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【(動産の)契約解除の要件】債務不履行・帰責事由・相当の期間を定めた催告とは
【契約解除後】原状回復義務と解除の遡及効果の制限とは/同時履行の抗弁権について
【不動産売買契約と解除】手付放棄と手付倍返しとは/契約解除のタイミングと方法
【不動産売買契約】登記と解除前&解除後の第三者/背信的悪意者と信義則について
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【(動産の)契約解除の要件】債務不履行と相当の期間を定めた催告とは

▼この記事でわかること
契約の解除
契約解除をするための要件
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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契約の解除

 契約が成立すると契約義務が発生します。(売買契約であれば、売主は「売った物を引き渡す義務」買主は「代金を支払う義務」など)
 そして、その義務(債務)を履行しないと、すなわち、その約束を果たさないと債務不履行に陥り、損害賠償請求権が発生します。
 では、一度結んだ契約の解除はできるのでしょうか?
 まずはこちらの事例をご覧ください。

事例
AとBはギターの売買契約を締結した。しかし、Aは約束の期日が来ても一向にギターを引き渡そうとしない。


 この事例で問題になっているのは、売主のAがいつまで経ってもギターの引渡しを行わない(ギターを買主のBによこさない)ことです。

    売買契約
売主A  ―  買主B
Aがギターを引き渡さない...
 (債務を履行しない)

 要するに、Aが約束を果たしてくれない、すなわち、Aがその債務を履行しないのです。
 Bとしては、それならそれでこの契約はナシにして、他の売主・ギターを探したいですよね。
 損害賠償の請求という手もありますが、それも要件を満たしていなければできないし、正直メンドクサイですよね。
 そこで、Aとしては「この契約は解除できないか?」となります。
 民法の規定はこちらです。

(催告による解除)
541条
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。


 上記、民法541条の条文に基づいて、Aは契約の解除ができます。
 しかし!それをするためには要件があります。
 法律って何かと要件要件うるさいな!という声が聞こえてきそうです(笑)。
 ですが、法律上の請求をするときは常に
「誰が、誰に対して、どのような要件を満たしたときに、どんな請求ができるか」
を考えなければなりません。
 これはとても大事なことなのでしっかり覚えておいてください。
女性講師
 ちなみに、行政書士試験の記述問題では、まさにこのことが問われます。
 もちろん通常の択一問題を解く上でも大事ですし、宅建試験や公務員試験の民法を解く上でも大事なことです。
 さらに申しますと、現実にトラブルが起こって誰かに何かの請求をするときの原則にもなります。
 繰り返しますが、
「誰が、誰に対して、どのような要件を満たしたときに、どんな請求ができるか」
 このことは是非、覚えておいていただければと存じます。

契約解除をするための要件

 話を戻します。
 契約の解除をするためには、原則、次の要件を満たす必要があります。

1・債務不履行の存在
2・相当の期間を定めて催告をすること

 原則、上記の要件を満たしたときに、初めて契約の解除ができます。
 1は簡単ですよね。契約の解除をする理由となる債務不履行(約束を果たさないこと)の存在です。
 2の催告とは、最後通告のことです。通常は「期日までに履行をしなければ、解除する」というような文言を入れた文書を、内容証明郵便という形で送ります。

 以上のことを踏まえて、今回の事例でAが契約を解除するためには
・Bの債務不履行があり
2・相当の期間を定めて催告した上で(「〇年〇月〇日までに履行しなければ、解除する」旨の内容証明郵便を送った上で)
行うことになります。

 もし、このような手順を踏まえないで、Bが契約の解除をしようすると「テメー、約束を破るのか!」と、逆にAから攻められてしまいます。 法律的にも、Bの方が約束を破ったことになってしまいます。
 ですので、上記の要件と手順はしっかり覚えておいてください。

 なお、催告をせずに解除できる場合もあります。(無催告解除)
 民法は次のように規定しています。

(催告によらない解除)
民法542条 
1項 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
一 債務の全部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
2項 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。
一 債務の一部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。


 上記、民法542条条文1項一~五号、2項一~二号の規定に該当する場合は、債権者は債務者に催告することなく解除することが可能です。
 大雑把に言えば、無催告解除は、契約をした目的が達せられないときに認められます。
 それ以外の場合には、債務の不履行が軽微でないときに催告解除が認められる、というふうなイメージで捉えると理解しやすいのではないでしょうか。

 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。

【契約解除後】原状回復義務と解除の遡及効果の制限とは/同時履行の抗弁権について

▼この記事でわかること
原状回復義務
解除の遡及効果の制限
同時履行の抗弁権
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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契約解除の後
原状回復義務

 一定の要件を満たしたときに、契約の解除ができます。
 では、契約を解除した後は、一体どうなるのでしょうか?

事例1
楽器店のBはメーカーのAからギターを納入した。しかし、期限が到来したにもかかわらずBが一向に代金を支払わないので、AはBに対し相当の期間を定めて催告をした上で、売買契約を解除した。


   ギター納入
メーカー → 楽器店
 (売主)A  (買主)B
     代金未払い 
       催告
 (売主)A →  (買主)B
    売買契約解除

 さて、この事例1で、Aは契約を解除しましたが、その後は何ができるのでしょうか?
 ギターの返還請求?損害賠償の請求?
 まずは民法の条文をご覧ください。

(解除の効果)
民法545条
1項 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2項 前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
3項 第一項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。
4項 解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。


 上記、民法545条条文中の太字になっている部分が、Aができることです。
 相手方を原状に復させる義務とは、原状回復義務のことで「元の状態に戻さなければならない」という意味です。
 つまり、AはBに「ギターを返せ」と請求できます(返還請求)。一方、BはAにギターを返す義務(返還義務)を負います。
 損害賠償の請求を妨げないとは、損害賠償の請求もできるという意味です。
 したがいまして、事例1で、メーカーの(売主)Aは楽器店の(買主)Bに対し、ギターの返還請求損害賠償の請求ができる、ということになります。

解除の遡及効果の制限

・直接効果説

 解除の効果は遡及(そきゅう)します。すなわち、さかのぼってナシになります。
 したがって、事例1では、(買主)Bにはギターの返還義務(目的物を元の状態に戻す義務=原状回復義務)が生じ、同時に(売主)Aはギターの返還請求権(目的物を元に戻せ!と請求する権利)を得ます。
 そして、この論理を直接効果説と言います。
 他にも間接効果説、折衷説という考えも存在しますが、裁判所は直接効果説の立場を取ります。
 ですので、ここでは「直接効果説」という考え方を、覚えておいてください。

・解除の遡及効果の制限

 契約を解除すると、その効果は遡及するので(直接効果説)、原状回復義務が生じます。
 しかし!条文には、このようなただし書きがありました。
「ただし、第三者の権利を害することはできない」
 これはどういう意味なのでしょうか?まずはこちらの事例をご覧ください。

事例2
楽器店のBはメーカーのAからギターを納入した。しかし、期限が到来したにもかかわらずBは一向に代金を支払わない。その後、BはCにそのギターを転売した。その後、AはBに対し相当の期間を定めて催告をした上で、売買契約を解除した。


   ギター納入    転売
メーカー → 楽器店  第三者
 (売主)A  (買主)B    C
     代金未払い 
   ↓転売後↓
       催告

 (売主)A  (買主)B
    売買契約解除

 この事例2では、Aはギターの返還請求ができない可能性があります。
 なぜなら、Bの解除権の効果第三者であるCの権利を害することができないからです。
 したがって、結論は、Cがギター(目的物)の引渡しを受けていたらBはギター(目的物)の返還請求ができません。
 逆に、Cへの(目的物の)引渡しがまだされていなければ、Bは(目的物の)返還請求ができます。
 このように、解除の遡及効果は、第三者との関係で一定の制限が加えられています。これは、利益衡量と取引の安全性から来るものです。
ここがポイント女性
 この「解除の遡及効果の制限」は大事なポイントなので、是非覚えておいてください。

同時履行の抗弁権

 契約を解除すると、その契約はさかのぼってナシになり、原状回復義務が生じます。受け取ったものがあれば返さなくてはなりません。
 例えば、AがBにギターを売り渡し、Aが代金の支払いを受けてからその売買契約が解除となった場合で考えてみましょう。

