の責任を超えることはありません。しかし、主債務が膨れ上がれば、同じように保証債務も膨れ上がります。この点はくれぐれもご注意ください。
 なお、当事者間の特約により、保証債務の保証範囲元金のみとすることは可能です。
 したがって、AC間、つまり債権者と保証人の間でそのような特約を結んでおけば、主債務者Bの主債務の額が遅延損害金などにより200万円に膨れ上がったとしても、Cの保証債務は150万円のままです。なぜなら、AC間の特約により、Cが責任を負うのは元金のみだからです。

違約金の約定はできるのか

 元金のみを保証する旨の特約は可能なのはわかりました。
 では今度はその逆に、違約金または損害賠償の額を約定することは可能か、つまり、あらかじめ違約金または損害賠償の額を決めておくことはできるのでしょうか?
 結論。違約金または損害賠償の額を約定することは可能です。ただ、それができるのは保証債務についてのみです。
 違約金または損害賠償の額の約定って?
 例えば「保証人が(保証)債務を履行しない場合、違約金として金◯円を支払う」というようなことを、あらかじめ約束することです。
 あれ?主債務より重い責任は負わないんじゃないの?
 このような約定は、あくまで保証債務の履行を確実にするためのものであり、保証債務の責任が主債務より重くなるとは考えません。
 この辺り、少々ややこしく感じるかもしれませんが、くれぐれもご注意くださいませ。
 したがいまして、事例で、債権者Aと保証人Cの間の約定により、Cの保証債務について、あらかじめ違約金または損害賠償の額を決めておくことは可能です。

保証債務における債権譲渡の通知は主債務者と保証人どちらにすべきか

▼この記事でわかること
保証債務における債権譲渡
主債務者に債権譲渡の通知をした場合
保証人に債権譲渡の通知をした場合
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者でもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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保証債務の債権譲渡
主債務者に債権譲渡の通知をした場合

 保証債務において、債権者が債権譲渡すると一体どうなるのでしょうか?
(債権譲渡とは何なのか?について詳しくはこちらをご覧下さい)
 まずは事例をご覧ください。

事例1
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。そしてAは、この債権をDに譲渡し、その通知をBにした。


 これはどういう事例かというと、Bに150万円を貸している債権者Aが、その「150万円返せ」という貸金債権をDに譲渡(債権譲渡)して「Dに債権を譲渡しました」という通知をBにした、という話です。
 BからDに債権譲渡されて、当事者の関係図はこのようになります。

(債権譲渡前)
債権者       主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎
          保証人
           C

(債権譲渡後)
債権者       主債務者
 D「150万円返せ」→ B
         ↘︎
          保証人
           C

  債権譲渡の通知
債権者A → 主債務者B

 さて、ではこの事例1で、債権者Dは保証人Cに対して、保証債務の履行を求めることができるでしょうか?
 結論。Dは保証人Cに対して保証債務の履行を求めることができます。
 債権譲渡の通知はBにしかされてないのに?
 はい。債権者Aが主債務者Bに債権譲渡の通知を行なったことにより、AはBに対して対抗要件を備えたことになります。対抗要件を備えたということは、それで法律的にOK!ということです。
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 すると、その効果はCの保証債務にも及びます。
 そして、AがBに対して債権譲渡の対抗要件を備え、その効果がCの保証債務にも及んだ、ということが意味するのは、Aから債権譲渡されたDは、債権譲渡の通知を受けていない保証人Cに対しても、法律的に堂々と「150万円返せ」と保証債務の履行を請求することができる、ということです。
 主債務に生じた効果は、原則として全て保証債務にも及びます。つまり、保証債務とは、そういったことも織り込み済みで保証するものなのです。

保証人に債権譲渡の通知をした場合

 続いて、次のような場合はどうなるでしょう?

