【(動産の)契約解除の要件】債務不履行と相当の期間を定めた催告とは

▼この記事でわかること
契約の解除
契約解除をするための要件
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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契約の解除

 契約が成立すると契約義務が発生します。(売買契約であれば、売主は「売った物を引き渡す義務」買主は「代金を支払う義務」など)
 そして、その義務(債務)を履行しないと、すなわち、その約束を果たさないと債務不履行に陥り、損害賠償請求権が発生します。
 では、一度結んだ契約の解除はできるのでしょうか?
 まずはこちらの事例をご覧ください。

事例
AとBはギターの売買契約を締結した。しかし、Aは約束の期日が来ても一向にギターを引き渡そうとしない。


 この事例で問題になっているのは、売主のAがいつまで経ってもギターの引渡しを行わない(ギターを買主のBによこさない)ことです。

    売買契約
売主A  ―  買主B
Aがギターを引き渡さない...
 (債務を履行しない)

 要するに、Aが約束を果たしてくれない、すなわち、Aがその債務を履行しないのです。
 Bとしては、それならそれでこの契約はナシにして、他の売主・ギターを探したいですよね。
 損害賠償の請求という手もありますが、それも要件を満たしていなければできないし、正直メンドクサイですよね。
 そこで、Aとしては「この契約は解除できないか?」となります。
 民法の規定はこちらです。

(催告による解除)
541条
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。


 上記、民法541条の条文に基づいて、Aは契約の解除ができます。
 しかし!それをするためには要件があります。
 法律って何かと要件要件うるさいな!という声が聞こえてきそうです(笑)。
 ですが、法律上の請求をするときは常に
「誰が、誰に対して、どのような要件を満たしたときに、どんな請求ができるか」
を考えなければなりません。
 これはとても大事なことなのでしっかり覚えておいてください。
女性講師
 ちなみに、行政書士試験の記述問題では、まさにこのことが問われます。
 もちろん通常の択一問題を解く上でも大事ですし、宅建試験や公務員試験の民法を解く上でも大事なことです。
 さらに申しますと、現実にトラブルが起こって誰かに何かの請求をするときの原則にもなります。
 繰り返しますが、
「誰が、誰に対して、どのような要件を満たしたときに、どんな請求ができるか」
 このことは是非、覚えておいていただければと存じます。

契約解除をするための要件

 話を戻します。
 契約の解除をするためには、原則、次の要件を満たす必要があります。

1・債務不履行の存在
2・相当の期間を定めて催告をすること

 原則、上記の要件を満たしたときに、初めて契約の解除ができます。
 1は簡単ですよね。契約の解除をする理由となる債務不履行(約束を果たさないこと)の存在です。
 2の催告とは、最後通告のことです。通常は「期日までに履行をしなければ、解除する」というような文言を入れた文書を、内容証明郵便という形で送ります。

 以上のことを踏まえて、今回の事例でAが契約を解除するためには
・Bの債務不履行があり
2・相当の期間を定めて催告した上で(「〇年〇月〇日までに履行しなければ、解除する」旨の内容証明郵便を送った上で)
行うことになります。

 もし、このような手順を踏まえないで、Bが契約の解除をしようすると「テメー、約束を破るのか!」と、逆にAから攻められてしまいます。 法律的にも、Bの方が約束を破ったことになってしまいます。
 ですので、上記の要件と手順はしっかり覚えておいてください。

 なお、催告をせずに解除できる場合もあります。(無催告解除)
 民法は次のように規定しています。

(催告によらない解除)
民法542条 
1項 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
一 債務の全部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
2項 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。
一 債務の一部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。


 上記、民法542条条文1項一~五号、2項一~二号の規定に該当する場合は、債権者は債務者に催告することなく解除することが可能です。
 大雑把に言えば、無催告解除は、契約をした目的が達せられないときに認められます。
 それ以外の場合には、債務の不履行が軽微でないときに催告解除が認められる、というふうなイメージで捉えると理解しやすいのではないでしょうか。

 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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【共同保証】複数の保証人~分別の利益とは/保証人間(同士)の求償の問題

▼この記事でわかること
共同保証とは
分別の利益は債権者にとって都合が悪い?
保証人間(保証人同士)の求償
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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共同保証

 保証人は1人しか立てられないわけではありません。複数人の保証人を立てることもできます。
 1つの主債務について複数人が保証債務を負担するものを共同保証と言います。

事例1
BはAから150万円を借り受けた。CおよびDはBの保証人である。


 これは、CとDの2人がBの保証人、すなわち共同保証のケースです。

    主債務者
     B
    ↗︎  
債権者A → 保証人C
    ↘︎
     D
    保証人

 さて、この場合、債権者Aは保証人Cに対して150万円全額の請求ができるのでしょうか?
 結論。債権者Aは保証人Cに対して150万円全額の請求はできません。請求できる金額は75万円です。
 これはどういうことかなのか?共同保証の場合、各保証人はそれぞれが等しい割合で債務を負担することになるからです。
 つまり、事例1の場合、保証人C・Dはそれぞれ等しい割合で債務を負担します。

    主債務者
     B
    ↗︎  
債権者A → 保証人C(75万円負担)
    ↘︎
     D
    保証人(75万円負担)

 したがって、保証人C・Dは75万円ずつ負担することになり、債権者Aが保証人Cに対して請求できる金額は75万円ということになるのです。
 なお「共同保証の場合は各保証人それぞれが等しい割合で債務を負担することになる」ということは何を意味するのかと言いますと、これは、保証人の数が増えていくほど各保証人の負担割合も減る、ということを意味します。
 例えば、事例1のBの保証人がC・D・Eの3人となれば、各保証人の負担する金額は150万÷3=50万円ずつとなります。さらに保証人が5人に増えれば、各保証人の負担する金額は150万÷5=30万円ずつとなります。
 このように、保証人の数が増えるほどに各保証人の負担が減ることを分別の利益と言います。

分別の利益は債権者にとって都合が悪い

 保証人の数が増えるということは、債権者にとっては請求できる相手が増えてありがたいように思えますよね。
 しかし、決してそんなことはありません。
 というのも、分別の利益があるからです。
 これはどういう意味かと言いますと、保証人の数が増えれば債権者が請求できる相手も増えますが、同時に各保証人の負担する割合は減っていきます。各保証人の負担する割合が減っていくということは、債権者が各保証人に対して請求できる金額が減っていくということです。
 これは債権者にとっては不利益と言えるでしょう。
 え?なんで?
 例えば、事例のBの保証人がCひとりだったします。すると、債権者Aが保証人Cひとりに対して請求できる金額は150万円全額になります。
 ということは、もし主債務者Bが無資力(金がない状態)になってしまった場合、債権者Aは保証人Cに対して債務の全額を請求して150万円を回収することになります。
 ところが、これがBの保証人がC・D・Eの3人だった場合、債権者Aが各保証人に請求できる金額は150万÷3=50万円になります。
 ということは、もし主債務者Bが無資力(金がない状態)になってしまった場合、債権者Aは保証人C・D・Eの3人にそれぞれ50万円ずつ請求して150万円を回収することになります。
 保証人が1人であれば、1人に対して全額を請求できるのに対し、保証人が3人の場合は、それぞれに3分の1ずつの金額しか請求できません。
 したがいまして、分別の利益というのは保証人側にとっての利益であって、債権者側から見れば、それこそ分別の不利益と言ってしまってもいいかもしれません。
 なお、これが連帯保証の場合は、いくら保証人が増えようが、債権者は各連帯保証人それぞれに対して債務の全額の請求ができます。
 したがって、連帯保証の場合、連帯保証人が増えるのは債権者にとってありがたいことになります。
 このことからも、なぜ現実の保証債務のほとんどが連帯保証なのか、その意味がよくわかりますよね。

保証人間(保証人同士)の求償

 1つの主債務に複数人の保証人を立てることも可能なのはわかりました。
 では、複数人の保証人を立てた場合、すなわち共同保証の場合の求償についてはどうなるのでしょうか?
 (保証人の求償の基本についての詳しい解説は「委託を受けた&受けない保証人の求償権~」をご覧ください)

事例2
BはAから150万円を借り受けた。CおよびDはBの保証人である。そして保証人Cは自身の負担分75万円をAに弁済した。


 この事例は、2人の保証人のうち、保証人Cが債権者Aに75万円を弁済したという話です。

    主債務者
     B
    ↗︎ 75万弁済 
債権者A → 保証人C(75万円負担)
    ↘︎ 
     D
    保証人(75万円負担)

 さて、この場合、自身の負担分75万円を弁済した保証人Cは、主債務者Bに対して「おまえは私に金払え」と求償することができるでしょうか?
 結論。保証人Cは主債務者Bに対して75万円を求償することができます。(求償の範囲は委託の有無によって異なります。保証人の委託の有無の問題についての詳しい解説は「委託を受けた&受けない保証人の求償権~」をご覧ください)
 保証人Cは自身の負担分の75万円をAに弁済しました。しかし、その75万円はもともと主債務者Bが弁済すべき債務150万円の一部です。
 つまり、保証人CはBの債務の一部を肩代わりしたわけです。
 したがって、保証人CはAに支払った75万円を「私(C)が肩代わりした分をおまえ(B)は私に払え」と主債務者Bに求償することができるのです。

保証人Cは保証人Dに対して求償することはできるのか

 さて、保証人Cが主債務者Bに対して求償できるのはわかりました。
 では保証人Cは、もう1人の保証人Dに対しても「あなたは私(C)に金払え」と求償することはできるのでしょうか?
 結論。事例2の保証人Cは、保証人Dに対して求償することはできません。
 ただし!ここで注意点があります。
ここがポイント女性
 今回の事例2の保証人Cは、保証人Dに対して求償することができません。
 しかし、この結論は「共同保証の場合に保証人間での求償が認められていない」という事を意味している訳ではありません。
 例えば、もし事例2の主債務者Bが無資力(金がない状態)になってしまった場合に、保証人Cが債権者Aに150万円を弁済したときは、保証人Cは保証人Dに対して求償することができます。
 なぜなら、主債務者の無資力共同保証人同士で公平に分担すべきだからです。公平に分担するということは、各保証人はそれぞれの負担分に応じて分担するということです。
 そして、保証人C・Dの負担部分はそれぞれ75万円ずつです。
 ですので、主債務者Bが無資力になってしまった場合は、その無資力(Bに金が無いこと)の負担を保証人C・Dは、それぞれ75万円ずつ分担することになり、150万円を弁済した保証人Cは、言ってみれば保証人Dの負担分75万円を肩代わりしたことになります。
 したがいまして、保証人Cは保証人Dに対して「私(C)が肩代わりした分の75万円をあなたは私に払え」と求償することができます。

なぜ事例2の保証人Cは保証人Dに対して求償できないのか

    主債務者
     B
    ↗︎ 75万弁済 
債権者A → 保証人C(75万円負担)
    ↘︎ 
     D
    保証人(75万円負担)

 保証人間で求償できるのは、自己の負担部分を超える額を弁済した場合です。
 つまり、1人の保証人が自己の負担分の金額を超えて支払った場合です。
 ところが、事例2の場合、保証人Cが弁済した金額は自己の負担分75万円です。つまり、保証人Cは自己の負担分を超える額を弁済したわけではないのです。これが100万円弁済したとなれば、保証人Cは保証人Dに対して自己の負担分を超えた額=25万円を求償することができます。
 したがいまして、事例2の保証人Cの場合は、もう1人の保証人Dに対して求償することができないのです。

補足:保証連帯

「保証人同士で連帯して各保証人それぞれが債務の全額を弁済する義務を負う」という特約をすることもできます。
 これを保証連帯と言います。
 連帯保証とは違うの?
 連帯保証の場合、債権者に対しての関係で主債務者と保証人は連帯します。
 しかし、保証連帯はあくまで保証人間での特約です。
 ですので、保証連帯の特約をしても、債権者に対しての関係で主債務者と連帯するわけではないので、連帯保証人とはなりません。
 したがって、保証連帯の特約をしても、各保証人には催告の抗弁権検索の抗弁権は認められます。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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【保証債務と相殺】保証人の弁済の事前&事後通知義務とは/主債務者の事前通知忘れについて

▼この記事でわかること
保証債務と相殺
保証人の弁済の事前通知義務
主債務者の事前通知忘れ
保証人の弁済の事後通知義務
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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保証債務と相殺

 保証債務に相殺が絡んでくると一体どうなるのでしょうか?(相殺についての詳しい解説は「連帯債務の相殺と求償~」もご覧ください)
 まずは事例をご覧ください。

事例1
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。なお、BはAに対し、反対債権を持っている。

 
 この事例1は、主債務者のBも債権者Aに対して債権(これを反対債権と言う)を持っています。

債権者 主債務者
 A ⇄   B
   ↘︎
   保証人
    C

 さてこの場合、主債務者のBが、その反対債権を使って相殺できるのは言うまでもありません。
 反対債権を使って相殺するとは、主債務者Bから債権者Aに対する「金払え」という債権(反対債権)を使って、債権者Aから主債務者Bに対する「金払え」という債権を打ち消す、という意味です。
 さて、では保証人Cが債権者Aから150万円の支払い請求を受けた場合、保証人Cが主債務者Bの反対債権を使って相殺することはできるのでしょうか?

債権者   主債務者
 A  ⇄    B
   ↘︎↑Cがコレを使える?
   保証人
    C

 結論。債権者Aから支払い請求を受けた保証人Cは、主債務者Bの反対債権を使って相殺することはできません。
 しかし、保証人Cは、債権者Aからの支払い請求を拒絶することができます。(履行拒絶) 
 そもそも、Aに対する150万円の借金は、本来は主債務者のB自身で支払うのがスジです。
 したがって、この場合に保証人Cが履行拒絶するのは、むしろスジどおりであり、問題ないのです。
 また、保証人Cが債権者Aに対して反対債権を持っている場合に、主債務者Bが保証人Cの反対債権を使って相殺することもできません。
 当然ですよね。もともと主債務者のB自身で支払わなければならないものを保証人Cの権利を使って何とかしようとすることなど、スジ違いもいいとこです。
 なお、主債務者Bが取消権や解除権を有するときも、保証人Cは債権者Aからの支払い請求を拒絶できます。

保証人の弁済の事前通知義務
通知
 保証人は弁済の事前通知義務を負います。
 これはどういう事かというと、保証人が弁済するときは、事前に主債務者へ「弁済します」という通知をしておかなければならないということです。
 その理由は、事前通知をしておかないと、主債務者に不都合が生じる可能性があるからです。
 不都合とは、例えば、主債務者が債権者に対して反対債権を持っている場合などがその典型です。
 以上をふまえた上で、次の事例をご覧ください。

事例2
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。なお、BはAに対し、反対債権を持っている。その後、保証人CはBに事前通知をせずに150万円の弁済をした。


 この事例2の問題点はすでにおわかりですよね。
 この事例2は、反対債権を持っている主債務者Bに対して、事前通知をしないで保証人Cが弁済をしてしまった、というケースです。
 もし、主債務者Bが反対債権を使って相殺しようとしていた場合、主債務者Bは困ってしまいますよね。
 保証人Cに事前通知なしで勝手に弁済されたために、主債務者Bは反対債権を使った相殺ができなくなってしまいました。
 これがもし、保証人Cが主債務者Bに対して事前通知をしていれば、Bは「私が反対債権で相殺するから君は弁済しなくていいよ」と、Cに対して事前に弁済を止めるように言えたはずです。
 そもそもなんでBは相殺できなくなると困るの?
 それは、もしAが無資力の状態(お金がない状態)であれば、Bは相殺しない限り、その反対債権を回収することができないからです。無一文から金は取れない=ない袖は振れないってヤツです。
金欠
 でも相殺ができれば、CはAに「金を払わなければならないという債務」を減らすor無くす=無資力(金が無い状態)になってしまったAからも実質的にお金を回収したのと同じ効果を得られるのです。(この問題については「連帯債務者の弁済の事前・事後通知義務~」でも解説していますのでそちらもご参照ください」)

 さて、ではこの事例2で、事前通知を怠った保証人Cに対し、Bはどんな主張ができるでしょうか?
 保証人が事前通知を怠った場合、主債務者は保証人からの求償に対して「私の反対債権を君にあげよう。そしてその反対債権を使って債権者からお金を回収しなさい」と主張することができます。
 したがって、事前通知を怠った保証人Cからの求償に対して、主債務者Bは「私(B)の反対債権を君(C)にあげよう。そしてその反対債権を使って君自身でAからお金を回収しなさい」と主張して突っぱねることができます。
 そして保証人Cは、Bの反対債権を使って自分自身でAからお金を回収しなければならなくなります。
 このとき、仮にAが無資力(お金がない状態)になってしまっていたら、そのリスクは保証人Cが負担することになります(Aからお金が回収できなかったらCは泣き寝入りということ)。
 これは事前通知を怠った保証人へのペナルティです。