  ギター
   A   →   B
売主 ← 買主
 代金支払い

 (売主)A ×  (買主)B
  売買契約解除

 この場合、売主Aは買主Bに受領した(受け取った)代金を返還しなければなりません。
 一方、買主Bは売主Aに引渡しを受けたギターを返還しなければなりません。
 なぜなら、契約を解除したことによって、AとBには原状回復義務が生じるからです。
 そして、AとBの原状回復義務は、同時履行の関係になります。
 つまり、売主Aは買主Bからギターを受け取ると同時に代金を返さなくてはなりません。一方、買主Bは売主Aから代金を返してもらうのと同時にギターを返さなくてはなりません。
 そしてこのとき、売主Aは買主Bがギターを持って来ないのに「金返せ」と言ってきたら「だったらギター持ってこいコラ」と突っぱねることができます。
 一方、買主Bは売主Aがお金を持って来ないのに「ギター返せ」と言ってきたら「だったら金もってこいコラ」と突っぱねることができます。
 これを同時履行の抗弁権と言います。
 なお、これは契約の取消後においても全く一緒ですので、そこも合わせて覚えておいてください。

補足・不動産賃貸借の場合は少し違う

 原状回復義務という言葉は、一般的には、おそらく不動産賃貸借においての退去の際に聞く言葉だと思います。
 多くの方は、引っ越すときの部屋の退去の際に聞く言葉ですよね。
 ちなみに、不動産賃貸借においての原状回復、すなわち敷金返還と部屋の明渡しは、同時履行の関係にはなりません。ご存知のように、敷金の返還は部屋の明渡しを済ませてから行われます。念のため申し上げておきます。
(不動産賃貸借における原状回復義務についての詳しい解説は「敷金 礼金 保証金 敷引き 償却 とは/原状回復義務と経年劣化&通常損耗と特約について」をご覧ください)

 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。

【不動産売買契約と解除】手付放棄と手付倍返しとは/契約解除のタイミングと方法

▼この記事でわかること
不動産売買契約の超基本
契約解除のタイミング
契約解除の方法(手付放棄・手付倍返し)
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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不動産売買契約の超基本
 
 いきなりですが、まずは事例をご覧ください。

事例
売主Aは買主Bと甲建物の売買契約を締結し、BはAに手付金を交付した。しかし後日、Bはこの売買契約を解除したいと思い、Aに甲建物の売買契約の解除を申し入れた。


 さて、この事例で、Bは甲建物の売買契約を解除できるでしょうか?

    手付金
売主A  買主B
  売買契約
   甲建物
   解除申入れ
売主A  買主B

 結論は...の前に、まず不動産の売買契約の基本について簡単に解説します。

 不動産の売買契約は、コンビニでの買い物とは訳が違います。
 不動産売買契約の大まかな流れは次のようになります。

購入の申し込み

重要事項説明

売買契約の締結と同時に手付金の授受

残金の決済と同時に引渡し(登記手続き)


 正確にはもっと細かくあるのですが(ローンの契約、仲介なら不動産業者との媒介契約などその他諸々)、ざっくりとこんな感じになります。

契約解除のタイミング

 では、不動産の売買契約の解除というのは、どのタイミングでどのように行うのでしょうか?
 まずは民法の条文をご覧ください。

(手付)
民法557条
買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
2項 第五百四十五条第四項の規定は、前項の場合には、適用しない。


 契約の解除のタイミングですが、上記民法557条の条文にあるように、相手方が契約の履行に着手するまででないとできません。
 これは事例に当てはめると、買主Bが契約の解除をするには売主Aが履行の着手をするまでに行わないといけない、となります。
 履行の着手とは「かなり具体的に履行をしようとした」という意味です。「履行の準備」では履行の着手とは考えられていません。
 厳密には判例を見て個別具体的な判断をしなければなりませんが、過去の実際の事例では「買主が代金の用意をして、売主に物の引渡しを催告した」ことが履行の着手と判断されました。
 まあ、ここであまり細かく突き詰めてしまうと話が進みませんので、履行の着手とは「かなり具体的に履行をしようとした」と、ざっくり覚えてしまってください。

契約解除の方法

 では「契約の解除をどのように行うか」ですが、これは買主と売主によって異なります。

・買主の場合
売主に渡した手付金を放棄して行う。(不動産用語で手付流しと言います)

