危険負担の超基本~売買契約成立後の引渡し前に物が滅したらそれは誰が負担するか~危険負担とはババ抜きみたいなもの?

危険負担とはババ抜きみたいなもの?

 売買契約のような互いに債務を負う契約(これを双務契約という)
売主の債務→物を相手に引き渡す
買主の債務→金を相手に払う
上記のような契約で、債務が履行される前(売主が相手に物を引き渡す前)に、お互いのどちらの責任にもならない事由(理由・原因)で債務の履行ができなくなったとき(売主・買主どちらの責任でもなく物が消滅した場合等)、その債務をどうするか?という問題を危険負担といいます。
 まずは分かりやすく事例を見てみましょう。

事例
売主Aと買主BはA所有の甲建物の売買契約を締結した。しかし、その引渡し前に甲建物は地震によって倒壊した。


 これがまさに危険負担の問題の典型ケースです。つまり、売買契約はしたが引き渡し前に地震で甲建物がぶっ壊れた、じゃあその甲建物がぶっ壊れたという危険を売主Aと買主Bのどちらが負担するのか?すなわち危険負担ということです。
 要するに、危険負担とは危険というババをどちらが抜くか(負担するか)、つまり売主vs買主のババ抜きみたいなものとも言えます。
素材114トランプ 
売買代金の支払いという債務はどうなるか

 この事例で、売主Aは買主Bから売買代金をもらえるでしょうか?いやいやそれはムリっしょ?という声が聞こえてきそうですが、この問題が本格的に民法上の危険負担というものを考えていくことになります。
 尚、不動産は全て特定物です。つまり、全く同じ物は世の中に他に存在しません(たとえ全く同じ建物が近くにあっても(同マンション内でも)建物内から見える景色は僅かでも変わる等々)。この点はまず前提として押さえておいて下さい。
 それでは、危険負担について、いくつかのケースに分けて見ていきましょう。

1・AB間の売買契約の前日に甲建物が倒壊していた場合
 この場合は、どんな理由であろうともその契約は無効です。なぜなら、甲建物が売買契約前にすでに倒壊しているということは、すでに売買不能の物を契約したということになります。売買不能の物の売買契約は不可能なので、そのような契約は法律上、当然に無効になります。無効ということは契約そのものが成立しませんので、売買代金もクソもないということです。よって、AはBから売買代金はもらえません。

2・AB間の売買契約当初から甲建物に欠陥があった場合
 これは、売主Aの契約不適合責任(瑕疵担保責任)の話になります。契約不適合責任は無過失責任です。売主Aは過失がなくとも負わなければならない責任です。この場合、契約は一旦有効に成立しているので、売主Aは売買代金をもらえますが、買主Bは売主Aに対し契約不適合責任による修補の請求・修理代金の請求※や損害の賠償の請求、場合によっては契約の解除も可能になります(契約不適合責任について詳しくはこちらの記事をご参照下さい)。
※今回の事例の場合、そもそも甲建物が倒壊しているので解除か損害賠償の請求が妥当かと思われる。

3・売主Aに過失(ミス)があって甲建物が全壊(滅失)あるいは損傷(一部が壊れる)した場合
 この場合は、売主Aの債務不履行の問題です。ですので、この場合も契約は一旦有効に成立しているので、Aは売買代金をもらえますが、買主Bは売主Aに対し債務不履行による損害賠償の請求、場合によっては契約の解除が可能になります。
※債務不履行についてはこちらの記事をご参照下さい。
 
 尚、上記2と3のケースで契約が解除された場合、結局、売主Aは受け取った売買代金を買主Bに返還しなければなりません(原状回復義務)。
素材115なるほど
 さて、ここまで3つのケースを見てきました。しかし、これらは危険負担の話ではありません。それでは、危険負担の話になる場合とはどんなときでしょうか?
 危険負担の話となるのは、次のようなケースです。

契約成立後、売主に過失なく建物が滅失または損傷した
 
 事例に当てはめるとこうです。
AB間の売買契約成立後、売主Aに過失がなく甲建物が全壊または一部が壊れた

 このようなケースが危険負担の話となります。そう、つまり冒頭の事例がまさににこのケースなのです。
 回りくどくね?
 はい。スイマセン(笑)。しかし、わざわざ遠回りして別のケースをご説明してきたのには理由がございます。私の経験上、危険負担については、かなりじっくりやらないと頭が混乱してしまうと考えます。ですので、回りくどいかもしれませんが、危険負担の話に入る前の前提として、確認しておくべきことを記した次第なのです。

 という訳で次回、本格的にご説明して参ります。引っ張るような形になってしまいましたが、まずは危険負担を理解するための前提として、今回の内容を頭に入れておいて下さい。
続いての記事はこちら
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Author:根本総合行政書士
東京都行政書士会所属
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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