
▼この記事でわかること
・主債務者が債務の承認をした場合
・保証人が債務の承認をした場合
・主債務の時効が完成した後に主債務者が債務の承認をした場合
・連帯保証と消滅時効
・連帯保証人の債務の承認
(上記クリックorタップでジャンプします)
今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。

保証債務と消滅時効
主債務者が債務の承認をした場合
まずは事例をご覧ください。
(消滅時効についての詳しい解説は「【消滅時効の基本】権利行使をできる時&知った時/様々な債権とその時効起算点(数え始め)を初学者にもわかりやすく解説!」をご覧ください)
事例1
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。そして月日が経過し、Bの主債務とCの保証債務には時効が迫っている。そんな中、BはAに対して債務の承認をした。
この事例1では、主債務者のBが債権者のAに対して債務の承認をしました。
時効間近 債務の承認
債権者 ↓ ↙主債務者
A「150万円返せ」→ B
↘︎
保証人
C
「BがAに対して債務の承認をした」の意味は、BがAに対して「150万円支払います」と意思表示した、という意味です。
債務者が債権者に対して債務の承認をすると、時効が更新します。時効の更新とは、時効がリセットされることです。
つまり、主債務者Bが債権者Aに対して債務の承認をした、ということは、Bの主債務の時効の進行期間がリセットされた(ゼロに戻った)ということです。
さて、問題はここからです。
主債務者Bが債権者Aに対して「150万円支払います」と債務の承認をしたことにより、主債務の時効は更新(リセット)されましたが、それに伴ってCの保証債務の時効も更新(リセット)するのでしょうか?
時効間近 債務の承認
債権者 ↓ ↙主債務者
A「150万円返せ」→ B
↘︎←どうなる?
保証人
C
結論。
Bの主債務の時効が更新(リセット)したことにより、Cの保証債務の時効も更新(リセット)します。
なぜなら、主債務に生じた効果は、原則として全て保証債務にも及ぶからです。
これは、保証債務の付従性という保証債務の持つ性質です。
したがって、主債務者Bが債務の承認をしたことにより、Bの主債務のみならずCの保証債務の時効も更新(リセット)するのです。
保証人Cとしては「Bのヤツめ、余計なことしてくれたな」という感じかもしれません(笑)。
保証人が債務の承認をした場合
続いて、次のような場合はどうなるでしょう?
事例2
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。そして月日が経過し、Bの主債務とCの保証債務には時効が迫っている。そんな中、CはAに対して債務の承認をした。
さて、今度は保証人CがAに対して債務の承認をしたケースです。
時効間近 どうなる?
債権者 ↓ ↙主債務者
A「150万円返せ」→ B
↘︎←債務の承認
保証人
C
この場合、Bの主債務の時効は更新(リセット)するのでしょうか?
結論。
保証人CがAに対して債務の承認をすると、保証債務の時効は更新します。
しかし、Bの主債務の時効は更新しません。
なぜなら、保証債務に生じた弁済以外の効果は、主債務には及ばないからです。
また、この事例2の場合は、少し面白いことになります。
保証人Cが債務の承認をすると、Bの主債務の時効は更新しませんが、Cの保証債務のみ時効は更新します。
すると、Cの保証債務の時効進行期間はリセットされますが、Bの主債務の時効進行期間は進んでいくことになります。
そして、Bの主債務の時効が完成すると、Bは「時効が完成しました!」と時効の援用(時効の権利の主張)ができます。
すると主債務は消滅し、Bの150万円支払い義務もなくなります。
そしてなんと!
このとき、保証人CもBの主債務の時効を援用できます。
つまり、保証人Cも主債務の時効の権利を主張できるのです。
そして、保証人CがBの主債務の時効を援用すると、保証債務の付従性により、主債務の消滅に伴って保証債務も消滅します。
つまり、債権者からすれば、保証債務の時効を更新(リセット)させたところで、それはトカゲの尻尾切りにしかならない!ということです。
結局、主債務の時効が生きていて、やがてそれが完成すれば、保証債務もその効果を受けてしまうので。
したがって、債権者Aからすれば、保証人Cの債務の承認というのは意味が薄く、Bの「主債務の時効」という元を断たなければ、あまり意味がないと言えるでしょう。
いわば債権者にとって保証債務の時効はザコ、真に倒すべきボスは主債務の時効なのです。
主債務の時効が完成した後に
主債務者が債務の承認をした場合
続いて、こんな場合はどうなるでしょう?