・売主の場合
買主からもらった手付金の倍額を買主に償還して(買主に払って)行う。(不動産用語で手付倍返しと言います)

 このようになります。
 なお、上記の手付放棄・倍額償還をすることで、それ以外の損害賠償は支払わなくてもよい、としています。だからこそ手付流し・手付倍返しなのです。
 以上のことをまとめると

・買主は、売主が履行の着手をするまでは、交付した手付金を放棄して、契約の解除ができる。
・売主は、買主が履行の着手をするまでは、手付金の倍額を買主に償還して、契約の解除ができる。


となります。
 すると今回の事例で、買主Bは甲建物の売買契約の解除ができるのか?の結論は、、、

    手付金
売主A  買主B
  売買契約
   甲建物
   解除申入れ
売主A  買主B

 結論。買主Bは売主Aが履行に着手するまでは、交付した手付金を放棄して、甲建物の売買契約の解除ができる、ということになります。


 以上、不動産売買契約と解除についての基本になります。
 不動産売買契約の問題は、宅建試験にせよ行政書士試験にせよ散々問われることになりますので、今回の解説の基本的な内容はしっかり覚えておいていただければと存じます。
 最後までお読みいただきありがとうございます。

【不動産売買契約】登記と解除前&解除後の第三者/背信的悪意者と信義則について

▼この記事でわかること
登記と解除前の第三者
登記と解除後の第三者
背信的悪意者と信義則
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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不動産売買契約の解除
登記と解除前の第三者

 登記のルールがある不動産での契約の解除の効果は、一体どのようになっているのでしょうか?
 まずは事例をご覧ください。
 (不動産売買契約と解除の基本についての詳しい解説は「不動産売買契約と解除~手付放棄と手付倍返しとは」をご覧ください)

事例1
Aは不動産業者のBに甲土地を売却し、Bは登記をした。その後、AはBの売買代金の不履行(Bの債務不履行)によりAB間の甲土地の売買契約を解除した。しかし、すでに不動産業者のBはCに甲土地を転売し、Cは登記をしていた。


 この事例1で、Aは甲土地の所有権の主張ができるでしょうか?
 ポイントは、第三者のCが解除前に現れているという点です。

   売却     転売
売主A  業者B → C(甲土地)
   登記     登記
   
      解除        甲土地
売主A  業者B    C
           解除前に登記

甲土地の所有権はどうなる?

 まずは民法の条文を確認してみましょう。

(解除の効果)
民法545条
当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。


 先ほど申し上げたポイントと上記、民法545条条文のただし書で、察しの良い方はもうおわかりかと思います。
 結論。事例1において、Aは甲建物の所有権の主張はできません。なぜなら、民法545条ただし書の規定により、第三者であるCの権利を害することはできないからです。
 したがいまして、事例1の甲土地をめぐる所有権争奪バトルはCの勝ちです。

 それでは続きまして、こちらの事例ではどうなるでしょう。

事例2
Aは不動産業者のBに甲土地を売却し、Bは登記をした。その後、AはBの売買代金の不履行(Bの債務不履行)によりAB間の甲土地の売買契約を解除した。しかし、すでに不動産業者のBはCに甲土地を転売していた。なお、Cは登記を備えていない。


 事例1との違いは、第三者のCが登記を備えていない(未登記)という点です。Cが未登記ということは、甲土地の登記はBのままということです。

   売却     転売
売主A  業者B → C(甲土地)
   登記    未登記
   
      解除           甲土地
売主A  業者B    C
        登記       未登記

甲土地の所有権はどうなる?

 では事例2の場合、Aは甲土地の所有権を主張できるのでしょうか?
 結論。事例2の場合、Aは所有権の主張ができます。
 え?登記の有無については条文になくね?
 ないです。しかし、判例では「第三者が勝つためには登記が必要だ」としているのです。つまり、第三者の登記の必要性は、いわば裁判所が勝手にくっつけたものです。
裁判所
 これは、不動産の登記制度を考慮して取引の安全性を鑑みた結果、裁判所の判断で登記を第三者の保護要件としたのでしょう。
 したがいまして、事例2は、第三者のCが保護要件である登記を備えていない以上、甲土地をめぐる所有権争奪バトルはAの勝ち!になります。
 なお、Bは登記を備えていますが、それは関係ありません。Bは第三者ではないし、そもそも債務不履行をやらかした張本人です。この期に及んで保護されようなぞ、ムシが良すぎるってもんです。
 簡潔にまとめると、今回の事例のような場合、Aは、甲土地の登記AかBにあれば、所有権を主張できます。

登記と解除後の第三者

 続いて、第三者が解除後に現れた場合は、一体どうなるのでしょうか?

事例3
Aは不動産業者のBに甲土地を売却し、Bは登記をした。その後、AはBの売買代金の不履行(Bの債務不履行)によりAB間の甲土地の売買契約を解除した。その後、不動産業者のBはCに甲土地を転売し、Cは登記をした。


 この事例3で、Aは甲土地の所有権を主張できるでしょうか?

   売却     転売
売主A  業者B → C(甲土地)
   登記     登記
   
      解除        甲土地
売主A  業者B    C
           解除後に登記

 結論。Aは甲土地の所有権を主張できません。
 よって、事例3の甲土地の所有権争いの勝者はCになります。
 その根拠となる民法の条文はこちらです。

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
民法177条
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。


 あれ?解除に関する民法の条文じゃない?
 はい。そうなんです。実は事例3は、解除の問題ではないのです。これは詐欺の取消後の第三者と同じハナシです。
 つまり、単純に「早く登記したモン勝ち!」なのです。なので登記したCの勝ちなのです。
 ですので、甲土地の売買契約を解除してからボサッとしていたAが悪い、ということです。
 なお、もしCがまだ登記をしていなければ、まだBに登記がある状態であれば、甲土地はBの債務不履行による解除の原状回復義務の対象ですから、Aは甲土地の所有権を主張できます。

補足:背信的悪意者と信義則
悪意
不動産登記の基本と公示の原則」でも若干触れていますが、もし今回の事例3で、Cが背信的悪意者(合法的なとんでもないワル)の場合は、いくらCが登記を備えていても、Cは甲土地の所有権を取得できません。
 Cが背信的悪意者の場合は、次の民法の条文が適用されます。

(基本原則)
民法1条2項
権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。


 この民法1条2項は、信義誠実の原則と呼ばれるものです。(略して信義則と呼ばれます)
 民法には、利益衡量や取引の安全性を重視して、時に残酷で冷たく感じる面があると思います。
 そして、世の中にはそんな民法の性質を利用する合法的なワルが存在します。
 しかし、そいつらはあくまで合法的なので、民法先生も困ってしまいます。
 そこで!民法先生は最終手段の伝家の宝刀「信義則」を抜きます。
 そしてこう言い放ちます。

「オマエは背信的悪意者だ!背信的悪意者は信義則に反し許すべからず!」

 よって、背信的悪意者は保護されることはありません。
 このように民法は、信義則という「超えちゃならないライン」を引いて法律を補充し、法的秩序を保つのです。(実際には裁判官が過去の判例を参考にしながら個別具体的に判断していくことになります)

 昔『男たちの挽歌』という映画で、マフィアのボスが主人公の刑事に追い詰められ病院に逃げ込み、そこで患者を人質に取ろうとするシーンがあるのですが、そこで、そのマフィアのボスに雇われた用心棒が初めてボスに逆らうのです。
 その時の用心棒のセリフがこうです。
「いくら極道でも、超えちゃならねぇ線があんだろ!」
 私これ、大好きなシーンなんです。スイマセン。余談もいいとこですね(笑)。

 ところで、民法177条において、第三者の善意悪意は問われていませんが、背信的悪意者はアウト!というのはここまで解説してきたとおりです。
 ちなみに、この民法177条で、登記を備えて所有権を主張できる第三者とは「登記の欠缺(けんけつ)を主張するにつき正当の利益を有する者」と、判例で定義づけられています。
 これはわかりやすく簡単に言うと「オマエ登記してねーだろ」と堂々と言える者ってことです。
 つまり、背信的悪意者には、信義則違反によりその(主張する)資格がないということです。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。

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Author:根本総合行政書士
東京都行政書士会所属
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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