事例2
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。そしてAは、この債権をDに譲渡し、その通知をCにした。


 今度は、Dに債権譲渡をしたAが、その通知を主債務者Bではなく保証人Cにした、という事例です。
 当事者の関係図は以下です。

(債権譲渡前)
債権者       主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎
          保証人
           C

(債権譲渡後)
債権者       主債務者
 D「150万円返せ」→ B
         ↘︎
          保証人
           C

  債権譲渡の通知
債権者A → 保証人C

 さて、この場合に、Dは保証人Cに対して、保証債務の履行を求めることができるでしょうか?
 結論。なんとこの場合、Dは保証人Cに対して、保証債務の履行を求めることができません。
 え?どうして?
 その理由は、保証債務に生じた弁済以外の効果は、主債務に影響がないからです。
 つまり、保証人Cに対する債権譲渡の通知は、主債務者Bに対しては何の効力を持ちません。
 そして、主債務者Bに対して何の効力を持たないということは、結局、保証人Cに対しても何の効力を持たないということになってしまうのです。
 したがって、保証人Cに対する債権譲渡の通知は、主債務者Bに対してのみならず、保証人Cに対してすら対抗要件を備えたことにはなりません。
 保証人Cに対して債権譲渡の通知をしたところで、法律上それは何の意味も成さないのです。法律上の効果ゼロ、それ法律的に全然意味なーし!ということです。
 したがいまして、事例2の場合、Dは保証人Cに対して、保証債務の履行を求めることができないのです。

保証債務&連帯保証と消滅時効~履行請求&債務の承認とは/時効完成後の債務の承認について

▼この記事でわかること
主債務者が債務の承認をした場合
保証人が債務の承認をした場合
主債務の時効が完成した後に主債務者が債務の承認をした場合
連帯保証と消滅時効
連帯保証人の債務の承認
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者でもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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保証債務と消滅時効
主債務者が債務の承認をした場合

 まずは事例をご覧ください。(消滅時効については詳しくはこちらをご覧ください)

事例1
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。そして月日が経過し、Bの主債務とCの保証債務には時効が迫っている。そんな中、BはAに対して債務の承認をした。


 この事例1では、主債務者のBが債権者のAに対して債務の承認をしました。

    時効間近  債務の承認
債権者  ↓   ↙主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎
          保証人
           C

「BがAに対して債務の承認をした」の意味は、BがAに対して「150万円支払います」と意思表示した、という意味です。
 債務者が債権者に対して債務の承認をすると、時効が更新します。時効の更新とは、時効がリセットされることです。
 つまり、主債務者Bが債権者Aに対して債務の承認をした、ということは、Bの主債務の時効の進行期間がリセットされた(ゼロに戻った)ということです。
 さて、問題はここからです。
 主債務者Bが債権者Aに対して「150万円支払います」と債務の承認をしたことにより、主債務の時効は更新(リセット)されましたが、それに伴ってCの保証債務の時効も更新(リセット)するのでしょうか?

    時効間近  債務の承認
債権者  ↓   ↙主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎←どうなる?
          保証人
           C

 結論。Bの主債務の時効が更新(リセット)したことにより、Cの保証債務の時効も更新(リセット)します。
 なぜなら、主債務に生じた効果は、原則として全て保証債務にも及ぶからです。
 これは、保証債務の付従性という保証債務の持つ性質です。
 したがって、主債務者Bが債務の承認をしたことにより、Bの主債務のみならずCの保証債務の時効も更新(リセット)するのです。
 保証人Cとしては「Bのヤツめ、余計なことしてくれたな」という感じかもしれません(笑)。

保証人が債務の承認をした場合

 続いて、次のような場合はどうなるでしょう?

事例2
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。そして月日が経過し、Bの主債務とCの保証債務には時効が迫っている。そんな中、CはAに対して債務の承認をした。


 さて、今度は保証人CがAに対して債務の承認をしたケースです。

    時効間近  どうなる?
債権者     主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎←債務の承認
          保証人
           C

