取得時効と消滅時効の超基本 時効制度の意味

「もう時効だろうし今だから言うけどさぁ」というように、普段の会話でも、時効という言葉自体は馴染みあるものだと思います。しかし、時効という制度の細かいところは、民法の学習をしない限りは、一般的には中々知るところではないのではないでしょうか?
 さて、時効には2種類あります。取得時効消滅時効です。

取得時効
 例えば、農家Aさんが甲土地、農家Bさんが乙土地を耕していて、甲土地と乙土地が隣接地だった場合に、Aさんがズルをして土地の境界線をズラし、Bさんの乙土地にまでAさんの畑を広げて、さも自分の土地のようにAさんが使い続けます。それに対してBが何も文句を言わずに、または気づかずに20年間経過すると、Aさんはズルをして広げて使った部分の乙土地を取得します。裁判になってもAが所有権を主張すれば勝ちます。これが取得時効という制度です。

消滅時効
 例えば、AからBが300万円借りたとします。そのまま放置して10年が経過すると、Bの債務は消えます。Aが訴訟をおこして裁判になっても、Bが時効の主張(これを時効の援用という)をすれば、Bの勝ちです。つまり、BはAに300万円を返さなくて済むのです。これが消滅時効です。

 このように、時効には2つのタイプが存在する訳ですが、どうでしょう。そもそもですが、時効ってとんでもない制度だと思いませんか?だって、取得時効においてはズルをして境界線をズラして越境して土地を使っていたヤツがその分の土地を取得し、消滅時効においてはそれこそ時の経過で借金を踏み倒したようなヤツを救ってしまう訳です。これって道徳的に考えていかがなもんでしょう。

時効制度の意味

 実は、時効制度の決定的な意味、その存在理由は、ズバッとハッキリとこれだ!というものはないと言われています。
 え?そうなの?
 はい。そうなのです。なので、たとえ道徳的に考えて納得できなくても、これは理屈ではなく「そうなっているんだ」と強引に頭にぶち込んでしまって下さい。
 ただ、よく言われることとしては、先述の越境して隣人の土地を侵して使用していたヤツのケースだと「何も文句を言わなかった方が悪い」という理屈も成り立ちます。これを「権利の上に眠る者は保護に値しない」と言ったりします。つまり、「文句を言う権利があるのにその権利を行使しなかったヤツの責任だ」となるのです。でもこの理屈だと「借金を踏み倒すために文句を言う暇もなく逃げ続けるヤツ」も肯定してしまうことになってしまいます。他にも「長い年月が経ってから権利関係を立証するのは難しいから」という理屈もありますが、長い年月が経過しても明確な証拠があってしっかりと立証できる場合はどうなんだ?という反論も成り立ちます。
 ということなので、考えれば考えるほどドツボにハマっていきます。ですので、繰り返しますが、これは理屈云々ではなく強引に「そうなっているんだ」と覚えてしまって下さい。
 う~ん、でも
 でも、て言わない!と子供の頃叱られた事ある人、いると思います(笑)。おそらく時効という制度の存在理由は、実務的な意味も大きいのではないかと思います。あまりに昔の事を持ち出されて訴訟だなんだと騒がれても、裁判所も困ってしまいますよね。ましてや裁判というのは時間がかかります。そんな案件がどんどん出てきてしまうと、裁判所がごった返してしまいます。それは法的安定性を阻害することにもなります。したがって、一律に〇〇年で時効!それで文句言いっこナシ!としているのではないかと思います。
 という訳で、今回は以上になります。次回から、時効という制度についての解説に、本格的に入って参りたいと存じます。
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取得時効 20年間の占有とは

 取得時効とは、時効によって取得する制度です。例えば、Aさんが甲土地、Bさんが乙土地を耕していて、甲土地と乙土地が隣接地だった場合に、Aさんがズルをして土地の境界線をズラし、Bさんの乙土地にまでAさんの畑を広げて、さも自分の土地のようにAさんが使い続けます。それに対してBが何も文句を言わずに、または気づかずに20年間経過すると、Aさんはズルをして広げて使った部分の乙土地を取得します。つまり、Aさんはズルをして侵した部分の乙土地の所有権を、一定の要件を満たせば取得時効の制度により取得するのです。この取得時効についての民法の条文はこちらです。

(所有権の取得時効)
民法162条
二十年間所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。

 この条文の中に、時効取得するための要件が5つ記されています。
・20年間
・自主占有(所有の意思を持って占有すること)
・平穏
・公然
・他人の物の占有
 これらの要件を満たしたときに、取得時効が成立します。最初に挙げた例にあてはめると、Aが20年間所有の意思を持って平穏・公然B所有の乙土地を占有(他人の物の占有)すれば、取得時効が成立し、Aは乙土地の所有権を取得するということです。
 さて、ではまずは、上記の5つの要件のひとつ「20年間」について、具体的に見ていきましょう。

