物上保証~保証人の責任は限りなく物上保証人の責任は限りある?

 抵当権は、債務者の不動産を担保とします。これに対し、保証人は「保証人そのもの」を担保とする、いわば人的担保です。さらに、債務者以外の「人の物(財産)」を担保にすることもできます。それが物上保証です。そして、その場合は物上保証人となります。

事例
BはA銀行から事業資金を借り入れようとしていたが、担保にできるような財産を持っていなかった。そこで、大地主の娘である妻Cが、夫Bのために自らの財産(不動産)をその事業資金の融資のための担保にした。


 これが、物上保証の典型的なケースです。この事例は、Bが銀行から融資を受けるために、Bの妻Cが、BのためにC自身の財産(不動産)を担保にした、という話です。もう物上保証の意味は、おわかりになりますよね。
 そしてこのとき、A銀行は債権者、Bは主債務者、Cは物上保証人、という立場になります。

      債権者
      A銀行
(貸金債権)↙︎   ↘︎(抵当権)
    B     C
  主債務者   物上保証人

物上保証人と保証人の違い

 ところで、冒頭に、保証人は「保証人そのもの」を担保とするいわば人的担保だ、と申しました。それに対して、物上保証人は「保証人の財産」を担保とします。
 ん?それで何が違うの?
 実は、この「保証人そのもの」と「保証人の財産」の違いは、か・な・り!重要な意味があります。

保証人の場合

 保証人は、主債務者が債務を履行しないときに、その債務を肩代わりします。例えば、BがAから借金をしていて、Bの保証人がCの場合、Bが借金を返せないときに、CがBの借金を肩代わりすることになります。Bの借金が100万円なら100万円、1000万円なら1000万円を、Cが肩代わりすることになります。加えて、遅延損害金があれば、それも合わせてCが肩代わりしなければなりません。さらにそれだけではありません。もし保証人Cが主債務者Bの借金を肩代わりしなければならなくなった場合に、保証人Cが「そんな金払えるか!」と言って支払わないとなると、債権者Aは、保証人Cに対して訴訟を提起することができます。つまり保証人Cは、場合によってはBの借金のために、債権者Aから裁判を起こされる可能性があるのです。
 マジで?保証人キッツイわ~!
 はい。マジ、キッツイです。ということで、保証人の責任には限度がないのです。これを、保証人の無限責任といいます。そして、この「保証人の無限責任」こそ、保証人は「保証人そのもの」を担保にする、ということの真の意味です。
(厳密に言えば、保証人にもいくつかの種類があり、その種類ごとに責任の重さも異なりますが、それについては、また別途改めて解説いたします。)

物上保証人の場合

 物上保証は、物上保証人の「特定の財産」を担保にします。例えば、BがAから借金をしていて、Bの物上保証人がCの場合、Bが借金を返せないときに、CがBのために担保にした不動産を競売に出して、その売却金をBの借金返済にあてることになります。
 ん?保証人とどう違うの?
 全然違います。なぜなら、物上保証人Cは、いざBの借金返済のために持って行かれる財産は、Bのために担保にした不動産のみです。どういうことかといいますと、Bの借金が1000万円で、物上保証人CがBのために担保にした不動産が500万円相当だったとしても、いざBの借金返済のために持って行かれるCの財産は、500万円相当の不動産のみです。残りの借金500万円に関しては、Cに責任は及びません。担保にした不動産が競売に出されて、そこでCの責任は終了です。Bの借金がいくら残っていようが、もはやCには関係ありません。なぜなら、物上保証人Cが責任を負うのは、あくまで担保にした不動産だけであって、Bの借金そのものの責任を負うわけではないからです。したがって、物上保証人の責任には限度があります。保証人の責任は無限責任ですが、物上保証人の責任は有限責任なのです。

 以上が、保証人と物上保証人の違いになります。この違いを理解すると、そもそも保証人とは何なのか?物上保証人とは何なのか?ということが、よく理解できるかと思います。
 保証人は無限責任、物上保証人は有限責任。皆さん、誰かの保証人になろうとするときは、ここでご説明した内容をよく理解した上で、その判断をして頂ければ存じます。
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相殺の超基本~自働債権と受働債権って何?互いの債権額が違うときは?

 相殺とは、互いの債権を打ち消し合う仕組みです。といってもこれだけではピンと来ませんので、事例とともに考えていきます。

事例1
AはBから10万円のギターを買い受け、その代金はまだ支払っていない。また、BはAから10万円のベースを買い受け、その代金はまだ支払っていない。


 このケースで、AはBに対してギター代金「10万円支払え」という債権を持っているのと同時に、BもAに対してベース代金「10万円支払え」という債権を持っています。このような場合に、Aが相殺をすると、AのBに対する「10万円支払え」という債権は消滅し、BのAに対する「10万円支払え」という債権も消滅します。これが相殺です。

