2018/01/24
消滅時効が中断するとき
時効には2種類あります。取得時効と消滅時効です。取得時効は権利を取得する時効であるのに対し、消滅時効は権利がなくなる時効です。つまり、時効によって権利が無くなってしまうのが消滅時効です。事例1
AはBから100万円を借りた。その後、AがBにお金を返すことなく、9年間が経過した。
さて、この事例1ですが、なんとAはあと1年間やり過ごせば、Bに100万円を返さなくても良いことになります。
(債権等の消滅時効)
民法167条
債権は、十年間行使しないときは、消滅する。
従いまして、Aはあと1年間なんとかやり過ごせば、消滅時効によって、BのAに対する「100万円返せ!」という債権が消滅するので、合法的に借金を踏み倒せます。まあ、同時にAに対する信用も消滅しますが(笑)。
時効の中断
では、Bとしては何か打つ手はないのでしょうか?
あります。それは時効の中断です。時効の中断とは、時効期間の進行を止めることです。しかも、時効の中断によって時効期間の進行が止まると、なんと時効期間はリセットされます。つまり、事例1でAの時効が中断すると、進行していた9年間という時効期間はゼロに戻ります。
消滅時効を中断させる方法
消滅時効の中断事由(消滅時効が中断するパターン)には下記のものがあります。
・承認
・請求
・差押え、仮差押え、仮処分
・承認
これは債務者が債務を承認することです。つまり、事例1のAが「Bに100万円返します!」と認めることです。Bとしては、Aにその旨を一筆書かせればバッチリです(「お金返します」と口で言わすだけでも有効だが、それだけだと裁判でしらばっくれられたら厄介なので、一筆書かせれば、もし裁判になったときでも言い逃れられない確固たる証拠になる)。
・請求
これは、BがAへ「金返せコラ」と請求することなのですが、時効を中断させるための請求は「裁判上の請求」でなければなりません。ただBがAに請求書を送っただけではダメです。
裁判上の請求とは、例えば、訴訟の提起です。つまり、BがAに対して金返せという裁判を起こすことです。そして裁判を起こせば、民事訴訟法上、Bの訴状提出時に時効が中断します。
・差押え、仮差押え、仮処分
これも裁判所を使った手続きです(差押えについての解説はこちら)
以上のように、BがAの時効を中断させる方法はいくつか存在します。ただ、どうでしょう。まず承認は難しいですよね。Aが借金を踏み倒す気満々なら、まず無理でしょう。ましてや、あと1年で時効になるというのに。すると残る手段は、裁判所の手を借りた方法しかありません。しかし、裁判を起こすとなると準備も大変です。それこそ時効完成までの期間が1ヶ月もないような状況だったとしたらBはなおさら大変です。そこで民法では、時効の中断とまではいかないが、とりあえず時効期間の進行を一旦ストップさせる効果のある「催告」という制度を定めています。催告をすると、時効期間の進行が一旦ストップします。ストップする時間は6ヶ月です。つまり、BがAに催告をすれば、Aの時効期間の進行をとりあえず6ヶ月の間はストップさせることができます。催告は通常、内容証明郵便で行います(しっかりとした証拠を残すため)。
従いまして、もしAの時効完成が間近な場合は、BはまずAに対し内容証明郵便で催告をして、Aの時効進行を一旦ストップさせて、6ヶ月以内に「裁判上の請求」等の裁判所の手を借りた手続きをすれば、無事Aの時効を中断させることができます。
尚、催告は1回限り有効なものです。もう1回催告をしたら、そこからまたさらに6ヶ月間時効がストップするなんてことはありません。ご注意下さい。
また、もし原告(訴える側)が訴訟を取り下げたときや、訴えが裁判所で却下(門前払い判決)されたときは、時効は中断しません。この点もご注意下さい。
(スマホでご覧の場合、次の記事へ進むには画面下左の前の記事をタップして下さい)
コメント