 なお、事前通知忘れによる保証人の求償権の制限は、委託を受けた保証人(主債務者に頼まれた保証人)に限ります。
 委託を受けない保証人(主債務者に頼まれないでなった保証人)の場合は、事前通知をしようがしまいが、その求償権は制限されます。
(委託を受けた&受けない保証人の求償権についての詳しい解説は「【保証人の求償権】委託を受けたか受けないかで違う?」をご覧ください)

主債務者の事前通知忘れ

事例3
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。なお、CはAに対し、反対債権を持っている。その後、BはCに事前通知をせずに150万円の弁済をした。


 今度は、保証人Cが反対債権を持っていて、主債務者Bが弁済の事前通知を怠ったケースです。

債権者  主債務者
 A  →  B
  ↖↘︎
   保証人
    C

 さて、この事例3ですが、実は何の問題もありません。というのも、主債務者は事前通知をする義務がないからです。
 事例2では、事前通知を怠った保証人Cには、主債務者Bに対して求償できないというペナルティがありました。
 それはつまり、事前通知が求償するための要件になっているということです。
 しかし、その事前通知義務は、主債務者にはありません。
 じゃあ主債務者の求償は?
 そもそも、主債務者が保証人に求償することはありえません。
 これは当たり前の話で、もともと主債務者が自分で返さなければならない借金を主債務者自身で返しただけのことですから。それで求償も何もないですよね?
 これは民法云々よりも、常識的に考えた方がわかりやすいです。
 民法の学習をしていると、どうしても頭の中が難しくなりがちです。だからこそ、たまには一歩引いて、ごく普通の感覚で常識的に考えてみてもいいかもしれません。

保証人の弁済の事後通知義務

 保証人には弁済の事前通知義務があります。
 しかし、弁済の通知義務は事前だけに限りません。
 事後にもあるのです。
 という訳で、ここからは保証債務における保証人の弁済の事後通知義務について、解説して参ります。

事例4
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。そして、保証人CはAに対して150万円を弁済したが、その弁済の事後通知を怠っため、BもAに150万円を弁済してしまった。


 まず、保証人には弁済の事後通知義務があります。それは、委託を受けた保証人(頼まれてなった保証人)であろうが委託を受けない保証人(頼まれていないのになった保証人)であろうが一緒です。
 なぜそのような義務があるのか?その意味は、主債務者による二重弁済を防止するためです。
 ということで、この事例4は、保証人Cがその事後通知義務を怠ってしまったため、主債務者Bが二重に弁済してしまった、というケースです。要するに、保証人Cと主債務者Bの弁済が被ってしまった事例です。

  さらに弁済
債権者  主債務者
 A  →  B
弁済↖↘︎
   保証人
    C

 さて、ではこの事例1で、保証人Cの弁済と主債務者Bの弁済、一体どちらの弁済が有効になるのでしょうか?
 通常、二重弁済の場合(弁済が被った場合)、先の弁済が有効になり、後の弁済は非債弁済(余計な弁済)※となります。
※非債弁済とは、債務がないのに弁済すること
 そして、後から弁済した者は、不当利得返還請求をしてお金を返してもらう、という形になります。
 したがって、もし弁済した相手が無資力(お金がない状態)になってしまっていた場合、そのリスクは後から弁済した者が負担します。
 しかし、この事例4の場合、主債務者Bが二重弁済してしまった原因は、保証人Cが事後通知義務を怠ったためです。
 そこで、このような場合は民法463条3項の規定により、主債務者Bは、自らの弁済を有効とみなすことができます。
 つまり、主債務者Bは「私の弁済の方が有効だ!」と主張することができます。
 そして、主債務者Bがその主張をすると、保証人Cの弁済が非債弁済(余計な弁済)となります。
 したがいまして、主債務者Bが「私の弁済の方が有効だ!」と主張すると、それにより主債務者Bの弁済が有効とみさなれ、保証人Cの弁済は非債弁済となります。それはつまり、もしAが無資力になってしまった場合、そのリスクを負担するのは保証人Cになるということです。
 これは事後通知を怠った保証人へのペナルティです。

主債務者の事後通知忘れ

 では続いて、次のような場合はどうなるでしょう?

事例5
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。そして、主債務者BはAに対して150万円を弁済したが、その弁済の事後通知を怠っため、保証人CもAに150万円を弁済してしまった。


 今度は、主債務者Bが事後通知義務を怠ったため、保証人Cが二重弁済してしまった、というケースです。

        弁済
   債権者  主債務者
    A  →  B
さらに弁済↖↘︎
      保証人
       C

 さて、この場合、主債務者Bの弁済と保証人Cの弁済、一体どちらの弁済が有効になるのでしょうか?
 まず、主債務者にも弁済の事後通知義務があります。なぜなら、この事例2のように、後から知らずに保証人が二重弁済してしまう可能性があるからです。
 という訳で、この事例2も、論理的な帰結は事例1と一緒になります。
 保証人Cが「私の弁済の方が有効だ!」と主張すれば、保証人Cの弁済が有効とみなされ、主債務者Bの弁済は非債弁済(余計な弁済)となります。
 ただ、ここでひとつ注意点があります。
 主債務者が事後通知しなければならないのは委託を受けた保証人に対してだけです。
 主債務者は、委託を受けない保証人に対しては事後通知義務はありません。
 頼んでもいないのに保証人になった者に対してまで、主債務者の事後通知義務はないのです。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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【保証人の求償権】委託を受けたか受けないかで違う?求償の制限と事前求償権とは

▼この記事でわかること
保証人の求償権
委託を受けた保証人の場合
委託を受けない保証人の場合
保証人の事前求償権
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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保証人の求償権

 保証人は、主債務者が債務を履行しないときに、主債務者に代わってその債務の履行をする責任を負います。
 そして、保証人がその債務を弁済すると、保証人は主債務者に対して求償することができます。
 要するに、保証人は主債務者に対して「私が君の代わりに支払った分を、今度は君が私に支払いなさい」と請求できるのです。
 保証債務は、形式的には債権者と保証人との間の契約であり、保証債務自体は保証人自身の債務です。
 しかし、保証人が債務を弁済した場合、それは、言ってみれば保証人が主債務者の債務を肩代わりしたわけですよね。なので、保証人は主債務者に対して、肩代わりした分を求償することができるのです。
 当然、全額求償できるんだよね?
 それが、保証人が「委託を受けた保証人」なのか「委託を受けない保証人」なのかによって、求償できる内容が異なってきます。

委託を受けた保証人

事例1
BはAから150万円を借り受けた。CはBから委託を受けた保証人である。その後、保証人CはAに150万円を弁済した。


 この事例1は、委託を受けた保証人Cが、主債務者Bに代わって150万円を弁済した(支払った)というケースです。

債権者      主債務者
 A「150万円返せ」→ B
      弁済↖↘︎
           C
      委託を受けた保証人

「CはBから委託を受けた保証人」の意味は、Bから頼まれてCは保証人になった、ということです。
 さて、このケースで、委託を受けた保証人Cは主債務者Bに対して、一体いくらまで求償することができるのでしょうか?
 結論。委託を受けた保証人Cは、Bに対して150万円全額を求償できます。
 また、それ以外にも、免責の日以後の法定利息避けることができなかった費用その他の損害賠償金があれば、それらも合わせて求償することができます。
 委託を受けた保証人の求償の範囲は広いものとなっています。
 求償の範囲が広いという事は簡単に言えば、保証人から主債務者に対して請求できる金額がデカイということです。

 なお、このルールは委託を受けた保証人が弁済期に保証債務を履行したときの話です。
 なので、もし保証人Cが弁済期より前に保証債務を履行(150万円を弁済)していた場合は、保証債務履行当時に主債務者Bが利益を受けた限度しか求償することができません。 
 また、この場合、求償は主債務の弁済期以後でなければできません。くわえて、利息や損害については、弁済期以降に発生したものしか求償することができません。
 上記、若干分かりづらい言い回しだったと思いますが、「弁済期より前に保証債務を履行した場合は委託を受けた保証人の求償も制限を受ける」ということをおさえておいてください。
 そもそも、弁済期前の支払いは保証人の義務ではありません。つまり、弁済期前の保証債務の履行は、保証人が頼まれもしないで勝手にやったことも言えます。なので、その場合の求償権に制限があるのは当然と言えば当然と言えます。
 なお、保証人が支出した財産の額が、これにより消滅した主債務の額を超えたときは、求償の範囲はその消滅した額に限られます。
 例えば、事例1で保証人Cが金200万円相当の不動産で代物弁済していた場合、CがBに求償でいる額は150万円に限られます。

委託を受けない保証人

事例2
BはAから150万円を借り受けた。CはBから委託を受けていない保証人である。その後、保証人CはAに150万円を弁済した。


 今度は、委託を受けない保証人Cが、主債務者Bに代わって150万円を弁済したというケースです。

債権者      主債務者
 A「150万円返せ」→ B
      弁済↖↘︎
           C
     委託を受けない保証人

「CはBから委託を受けない保証人」という意味は、Bから頼まれてもいないのにCは保証人になったということです。
 頼まれてもいないのに自ら保証人になる人って、現実には中々いらっしゃらないかと思います。ましてや主債務者の親や家族でもないのに委託を受けない保証人がいたとすれば、それはかなり奇特な人と言えるでしょう。
 それはさておき、この事例2で、委託を受けない保証人Cは、主債務者Bに対して、一体いくら求償することができるでしょうか?
 結論。委託を受けない保証人Cの求償できる額には制限があります。微妙な答え方ですが、これが結論です。
 委託を受けない保証人Cは、主債務者Bが保証債務履行当時に利益を受ける限度しか求償することができません。
 さらに、もしCが主債務者Bの意思に反して保証人となっていた場合は、求償当時に現に利益を受ける限度(現存利益)しか求償することができません。
「主債務者Bの意思に反して」というのは、CがBの保証人になることをBは嫌がっていたのに、それでも無理矢理CはBの保証人になったということです。

 以上、もっとわかりやすく簡単に言うとこうです。

「頼まれもしないで保証人になった者は、主債務者に対して求償できる額には制限がある」
「頼まれもしないどころか主債務者から嫌がられてたのにもかかわらず保証人になった者は、主債務者に対して求償できる額にはさらに制限がある」

 まあでもこれは、普通に考えてもわかりますよね。頼まれもしないで勝手に保証しておいて利息その他まで求償するというのは、ちょっと厚かましいですよね。
 さらに、主債務者が嫌がっているのにも関わらず勝手に保証しておいて、となれば、そのような保証人の求償権にはさらに制限があって当然と言えるでしょう。
 なお、委託を受けない保証人Cが弁済期より前に保証債務を履行(150万円を弁済)していた場合も、求償は主債務の弁済期以後でなければできません。

事前求償権

 民法460条では、一定の場合に、保証人に事前求償権を認めています。
 これはどういうことかと言いますと、保証人は、債権者に弁済する前に主債務者に求償できるということです。

債権者       主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎   ↑事前に求償
          保証人
           C

 つまり、上図の保証人Cが、債権者Aに対して150万円を支払う前に、主債務者Bに対して「150万円よこせ」と求償できるということです。まさしく事前に求償する権利=事前求償権です。
 ただ、すでにお気づきの方もいらっしゃると思いますが、これも「委託を受けた保証人」なのか「委託を受けない保証人」なのかによって異なってきます。
 事前求償権は、委託を受けた保証人にしか認められません。
 委託を受けない保証人には事前求償権はありません。
 そりゃそうですよね。勝手に保証しといて「事前に金よこせ」となったら、主債務者としては、そんな保証人はただのタチの悪いヤカラと変わりませんよね(笑)。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
関連記事

【保証債務&連帯保証と消滅時効】履行請求&債務の承認とは/時効完成後の債務の承認について

▼この記事でわかること
主債務者が債務の承認をした場合
保証人が債務の承認をした場合
主債務の時効が完成した後に主債務者が債務の承認をした場合
連帯保証と消滅時効
連帯保証人の債務の承認
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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保証債務と消滅時効
主債務者が債務の承認をした場合

 まずは事例をご覧ください。(消滅時効についての詳しい解説は「消滅時効の基本~権利行使をできる時と知った時」をご覧ください)

事例1
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。そして月日が経過し、Bの主債務とCの保証債務には時効が迫っている。そんな中、BはAに対して債務の承認をした。


 この事例1では、主債務者のBが債権者のAに対して債務の承認をしました。

    時効間近  債務の承認
債権者  ↓   ↙主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎
          保証人
           C

「BがAに対して債務の承認をした」の意味は、BがAに対して「150万円支払います」と意思表示した、という意味です。
 債務者が債権者に対して債務の承認をすると、時効が更新します。時効の更新とは、時効がリセットされることです。
 つまり、主債務者Bが債権者Aに対して債務の承認をした、ということは、Bの主債務の時効の進行期間がリセットされた(ゼロに戻った)ということです。
 さて、問題はここからです。
 主債務者Bが債権者Aに対して「150万円支払います」と債務の承認をしたことにより、主債務の時効は更新(リセット)されましたが、それに伴ってCの保証債務の時効も更新(リセット)するのでしょうか?

    時効間近  債務の承認
債権者  ↓   ↙主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎←どうなる?
          保証人
           C

 結論。Bの主債務の時効が更新(リセット)したことにより、Cの保証債務の時効も更新(リセット)します。
 なぜなら、主債務に生じた効果は、原則として全て保証債務にも及ぶからです。
 これは、保証債務の付従性という保証債務の持つ性質です。
 したがって、主債務者Bが債務の承認をしたことにより、Bの主債務のみならずCの保証債務の時効も更新(リセット)するのです。
 保証人Cとしては「Bのヤツめ、余計なことしてくれたな」という感じかもしれません(笑)。

保証人が債務の承認をした場合

 続いて、次のような場合はどうなるでしょう?

事例2
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。そして月日が経過し、Bの主債務とCの保証債務には時効が迫っている。そんな中、CはAに対して債務の承認をした。


 さて、今度は保証人CがAに対して債務の承認をしたケースです。

    時効間近  どうなる?
債権者     主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎←債務の承認
          保証人
           C

 この場合、Bの主債務の時効は更新(リセット)するのでしょうか?
 結論。保証人CがAに対して債務の承認をすると、保証債務の時効は更新します。
 しかし、Bの主債務の時効は更新しません。
 なぜなら、保証債務に生じた弁済以外の効果は、主債務には及ばないからです。

 また、この事例2の場合は、少し面白いことになります。
 保証人Cが債務の承認をすると、Bの主債務の時効は更新しませんが、Cの保証債務のみ時効は更新します。
 すると、Cの保証債務の時効進行期間はリセットされますが、Bの主債務の時効進行期間は進んでいくことになります。
 そして、Bの主債務の時効が完成すると、Bは「時効が完成しました!」と時効の援用(時効の権利の主張)ができます。
 すると主債務は消滅し、Bの150万円支払い義務もなくなります。
 そしてなんと!このとき、保証人CもBの主債務の時効を援用できます。つまり、保証人Cも主債務の時効の権利を主張できるのです。
 そして、保証人CがBの主債務の時効を援用すると、保証債務の付従性により、主債務の消滅に伴って保証債務も消滅します。
 つまり、債権者からすれば、保証債務の時効を更新(リセット)させたところで、それはトカゲの尻尾切りにしかならない!ということです。
 結局、主債務の時効が生きていて、やがてそれが完成すれば、保証債務もその効果を受けてしまうので。
 したがって、債権者Aからすれば、保証人Cの債務の承認というのは意味が薄く、Bの「主債務の時効」という元を断たなければ、あまり意味がないと言えるでしょう。
 いわば債権者にとって保証債務の時効はザコ、真に倒すべきボスは主債務の時効なのです。

主債務の時効が完成した後に
主債務者が債務の承認をした場合


 続いて、こんな場合はどうなるでしょう?