 この場合、Bの主債務の時効は更新(リセット)するのでしょうか?
 結論。保証人CがAに対して債務の承認をすると、保証債務の時効は更新します。
 しかし、Bの主債務の時効は更新しません。なぜなら、保証債務に生じた弁済以外の効果は、主債務には及ばないからです。
 また、この事例2の場合は、少し面白いことになります。
微笑む
 保証人Cが債務の承認をすると、Bの主債務の時効は更新しませんが、Cの保証債務のみ時効は更新します。
 すると、Cの保証債務の時効進行期間はリセットされますが、Bの主債務の時効進行期間は進んでいくことになります。
 そして、Bの主債務の時効が完成すると、Bは「時効が完成しました!」と時効の援用(時効の権利の主張)ができます。
 すると主債務は消滅し、Bの150万円支払い義務もなくなります。
 そしてなんと!このとき、保証人CもBの主債務の時効を援用できます。つまり、保証人Cも主債務の時効の権利を主張できるのです。
 そして、保証人CがBの主債務の時効を援用すると、保証債務の付従性により、主債務の消滅に伴って保証債務も消滅します。
 つまり、債権者からすれば、保証債務の時効を更新(リセット)させたところで、それはトカゲの尻尾切りにしかならない!ということです。
 結局、主債務の時効が生きていて、やがてそれが完成すれば、保証債務もその効果を受けてしまうので。
 したがって、債権者Aからすれば、保証人Cの債務の承認というのは意味が薄く、Bの「主債務の時効」という元を断たなければ、あまり意味がないと言えるでしょう。
 いわば債権者にとって保証債務の時効はザコ、真に倒すべきボスは主債務の時効なのです。

主債務の時効が完成した後に
主債務者が債務の承認をした場合


 続いて、こんな場合はどうなるでしょう?

事例3
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。それから月日が経過し、主債務の消滅時効が完成した後、BはAに対して債務の承認をした。


 この事例3は、主債務の時効が完成した後、主債務者Bが債務の承認をした、というケースです。

    時効完成  債務の承認
債権者  ↓   ↙主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎
          保証人
           C

 このケースのポイントはもうおわかりですよね。Bが債務の承認をしたのが「主債務の時効完成後」というところです。
 時効完成後の債務の承認は、時効利益の放棄と考えられ、債務が復活します。
 つまり、主債務の時効完成後、Bが債務の承認をしたことにより、Bは主債務の時効の利益を放棄したことになり、主債務は復活することになります。
 さて、問題はここからです。
 この事例3で、時効完成後にBが債務の承認をしたことにより、主債務は復活します。では、Cの保証債務はどうなるのでしょうか?復活した主債務の保証もしなければならないのでしょうか?
 結論。Bの主債務が復活しても、保証人Cは主債務の時効を援用することができ保証債務から免れることができます。
 え?なんだかよくわからん
 はい。その理屈を今から解説します。
 事例1、事例2と、主債務に生じた効果は、原則として全て保証債務に及びました。
 そう考えると、主債務が復活すれば、それに伴って保証債務も存続し続けるように思えます。
 しかし、いくら保証人の責任が重いとはいえ、一度、時効が完成してから復活した、まるでゾンビのような主債務の保証までさせ続けるのは、さすがにちょっと酷すぎんじゃね?と考えます。
ゾンビ
 そして「たとえ主債務者が債務の承認をしたとはいえ、一度、主債務の時効が完成したんだから、保証人については時効の援用をさせてあげて、保証債務から免れさしてあげよう」という結論になるのです。

 保証人の責任は重いです。その責任は無限責任とも言われます。まるで鬼でも襲ってきそうな責任ですね(笑)。
 しかし、先ほどのことからわかるように、保証人の責任は、無限責任であっても、永遠ではないということです。そう、あの不死身とも思えた鬼舞辻無惨でさえ倒されたのですから...。

連帯保証と消滅時効

 現実の保証契約といえば、そのほとんどが連帯保証になります。
 ですので「連帯」が付かない保証契約を実際に見かけることはほとんどありません。(現実ではほとんど見ることがなくても民法の学習においては「連帯」が付かない保証契約の学習も必須になりますのであしからず。。)
 連帯保証人には催告の抗弁権検索の抗弁権認められません。つまり、単純に債権者にとっては連帯保証の方が断然ありがたいのです。
 したがって、現実で見かける保証契約のほとんどが連帯保証なのです。
 ここからは、その現実で見かけるほとんどの保証契約=連帯保証の消滅時効の問題について解説して参ります。
 まずは事例をご覧ください。

事例4
BはAから150万円を借り受けた。CはBの連帯保証人である。そして月日が経過し、BとCの債務には時効が迫っている。そんな中、AはCに対して履行の請求をした。


 これは、債権者のAが連帯保証人のCに対して「150万円支払え」と履行の請求をした、という事例です。

    時効間近
債権者  ↓   主債務者
 A「150万円返せ」→ B
   履行の請求↘↘︎
         連帯保証人
           C

 さて、この場合、債権者Aが連帯保証人Cに対して履行の請求をしたことにより、主債務者Bの主債務の時効は更新するのでしょうか?
 結論。債権者Aが連帯保証人Cに対して履行の請求をしても、Bの主債務の時効は更新しません。



~ちょこっとコラム~
以前は連帯保証人への履行の請求で主債務の時効も止められた?