 ギター代債権10万円
     ↓
    A⇆B
     ↑
 ベース代債権10万円

Aが相殺をすると

A→債権消滅←B

 相殺とは、互いが互いに同種の債務を負っていて、互いが互いに対して同種の債権(ほとんどの場合が金銭債権と思ってよい)を持つ場合に、一方の意思表示で互いの債権を打ち消し合う仕組みです。ここであれ?と思った方もいらっしゃるかと思います。そうです。相殺はあくまで一方の意思表示で行います。つまり、Aは、Bの意思に関係なく、Aの意思だけで相殺ができます。同様に、Bから相殺する場合も、BはAの意思に関係なく、Bの意思だけで相殺ができます。

自働債権と受働債権

 Aから相殺する場合、AのBに対する「ベース代10万円支払え」という債権を自動債権、BのAに対する「ギター代10万円支払え」という債権を受動債権といいます。

(Aから相殺する場合)

 ギター代債権10万円←受動債権
     ↓
    A⇆B
     ↑
 ベース代債権10万円←自働債権

 また、Bから相殺することももちろん可能です(結果はAからする場合と同じ)。その場合は、BのAに対する「ギター代10万円支払え」という債権が自動債権、AのBに対する「ベース代10万円支払え」という債権が受動債権となります。

(Bから相殺する場合)

 ギター代債権10万円←自動債権
     ↓
    A⇆B
     ↑
 ベース代債権10万円←受動債権

 つまり、相殺する側(相殺の意思表示をする側)の債権が自動債権、相殺される側の債権が受動債権、ということです。

互いの債権額が違う場合

事例2
AはBから10万円のギターを買い受け、その代金はまだ支払っていない。また、BはAから15万円のベースを買い受け、その代金はまだ支払っていない。


 このケースも、AとBは互いに債権を持っています。しかし、今回は互いの債権の額が違います。BのAに対する債権が「10万円支払え」なのに対し、AのBに対する債権は「15万円支払え」となっています。
 それではこの事例2で、Aが相殺すると、AとBの債権はどうなるのでしょうか?
 相殺すると、各債務者はその対等額についてその債務を免れます(民法505条)。つまり、相殺すると、互いの債権額のうち対等額分が消滅します。
 従いまして、事例2でAが相殺をすると、AとBの互いの債権の対等額10万円分が消滅します。よって、AのBに対する債権は「5万円支払え」となり、BのAに対する債権は消滅します。

 ギター代債権10万円
     ↓
    A⇆B
     ↑
 ベース代債権15万円

Aが相殺すると

(ギター代債権は消滅
    A→B
     ↑
 ベース代債権5万円

 以上、相殺についての超基本になります。
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債権譲渡の超基本~債権は譲れる?譲るとどうなる?

 債権は譲り渡すことができます。例えば、AがBに対して持っている「50万円支払え」という債権を、AがCに譲り渡すことができます。これを債権譲渡といいます。そして債権譲渡が行われると、その債権が譲渡人から譲受人のものへと移ります。つまり、AのBに対する「50万円支払え」という債権がCに債権譲渡され、CがBに対する「50万円支払え」という債権を持つことになります。このときの譲渡人譲受人です。

譲渡人 譲受人
 A → C
   ↑
 債権譲渡

そして債権債務関係が次のようになる。

債権譲渡前
債権者 債務者
 A → B

債権譲渡後
債権者 債務者
 C → B

債権を譲渡することなんてあるの?

 あります。例えば、AがBに500万円を貸し付けていて、その弁済期が1年後だった場合に、Aが今すぐまとまった現金が必要になったようなときです。このとき、AはBに対して「今すぐ500万円返せ」とは言えません。なぜなら弁済期が1年後だからです。一方、Bには弁済期までは500万円を返さなくていい権利があります。そこで、Aはこう考えます。
誰かこの500万円の金銭債権を買ってくれないかな
 すると、そこにCが現れて
だったらその500万円の金債債権、450万円で買ってやるよ
とAに言ってきました。
 Aとしては、500万円の金銭債権を450万円で売るわけですから、50万円の損になります。しかし、それでもAは今すぐにどうしてもまとまったお金が必要です。背に腹はかえられないということで、Aは500万円の金銭債権をCに450万円で売りました。一方、CはBに対して「500万円支払え」と請求できる権利(債権)を450万円で買ったわけですから、1年後にBから500万円全額の弁済を受ければ、50万円の儲けになる、というわけです(ちなみにCにも「債務者Bに借金を踏み倒される可能性」というリスクはある)。
 
実際に債権譲渡が利用されるケースの典型

 実際に債権譲渡が利用される典型的なケースとして、債権者が弁済能力のない(簡単に言えばお金がなくて支払い能力がないこと)債務者から、その債務者に対する債権を回収するために、その債務者自身が持っている債権を譲渡してもらう、というのがあります。これは企業間で、取引先の会社の経営状況が不安定なため、その取引先の債務の弁済として、その取引先が持っている債権を譲渡してもらう、などといったケースです。以下にその具体例を記します。