事例3
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。それから月日が経過し、主債務の消滅時効が完成した後、BはAに対して債務の承認をした。
この事例3は、主債務の時効が完成した後、主債務者Bが債務の承認をした、というケースです。
時効完成 債務の承認
債権者 ↓ ↙主債務者
A「150万円返せ」→ B
↘︎
保証人
C
このケースのポイントはもうおわかりですよね。
Bが債務の承認をしたのが「主債務の時効完成後」というところです。
時効完成後の債務の承認は、時効利益の放棄と考えられ、債務が復活します。
つまり、主債務の時効完成後、Bが債務の承認をしたことにより、Bは主債務の時効の利益を放棄したことになり、主債務は復活することになります。
さて、問題はここからです。
この事例3で、時効完成後にBが債務の承認をしたことにより、主債務は復活します。
では、Cの保証債務はどうなるのでしょうか?復活した主債務の保証もしなければならないのでしょうか?
結論。
Bの主債務が復活しても、保証人Cは主債務の時効を援用することができ、保証債務から免れることができます。
え?なんだかよくわからん
はい。
その理屈を今から解説します。
事例1、事例2と、主債務に生じた効果は、原則として全て保証債務に及びました。
そう考えると、主債務が復活すれば、それに伴って保証債務も存続し続けるように思えます。
しかし、いくら保証人の責任が重いとはいえ、一度、時効が完成してから復活した、まるでゾンビのような主債務の保証までさせ続けるのは、さすがにちょっと酷すぎんじゃね?と考えます。

そして「たとえ主債務者が債務の承認をしたとはいえ、一度、主債務の時効が完成したんだから、保証人については時効の援用をさせてあげて、保証債務から免れさしてあげよう」という結論になるのです。
保証人の責任は重いです。
その責任は無限責任とも言われます。
まるで鬼でも襲ってきそうな責任ですね(笑)。
しかし、先ほどのことからわかるように、保証人の責任は、無限責任であっても、永遠ではないということです。
そう、あの不死身とも思えた鬼舞辻無惨でさえ倒されたのですから...。
連帯保証と消滅時効
現実の保証契約といえば、そのほとんどが連帯保証になります。
ですので「連帯」が付かない保証契約を実際に見かけることはほとんどありません。(現実ではほとんど見ることがなくても民法の学習においては「連帯」が付かない保証契約の学習も必須になりますのであしからず。。)
連帯保証人には催告の抗弁権も検索の抗弁権も認められません。
つまり、単純に債権者にとっては連帯保証の方が断然ありがたいのです。
したがって、現実で見かける保証契約のほとんどが連帯保証なのです。
ここからは、その現実で見かけるほとんどの保証契約=連帯保証の消滅時効の問題について解説して参ります。
まずは事例をご覧ください。
事例4
BはAから150万円を借り受けた。CはBの連帯保証人である。そして月日が経過し、BとCの債務には時効が迫っている。そんな中、AはCに対して履行の請求をした。
これは、債権者のAが連帯保証人のCに対して「150万円支払え」と履行の請求をした、という事例です。
時効間近
債権者 ↓ 主債務者
A「150万円返せ」→ B
履行の請求↘↘︎
連帯保証人
C
さて、この場合、債権者Aが連帯保証人Cに対して履行の請求をしたことにより、主債務者Bの主債務の時効は更新するのでしょうか?
結論。
債権者Aが連帯保証人Cに対して履行の請求をしても、Bの主債務の時効は更新しません。
~ちょこっとコラム~
以前は連帯保証人への履行の請求で主債務の時効も止められた?
連帯保証人へ履行の請求をしても主債務の時効は更新(リセット)、またはストップしません。
実はこれ、民法改正により変わりました。

そう、民法改正前の旧民法では、連帯保証人への履行の請求で主債務の時効も止めることができたんです。
民法改正前での、連帯保証人に対して履行の請求をすると主債務の時効の進行が止まるという規定は、債権者としては非常にありがたいことでした。
というのは、仮に主債務者が夜逃げしたとしましょう。
すると主債務者に対する履行の請求が面倒なことになります。
面倒なことになるという意味は「できるけど手続きが面倒」ということです。
それが、連帯保証人に対する履行の請求で主債務の時効も止めることができたのは、債権者にとって実務上とても助かったのです。
しかし、これは逆に言えば、連帯保証人の責任が重過ぎたという側面もありますよね。
いずれにせよ、民法改正により変わりましたので、改正以前の規定で記憶していた方はくれぐれもご注意ください。
なお、念のため申し上げておきますが、もし債権者Aが主債務者Bに対して履行の請求をした場合は、主債務の時効が更新するのはもちろん、連帯保証人Cの債務の時効も更新します。
ちなみに、時効を更新させるための履行の請求は「裁判上の請求」です。(ただ請求書を送っただけではダメ)
裁判上の請求とは、例えば、訴訟の提起です。
裁判を起こすと、訴状提出時に時効期間の進行が一旦止まり(時効の完成猶予)、確定判決時に時効が更新されます。
(時効の完成猶予についての詳しい解説は「【時効の更新と完成猶予】その事由(原因)/消滅時効の進行を止める方法/除斥期間とは?わかりやすく解説!」もご覧ください)
連帯保証人の債務の承認
事例5
BはAから150万円を借り受けた。CはBの連帯保証人である。そして月日が経過し、BとCの債務には時効が迫っている。そんな中、CはAに対して債務の承認をした。
今度は、連帯保証人Cが債権者Aに対して「150万円支払います」と債務の承認をしたケースです。
時効間近 どうなる?
