【遺産分割】協議と方法/遺産分割の禁止/遺産分割協議の解除/遺産分割の審判と訴訟事件

▼この記事でわかること
遺産分割協議
特定の不動産を特定の相続人に「相続させる」という遺言について
遺産分割の禁止
遺産分割協議の解除
遺産分割の方法
遺産分割の審判と訴訟事件
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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遺産分割協議

 遺産分割は、各共同相続人の相続分という観念的な割合が具体化して、相続人ごとの固有財産に転化する過程であり、通常は、共同相続人の協議により遺産分割を行います。
 では、事例とともに、遺産分割の性質を解説して参ります。

事例1
Aが死亡した。Aには妻Bと嫡出子CDがいる。


[問1]
BCD間で遺産分割協議をした。しかし、Aには非嫡出子であるEが存在した(嫁以外の子がいたということ)。遺産分割協議は有効か?

 結論。無効です。
 これは、夫Aが死亡し、その遺族BCDはこの3人が相続人のすべてであると信じて遺産分割をしたのであるが、実は、夫には愛人の子Eが存在しており、死後にそのことを知った遺族が唖然とする、というケースです。
 この場合の遺産分割は無効になります。
 遺産分割は相続人全員の参加がなければ効力がないのです。
 ですので、非嫡出子のEを含めて遺産分割協議をやり直すか、それが不可能であれば、家庭裁判所のご厄介となり、遺産分割の調停あるいは審判を受ける必要が生じます。

(遺産の分割の効力)
民法909条 
遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。


[問2]
BCD間で遺産分割協議をした。しかし、その後Fが死後の強制認知によりAの非嫡出子となった。遺産分割協議は有効か?

 結論。この遺産分割協議は有効です。
 本事例は、遺産分割後に非嫡出子が現れたケースです。
 認知の効力は出生にさかのぼりますから、被相続人Aの死亡時にFはさかのぼってAの子として存在していたことになります。
 ですので、本来であれば、この遺産分割協議も無効がスジです。
 しかし、民法910条は、この事例、つまり遺産分割協議後に認知による相続人が出現したケースでは、遺産分割を有効としました。
 その結果、非嫡出子のFは遺産分割のやり直しを請求することはできませんが、他の相続人であるBCDに対して、価額による賠償を請求することになります。
 すなわち、このケースは、カネの問題として解決されることになります。

(相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権)
民法910条 
相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。

~ちょこっとコラム~
特定の不動産を特定の相続人に「相続させる」という遺言


 この遺言は、遺贈(遺言による贈与)であるのか、遺産分割の方法の指定(相続の一場合)であるのか?
 特定の不動産を特定の相続人に「遺贈する」と書いてあれば、これは遺贈で決定です。
 しかし、「相続させる」と書いてあるので、この点が問題となります。
 一見すると、どちらであっても大差ないと考えられそうですが、これを遺贈と解釈すると登記手続が面倒くさくなります。
 この点は、判例は、この遺言は、遺産分割の方法を指定したものであると判示しました。これであれば、相続の一場合としての遺産分割の指定であるから、登記原因は相続であり手続は簡単に済みます。  
 このケースでは、その特定財産は、遺産分割の手続を経ることなく、遺言者の死亡により当然に相続人が取得することになります。

遺産分割の禁止

事例
Aが死亡した。Aの相続人は妻Bと嫡出子CDである。


[問1]
Aは遺言で遺産分割を禁止することができるか?

 結論。被相続人は、遺言で遺産分割を禁止することができます。その期間は最長で5年間です。(民法908条)

[問2]
遺産分割の審判において家庭裁判所は遺産分割を禁止することができるか?

 結論。遺産分割の請求を受けた家庭裁判所は遺産分割の禁止をすることができます。(民法907条3項)
 その要件は以下の3つです。
・特別の理由がある
・分割禁止の期間を定める
・遺産の全部または一部について分割を禁止する
 これは、遺産分割の審判をする上での家庭裁判所の便宜を図るための制度です。

[問3]
BCDの3人はその合意により遺産分割を禁止することができるか?

 結論。共有物の分割禁止特約を規定する民法256条により、遺産分割の禁止を合意することは可能です。その期間は最長で5年間です。

[問4]
遺産分割が禁止されていない場合には、いつ、遺産分割をすることができるのか?

 結論。民法907条1項は「いつでも」よいと規定しています。

【補足】遺産分割禁止期間中の分割
 遺言による場合と家庭裁判所による遺産分割禁止の場合、その期間中に遺産分割をすることはできません。前者の場合は遺言者の遺思に反することになりますし、後者の場合には、家庭裁判所の便宜による禁止期間だからです。
 しかし、相続人の合意による禁止の場合、相続人全員の合意があれば、遺産分割をしてもかまいません。

遺産分割協議の解除

事例
Aが死亡した。Aの相続人は妻Bと嫡出子CDである。BCD間の遺産分割協議において、Cが年老いたBの老後の面倒をみることになり、CはDの倍額の遺産を承継した。しかし、BはC家の嫁と折り合いが悪く、家出をしてDの家にころがりこんだ。


[問1]
Dは、遺産分割協議の解除をすることができるか?

 結論。遺産分割協議の法定解除はできません。
 遺産の再分割を余儀なくされると法的に安定性を害するというのがその理由です。

[問2]
BCDの3人で、遺産分割協議を合意解除して、新たに遺産分割をやり直すことは可能か?

 結論。遺産分割協議の合意解除は可能です。

【補足】遺産分割と共有物分割
 遺産分割は故人の遺産という財産の集合体の分割であるのに対して、共有物分割は特定の土地や建物の分割という個別の財産の分割です。
 判例は、遺産分割協議の法定解除は不可能だが、共有物分割協議の法定解除は可能としています。
 これは、共有物分割のほうが規模が小さく、解除の第三者への影響が少ないことを考慮した結果といえる。

遺産分割の方法

 遺産分割には、現物分割価額分割の方法があります。

・現物分割
 文字通り現物を分けます。長男は東京のマンション、二男は千葉の土地という具合です。

・価格分割
 遺産を売り払ってその対価である金銭を分け合います。

 協議による遺産分割の場合には、どちらの方法でも、共同相続人が自由に決めることができます。
 しかし、家庭裁判所による審判分割の場合は、現物分割を原則としています。
 ただし、分割によってその価格を損ずるおそれがあるときは、例外的に価額分割をすることもできます。

遺産分割の審判と訴訟事件

 遺産分割の審判は非訟事件です。
 非訟とは、国家が後見人的な立場から訴訟手続によらずに簡易で裁量的な処理をする事件の類型です。例えば、訴訟事件は裁判の公開を要するところ、非訟事件は非公開でもできます。
 さて、訴訟事件とは、権利の有無について白黒をつける事件であって、例えば、ある財産が被相続人の相続財産に属するかどうかは訴訟事件です。
 元来、被相続人の相続財産の範囲はハッキリした上で「はたしてそれをどういう方法で分けるのか」というのが、裁判所の裁量の問題であり非訟事件です。
 そこで、遺産分割の審判において、話のついでに、ある財産が被相続人の相続財産の範囲に属するかどうかを判断することは、本当は越権行為です。
 しかし、判例は、実際の遺産分割の審判を柔軟に運営するという見地から、家庭裁判所は上記の越権行為をしてもかまわないという判断をしました。
 これは、仮に、その家庭裁判所の判断に不服のある当事者がいたときには、そのことについて通常の訴訟を提起する道が閉ざされるわけではないということも、上記の判断の正当化の理由の1つとなっています。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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