契約不適合責任(瑕疵担保責任)による損害賠償請求~信頼利益と履行利益~契約の解除は?

 契約不適合責任は、民法改正以前は瑕疵担保責任と言われていたものです(読み方は「かしたんぽせきにん」。瑕疵とはキズとか欠陥という意味)。
 
事例
AはBから中古の自動車を購入した。しかし、購入後すぐに自動車のエンジンが故障した。整備工場で調べるとエンジンにはAB間の売買以前からの欠陥があり、その欠陥が原因となってエンジンが故障したことが判明した。さらにAはこの自動車を事業用に購入していて、この故障が原因で事業上の損害も発生した


 買主Aは売主Bの契約不適合責任により、自動車の修理の請求、修理代金の請求ができます(これについて詳しくは前回の記事へ)。しかも契約不適合責任は無過失責任なので、売主Bの過失の有無は関係ありません(売主Bにミスがあったかどうかは関係ない)。自動車の欠陥が買主Aの責任によるものでなければ、売主Bに過失(ミス)がなくとも、買主Aは売主Bに対して自動車の修理の請求(目的物の修補請求)、修理代金の請求ができます(これらの請求を買主の追完請求という)。また、売主Bが修補しないときは、買主Aは売主Bに対し「安くしろ!」と請求できます(代金減額請求→詳しくは前回の記事へ)。
素材112債権
損害賠償請求はできるのか?

 では、今回の事例で、買主Aは売主Bに対し自動車の故障によって生じた事業上の損害の賠償請求はできるでしょうか?
 結論。買主Aは売主Bに対し事業上の損害の賠償請求はできません。その理屈を今からご説明いたします。

法定責任

 売主Bには過失がありません。しかし、契約不適合責任は無過失責任です。契約不適合責任は、売主は過失がなくても負う責任です。これは法律で定められた責任、すなわち法定責任です。ですので、たとえ過失のない売主でも法律の定めにより問答無用で負わされる責任です。したがって、AはBの契約不適合責任により自動車の修理の請求等ができる訳ですが、ではなぜ、事業上の損害の賠償請求はできないのでしょうか?また、事業上の損害を請求できるケースもあるのでしょうか?

信頼利益と履行利益

 一般に、損害賠償の範囲の考え方については、次のようなことが言われています。
・信頼利益
 有効でない契約が有効に成立したと誤信したため生じた損害(契約できると間違って信じたことによって生じた損害)、これを信頼利益という。(例)契約のため目的地に行くためにかかった交通費
・履行利益
 契約が完全に履行された場合に債権者が受ける利益、これを履行利益という。(例)商品の転売の利益(要するに買主がその商品を買えていれば後にそれを売って儲けられたであろう利益)
素材107悩む
 この説明だけでは今ひとつピンと来ないですよね。事例に当てはめて考えてみましょう。中古の自動車の修理代金が信頼利益になり、事業上の損害は履行利益になります。

売主に故意・過失があった場合

 瑕疵担保責任における損害賠償の範囲信頼利益に限ります。この考えを法定責任説といいます。別の見解の学説もありますが、法定責任説は裁判所の見解とも一致しまます。しかし、民法改正によって瑕疵担保責任が契約不適合責任となり、売主に故意・過失があった場合は、買主から売主へ履行利益を含めた損賠賠償の請求も認められます。
 従いまして、今回の事例で、もし売主Bに故意・過失があった場合、買主Aは売主Bに対して事業上の損害の賠償請求もできます。
 
買主Aは契約の解除はできる?

 民法改正以前の瑕疵担保責任においては、買主が善意でかつ隠れた瑕疵(事例で言えば整備工場でやっとみつかった中古自動車の欠陥)のために契約の目的を達することができないとき、契約の解除ができます。しかし、民法改正により、解除については債務不履行の一般規律に従うことになります。
 従いまして、債務不履行の一般規律に従い要件を満たせば、買主Aは契約の解除も可能です。

※民法改正後
(催告による解除)
541条
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。


※民法改正前
(履行遅滞等による解除権)
541条
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。

 上記の規定によれば、自動車の欠陥が軽微なものでなければ契約の解除はできるということになります。ではどの程度が軽微なのか?ですが、これについては事案ごとに個別具体的に見ていくことになります。ですので、民法改正以降の判例(裁判結果)の集積により定まっていくことになるでしょう。
 なお、債務不履行による解約の解除についてはこちらで詳しく解説しておりますので、ご覧になって頂ければと思います。
(スマホでご覧の場合、次の記事へ進むには画面下左の前の記事をタップして下さい)
関連記事

コメント

非公開コメント

カテゴリ

サイト運営者

根本総合行政書士

Author:根本総合行政書士
東京都行政書士会所属
根本総合行政書士です。
宜しくお願いします。

保有資格:
行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

最新記事

スポンサーリンク

QRコード

QR

お問い合わせ

名前:
メール:
件名:
本文: