
▼この記事でわかること
・遺留分とは
・遺留分の額と計算方法を具体的なケースとともに解説
・不動産のケース
・遺留分侵害額請求の価額算定の基準時
(上記クリックorタップでジャンプします)
今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。

遺留分
遺留分とは、次のような一定の相続人に必ず留保される遺産の一定割合のことをいいます。
・配偶者
・直系卑属
・直系尊属
具体的な遺留分は、大まかに言えば、各相続人の法定相続人の2分の1です。
しかし、直系尊属のみが相続人である場合には、3分の1となります。(民法1042条)
(遺留分の帰属及びその割合)
民法1042条
兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
以上の遺留分権利者は、遺留分を侵害する贈与又は遺贈があった場合、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができます。
これを、遺留分侵害額の請求といいます。(民法改正以前の遺留分減殺請求にあたるものです)
遺留分侵害額の請求はいつから可能か
被相続人の死亡時からです。
死亡前に、遺留分を侵害する可能性のある贈与がされたとしても、単なる将来の見込みの段階で遺留分を主張することはできません。
権利自体が、まだ発生していないのです。
→この段階での所有権移転請求権仮登記は否定されます。
遺留分の額

事例1
Aの死亡時に、Aの有する財産の価額は1500万円、負債が500万円であった(贈与した財産はない)。Aの相続人は、妻Bと嫡出子CDである。
[問1]
各人の遺留分はいくらか?
遺留分算定の基礎となる価額は、被相続人が相続開始時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を排除した額です。(民法1043条)
この事例では、
1500万ー500万=1000万円が遺留分算定の基礎となる価額です。
各人の遺留分は以下のとおりとなります。
B
1000万×2/4=500万(法定相続分)
500万×1/2=250万円(遺留分)
C
1000万×1/4=250万(法定相続分)
250万×1/2=125万円(遺留分)
D
1000万×1/4=250万(法定相続分)
250万×1/2=125万円(遺留分)
[問2]
Cが遺留分を放棄した場合、Dの遺留分は増えるか?
結論。
遺留分は、各相続人に固有のものであり、他の相続人が遺留分を放棄してもそれが増えることはありません。
Dの遺留分は125万円のままです。
なお、相続開始前に遺留分を放棄するには、家庭裁判所の許可が要ります。(民法1049条)
相続開始後は、自由に遺留分の放棄をすることができます。
事例2
Aの死亡時に、Aの有する財産の価額は800万円であった(負債はない)。AはBに500万円を遺贈し、死の3ヶ月前にCに500万円を贈与、死の6ヶ月前にDに500万円を贈与している。Aの相続人は子のYのみである。
さて、この事例で、Yは誰に対して、いくらの遺留分侵害額の請求をすることができるでしょうか?
結論。
贈与は、相続開始前の1年間にしたものに限り、遺留分算定の基礎額の計算に算入します。
事例2では、Cへの贈与は3ヶ月前、Dへの贈与は6ヶ月前であり、いずれも相続開始前の1年間にされているので基礎額に算入されます。(ただし、贈与の当事者双方が遺留分の侵害について悪意であれば1年前の日より前にした贈与も算入します)
では、遺留分を計算して参りましょう。
遺留分算定の基礎額
800万+500万(Cへ贈与)
+500万(Dへ贈与)ー0(負債)
=1800万円
Yの法定相続分
1800万円
(相続人は1人だから法定相続人は遺産の全部)
Yの遺留分
1800万×1/2=900万円
(直系尊属のみが相続人のケースに該当しない)
遺留分侵害額の請求については、その順序か法定されています。
次の順です。
1・遺贈(死因贈与があればそれと同順位)
2・後の贈与(死に近いほう)
3・前の贈与(死に遠いほう)
Yの遺留分は900万円ですが、亡Aの死亡時の財産が金800万円あり、そこからBに遺贈された金500万円を差し引いた金300万円はBの手元に残ります。
そこで、900万円からこの300万円を差し引いて金600万円についてYは遺留分侵害額の請求を行使することができるという結論になります。
具体的な侵害請求額は以下のとおりです。
・B(受遺者)に対して500万円
・C(死に近いほうの受遺者)に対して100万円
【補足】Cが無資力の場合
事例2で、Yが遺留分侵害額の請求をした時にCが無資力であったらどうでしょうか?
Yは、さらにD(死に遠いほうの受遺者)に対して、遺留分侵害額の請求をすることができるでしょうか?