債権者 ↓ ↙主債務者
A「150万円返せ」→ B
↘︎←債務の承認
連帯保証人
C
さて、ではこの場合、主債務の時効は更新するでしょうか?
結論。
連帯保証人Cが債権者Aに対して債務の承認をしても、主債務の時効は更新しません。
なぜなら、債務の承認に絶対効はない、つまり、債務の承認の効力は相対効だからです。
したがって、この場合は、保証債務に生じた効果は主債務には及ばないという原則どおり、連帯保証人の債務の承認の効果は主債務に及ばないので、主債務の時効は更新しないのです。
【補足】連帯保証における絶対効
連帯保証人の債務に生じた効果が主債務にも及ぶ場合(絶対効になる場合)がいくつかあります。
それを以下に簡単に記します。
・混同
・更改
・相殺
これらは、連帯債務における絶対効と同じ扱いになっております。
したがいまして、上記の3つについては、以下の連帯債務についての解説記事をご参照ください。
「【連帯債務の相殺と求償】相殺を援用する&しないとどうなる?/無資力者がいるときの求償問題など様々なケースと注意点をわかりやすく解説!」
「【連帯債務での債権譲渡による混同と更改】連帯債務者の死亡による連帯債務の相続の問題をわかりやすく解説!」
というわけで、今回は以上になります。
宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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・主債務者が債務の承認をした場合
・保証人が債務の承認をした場合
・主債務の時効が完成した後に主債務者が債務の承認をした場合
・連帯保証と消滅時効
・連帯保証人の債務の承認
(上記クリックorタップでジャンプします)
今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。

保証債務と消滅時効
主債務者が債務の承認をした場合
まずは事例をご覧ください。
(消滅時効についての詳しい解説は「【消滅時効の基本】権利行使をできる時&知った時/様々な債権とその時効起算点(数え始め)を初学者にもわかりやすく解説!」をご覧ください)
事例1
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。そして月日が経過し、Bの主債務とCの保証債務には時効が迫っている。そんな中、BはAに対して債務の承認をした。
この事例1では、主債務者のBが債権者のAに対して債務の承認をしました。
時効間近 債務の承認
債権者 ↓ ↙主債務者
A「150万円返せ」→ B
↘︎
保証人
C
「BがAに対して債務の承認をした」の意味は、BがAに対して「150万円支払います」と意思表示した、という意味です。
債務者が債権者に対して債務の承認をすると、時効が更新します。時効の更新とは、時効がリセットされることです。
つまり、主債務者Bが債権者Aに対して債務の承認をした、ということは、Bの主債務の時効の進行期間がリセットされた(ゼロに戻った)ということです。
さて、問題はここからです。
主債務者Bが債権者Aに対して「150万円支払います」と債務の承認をしたことにより、主債務の時効は更新(リセット)されましたが、それに伴ってCの保証債務の時効も更新(リセット)するのでしょうか?
時効間近 債務の承認
債権者 ↓ ↙主債務者
A「150万円返せ」→ B
↘︎←どうなる?
保証人
C
結論。
Bの主債務の時効が更新(リセット)したことにより、Cの保証債務の時効も更新(リセット)します。
なぜなら、主債務に生じた効果は、原則として全て保証債務にも及ぶからです。
これは、保証債務の付従性という保証債務の持つ性質です。
したがって、主債務者Bが債務の承認をしたことにより、Bの主債務のみならずCの保証債務の時効も更新(リセット)するのです。
保証人Cとしては「Bのヤツめ、余計なことしてくれたな」という感じかもしれません(笑)。
保証人が債務の承認をした場合
続いて、次のような場合はどうなるでしょう?
