2018/05/26
委託を受けた保証人と委託を受けない保証人 求償権と事前求償権
保証人は、主債務者が債務を履行しないときに、主債務者に代わってその債務の履行をする責任を負います。そして保証人がその債務を弁済すると、保証人は主債務者に対して求償することができます。要するに、保証人は主債務者に対して「私が君の代わりに支払った分を、今度は君が私に支払いなさい」と請求できるのです。保証債務は、形式的には債権者と保証人との間の契約であり、保証債務自体は保証人自身の債務です。しかし、保証人が債務を弁済した場合、それは、言ってみれば保証人が主債務者の債務を肩代わりしたわけですよね。ということで、保証人は主債務者に対して、肩代わりした分を求償することができるのです。
当然、全額求償できるんだよね?
それが、保証人が「委託を受けた保証人」なのか「委託を受けない保証人」なのかによって、求償できる内容が異なってきます。
委託を受けた保証人
事例1
BはAから150万円を借り受けた。CはBから委託を受けた保証人である。その後、保証人CはAに150万円を弁済した。
この事例1は、委託を受けた保証人Cが、主債務者Bに代わって150万円を弁済したというケースです。「CはBから委託を受けた保証人」というのは、Bから頼まれてCは保証人になったということです。
さて、このケースで、委託を受けた保証人Cは主債務者Bに対して、一体どこまで求償することができるのでしょうか?
委託を受けた保証人Cは、Bに対して150万円全額を求償できます。また、それ以外にも、免責の日以後の法定利息、避けることができなかった費用その他の損害賠償金があれば、それらも合わせて求償することができます。
委託を受けた保証人の求償の範囲は広いものとなっています。
委託を受けない保証人
事例2
BはAから150万円を借り受けた。CはBから委託を受けていない保証人である。その後、保証人CはAに150万円を弁済した。
今度は、委託を受けない保証人Cが、主債務者Bに代わって150万円を弁済したというケースです。「CはBから委託を受けない保証人」というのは、Bから頼まれてもいないのにCは保証人になったということです。
頼まれてもいないのに自ら保証人になる人って、現実には中々いらっしゃらないかと思います。ましてや主債務者の親や家族でもないのに委託を受けない保証人がいたとすれば、それはかなり奇特な人だと思います。
それはさておき、この事例2で、委託を受けない保証人Cは、主債務者Bに対して、一体どこまで求償することができるでしょうか?
委託を受けない保証人Cは、主債務者Bが保証債務履行当時に利益を受ける限度しか求償することができません。
また、もしCが主債務者Bの意思に反して保証人となっていた場合は、求償当時に現に利益を受ける限度(現存利益)しか求償することができません。「主債務者Bの意思に反して」というのは、CがBの保証人になることをBは嫌がっていたのに、それでも無理矢理CはBの保証人になったということです。
ということで、ここでわかるのは、頼まれもしないで保証人になった者は、主債務者に対して求償できる額には制限がある、ということです。まあこれは、普通に考えてもわかりますよね。頼まれもしないで勝手に保証しておいて利息その他まで求償するというのは、ちょっと厚かましいですよね。さらに、主債務者が嫌がっているのにも関わらず勝手に保証しておいて、となれば、そのような保証人の求償権には制限があって当然と言えるでしょう。
事前求償権
民法460条では、一定の場合に、保証人に事前求償権を認めています。これはどういうことかといいますと、保証人は、債権者に弁済する前に主債務者に求償できるということです。つまり、事例の保証人Cが、債権者Aに対して150万円を支払う前に、主債務者Bに対して「150万円よこせ」と求償できるということです。まさしく事前に求償する権利=事前求償権です。
ただ、すでにお気づきの方もいらっしゃると思いますが、これも「委託を受けた保証人」なのか「委託を受けない保証人」なのかによって異なってきます。事前求償権は、委託を受けた保証人にしか認められません。委託を受けない保証人には事前求償権はありません。そりゃそうですよね。勝手に保証しといて「事前に金よこせ」となったら、主債務者としては、そんな保証人はタチの悪い債権者と変わりませんよね(笑)。
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