民法1047条4項はこれを否定します。
侵害請求を受けるべき受遺者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担となります。
【補足】相続人の1人が特別受益者である場合
相続人の1人に対して、婚姻・養子縁組のため、もしくは生計の基本として生前贈与がなされた場合には、上記の1年の制限はなく、すべての贈与を遺留分算定の基礎額に加えることになります。
相続人間の実質的公平を図る趣旨です。
事例3
Aの死亡時に、Aの有する財産の価額は1000万円であった(負債はない)。AはBに600万円を遺贈し、Cに400万円を遺贈している。Aの相続人は配偶者のYのみである。
さて、この事例3で、Yは誰に対していくらの遺留分侵害額の請求ができるでしょうか?
この事例3においては、以下の計算式となります。
遺留分算定の基礎額
1000万ー0(負債)=1000万円
(このケースは贈与がない)
Bの法定相続分
1000万円
(相続人は1人だから法定相続分は遺産の全部)
Bの遺留分
1000万×1/2=500万円
(直系尊属のみが相続人のケースに該当しない)
受遺者であるBとCは同順位です。
この場合には、遺贈の目的の価額の割合に応じて減殺をします。
したがって、Yの遺留分侵害請求は次の計算式&額となります。
Bに対しては
500万×600万/600万+400万=300万円
Cに対しては
500万×400万/600万+400万=200万円
【補足】
遺贈の価額を遺留分の基礎となる価額となる価額に加えない理由
遺産の価額は、被相続人が相続開始の時に有した財産の価額に含まれています。
だから、これを加えると計算が重複することになり相当ではありません。
生前の贈与は、被相続人が相続開始の時に有した財産の価額に含まれないから、これを加えて基礎額を算定するのです。
不動産のケース

事例4
被相続人YのAに対する贈与(不動産の所有権)が、相続人Zの遺留分の全部を侵害している。
[問1]
Zが遺留分侵害額の請求をすることができるのはいつまでか?
結論。
Zが相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間です。
また、相続開始の時から10年が経過してしまうと遺留分減殺請求権は消滅します。(民法1048条)
[問2]
ZがAに対して遺留分侵害額請求権を行使した場合、Aは不動産の価額相当の金銭を支払うべきなのか?
結論。
Aは価額による賠償をすることになります。
[問3]
Aが目的物を第三者Bに譲渡した場合、ZはBに対しても遺留分侵害額の請求の行使が可能か?
ZはBに対しても遺留分侵害額の請求をすることができます。
(遺留分侵害額請求権の期間の制限)
民法1048条
遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。
価額算定時期
遺留分侵害額請求の価額算定の基準時は相続開始時or価額賠償時のどちらでしょうか?
目的物の価額か、被相続人の死亡時と裁判における口頭弁論時に変動した場合に問題となります。
判例は、この点について基準時は、価額賠償時であるとします。
事例5
Aはその死亡当時、乙不動産(100万円)、丙建物(500万円)以外に財産がない。
Aは平成25年2月1日、Bに対して自己の所有する甲土地(1000万円)を贈与した。
Aは同年4月1日に死亡した。遺贈によりCは乙不動産、Dは丙建物をそれぞれ取得した。
Aの相続人はAの子であるEのみである。
[問]
Aが、その死亡当時、1000万円の負債を負担していた場合、EはBに対して遺留分侵害額請求をすることができるか?