事例2
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。そして月日が経過し、Bの主債務とCの保証債務には時効が迫っている。そんな中、CはAに対して債務の承認をした。
さて、今度は保証人CがAに対して債務の承認をしたケースです。
時効間近 どうなる?
債権者 ↓ ↙主債務者
A「150万円返せ」→ B
↘︎←債務の承認
保証人
C
この場合、Bの主債務の時効は更新(リセット)するのでしょうか?
結論。
保証人CがAに対して債務の承認をすると、保証債務の時効は更新します。
しかし、Bの主債務の時効は更新しません。
なぜなら、保証債務に生じた弁済以外の効果は、主債務には及ばないからです。
また、この事例2の場合は、少し面白いことになります。
保証人Cが債務の承認をすると、Bの主債務の時効は更新しませんが、Cの保証債務のみ時効は更新します。
すると、Cの保証債務の時効進行期間はリセットされますが、Bの主債務の時効進行期間は進んでいくことになります。
そして、Bの主債務の時効が完成すると、Bは「時効が完成しました!」と時効の援用(時効の権利の主張)ができます。
すると主債務は消滅し、Bの150万円支払い義務もなくなります。
そしてなんと!
このとき、保証人CもBの主債務の時効を援用できます。
つまり、保証人Cも主債務の時効の権利を主張できるのです。
そして、保証人CがBの主債務の時効を援用すると、保証債務の付従性により、主債務の消滅に伴って保証債務も消滅します。
つまり、債権者からすれば、保証債務の時効を更新(リセット)させたところで、それはトカゲの尻尾切りにしかならない!ということです。
結局、主債務の時効が生きていて、やがてそれが完成すれば、保証債務もその効果を受けてしまうので。
したがって、債権者Aからすれば、保証人Cの債務の承認というのは意味が薄く、Bの「主債務の時効」という元を断たなければ、あまり意味がないと言えるでしょう。
いわば債権者にとって保証債務の時効はザコ、真に倒すべきボスは主債務の時効なのです。
主債務の時効が完成した後に
主債務者が債務の承認をした場合
続いて、こんな場合はどうなるでしょう?
事例3
BはAから150万円を借り受けた。CはBの保証人である。それから月日が経過し、主債務の消滅時効が完成した後、BはAに対して債務の承認をした。
この事例3は、主債務の時効が完成した後、主債務者Bが債務の承認をした、というケースです。
時効完成 債務の承認
債権者 ↓ ↙主債務者
A「150万円返せ」→ B
↘︎
保証人
C
このケースのポイントはもうおわかりですよね。
Bが債務の承認をしたのが「主債務の時効完成後」というところです。
時効完成後の債務の承認は、時効利益の放棄と考えられ、債務が復活します。
つまり、主債務の時効完成後、Bが債務の承認をしたことにより、Bは主債務の時効の利益を放棄したことになり、主債務は復活することになります。
さて、問題はここからです。
この事例3で、時効完成後にBが債務の承認をしたことにより、主債務は復活します。
では、Cの保証債務はどうなるのでしょうか?復活した主債務の保証もしなければならないのでしょうか?
結論。
Bの主債務が復活しても、保証人Cは主債務の時効を援用することができ、保証債務から免れることができます。
え?なんだかよくわからん
はい。
その理屈を今から解説します。
事例1、事例2と、主債務に生じた効果は、原則として全て保証債務に及びました。
そう考えると、主債務が復活すれば、それに伴って保証債務も存続し続けるように思えます。
しかし、いくら保証人の責任が重いとはいえ、一度、時効が完成してから復活した、まるでゾンビのような主債務の保証までさせ続けるのは、さすがにちょっと酷すぎんじゃね?と考えます。

そして「たとえ主債務者が債務の承認をしたとはいえ、一度、主債務の時効が完成したんだから、保証人については時効の援用をさせてあげて、保証債務から免れさしてあげよう」という結論になるのです。
保証人の責任は重いです。
その責任は無限責任とも言われます。
まるで鬼でも襲ってきそうな責任ですね(笑)。
しかし、先ほどのことからわかるように、保証人の責任は、無限責任であっても、永遠ではないということです。
そう、あの不死身とも思えた鬼舞辻無惨でさえ倒されたのですから...。
連帯保証と消滅時効
現実の保証契約といえば、そのほとんどが連帯保証になります。
ですので「連帯」が付かない保証契約を実際に見かけることはほとんどありません。(現実ではほとんど見ることがなくても民法の学習においては「連帯」が付かない保証契約の学習も必須になりますのであしからず。。)
連帯保証人には催告の抗弁権も検索の抗弁権も認められません。
つまり、単純に債権者にとっては連帯保証の方が断然ありがたいのです。
したがって、現実で見かける保証契約のほとんどが連帯保証なのです。
ここからは、その現実で見かけるほとんどの保証契約=連帯保証の消滅時効の問題について解説して参ります。
まずは事例をご覧ください。
事例4
BはAから150万円を借り受けた。CはBの連帯保証人である。そして月日が経過し、BとCの債務には時効が迫っている。そんな中、AはCに対して履行の請求をした。
これは、債権者のAが連帯保証人のCに対して「150万円支払え」と履行の請求をした、という事例です。
時効間近
債権者 ↓ 主債務者
A「150万円返せ」→ B
履行の請求↘↘︎
連帯保証人
C
さて、この場合、債権者Aが連帯保証人Cに対して履行の請求をしたことにより、主債務者Bの主債務の時効は更新するのでしょうか?
