【時効の援用と利益の放棄】援用ができる当事者と時効更新の相対効について(保証債務)

▼この記事でわかること
時効の援用とは
時効の援用ができる当事者とは(保証人の援用)
時効更新の相対効(保証債務)
時効利益の放棄
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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時効の援用

 取得時効の場合、時効の完成によって権利を取得します。
 消滅時効の場合、時効の完成によって権利が消滅します。
 ところで、時効というのものは、時効期間が満たされると自動的に権利を取得したり、自動的に権利が消滅したりするものではありません。
 え?どゆこと?
 時効期間が満たされても、時効の効果を受ける権利を得るだけなのです。
 そして、その権利を行使することを時効の援用と言います。
 つまり、時効は、時効の援用をして初めてその効果が確定するのです。
 ですので、裁判所が勝手に「あ、それ時効ね」と決めることはできません。当事者が「時効を援用します」と主張して、初めてその効果が確定します。
 まとめるとこうです。

「時効期間が満たされても時効の効果は確定せず、時効の援用をして初めてその効果が確定し、時効を援用するかどうかは当事者の任意(当事者が自ら選択して決める)」

 じゃあ時効を援用しなかったら?
 そのときは時効の効果は確定しません。取得時効なら権利の取得は確定せず、消滅時効なら権利の消滅は確定しません。
 例えば、AがBに100万円を貸していて、すでに返済期日より10年間経過していたとしましょう。
 このとき、AのBに対する「100万円返せ」という債権は消滅時効にかかっています。なので、Bは時効の援用をすれば、100万円の借金を返さなくてもいいのです。
 しかし、Bが「借金を踏み倒すなんて道義に反する。オレは意地でもAに借金を返すんだ!」といって時効を援用しなければ、AのBに対する債権は消滅しません。(これを時効利益の放棄という)
 これが、時効の援用は当事者の任意(当事者が自ら選択して決める)ということの意味です。

時効の援用ができる当事者とは

 時効を援用できるのは「時効によって直接に利益を受ける当事者」だけです。
 では、この「時効によって直接に利益を受ける当事者」の範囲は、一体どうなっているのでしょうか?
考え中
 例えば、AがBを保証人として、Cからお金を借りたとしましょう。(このような場合、Aを主債務者と言います)

           債権 
B(保証人)ーA(主債務者) ← C
           借金

 そして、CのAに対する債権が返済期日10年間の経過により消滅時効にかかった場合、Aが時効の援用をできるのは当然として、保証人Bは時効の援用ができるでしょうか?
 結論。保証人Bも時効の援用ができます。
 これはすなわち、保証人Bも「時効によって直接に利益を受ける当事者」ということです。
 その理由は、主債務者AのCに対する債務(これを主債務と言う)が消滅すれば、保証人Bの債務(これを保証債務と言う)も消滅します。
 したがいまして、保証人Cも時効の援用ができる当事者なのです。(保証債務の基本についての解説は人が担保の保証人&物が担保の物上保証~をご覧ください)

補足:時効更新の相対効

 先ほど挙げた例で、保証人Bは、主債務者Aの時効を援用できることがわかりました。
 では、主債務者Aの債務、つまり主債務(AのCへの借金債務)の時効が更新した場合、保証人Bの債務、つまり保証債務の時効も更新するのでしょうか?
 結論。その場合は、保証人Bの保証債務の時効も更新します。
 ただし!保証人Bの保証債務の時効が更新しても、主債務者Aの主債務の時効は更新しません。
 これを、時効更新の相対効と言います。

〈時効利益の相対効〉
主債務更新→保証債務も更新
保証債務更新→主債務も更新× 

 なお、解説の中で登場した「相対効」や「主債務・保証債務」といったものに関しましては、別途改めて詳しく解説いたしますので、ここではとりあえず「そういうものがあるんだ」と、覚えておいていただければと存じます。

時効利益の放棄

 時効は、当事者が援用しなければその効果が確定しません。
 ということは、このようなことも可能なのでしょうか?
 例えば、AがBにお金を貸し付けた場合、時効対策として、あらかじめ契約書に次のような文言を入れておけば、債権者Aは安心なのでは?

「BはAに対し時効利益を放棄する」

 時効利益の放棄とは、時効を援用しないということです。時効利益を放棄すれば、時効の効力が確定的に消滅します。
 つまり「時効利益を放棄する」の文言を入れておけば、あらかじめ時効の効力を消滅させることができるわけです。
 しかし!そのようなことはできません。
 これについては、民法に極めてわかりやすい明快な条文があります。

(時効の利益の放棄)
民法146条
時効の利益は、
あらかじめ放棄することができない。

 え?民法さんどうしちゃったの?と思ってしまうぐらい、やけにわかりやすい民法146条条文ですよね(笑)。
 したがいまして、先の例のように、契約書にあらかじめ時効利益を放棄する旨の文言を入れたところで、その条項は無効になります。どうあがいても、あらかじめ時効の利益を放棄する(させる)ことはできないのです。
 もし、ヤバそうな所からお金を借りて、あらかじめ時効利益を放棄する旨の文言が入った契約書にサインをしてしまった人は、その条項につきましては無効なのでご安心ください。時効期間を満たせば、普通に時効が援用できますので。。。
 あ、決して借金の踏み倒しをススメている訳ではありませんので、誤解なきよう(笑)。

 さて、あらかじめ時効利益の放棄ができないことはわかりました。
 それでは続いて、このような場合はどうでしょう。

事例
AはBに100万円を貸し付けた。やがて時が過ぎ、AのBに対する債権は消滅時効にかかっていたが、Bはそれに気づかず債務を承認した。


 これは、債権者のAのBに対する「金返せ」という債権がすでに時効になっていたが、債務者のBがそのことに気づかずに「金返します」と債務の承認をした、という話です。
 さて、この事例で、Bは時効利益を放棄したことになってしまうのでしょうか?
 結論。Bの債務の承認は、時効利益の放棄にはあたりません。しかし、結果的には時効利益を放棄したのと同じことになります。
 ん?どゆこと?
 まず、事例のBは、自分の債務が消滅時効にかかっていることに気づいていません。つまり、Bは自らの時効利益を知らないのです。
 知らない利益を放棄できるの?
 もちろんできません。
 じゃあなんで時効利益の放棄と同じ結果になるの?
 判例では、次のような理屈で結論づけています。

「債務者Bの債務の承認は時効利益の放棄にはあたらない。
しかし、一回債務を承認したBが、その後、自らの債務が消滅時効にかかっていることに気づいて「やっぱり時効を援用します!」と言えるのか?
それは認められない。なぜなら、一度債務を承認した者が、その後、それをひっくり返して時効の援用を主張するのは信義誠実の原則(信義則)に反し許されないから!」

 なお、一度、時効利益を放棄しても、そこからまた新たに時効期間を満たせば、そのときは時効の援用ができます。
 これは時効が更新した場合と一緒です。
 この点ご注意ください。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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Author:根本総合行政書士
東京都行政書士会所属
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保有資格:
行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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