それでは、この事例5の計算をしてみましょう。
遺留分算定の基礎額
600万(死亡時の財産 乙不動産+丙建物)
+1000万(贈与分 甲土地)ー1000万(負債)
=600万円
Eの法定相続分
600万円
Eの遺留分
300万円
さて、以上の計算から、300万円しか遺留分のないEは、CおよびDから次の金額の遺留分を受けることにとどまるように思えます。
Cに対して
300万×100万/600万=50万円
Dに対して
300万×500万/600万=250万円
しかし、判例は、この結論を採用しません。
というのは、確かに、遺留分は金300万円です。
しかし、判例は、遺留分侵害額は、これに負債の額を加えた1300万円であると考えます。
つまり、遺留分にあたる金額は、遺留分権利者の生活の糧として法が定めた額ですから、この額が現実にEの手元に残ることが必要なのです。
仮に、遺留分侵害額を300万円とすれば、相続人Eの手元には、300ー1000(負債)て、700万円の負債が残ってしまいます。
ですから、金300万円の遺留分のEの手元に確保するためには、金1300万円について遺留分侵害額請求権の行使が可能でなければなりません。
以上、事例5における、遺留分侵害額請求の額は以下のとおりになります。
Cに対して 100万円
Dに対して 500万円
Bに対して 700万円
というわけで、今回は以上になります。
宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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・遺留分とは
・遺留分の額と計算方法を具体的なケースとともに解説
・不動産のケース
・遺留分侵害額請求の価額算定の基準時
(上記クリックorタップでジャンプします)
今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。

遺留分
遺留分とは、次のような一定の相続人に必ず留保される遺産の一定割合のことをいいます。
・配偶者
・直系卑属
・直系尊属
具体的な遺留分は、大まかに言えば、各相続人の法定相続人の2分の1です。
しかし、直系尊属のみが相続人である場合には、3分の1となります。(民法1042条)
(遺留分の帰属及びその割合)
民法1042条
兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
以上の遺留分権利者は、遺留分を侵害する贈与又は遺贈があった場合、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができます。
これを、遺留分侵害額の請求といいます。(民法改正以前の遺留分減殺請求にあたるものです)
遺留分侵害額の請求はいつから可能か
被相続人の死亡時からです。
死亡前に、遺留分を侵害する可能性のある贈与がされたとしても、単なる将来の見込みの段階で遺留分を主張することはできません。
権利自体が、まだ発生していないのです。
→この段階での所有権移転請求権仮登記は否定されます。
遺留分の額

事例1
Aの死亡時に、Aの有する財産の価額は1500万円、負債が500万円であった(贈与した財産はない)。Aの相続人は、妻Bと嫡出子CDである。
[問1]
各人の遺留分はいくらか?
遺留分算定の基礎となる価額は、被相続人が相続開始時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を排除した額です。(民法1043条)
この事例では、
1500万ー500万=1000万円が遺留分算定の基礎となる価額です。
各人の遺留分は以下のとおりとなります。
B
1000万×2/4=500万(法定相続分)
500万×1/2=250万円(遺留分)
C
1000万×1/4=250万(法定相続分)
250万×1/2=125万円(遺留分)
D
1000万×1/4=250万(法定相続分)
250万×1/2=125万円(遺留分)
[問2]
Cが遺留分を放棄した場合、Dの遺留分は増えるか?
結論。
遺留分は、各相続人に固有のものであり、他の相続人が遺留分を放棄してもそれが増えることはありません。
Dの遺留分は125万円のままです。
なお、相続開始前に遺留分を放棄するには、家庭裁判所の許可が要ります。(民法1049条)
相続開始後は、自由に遺留分の放棄をすることができます。
事例2
Aの死亡時に、Aの有する財産の価額は800万円であった(負債はない)。AはBに500万円を遺贈し、死の3ヶ月前にCに500万円を贈与、死の6ヶ月前にDに500万円を贈与している。Aの相続人は子のYのみである。
さて、この事例で、Yは誰に対して、いくらの遺留分侵害額の請求をすることができるでしょうか?
結論。
贈与は、相続開始前の1年間にしたものに限り、遺留分算定の基礎額の計算に算入します。
事例2では、Cへの贈与は3ヶ月前、Dへの贈与は6ヶ月前であり、いずれも相続開始前の1年間にされているので基礎額に算入されます。(ただし、贈与の当事者双方が遺留分の侵害について悪意であれば1年前の日より前にした贈与も算入します)
では、遺留分を計算して参りましょう。
遺留分算定の基礎額
800万+500万(Cへ贈与)
+500万(Dへ贈与)ー0(負債)
=1800万円
Yの法定相続分
1800万円
(相続人は1人だから法定相続人は遺産の全部)
Yの遺留分
1800万×1/2=900万円
(直系尊属のみが相続人のケースに該当しない)
遺留分侵害額の請求については、その順序か法定されています。
次の順です。
1・遺贈(死因贈与があればそれと同順位)
2・後の贈与(死に近いほう)
3・前の贈与(死に遠いほう)
Yの遺留分は900万円ですが、亡Aの死亡時の財産が金800万円あり、そこからBに遺贈された金500万円を差し引いた金300万円はBの手元に残ります。
そこで、900万円からこの300万円を差し引いて金600万円についてYは遺留分侵害額の請求を行使することができるという結論になります。
具体的な侵害請求額は以下のとおりです。
・B(受遺者)に対して500万円
・C(死に近いほうの受遺者)に対して100万円
【補足】Cが無資力の場合
事例2で、Yが遺留分侵害額の請求をした時にCが無資力であったらどうでしょうか?
Yは、さらにD(死に遠いほうの受遺者)に対して、遺留分侵害額の請求をすることができるでしょうか?
