イベント出演等の危険負担~やむを得ない(本人は何も悪くない)事情で出演できなかったイベントのギャラはどうなる?

 まずは事例をご覧ください。 

事例
スーパーギタリストAはB音楽事務所が主催するロックイベントに出演することを約束した。しかしイベント当日、地震による交通機関の麻痺により、Aはイベント会場に行くことができなかった。


 さて、この事例において、スーパーギタリストAは出演料(ギャラ)はもらえるでしょうか?
 事例では、AにもBにも過失(ミス・落ち度)がありません。よって、これは危険負担の問題になります(危険負担とは?についてはこちら)。今回の事例で言えば、地震によってイベント出演ができなくなったという危険を誰が負担するのか?という問題です。
 このような危険負担の問題は、契約の「目的物」を中心に考えます。では、この事例においての契約の目的物とはなんでしょう。それはAが出演することです。すると「Aが出演すること」に対しての債務者債権者ということになります(これについて詳しくはこちら)。わかりやすく言えば「出演する義務」がAにあり「出演しろ!」という権利がBにあるということです。
素材116ギタリスト
 で、出演料(ギャラ)はどうなるの?
 結論。AはBから出演料はもらえません。
 非常にわかりずらいと思いますが、根拠となる条文こちらになります。

※民法改正後(2020年4月1日施行)
(債務者の危険負担等)
536条
当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
2項 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。


※民法改正前
(債権者の危険負担)
民法534条
特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。

 
 条文の「債権者は反対給付の履行を拒むことができる」という部分を事例に当てはめると「Bは出演料の支払いを拒むことができる」となります。したがって、Aは出演料をもらえません。
 繰り返しますが「Aが出演すること」は契約の目的物で、その契約の目的物の債権者はBです。

今回のポイントと出演契約で気を付けること

 最後に繰り返しになりますが、今回の重要なポイントだけ押さえていきます。
 条文の「当事者双方の責めに帰することができない」というのは、事例に当てはめると「AとB双方に過失(ミス・落ち度)がない」ということです。そして「債権者は反対給付の履行を拒むことができる」という部分は「Bは出演料の支払いを拒むことができる」となります。ちなみに反対給付というのは、「Aが出演すること」に対するBからの給付、つまり「Aのギャラの支払い」のことです。なので「Aはギャラをもらえない」となるのです。
 まあこれは、民法云々以前に、我々の一般的な常識から考えても当たり前の結論ですよね。いくらAがス-パーギタリストといえど当然の結果でしょう。もし、Aがこの結果に不服があるなら、出演前の交渉の段階でしっかりと細かい条件等の事項を詰めておかなければならなかった<というハナシです。
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Author:根本総合行政書士
東京都行政書士会所属
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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