事例3
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。それから月日が経過し、主債務の消滅時効が完成した後、BはAに対して債務の承認をした。


 この事例3は、主債務の時効が完成した後、主債務者Bが債務の承認をした、というケースです。

    時効完成  債務の承認
債権者  ↓   ↙主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎
          保証人
           C

 このケースのポイントはもうおわかりですよね。
 Bが債務の承認をしたのが「主債務の時効完成後」というところです。
 時効完成後の債務の承認は、時効利益の放棄と考えられ、債務が復活します。
 つまり、主債務の時効完成後、Bが債務の承認をしたことにより、Bは主債務の時効の利益を放棄したことになり、主債務は復活することになります。
 さて、問題はここからです。
 この事例3で、時効完成後にBが債務の承認をしたことにより、主債務は復活します。
 では、Cの保証債務はどうなるのでしょうか?復活した主債務の保証もしなければならないのでしょうか?
 結論。Bの主債務が復活しても、保証人Cは主債務の時効を援用することができ保証債務から免れることができます。
 え?なんだかよくわからん
 はい。その理屈を今から解説します。
 事例1、事例2と、主債務に生じた効果は、原則として全て保証債務に及びました。
 そう考えると、主債務が復活すれば、それに伴って保証債務も存続し続けるように思えます。
 しかし、いくら保証人の責任が重いとはいえ、一度、時効が完成してから復活した、まるでゾンビのような主債務の保証までさせ続けるのは、さすがにちょっと酷すぎんじゃね?と考えます。
ゾンビ
 そして「たとえ主債務者が債務の承認をしたとはいえ、一度、主債務の時効が完成したんだから、保証人については時効の援用をさせてあげて、保証債務から免れさしてあげよう」という結論になるのです。

 保証人の責任は重いです。その責任は無限責任とも言われます。まるで鬼でも襲ってきそうな責任ですね(笑)。
 しかし、先ほどのことからわかるように、保証人の責任は、無限責任であっても、永遠ではないということです。そう、あの不死身とも思えた鬼舞辻無惨でさえ倒されたのですから...。

連帯保証と消滅時効

 現実の保証契約といえば、そのほとんどが連帯保証になります。
 ですので「連帯」が付かない保証契約を実際に見かけることはほとんどありません。(現実ではほとんど見ることがなくても民法の学習においては「連帯」が付かない保証契約の学習も必須になりますのであしからず。。)
 連帯保証人には催告の抗弁権検索の抗弁権認められません。つまり、単純に債権者にとっては連帯保証の方が断然ありがたいのです。
 したがって、現実で見かける保証契約のほとんどが連帯保証なのです。
 ここからは、その現実で見かけるほとんどの保証契約=連帯保証の消滅時効の問題について解説して参ります。
 まずは事例をご覧ください。

事例4
BはAから150万円を借り受けた。CはBの連帯保証人である。そして月日が経過し、BとCの債務には時効が迫っている。そんな中、AはCに対して履行の請求をした。


 これは、債権者のAが連帯保証人のCに対して「150万円支払え」と履行の請求をした、という事例です。

    時効間近
債権者  ↓   主債務者
 A「150万円返せ」→ B
   履行の請求↘↘︎
         連帯保証人
           C

 さて、この場合、債権者Aが連帯保証人Cに対して履行の請求をしたことにより、主債務者Bの主債務の時効は更新するのでしょうか?
 結論。債権者Aが連帯保証人Cに対して履行の請求をしても、Bの主債務の時効は更新しません。

~ちょこっとコラム~
以前は連帯保証人への履行の請求で主債務の時効も止められた?

 連帯保証人へ履行の請求をしても主債務の時効は更新(リセット)、またはストップしません。
 実はこれ、民法改正により変わりました。
女性講師
 そう、民法改正前の旧民法では、連帯保証人への履行の請求で主債務の時効も止めることができたんです。
 民法改正前での、連帯保証人に対して履行の請求をすると主債務の時効の進行が止まるという規定は、債権者としては非常にありがたいことでした。
 というのは、仮に主債務者が夜逃げしたとしましょう。すると主債務者に対する履行の請求が面倒なことになります。
 面倒なことになるという意味は「できるけど手続きが面倒」ということです。
 それが、連帯保証人に対する履行の請求で主債務の時効も止めることができたのは、債権者にとって実務上とても助かったのです。
 しかし、これは逆に言えば、連帯保証人の責任が重過ぎたという側面もありますよね。
 いずれにせよ、民法改正により変わりましたので、改正以前の規定で記憶していた方はくれぐれもご注意ください。

 なお、念のため申し上げておきますが、もし債権者Aが主債務者Bに対して履行の請求をした場合は、主債務の時効が更新するのはもちろん、連帯保証人Cの債務の時効も更新します。
 ちなみに、時効を更新させるための履行の請求は「裁判上の請求」です。(ただ請求書を送っただけではダメ)
 裁判上の請求とは、例えば、訴訟の提起です。裁判を起こすと、訴状提出時に時効期間の進行が一旦止まり(時効の完成猶予)、確定判決時に時効が更新されます。(時効の完成猶予についての詳しい解説は【時効の更新と完成猶予】もご覧ください)

連帯保証人の債務の承認

事例5
BはAから150万円を借り受けた。CはBの連帯保証人である。そして月日が経過し、BとCの債務には時効が迫っている。そんな中、CはAに対して債務の承認をした。


 今度は、連帯保証人Cが債権者Aに対して「150万円支払います」と債務の承認をしたケースです。

    時効間近  どうなる?
債権者     主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎←債務の承認
         連帯保証人
           C

 さて、ではこの場合、主債務の時効は更新するでしょうか?
 結論。連帯保証人Cが債権者Aに対して債務の承認をしても、主債務の時効は更新しません。
 なぜなら、債務の承認に絶対効はない、つまり、債務の承認の効力は相対効だからです。
 したがって、この場合は、保証債務に生じた効果は主債務には及ばないという原則どおり、連帯保証人の債務の承認の効果は主債務に及ばないので、主債務の時効は更新しないのです。

補足・連帯保証における絶対効

 連帯保証人の債務に生じた効果が主債務にも及ぶ場合(絶対効になる場合)がいくつかあります。
 それを以下に簡単に記します。

・混同
・更改
・相殺

 これらは、連帯債務における絶対効と同じ扱いになっております。
 したがいまして、上記の3つについては、以下の連帯債務についての解説記事をご参照ください。
連帯債務の相殺と求償~相殺を援用する&しないとどうなる?
連帯債務~債権譲渡による混同と更改?

 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
関連記事

【保証債務における債権譲渡の通知】主債務者と保証人どちらにすべきか

▼この記事でわかること
保証債務における債権譲渡の
主債務者に債権譲渡の通知をした場合
保証人に債権譲渡の通知をした場合
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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保証債務の債権譲渡
主債務者に債権譲渡の通知をした場合

 保証債務において、債権者が債権譲渡すると一体どうなるのでしょうか?
(債権譲渡とは何なのか?についての詳しい解説は「債権譲渡の超基本~債権は譲れる?」をご覧ください)
 まずは事例をご覧ください。

事例1
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。そしてAは、この債権をDに譲渡し、その通知をBにした。


 これはどういう事例かというと、Bに150万円を貸している債権者Aが、その「150万円返せ」という貸金債権をDに譲渡(債権譲渡)して「Dに債権を譲渡しました」という通知をBにした、という話です。
 BからDに債権譲渡されて、当事者の関係図はこのようになります。

(債権譲渡前)
債権者       主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎
          保証人
           C

(債権譲渡後)
債権者       主債務者
 D「150万円返せ」→ B
         ↘︎
          保証人
           C

  債権譲渡の通知
債権者A → 主債務者B

 さて、ではこの事例1で、債権者Dは保証人Cに対して、保証債務の履行を求めることができるでしょうか?
 結論。Dは保証人Cに対して保証債務の履行を求めることができます。
 債権譲渡の通知はBにしかされてないのに?
 はい。債権者Aが主債務者Bに債権譲渡の通知を行なったことにより、AはBに対して対抗要件を備えたことになります。対抗要件を備えたということは、それで法律的にOK!ということです。
 すると、その効果はCの保証債務にも及びます。
 そして、AがBに対して債権譲渡の対抗要件を備え、その効果がCの保証債務にも及んだ、ということが意味するのは、Aから債権譲渡されたDは、債権譲渡の通知を受けていない保証人Cに対しても、法律的に堂々と「150万円返せ」と保証債務の履行を請求することができる、ということです。
 主債務に生じた効果は、原則として全て保証債務にも及びます。つまり、保証債務とは、そういったことも織り込み済みで保証するものなのです。

保証人に債権譲渡の通知をした場合

 続いて、次のような場合はどうなるでしょう?