民法1047条4項はこれを否定します。
侵害請求を受けるべき受遺者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担となります。
【補足】相続人の1人が特別受益者である場合
相続人の1人に対して、婚姻・養子縁組のため、もしくは生計の基本として生前贈与がなされた場合には、上記の1年の制限はなく、すべての贈与を遺留分算定の基礎額に加えることになります。
相続人間の実質的公平を図る趣旨です。
事例3
Aの死亡時に、Aの有する財産の価額は1000万円であった(負債はない)。AはBに600万円を遺贈し、Cに400万円を遺贈している。Aの相続人は配偶者のYのみである。
さて、この事例3で、Yは誰に対していくらの遺留分侵害額の請求ができるでしょうか?
この事例3においては、以下の計算式となります。
遺留分算定の基礎額
1000万ー0(負債)=1000万円
(このケースは贈与がない)
Bの法定相続分
1000万円
(相続人は1人だから法定相続分は遺産の全部)
Bの遺留分
1000万×1/2=500万円
(直系尊属のみが相続人のケースに該当しない)
受遺者であるBとCは同順位です。
この場合には、遺贈の目的の価額の割合に応じて減殺をします。
したがって、Yの遺留分侵害請求は次の計算式&額となります。
Bに対しては
500万×600万/600万+400万=300万円
Cに対しては
500万×400万/600万+400万=200万円
【補足】
遺贈の価額を遺留分の基礎となる価額となる価額に加えない理由
遺産の価額は、被相続人が相続開始の時に有した財産の価額に含まれています。
だから、これを加えると計算が重複することになり相当ではありません。
生前の贈与は、被相続人が相続開始の時に有した財産の価額に含まれないから、これを加えて基礎額を算定するのです。
不動産のケース

事例4
被相続人YのAに対する贈与(不動産の所有権)が、相続人Zの遺留分の全部を侵害している。
[問1]
Zが遺留分侵害額の請求をすることができるのはいつまでか?
結論。
Zが相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間です。
また、相続開始の時から10年が経過してしまうと遺留分減殺請求権は消滅します。(民法1048条)
[問2]
ZがAに対して遺留分侵害額請求権を行使した場合、Aは不動産の価額相当の金銭を支払うべきなのか?
結論。
Aは価額による賠償をすることになります。
[問3]
Aが目的物を第三者Bに譲渡した場合、ZはBに対しても遺留分侵害額の請求の行使が可能か?
ZはBに対しても遺留分侵害額の請求をすることができます。
(遺留分侵害額請求権の期間の制限)
民法1048条
遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。
価額算定時期
遺留分侵害額請求の価額算定の基準時は相続開始時or価額賠償時のどちらでしょうか?
目的物の価額か、被相続人の死亡時と裁判における口頭弁論時に変動した場合に問題となります。
判例は、この点について基準時は、価額賠償時であるとします。
事例5
Aはその死亡当時、乙不動産(100万円)、丙建物(500万円)以外に財産がない。
Aは平成25年2月1日、Bに対して自己の所有する甲土地(1000万円)を贈与した。
Aは同年4月1日に死亡した。遺贈によりCは乙不動産、Dは丙建物をそれぞれ取得した。
Aの相続人はAの子であるEのみである。
[問]
Aが、その死亡当時、1000万円の負債を負担していた場合、EはBに対して遺留分侵害額請求をすることができるか?
それでは、この事例5の計算をしてみましょう。
遺留分算定の基礎額
600万(死亡時の財産 乙不動産+丙建物)
+1000万(贈与分 甲土地)ー1000万(負債)
=600万円
Eの法定相続分
600万円
Eの遺留分
300万円
さて、以上の計算から、300万円しか遺留分のないEは、CおよびDから次の金額の遺留分を受けることにとどまるように思えます。
Cに対して
300万×100万/600万=50万円
Dに対して
300万×500万/600万=250万円
しかし、判例は、この結論を採用しません。
というのは、確かに、遺留分は金300万円です。
しかし、判例は、遺留分侵害額は、これに負債の額を加えた1300万円であると考えます。
つまり、遺留分にあたる金額は、遺留分権利者の生活の糧として法が定めた額ですから、この額が現実にEの手元に残ることが必要なのです。
仮に、遺留分侵害額を300万円とすれば、相続人Eの手元には、300ー1000(負債)て、700万円の負債が残ってしまいます。
ですから、金300万円の遺留分のEの手元に確保するためには、金1300万円について遺留分侵害額請求権の行使が可能でなければなりません。
以上、事例5における、遺留分侵害額請求の額は以下のとおりになります。
Cに対して 100万円
Dに対して 500万円
Bに対して 700万円
というわけで、今回は以上になります。
宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
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