 連帯保証人へ履行の請求をしても主債務の時効は更新(リセット)、またはストップしません。
 実はこれ、民法改正により変わりました。
ルール説明
 そう、民法改正前の旧民法では、連帯保証人への履行の請求で主債務の時効も止めることができたんです。
 民法改正前での、連帯保証人に対して履行の請求をすると主債務の時効の進行が止まるという規定は、債権者としては非常にありがたいことでした。
 というのは、仮に主債務者が夜逃げしたとしましょう。すると主債務者に対する履行の請求が面倒なことになります。
 面倒なことになるという意味は「できるけど手続きが面倒」ということです。
 それが、連帯保証人に対する履行の請求で主債務の時効も止めることができたのは、債権者にとって実務上とても助かったのです。
 しかし、これは逆に言えば、連帯保証人の責任が重過ぎたという側面もありますよね。
 いずれにせよ、民法改正により変わりましたので、改正以前の規定で記憶していた方はくれぐれもご注意ください。



 なお、念のため申し上げておきますが、もし債権者Aが主債務者Bに対して履行の請求をした場合は、主債務の時効が更新するのはもちろん、連帯保証人Cの債務の時効も更新します。
 ちなみに、時効を更新させるための履行の請求は「裁判上の請求」です(ただ請求書を送っただけではダメ)。
 裁判上の請求とは、例えば、訴訟の提起です。裁判を起こすと、訴状提出時に時効期間の進行が一旦止まり(時効の完成猶予)、確定判決時に時効が更新されます(この点はこちらもご参照ください)

連帯保証人の債務の承認

事例5
BはAから150万円を借り受けた。CはBの連帯保証人である。そして月日が経過し、BとCの債務には時効が迫っている。そんな中、CはAに対して債務の承認をした。


 今度は、連帯保証人Cが債権者Aに対して「150万円支払います」と債務の承認をしたケースです。

    時効間近  どうなる?
債権者     主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎←債務の承認
         連帯保証人
           C

 さて、ではこの場合、主債務の時効は更新するでしょうか?
 結論。連帯保証人Cが債権者Aに対して債務の承認をしても、主債務の時効は更新しません。
 なぜなら、債務の承認に絶対効はない、つまり、債務の承認の効力は相対効だからです。
 したがって、この場合は、保証債務に生じた効果は主債務には及ばないという原則どおり、連帯保証人の債務の承認の効果は主債務に及ばないので、主債務の時効は更新しないのです。

補足・連帯保証における絶対効

 連帯保証人の債務に生じた効果が主債務にも及ぶ場合(絶対効になる場合)がいくつかあります。
 それを以下に簡単に記します。

・混同
・更改
・相殺

 これらは、連帯債務における絶対効と同じ扱いになっております。
 したがいまして、上記の3つについては、連帯債務についての以下の記事をご参照ください。
連帯債務の相殺と求償~
連帯債務~債権譲渡による混同と更改?

委託を受けた&受けない保証人の求償権~求償の制限と事前求償権とは

▼この記事でわかること
保証人の求償権
委託を受けた保証人の場合
委託を受けない保証人の場合
保証人の事前求償権
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者でもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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保証人の求償権

 保証人は、主債務者が債務を履行しないときに、主債務者に代わってその債務の履行をする責任を負います。
 そして保証人がその債務を弁済すると、保証人は主債務者に対して求償することができます。要するに、保証人は主債務者に対して「私が君の代わりに支払った分を、今度は君が私に支払いなさい」と請求できるのです。
 保証債務は、形式的には債権者と保証人との間の契約であり、保証債務自体は保証人自身の債務です。
 しかし、保証人が債務を弁済した場合、それは、言ってみれば保証人が主債務者の債務を肩代わりしたわけですよね。なので保証人は主債務者に対して、肩代わりした分を求償することができるのです。
 当然、全額求償できるんだよね?
 それが、保証人が「委託を受けた保証人」なのか「委託を受けない保証人」なのかによって、求償できる内容が異なってきます。

