2021/05/19
【(動産の)契約解除の要件】債務不履行と相当の期間を定めた催告とは
▼この記事でわかること・契約の解除
・契約解除をするための要件
(上記クリックorタップでジャンプします)
今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。

契約の解除
契約が成立すると契約義務が発生します。(売買契約であれば、売主は「売った物を引き渡す義務」買主は「代金を支払う義務」など)
そして、その義務(債務)を履行しないと、すなわち、その約束を果たさないと債務不履行に陥り、損害賠償請求権が発生します。
では、一度結んだ契約の解除はできるのでしょうか?
まずはこちらの事例をご覧ください。
事例
AとBはギターの売買契約を締結した。しかし、Aは約束の期日が来ても一向にギターを引き渡そうとしない。
この事例で問題になっているのは、売主のAがいつまで経ってもギターの引渡しを行わない(ギターを買主のBによこさない)ことです。
売買契約
売主A ― 買主B
Aがギターを引き渡さない...
(債務を履行しない)
要するに、Aが約束を果たしてくれない、すなわち、Aがその債務を履行しないのです。
Bとしては、それならそれでこの契約はナシにして、他の売主・ギターを探したいですよね。
損害賠償の請求という手もありますが、それも要件を満たしていなければできないし、正直メンドクサイですよね。
そこで、Aとしては「この契約は解除できないか?」となります。
民法の規定はこちらです。
(催告による解除)
541条
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
上記、民法541条の条文に基づいて、Aは契約の解除ができます。
しかし!それをするためには要件があります。
法律って何かと要件要件うるさいな!という声が聞こえてきそうです(笑)。
ですが、法律上の請求をするときは常に
「誰が、誰に対して、どのような要件を満たしたときに、どんな請求ができるか」
を考えなければなりません。
これはとても大事なことなのでしっかり覚えておいてください。

ちなみに、行政書士試験の記述問題では、まさにこのことが問われます。
もちろん通常の択一問題を解く上でも大事ですし、宅建試験や公務員試験の民法を解く上でも大事なことです。
さらに申しますと、現実にトラブルが起こって誰かに何かの請求をするときの原則にもなります。
繰り返しますが、
「誰が、誰に対して、どのような要件を満たしたときに、どんな請求ができるか」
このことは是非、覚えておいていただければと存じます。
契約解除をするための要件
話を戻します。
契約の解除をするためには、原則、次の要件を満たす必要があります。
1・債務不履行の存在
2・相当の期間を定めて催告をすること
原則、上記の要件を満たしたときに、初めて契約の解除ができます。
1は簡単ですよね。契約の解除をする理由となる債務不履行(約束を果たさないこと)の存在です。
2の催告とは、最後通告のことです。通常は「期日までに履行をしなければ、解除する」というような文言を入れた文書を、内容証明郵便という形で送ります。
以上のことを踏まえて、今回の事例でAが契約を解除するためには
1・Bの債務不履行があり
2・相当の期間を定めて催告した上で(「〇年〇月〇日までに履行しなければ、解除する」旨の内容証明郵便を送った上で)
行うことになります。
もし、このような手順を踏まえないで、Bが契約の解除をしようすると「テメー、約束を破るのか!」と、逆にAから攻められてしまいます。 法律的にも、Bの方が約束を破ったことになってしまいます。
ですので、上記の要件と手順はしっかり覚えておいてください。
なお、催告をせずに解除できる場合もあります。(無催告解除)
民法は次のように規定しています。
(催告によらない解除)
民法542条
1項 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
一 債務の全部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
2項 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。
一 債務の一部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
上記、民法542条条文1項一~五号、2項一~二号の規定に該当する場合は、債権者は債務者に催告することなく解除することが可能です。
大雑把に言えば、無催告解除は、契約をした目的が達せられないときに認められます。
それ以外の場合には、債務の不履行が軽微でないときに催告解除が認められる、というふうなイメージで捉えると理解しやすいのではないでしょうか。
というわけで、今回は以上になります。
宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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