事例2
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。そしてAは、この債権をDに譲渡し、その通知をCにした。


 今度は、Dに債権譲渡をしたAが、その通知を主債務者Bではなく保証人Cにした、という事例です。
 当事者の関係図は以下です。

(債権譲渡前)
債権者       主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎
          保証人
           C

(債権譲渡後)
債権者       主債務者
 D「150万円返せ」→ B
         ↘︎
          保証人
           C

  債権譲渡の通知
債権者A → 保証人C

 さて、この場合に、Dは保証人Cに対して、保証債務の履行を求めることができるでしょうか?
 結論。なんとこの場合、Dは保証人Cに対して、保証債務の履行を求めることができません。
 え?どうして?
 その理由は、保証債務に生じた弁済以外の効果は、主債務に影響がないからです。
 つまり、保証人Cに対する債権譲渡の通知は、主債務者Bに対しては何の効力を持ちません。
 そして、主債務者Bに対して何の効力を持たないということは、結局、保証人Cに対しても何の効力を持たないということになってしまうのです。
 したがって、保証人Cに対する債権譲渡の通知は、主債務者Bに対してのみならず、保証人Cに対してすら対抗要件を備えたことにはなりません。
 保証人Cに対して債権譲渡の通知をしたところで、法律上それは何の意味も成さないのです。法律上の効果ゼロ、それ法律的に全然意味ナシ!ということです。
 したがいまして、事例2の場合、Dは保証人Cに対して、保証債務の履行を求めることができないのです。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
関連記事

【保証債務と付従性】催告&検索の抗弁権とは/保証額の上限と違約金の約定について

▼この記事でわかること
保証債務とは
保証債務の性質
保証人の催告の抗弁権
保証人の検索の抗弁権
保証債務の金額の上限と違約金の約定について
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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保証債務とは

 これはもう事例を見ちゃうのが手っ取り早いので、まずは事例をご覧ください。
 
事例1
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。


 このように、保証人を立てる債務を保証債務と言います。
 そしてこの場合、AB間の債務を主債務と言い、AC間の債務が保証債務となります。
 また、Cが保証人なのは言うまでもありませんが、債権者Aに対して、Bは主債務者という立場になります。

債権者       主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎
          保証人
           C

 そして保証人は、主たる債務者(主債務者)がその債務を履行しないときに、その債務を履行する責任を負います。
 したがって、上記の事例1では、主債務者のBが債権者Aに150万円を返せなかったとき、保証人のCがその借金150万円を肩代わりすることになります。
 なお、ここでひとつ注意点があります。
 保証人Cが保証債務の契約を結ぶ相手は債権者のAです。主債務者のBではありません。
 したがって、事例1は「AB間の主債務の契約」「AC間の保証債務の契約」が並立する形になります。

      並立
      ∧
主債務の契約 保証契約
  A―B    A―C

 この点はくれぐれもご注意ください。

保証債務の性質

 それではここから、今回の本題である保証債務の性質についての解説に入ります。
 保証債務は、主たる債務(主債務)の存在を前提とします。
 当たり前ですよね。主債務を保証するのが保証債務ですから。主債務が存在しなければ、保証しようにもしようがありません。
 このように、主債務の存在を前提として成り立っている性質を、保証債務の付従性と言います。
 では、ここからさらに、保証債務の付従性について、解説を掘り下げていきます。

事例2
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。その後、AB間に要素の錯誤※があったことがわかり、Bの主債務は取消しになった。

※要素の錯誤についての詳しい解説は「錯誤の超基本~」をご覧ください。

 さて、この事例2で、Bの主債務が要素の錯誤で取消しになったことにより、Cの保証債務はどうなるのでしょうか?

債権者       主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎
          保証人
           C
  取消し
債権者主債務者
 A → B
   ↘︎←どうなる?
    保証人
     C

 これはすぐわかると思います。
 保証債務は主債務の存在を前提に成り立っています。保証債務の付従性ですね。
 結論。Bの主債務が取消しなので、Cの保証債務は成立しません。
 
 続いてこちらの場合はどうでしょう?

事例3
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。その後、AC間に要素の錯誤があったことがわかり、Cの保証債務は取消しになった。


 今度は、AC間の保証債務が取消しになったケースです。
 さて、この場合、AB間の主債務の成立への影響はあるのでしょうか?

債権者       主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎
          保証人
           C
  どうなる?
債権者主債務者
 A → B
   ↘︎←取消し
    保証人
     C

 結論。AB間の主債務の成立への影響はありません。
 したがって、AB間の債権債務関係だけが存続することになります。

 事例2のように、主債務が無くなると、それに伴って保証債務も無くなります。
 一方、事例3のように、保証債務が無くなっても主債務は存続します。
 この違いはくれぐれもご注意ください。

【補足】保証契約は様式契約

 保証契約は、書面(または電磁的記録)でしなければ、その効力を生じません。(要式契約)
 つまり、債権者が保証人と保証契約を結ぶには、書面(または電磁的記録)で行わなければ成立しない、ということです。
 それがなにか?
 これは売買契約と比べるわかりやすいと思います。
 売買契約は「買います」という申し込みと「売ります」という承諾の意思表示だけで成立します。(諾成契約)
 つまり、民法上、売買契約は口約束だけでも成立します。
 それに対して保証契約は、意思表示(口約束)だけでは成立しません。
 つまり、法律上、保証契約は売買契約に比べて慎重に扱われているということです。
 その理由は、保証人の責任が重いからです。
 保証人は、それこそヘタしたら、主債務者の借金を肩代わりして財産を根こそぎ持っていかれ、人生どん底に突き落とされる可能性もあります。
あああ!
 そんな重~い責任を背負わされる保証契約が、口約束だけで成立してしまったら、世の中混乱してしまいますよね。
 したがって、保証契約は書面(または電磁的記録)で行われなければ成立しないのです。
 こういった部分にも、保証人の責任の重さが表れていると言えます。

保証人の催告の抗弁権

事例4
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。そしてAは、Cに対して保証債務の履行を求めてきた。


 これは、債権者のAが、主債務者のBに対して主債務の履行を求めるよりも先に、保証人のCに対して保証債務の履行を求めてきた、という事例です。

債権者       主債務者
 A「150万円返せ」→ B
         ↘︎先に請求
          保証人
           C

 さて、この場合に、保証人Cは債権者Aに対して「私よりも先に主債務者のBに請求しろよ」と主張できるでしょうか?
 結論。保証人Cは債権者Aにたいして「私よりも先に主債務者のBに請求しろよ」と主張することができます。
 そして、この保証人Cの主張を、催告の抗弁権と言います。
 これは保証人としての当然の主張ですね。なぜなら、保証人はあくまで主債務者が債務不履行(金が払えなくなった等)になった場合にその責任を負うわけですから。債権者がいきなり主債務者をすっ飛ばして保証人に請求するのはスジ違いな話です。保証人がいきなり請求されても「オレかよ!?」」となっちゃいます。
 ただし、主債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、またはその行方が知れないときには、保証人は催告の抗弁権を主張できません。
 なぜなら、いずれの場合もすでに主債務者は、事実上、債務不履行に陥っているようなもので、もはや主債務者が弁済することは現実的に相当厳しいからです。
 したがって、もし事例4の主債務者Bが、破産手続開始の決定を受けたか、その行方が知れないときは、保証人のCはいきなり債権者Aから「オマエが金返せ」と保証債務の履行を求められても「私よりも先に主債務者のBに請求しろよ」と、催告の抗弁権を主張することはできません。

保証人の検索の抗弁権

事例4
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。そしてAは、Cに対して保証債務の履行を求めてきた。


 再び先ほどの事例です。
 さて今度は、保証人Cは債権者Aに対して「私に請求する前に主債務者のBの財産に強制執行しろよ」と主張できるでしょうか?
 結論。保証人Cは債権者Aに対して「私に請求する前に主債務者のBの財産に強制執行しろよ」と主張することができます。
 そして、この保証人Cの主張を、検索の抗弁権と言います。
 ここで注意点です。
ここがポイント女性
 保証人が検索の抗弁権を主張するには、一定の要件を満たさなければなりません。
 その要件とは「主債務者に弁済する資力があり、かつ、執行が容易であることの証明」です。(民法453条)
 したがって、保証人Cは債権者Aに対して検索の抗弁権を主張するには、主債務者であるBに弁済する資力があること(Bに150万円の借金を返すだけの財産があること)、そして、Bに対する執行が容易なこと証明しなければならない、ということです。
(強制執行とは何かについての詳しい解説は「借金で考える債権の世界~差押え&強制執行の超基本」をご覧ください)

