2021/05/07
【連帯の免除】絶対的免除と相対的免除とは/連帯免除後の求償関係について
▼この記事でわかること・連帯の絶対的免除
・連帯の相対的免除
・相対的免除の事後処理(求償関係)について
(上記クリックorタップでジャンプします)
今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。

連帯の免除
連帯債務は、その連帯を免除することができます。
そして、連帯の免除の仕方には絶対的免除と相対的免除の2種類があります。
絶対的免除
事例1
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。負担部分は各自均一である。その後、AはBCDの連帯を免除した。
これは連帯債務者全員の連帯を免除したケースです。
これが絶対的免除です。
そして、連帯が絶対的免除されると、その債務は分割債務となります。
分割債務になるということは、相互に別個独立の債務となります。
(連帯免除前)
B
↗︎
A「150万円払え」→C
↘︎
D
(連帯免除後)
「50万円払え」→B
A〈 「50万円払え」→C 〉連帯関係なし
「50万円払え」→D
このようになります。
したがって、連帯免除後は、AはB・C・Dに対して各自それぞれに50万円ずつしか請求できません。なぜなら、BCDの連帯が免除されたからです。
なお、連帯が免除されて分割債務になったことによって、BCDは求償関係もなくなります。なぜなら、分割債務は相互に別個独立のもので連帯関係にないからです。
この点もご注意ください。
(分割債務についての詳しい解説は「分割債権(債務)と不可分債権(債務)~」、連帯債務の求償についての詳しい解説は「連帯債務の相殺と求償~」をご覧ください)
相対的免除
事例2
BCDは連帯してAから150万円を借り受けた。負担部分は各自均一である。その後、AはBの連帯を免除した。
これは連帯債務者の一部だけ連帯を免除したケースです。
これが相対的免除です。
そして、一部が免除されるということは、分割債務と連帯債務が併存する形になります。
(連帯免除前)
B
↗︎
A「150万円払え」→C
↘︎
D
(Bの連帯免除後)
「50万円払え」→B
A〈 〉連帯関係なし
「150万円払え」→C
↘︎ 〉連帯関係
D
このようになります。
Bの連帯が免除されたことにより、Bの債務は分割債務になります。
分割債務になるということは、Bは連帯関係から外れて、Bの債務だけ別個独立のものになります。
相対的免除の事後処理(求償関係)
事例2で、Bの連帯が免除され、Bの債務だけ別個独立の分割債務となりました。
ということは、例えば、連帯債務者Cが1人で債権者Aに150万円全額を弁済した場合に、Cが「私(C)が弁済した金額のうちいくらかはオマエも私に払え」と求償できるのは、Dに対してだけとなるのでしょうか?
(Bの連帯免除後)
「50万円払え」→B
A〈 〉連帯関係なし
「150万円払え」→C
↘︎ 〉連帯関係
D ←↑
Cが全額弁済すると求償できるのはDだけ?
結論。この場合でもCはDに対してだけでなくBに対しても求償し得ます。
このときの求償できる額は、それぞれに対して(各自負担分の)50万円ずつです。
Dが無資力(金がない状態)の場合

では次のような場合はどうでしょう。
先ほどのように、事例2のケースでCが150万円全額弁済した場合に、Dが無資力(金がない状態)だとCの求償はどうなるのでしょうか?
(Bの連帯免除後)
「50万円払え」→B
A〈 〉連帯関係なし
「150万円払え」→C
↘︎ 〉連帯関係
D(無資力)
Cの求償はどうなる?
BCDが通常の連帯関係であれば、Dが無資力(金がない状態)になってしまった場合、Dの無資力(金が無いこと)について、BとCは連帯債務の負担割合に応じて、Dの無資力を分担して負担します。つまり、負担割合が均一なのであれば、Dの負担部分50万円をBとCで分担して25万円ずつ負担します。その結果、BとCの連帯債務は75万円ずつの負担ということになります。(これについての詳しい解説は「連帯債務の相殺と求償~」をご覧ください)。
ところが、今度の場合、Bは連帯から外れてしまっていますよね。つまり、CはDの無資力(金が無いこと)について、Bに分担して25万円を負担してもらうことを求めることができない。となると、Cは1人でDの無資力の負担(その結果150万円全額の債務)を背負わなくてはならなくなってしまう。。
しかし!この場合も、CはBに対して求償することができます。
このときの求償できる金額は75万円です。つまり、実質BCDが通常の連帯関係でDが無資力になった場合と一緒です。
したがって、Bが連帯を免除されDが無資力になったケースでも、Cが150万円全額弁済したような場合は、CはBに対して
「各自負担分50万✛D無資力の分担分25万=75万円を私(C)に払え」と求償することができます。
というわけで、今回は以上になります。
宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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