委託を受けた保証人

事例1
BはAから150万円を借り受けた。CはBから委託を受けた保証人である。その後、保証人CはAに150万円を弁済した。


 この事例1は、委託を受けた保証人Cが、主債務者Bに代わって150万円を弁済した(支払った)というケースです。

債権者      主債務者
 A「150万円返せ」→ B
      弁済↖↘︎
           C
      委託を受けた保証人

「CはBから委託を受けた保証人」の意味は、Bから頼まれてCは保証人になった、ということです。
 さて、このケースで、委託を受けた保証人Cは主債務者Bに対して、一体いくらまで求償することができるのでしょうか?
 結論。委託を受けた保証人Cは、Bに対して150万円全額を求償できます。
 また、それ以外にも、免責の日以後の法定利息避けることができなかった費用その他の損害賠償金があれば、それらも合わせて求償することができます。
 委託を受けた保証人の求償の範囲は広いものとなっています。
 求償の範囲が広いという事は簡単に言えば、保証人から主債務者に対して請求できる金額がデカイということです。

委託を受けない保証人

事例2
BはAから150万円を借り受けた。CはBから委託を受けていない保証人である。その後、保証人CはAに150万円を弁済した。


 今度は、委託を受けない保証人Cが、主債務者Bに代わって150万円を弁済したというケースです。

債権者      主債務者
 A「150万円返せ」→ B
      弁済↖↘︎
           C
     委託を受けない保証人

「CはBから委託を受けない保証人」という意味は、Bから頼まれてもいないのにCは保証人になったということです。
 頼まれてもいないのに自ら保証人になる人って、現実には中々いらっしゃらないかと思います。ましてや主債務者の親や家族でもないのに委託を受けない保証人がいたとすれば、それはかなり奇特な人と言えるでしょう。
 それはさておき、この事例2で、委託を受けない保証人Cは、主債務者Bに対して、一体いくら求償することができるでしょうか?
 結論。委託を受けない保証人Cの求償できる額には制限があります。微妙な答え方ですが、これが結論です。
 委託を受けない保証人Cは、主債務者Bが保証債務履行当時に利益を受ける限度しか求償することができません。
 さらに、もしCが主債務者Bの意思に反して保証人となっていた場合は、求償当時に現に利益を受ける限度(現存利益)しか求償することができません。
「主債務者Bの意思に反して」というのは、CがBの保証人になることをBは嫌がっていたのに、それでも無理矢理CはBの保証人になったということです。
強迫
 以上、もっとわかりやすく簡単に言うとこうです。

「頼まれもしないで保証人になった者は、主債務者に対して求償できる額には制限がある」
「頼まれもしないどころか主債務者から嫌がられてたのにもかかわらず保証人になった者は、主債務者に対して求償できる額にはさらに制限がある」

 まあでもこれは、普通に考えてもわかりますよね。頼まれもしないで勝手に保証しておいて利息その他まで求償するというのは、ちょっと厚かましいですよね。
 さらに、主債務者が嫌がっているのにも関わらず勝手に保証しておいて、となれば、そのような保証人の求償権にはさらに制限があって当然と言えるでしょう。

事前求償権

 民法460条では、一定の場合に、保証人に事前求償権を認めています。
 これはどういうことかと言いますと、保証人は、債権者に弁済する前に主債務者に求償できるということです。

債権者       主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎   ↑事前に求償
          保証人
           C

 つまり、上図の保証人Cが、債権者Aに対して150万円を支払う前に、主債務者Bに対して「150万円よこせ」と求償できるということです。まさしく事前に求償する権利=事前求償権です。
 ただ、すでにお気づきの方もいらっしゃると思いますが、これも「委託を受けた保証人」なのか「委託を受けない保証人」なのかによって異なってきます。
 事前求償権は、委託を受けた保証人にしか認められません。
 委託を受けない保証人には事前求償権はありません。
 そりゃそうですよね。勝手に保証しといて「事前に金よこせ」となったら、主債務者としては、そんな保証人はただのタチの悪いヤカラと変わりませんよね(笑)。

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Author:根本総合行政書士
東京都行政書士会所属
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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