【補足】
催告の抗弁権と検索の抗弁権は現実にはほとんどありえない


 さて、保証人の2つの抗弁権について解説して参りましたが、ここで身も蓋もないことを申し上げます。
 現実には、保証人が催告の抗弁権と検索の抗弁権を主張できることはほとんどありません。
 え?そうなの?
 はい。それはなぜなら、現実の保証契約はそのほとんどが連帯保証だからです。
 ここまで、保証債務について解説して参りましたが、それらは全て連帯保証ではなく、連帯ではないただの保証契約についてです。
 そもそも連帯じゃない保証契約なんてあるんだ!
 そう思いますよね。むしろそう思うのが普通だと思います。
 したがいまして、当サイトの解説で「連帯保証(契約・債務)」とは記さない保証(契約・債務)は、現実ではほとんど見ることのない、ただの保証契約だということをあらかじめご了承いただければと存じます。
 ただ、そんなただの保証契約も、民法の学習には必須になりますので、そこは割り切って学習してください。

保証債務の金額の上限と違約金の約定について

 保証債務とは、主債務が履行されない場合に、主債務者の代わりに、保証人がその債務を履行する責任を負うものです。
 わかりやすく言えば、保証債務は、主債務者がその借金を返せないとき、保証人がその借金を肩代わりする、というものです。
 ところで、保証債務の金額には上限があるのでしょうか?
 例えば、主債務を超えた金額を、保証債務の金額にすることはできるのでしょうか?

事例
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。


 この事例で、主債務者Bの債務の金額、すなわち主債務の金額は150万円です。この場合に、保証人Cの債務、すなわち保証債務の金額を200万円にすることは可能なのでしょうか?
 結論。Cの保証債務の金額を200万円にすることはできません。
 あくまで保証債務は、主債務が履行されない場合に、主債務者に代わって保証人が責任を負うものです。
 したがって、保証債務の責任主債務の責任よりも重くなるなどあり得ません。
 もし保証債務の金額を、主債務の金額を超えたものにしてしまった場合は、主債務の限度に減縮されます。(民法448条)
 つまり、Cの保証債務を200万円にしても、150万円に減縮されます。
 ただし!ここでひとつ注意点があります。
指差し男性
 民法447条1項では「保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他の債務に従たるすべてのものを包含する」とあります。
 これはどういう意味かと言いますと、もし主債務者の債務不履行により遅延損害金などが発生していた場合、その分も保証人は責任を負う、ということです。
 つまり、事例で、主債務者のBの債務不履行により遅延損害金などが発生していて、その分も加えた債務の額が200万円になってしまった場合は、Cは保証人として、その200万円全額の支払い義務を負うことになるのです。
 保証債務の責任は、主債務の責任を超えることはありません。
 しかし、主債務が膨れ上がれば、同じように保証債務も膨れ上がります。
 この点はくれぐれもご注意ください。
 なお、当事者間の特約により、保証債務の保証範囲元金のみとすることは可能です。
 したがって、AC間、つまり債権者と保証人の間でそのような特約を結んでおけば、主債務者Bの主債務の額が遅延損害金などにより200万円に膨れ上がったとしても、Cの保証債務は150万円のままです。なぜなら、AC間の特約により、Cが責任を負うのは元金のみだからです。

違約金の約定はできるのか

 元金のみを保証する旨の特約は可能なのはわかりました。
 では今度はその逆に、違約金または損害賠償の額を約定することは可能か、つまり、あらかじめ違約金または損害賠償の額を決めておくことはできるのでしょうか?
 結論。違約金または損害賠償の額を約定することは可能です。
 ただ、それができるのは保証債務についてのみです。
 違約金または損害賠償の額の約定って?
 例えば「保証人が(保証)債務を履行しない場合、違約金として金◯円を支払う」というようなことを、あらかじめ約束することです。
 あれ?主債務より重い責任は負わないんじゃないの?
 このような約定は、あくまで保証債務の履行を確実にするためのものであり、保証債務の責任が主債務より重くなるとは考えません。
 この辺り、少々ややこしく感じるかもしれませんが、くれぐれもご注意くださいませ。
 したがいまして、事例で、債権者Aと保証人Cの間の約定により、Cの保証債務について、あらかじめ違約金または損害賠償の額を決めておくことは可能です。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
関連記事

【連帯の免除】絶対的免除と相対的免除とは/連帯免除後の求償関係について

▼この記事でわかること
連帯の絶対的免除
連帯の相対的免除
相対的免除の事後処理(求償関係)について
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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連帯の免除

 連帯債務は、その連帯を免除することができます。
 そして、連帯の免除の仕方には絶対的免除相対的免除の2種類があります。

絶対的免除

事例1
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。負担部分は各自均一である。その後、AはBCDの連帯を免除した。


 これは連帯債務者全員の連帯を免除したケースです。
 これが絶対的免除です。
 そして、連帯が絶対的免除されると、その債務は分割債務となります。
 分割債務になるということは、相互に別個独立の債務となります。

(連帯免除前)
          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          D

(連帯免除後)
   「50万円払え」→B
A〈 「50万円払え」→C 〉連帯関係なし
   「50万円払え」→D

 このようになります。
 したがって、連帯免除後は、AはB・C・Dに対して各自それぞれに50万円ずつしか請求できません。なぜなら、BCDの連帯が免除されたからです。
 なお、連帯が免除されて分割債務になったことによって、BCDは求償関係もなくなります。なぜなら、分割債務は相互に別個独立のもので連帯関係にないからです。
 この点もご注意ください。
(分割債務についての詳しい解説は「分割債権(債務)と不可分債権(債務)~」、連帯債務の求償についての詳しい解説は「連帯債務の相殺と求償~」をご覧ください)

相対的免除

事例2
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。負担部分は各自均一である。その後、AはBの連帯を免除した。


 これは連帯債務者の一部だけ連帯を免除したケースです。
 これが相対的免除です。
 そして、一部が免除されるということは、分割債務と連帯債務が併存する形になります。

(連帯免除前)
          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          D

(Bの連帯免除後)
  「50万円払え」→B
A〈           〉連帯関係なし
  「150万円払え」→C
         ↘︎   〉連帯関係
          D

 このようになります。
 Bの連帯が免除されたことにより、Bの債務は分割債務になります。
 分割債務になるということは、Bは連帯関係から外れて、Bの債務だけ別個独立のものになります。

相対的免除の事後処理(求償関係)

 事例2で、Bの連帯が免除され、Bの債務だけ別個独立の分割債務となりました。
 ということは、例えば、連帯債務者Cが1人で債権者Aに150万円全額を弁済した場合に、Cが「私(C)が弁済した金額のうちいくらかはオマエも私に払え」と求償できるのは、Dに対してだけとなるのでしょうか?
 
(Bの連帯免除後)
  「50万円払え」→B
A〈           〉連帯関係なし
  「150万円払え」→C
         ↘︎   〉連帯関係
          D   ←↑
Cが全額弁済すると求償できるのはDだけ?

 結論。この場合でもCはDに対してだけでなくに対しても求償し得ます。
 このときの求償できる額は、それぞれに対して(各自負担分の)50万円ずつです。

Dが無資力(金がない状態)の場合
金欠
 では次のような場合はどうでしょう。
 先ほどのように、事例2のケースでCが150万円全額弁済した場合に、Dが無資力(金がない状態)だとCの求償はどうなるのでしょうか?

(Bの連帯免除後)
  「50万円払え」→B
A〈           〉連帯関係なし
  「150万円払え」→C
         ↘︎   〉連帯関係
          D(無資力)   
        Cの求償はどうなる?