結論。
債権者Aが連帯保証人Cに対して履行の請求をしても、Bの主債務の時効は更新しません。
~ちょこっとコラム~
以前は連帯保証人への履行の請求で主債務の時効も止められた?
連帯保証人へ履行の請求をしても主債務の時効は更新(リセット)、またはストップしません。
実はこれ、民法改正により変わりました。

そう、民法改正前の旧民法では、連帯保証人への履行の請求で主債務の時効も止めることができたんです。
民法改正前での、連帯保証人に対して履行の請求をすると主債務の時効の進行が止まるという規定は、債権者としては非常にありがたいことでした。
というのは、仮に主債務者が夜逃げしたとしましょう。
すると主債務者に対する履行の請求が面倒なことになります。
面倒なことになるという意味は「できるけど手続きが面倒」ということです。
それが、連帯保証人に対する履行の請求で主債務の時効も止めることができたのは、債権者にとって実務上とても助かったのです。
しかし、これは逆に言えば、連帯保証人の責任が重過ぎたという側面もありますよね。
いずれにせよ、民法改正により変わりましたので、改正以前の規定で記憶していた方はくれぐれもご注意ください。
なお、念のため申し上げておきますが、もし債権者Aが主債務者Bに対して履行の請求をした場合は、主債務の時効が更新するのはもちろん、連帯保証人Cの債務の時効も更新します。
ちなみに、時効を更新させるための履行の請求は「裁判上の請求」です。(ただ請求書を送っただけではダメ)
裁判上の請求とは、例えば、訴訟の提起です。
裁判を起こすと、訴状提出時に時効期間の進行が一旦止まり(時効の完成猶予)、確定判決時に時効が更新されます。
(時効の完成猶予についての詳しい解説は「【時効の更新と完成猶予】その事由(原因)/消滅時効の進行を止める方法/除斥期間とは?わかりやすく解説!」もご覧ください)
連帯保証人の債務の承認
事例5
BはAから150万円を借り受けた。CはBの連帯保証人である。そして月日が経過し、BとCの債務には時効が迫っている。そんな中、CはAに対して債務の承認をした。
今度は、連帯保証人Cが債権者Aに対して「150万円支払います」と債務の承認をしたケースです。
時効間近 どうなる?
債権者 ↓ ↙主債務者
A「150万円返せ」→ B
↘︎←債務の承認
連帯保証人
C
さて、ではこの場合、主債務の時効は更新するでしょうか?
結論。
連帯保証人Cが債権者Aに対して債務の承認をしても、主債務の時効は更新しません。
なぜなら、債務の承認に絶対効はない、つまり、債務の承認の効力は相対効だからです。
したがって、この場合は、保証債務に生じた効果は主債務には及ばないという原則どおり、連帯保証人の債務の承認の効果は主債務に及ばないので、主債務の時効は更新しないのです。
【補足】連帯保証における絶対効
連帯保証人の債務に生じた効果が主債務にも及ぶ場合(絶対効になる場合)がいくつかあります。
それを以下に簡単に記します。
・混同
・更改
・相殺
これらは、連帯債務における絶対効と同じ扱いになっております。
したがいまして、上記の3つについては、以下の連帯債務についての解説記事をご参照ください。
「【連帯債務の相殺と求償】相殺を援用する&しないとどうなる?/無資力者がいるときの求償問題など様々なケースと注意点をわかりやすく解説!」
「【連帯債務での債権譲渡による混同と更改】連帯債務者の死亡による連帯債務の相続の問題をわかりやすく解説!」
というわけで、今回は以上になります。
宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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