20年間の占有

 20年間というのは、継続した20年間です。もし20年間の途中で、一日でも占有が途切れていたらアウトです。時効取得はできません。ただ、誰かに賃貸したとしても占有は継続します。

(代理占有)
民法181条
占有権は、代理人によって取得することができる。

 つまり、最初に挙げた例で、Aが越境して占有した乙土地をCに賃貸しても、Aの占有は継続します(間接的な占有)。

占有の継続はどうやって証明するの?
 占有の継続については、民法186条2項で規定されています。

民法186条2項
前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する

 これはつまり、占有を開始した時の占有と現在の占有を証明すれば、その間の期間の占有は法律的に推定されるのです。なので例えば、20年間継続して占有し続けたことを証明するために、20年間欠かさず日記をつけて証明しなければならないなんてことはないのです。
 ただ、これはあくまで「推定」であり「みなす」ではありません。ですので、最初に挙げた例で、BがAの占有が途中で途切れたことを証明できれば、Aの時効取得を阻止できます。逆に言えば、Bにそれを証明されない限りAは勝ちます。つまり、Bがそれを証明できなければ、Aの継続した20年間の占有は確定しますので、裁判の現場ではAが断然有利でしょう。

 という訳で、今回は以上になります。次回、取得時効成立のための残り4つの要件について、ご説明して参りたいと存じます。
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取得時効 自主占有について

 取得時効が成立するための要件は以下の5つです。
・20年間
・自主占有(所有の意思を持って占有すること)
・平穏
・公然
・他人の物の占有
 今回は「自主占有」以下の要件についてご説明して参ります。

自主占有

 自主占有とは「所有の意思」を持った占有です。所有の意思を持った占有とは、「オイラのモノだ!」という意思で占有することです。所有の意思の有無の判断は、個人の主観ではなく権原の性質により客観的に行われます。どういうことかといいますと、例えば、Aさんがマンションの一室を借りたとします(不動産賃貸借)。この場合の「権原」は賃借権になります。所有権ではありません。そして賃借権による占有は「他主占有」になります。Aさんはあくまでマンションの一室を借りて住んでいるだけで、「アタシのモノだ!」という意思で占有している訳ではありませんよね?従いまして、Aさんがマンションの一室を借りて20年間占有し続けても、Aさんの所有物にはなりません。繰り返しますが、Aさんが借りたマンションの一室に対して持つ権利の「権原の性質」は賃借権で、賃借権による占有は自主占有ではなく他主占有なので、いくらAさんがそのマンションの一室を20年間占有し続けたとしても、そのマンションの一室の所有権を取得することはありません。

 ちなみに、こんな場合はどうでしょう。もしAさんが、借りた家を自分の家だと勘違いして20年間住み続けたら?
 結論。それもダメです。なぜなら「所有の意思」は客観的に判断されるからです。

平穏・公然

 この2点は試験などでは問われないでしょう。一応、簡単にご説明しておきますと、無理矢理に奪った訳ではなく(平穏)、コソコソとせず堂々と(公然)占有すればOK!ということです。ここはさらっと流して深く考えないで下さい(笑)。

他人の物の占有

 これは簡単ですね。読んで字の如く、他人の物を占有することです。

 以上のように、これら4つの要件と前回ご説明申し上げた「20年間」と合わせて5つの要件を満たせば、取得時効が成立し、占有者は所有権を取得します。

補足1
 取得時効成立のための要件の一つとして「他人の物の占有」とありますが、「自分の物」の時効取得は可能なのでしょうか?自分の物を時効取得といってもピンと来ませんよね。例えばこうです。AがBから甲不動産を買って占有を始め、その後、長期間経過してから、AB間の甲不動産の売買の効力が争われたようなケースです。この場合、Aは買主としての地位を主張する訳ですから、甲不動産はAにとってあくまで自分の物です。
 結論。自分の物の時効取得は可能です。先ほど挙げた例だと、Aは甲不動産を時効取得できます。これは、判例によりこのような結論が下されています。なぜ判例がこのような結論かというと、例えば、甲不動産の買主のAが、長い年月の経過により売買契約書などを紛失していたらどうでしょう?そのような売買の立証が困難な場合に、買主Aのような人間を救済するために、裁判所の判断でこのような結論になっているのです。

補足2
 実はドロボーの占有は自主占有になります。
 マジで?
 マジです。なぜなら、ドロボーは「誰かのために占有している」訳ではありません。一方、賃借権の場合はあくまで「誰かのために占有している」ことになるので他主占有なのです。この点はご注意下さい。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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