A社はB社に100万円の売掛金債権を持っている。B社はC社に100万円の売掛金債権を持っている。A社はB社に対する100万円の売掛金債権を回収したいが、経営状況の悪いB社には100万円の支払い能力がない。そこでA社とB社は、B社がC社に対して持つ100万円の売掛金債権を、B社からA社に債権譲渡する契約を結んだ。

 これが、実際に債権譲渡が利用される典型的なケースです。この事例の場合、A社が債権譲渡の譲受人で、B社譲渡人です。そして債権譲渡により、A社はC社に対して100万円の支払いを請求することができ、C社に100万円の支払い能力があれば、A社は無事、100万円の売掛金債権を回収することができます。そして、その債権譲渡により、B社はA社に対する100万円の債務を履行したことになります。
 このような事例から、債権譲渡という制度には一定の必要性と合理性がある、ということがわかります。
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代位弁済について

法定代位と任意代位

 民法では「弁済をするについて正当な利益を有する者は、弁済によって当然に債権者に代位する」と規定されています。これは「弁済による代位」のことですが、どういうことかというと、保証人・物上保証人等が主債務者に代わって弁済をすれば、債権者に属する担保権等の権利は保証人・物上保証人等に移転するということです。もっと噛み砕いて言うと、保証人・物上保証人等が主債務者に代わって弁済をすれば、その後は保証人・物上保証人等が債権者に代わる(代位する)ということです。そしてこれは、そういう状況になれば法律上当然に適用される、法定代位です。
 一方、法定代位に対して、任意代位というものもあります。
 先ほど「弁済をするについて正当な利益を有する者」というフレーズが出てきました。これはわかりやすく言ってしまえば、保証人や物上保証人のことです。つまり、保証人や物上保証人が弁済した場合に法定代位の問題になるのです。では「弁済をするについて正当な利益を有しない者」が弁済した場合はどうなるのでしょうか?
「弁済をするについて正当な利益を有する者」が保証人や物上保証人を指すということは「弁済をするについて正当な利益を有しない者」とは、保証人や物上保証人以外の者ということになります。したがって「弁済をするについて正当な利益を有しない者」が弁済した場合とは、保証人や物上保証人以外の者が弁済した場合というこです。具体例を挙げると、保証人でもない親が子供の借金を肩代わりしたような場合です。これが任意弁済です。
 ではこの場合、保証人や物上保証人が弁済したときと同じように、債権者に属する担保権等の権利は親に移転するのでしょうか?この場合にも弁済による代位は生じます。つまり、債権者に属する担保権等の権利は親に移転します。ただし、そのためには次の2つの要件を満たす必要があります。

1・債権者の同意
2・対抗要件としての債権者から債務者(子)への通知または債務者の承諾

 つまり、親が子供の借金を肩代わりした場合に弁済による代位が生じるには、親が債務者(子)の借金を肩代わりすることを債権者が同意して、そのことを債権者から債務者(子)へ通知または債務者(子)が承諾することが必要ということです。
 以上が法定代位と任意代位です。

補足・主債務者1人に対して「弁済による代位者」となるべきものが複数いる場合

 いずれの者が弁済しても、弁済者は主債務者に対して全額の求償ができます。しかし、主債務者が無資力の場合もあります。そして、その場合のルールはあらかじめ定められています。では、どういうルールに基づき弁済者は債権者に代位(債権者に代わって債権者の権利を行使)するのでしょうか?

1・保証人と第三取得者のケース
※第三取得者とは、抵当権が設定された後にその不動産を取得した者
・保証人が弁済した場合
 この場合、保証人は第三取得者に対して代位できます。ただし、そのためには弁済後第三取得者が登場する前に保証人名義の抵当権等の移転登記を受けることが必要です(弁済当時に存在する第三取得者との関係では登記不要)。
・第三取得者が弁済した場合
 この場合、第三取得者は保証人に対して代位できません。そもそも、第三取得者は抵当付きの不動産を安く買い叩いているはずなので、代位の必要性はないと考えられます。

2・第三取得者と第三取得者のケース
・第三取得者の1人が弁済した場合
 各不動産の価格に応じて、弁済した第三取得者は他の第三取得者に対して代位します。例えば、1000万円の甲土地を取得したA、2000万円の乙土地を取得したBがいて、債権額1500万円の抵当権が、甲土地(負担額500万円)、乙土地(負担額1000万円)に設定されていたとします。そしてAが1500万円全額弁済した場合、AはBに対して1000万円(甲土地の価格)の限度で乙土地の抵当権に代位できます。

3・物上保証人と物上保証人のケース
・物上保証人の1人が弁済した場合
 各不動産の価格に応じて、弁済した物上保証人は他の物上保証人に対して代位します。考え方は前述の2のケースと同じです。

4・保証人と物上保証人のケース
・保証人と物上保証人のいずれかが弁済した場合
 頭数に応じて代位します。
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根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
東京都行政書士会所属
根本総合行政書士です。
宜しくお願いします。

保有資格:
行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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