 BCDが通常の連帯関係であれば、Dが無資力(金がない状態)になってしまった場合、Dの無資力(金が無いこと)について、BとCは連帯債務の負担割合に応じて、Dの無資力を分担して負担します。つまり、負担割合が均一なのであれば、Dの負担部分50万円をBとCで分担して25万円ずつ負担します。その結果、BとCの連帯債務は75万円ずつの負担ということになります。(これについての詳しい解説は「連帯債務の相殺と求償~」をご覧ください)。
 ところが、今度の場合、Bは連帯から外れてしまっていますよね。つまり、CはDの無資力(金が無いこと)について、Bに分担して25万円を負担してもらうことを求めることができない。となると、Cは1人でDの無資力の負担(その結果150万円全額の債務)を背負わなくてはならなくなってしまう。。
 しかし!この場合も、CはBに対して求償することができます。
 このときの求償できる金額は75万円です。つまり、実質BCDが通常の連帯関係でDが無資力になった場合と一緒です。
 したがって、Bが連帯を免除されDが無資力になったケースでも、Cが150万円全額弁済したような場合は、CはBに対して
「各自負担分50万✛D無資力の分担分25万=75万円を私(C)に払え」と求償することができます。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
関連記事

【連帯債務での債権譲渡による混同と更改】連帯債務者の死亡による連帯債務の相続の問題

▼この記事でわかること
連帯債務の債権譲渡
債権譲渡による混同
債権譲渡による更改
連帯債務者の1人が死亡(連帯債務の相続)
債権者は連帯債務者の相続人に対していくら請求できるのか
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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債権譲渡による混同と更改

 連帯債務者の1人が、債権者から債権譲渡を受けた場合、その連帯債務はどうなるのでしょうか?(債権譲渡についての詳しい解説は債権譲渡の超基本~債権は譲れる?をご覧ください)。

事例1
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。各自の負担割合は均一である。その後、BはAから当該貸付金債権の譲渡を受けた。


 この事例1では、連帯債務者の1人のBが債権者Aから、その連帯債務についての債権を譲渡されました。
 つまり、債権譲渡により連帯債務者の1人が債権者になってしまった、というケースです。

混同の場合

 事例1で、債権者Aから連帯債務者Bに債権譲渡されたことにより、AB間の債権債務関係は消滅します。
 なぜなら、債権者と債務者が同一人物となり、その債権債務関係の意味がなくなるからです。
 これを混同と言います。
 つまり、事例1で起こる結果を民法的に言えば、AB間の債権債務関係はABの債権譲渡により混同が生じて消滅する、となります。
 そして民法440条では、混同の絶対効が規定されています。
 これは何を意味しているかと言いますと、AB間の債権譲渡により混同が生じてAB間の債権債務関係が消滅すると同時に、それは連帯債務者Bが債権者Aに対して150万円全額を1人で弁済したのと同じことになります。
 ということは必然的に、連帯債務者Bは同じく連帯債務者のC・Dに対する求償権を取得することになります。(連帯債務の相殺についての詳しい解説は「連帯債務の相殺と求償~」をご覧ください)。
 したがいまして、AB間の債権譲渡前と債権譲渡後の当事者の関係を図で示すと、次のようになります。

(債権譲渡前)
          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          D

(債権譲渡後)
B「50万円ずつ払え」→C
          ↘︎
           D

 ここでひとつ注意点があります。
ここがポイント女性   
 債権譲渡後にBがC・Dに対して50万円ずつ請求する権利は、あくまで求償権です。
 AB間の債権譲渡により、AからBに連帯債務の債権者が移ったわけではありません。
 AB間の債権譲渡により混同が生じて、混同の絶対効によりBが求償権を得たのです。 
 だからこそ、債権譲渡後は「150万円払え」ではなく「50万円ずつ払え」なのです。
 細かい話ではありますが、この点はくれぐれも間違えないようにご注意ください。

更改の場合

 では、続いては、連帯債務者の1人が債権者と契約更改をした場合について解説します。

事例2
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。各自の負担割合は均一である。その後、BはAと債務の契約更改をした。


 この事例2では、連帯債務者の1人のBが、Aとの間で債務の契約更改をしました。
 さて、ではAB間で債務の契約更改が行われたことにより、AC間・AD間の連帯債務はどうなるのでしょうか?
 まずはその前に、更改とは何なのか?ご説明します。

 更改とは、既存の債務を消滅させ、別の新しい債務を成立させる契約です。
 もっとわかりやすく言うと、元々あった契約を新しい契約で上書きすることです。
 ポイントは、契約更改は上書きなので、元々の契約は消滅します。ですので、当然に債務も、元々の債務に新しい債務が上書きされ、元々の債務は消滅します。
 したがって「更新」ではなく「更改」なのです。

 それでは話を事例2に戻します。
 AB間で債務の契約更改が行われたことにより、AC間・AD間の連帯債務はどうなるのでしょうか?
 結論。AB間で契約更改が行われたことにより、AC間・AD間の連帯債務は消滅します。
 民法438条では、連帯債務者の1人と債権者の間に更改があったときには、連帯債務についての債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅すると規定されています(更改の絶対効)。
 そして、AB間での債務の更改は、連帯債務者Bによる債務の全額弁済と同じ効果をもたらします。
 つまり、連帯債務者Bは債権者Aと債務の契約更改をしたことにより、150万円全額をB1人で弁済したのと同じ意味になるのです。
 したがって、AB間の契約更改により、AとBCDとの間の150万円の連帯債務は消滅し、BはC・Dに対して「50万円ずつ払え」という求償権を得ます。

(更改前)
          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          D

(更改後)
B「50万円ずつ払え」→C
          ↘︎
           D

連帯債務者の1人が死亡した場合

 連帯債務において、連帯債務者の1人が死亡した場合、どうなるのでしょうか?

事例3
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。負担部分は各自均一である。その後、Dが死亡した。Dの相続人は、Dの子供E・Fである。


 このような場合、気になるのが、EとFがDを相続して、連帯債務がどうなるのか?ということです。

          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↘︎
          (死亡)
        相続↓↘相続
          E  F
     Dの連帯債務はどうなる?

 この問題については、債権者Aの立場から考えるとわかりやすいので、そのような形で解説して参ります。

債権者Aは相続人EFに対してはいくら請求できるのか

 債権者Aとして一番気になるのが、EとFに対していくら請求できるのか?です。
 他の連帯債務者と同様に150万円請求できるのか?あるいは?
?女性
 これについては、次の2つの考え方が存在します。

1・EとFは150万円の債務の連帯債務者になる
2・EとFは(死亡した)Dの債務を相続分で分けた限度で連帯債務者になる

 それでは上記の2つの考え方について、ひとつひとつ解説します。

1・EとFは150万円の債務の連帯債務者になる
 この考え方の場合、債権者AはC・D・E・Fに対して、各自それぞれに150万円全額を請求することができます。
 つまり、債権者Aとしては、連帯債務者が1人増えたような感じです。

          B
         ↗︎
A「150万円払え」→C
         ↓↘︎
         F E

 この考え方による結論は、債権者Aとしてはむしろありがたい展開かもしれませんね。
 連帯債務者が1人増えたということは、150万円を請求できる相手が1人増えたということなので、それだけ150万円を回収しやすくなります。

2・EとFは(死亡した)Dの債務を相続分で分けた限度で連帯債務者になる
 この考え方の場合、債権者Aは、B・Cに対しては従来どおりそれぞれに150万円請求できますが、E・Fに対してはそれぞれに75万円ずつしか請求できません。
 
なぜそのようになるのか?その理由は、EとFは連帯債務150万円を相続分に応じて相続した、と考えるからです。
 そしてE・Fの相続分は2分の1ずつです(法定相続)。つまり、EとFは連帯債務150万円を75万円ずつ相続したと考えるわけです。
 したがって、債権者AはE・Fに対してはそれぞれに75万円しか請求できないのです。

          B
         ↗︎
  「150万円払え」→C
A〈
  「75万円払え」→E         
         ↘︎
          F

 なお、この場合のB・C・E・Fの債務も連帯債務です。
 ただ、Dの死亡による相続で、その中身が通常の連帯債務とは異なっただけです。
 注意点として、AとB・CAとE・Fで、債権債務関係が別々になる訳ではありません。Dの死亡による相続後も、あくまでB・C・E・Fの債務は連帯債務のままです。
 この点はくれぐれもお間違いないようお気をつけください。

 それで結局どっちの考え方が正しいの?
 結論。判例は2の考え方を採用しています。
 したがって、事例3の債権者Aは、B・Cに対しては従来どおりそれぞれに150万円全額請求できますが、E・Fに対してはそれぞれに75万円ずつしか請求できません。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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