2021/07/25
【時・とき】【無効・取消し】その違いとは?
▼この記事でわかること・「時」と「とき」の違い
・「無効」と「取消し」の違い
・無効についてさらに詳しく
・取消しについてさらに詳しく
(上記クリックorタップでジャンプします)
今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。

「時」と「とき」、「無効」と「取消し」
ここでは、当サイトでも頻繁に登場する「時」と「とき」そして「無効」と「取消し」について、法律ならではの言葉の使い方・使い分けとその意味を、わかりやすく簡単に解説します。
「時」と「とき」の違い
法学部出身の方や法務に携わる方などにとってはとても基本的な事になると思いますが、そうでない方にとっては馴染みのない、法律の世界ならではの言葉の使い分けというものがございます。
そのひとつが「時」と「とき」です。
実はこの「時」と「とき」は、法律の世界では使い分けされています。
では一体どのように使い分けされているのでしょう。
まず「時」ですが、これは「時点」という意味です。
バッターが構えた「時」、ピッチャーがボールを投げた「時」というような感じです。
それに対して「とき」は「場合」あるいは「シチュエーション」というような意味です。
ツーアウト満塁の「とき」、ツーストライクスリーボールの「とき」というような感じです。
野球がわからない方もいらっしゃると思いますので、恋愛に例えてみましょう。手を繋いだ「時」、映画館デートに行った「とき」というような感じです(笑)。
おわかりになりましたでしょうか。
この「時」と「とき」の使い分けを知った上で法律の文章を読むと、法解釈が今までと少し違ってくるかもしれません。
「無効」と「取消し」の違い
無効という言葉も、当サイトで何度も登場しています。無効という言葉自体の問題も特にないと思います。
では、無効と取消しの違いは、おわかりになりますでしょうか。
法律の世界では、無効と取消しは、区別されて使われています。
それでは、ひとつひとつ、解説して参ります。
まず無効ですが、民法上の無効とは「始めから成立すらしていない」という意味です。
ですので、その契約は無効だといったら、そもそもその契約は、始めから何の形も成していない、という事です。
繰り返しますが、無効のものは、そもそも成立すらしていませんので、始めから何の形も成していないんです。ですので、無効の契約というのは、始めから成り立っていない契約なのです。無効のものは、始めから終わりまでゼロです。
まずここを覚えておいてください。
一方、取消しは「一度有効になったものをナシにする」という意味です。
この「一度有効になった」というところがポイントです。無効の場合は、始めからそもそも成立すらしていないのですが、取消しの場合は、一度有効になったものが、何らかの理由により取り消されてゼロになるだけです。
取り消されて初めてナシになるということは、取り消されない限りは有効に成立します。
無効についてさらに詳しく

ここまでの解説だけでも、おわかりになるかもしれませんが、念のため、もう少し噛み砕いた解説もいたします。
無効な契約は、最初から成り立っていません。成り立っているように見えるだけで、実態のない契約です。つまり、無効の契約というのは「契約というカゴの中に何も入っていない契約」という事になります。カラッぽの契約という事です。
具体例を挙げると、強迫で結ばされた契約が、まさにこれです。強迫によって強引に結ばされた契約は無効な契約です。そんな契約はそもそも法的に成立しません。もし、そうした形で結んだ契約でモメているのなら、そもそもその契約は成立すらしていませんのでご注意ください。
繰り返しますが、無効の契約は「契約というカゴの中に何も入っていない」というイメージで覚えておいてください。
取消しについてさらに詳しく
取り消せる契約というのは、取り消されるまでは有効に成立しています。
取り消さなければ、普通に契約として存続します。つまり、「契約というカゴの中に一応モノが入っている契約」になります。
具体例を挙げると、詐欺による契約がこれになります。
詐欺で結ばされた契約は、実は取り消すまでは有効な契約なんです。なぜ世の中から詐欺がなくならないのか、これでわかりますよね。実は民法上そのようになっているのです。
あと、細かい話ですが、取消しと書いた場合は名詞で、取り消しと書いた場合は動詞になります。
無効と取消しの違い、おわかりになりましたでしょうか。
無効と取消しという言葉は、民法の学習をするかぎり避けて通れませんので、ここでの話を覚えておいていただければと存じます。
他にも、法律ならではの言葉の使い分けは色々ございますが、今回はここで締めます。
今後もこのような法律用語解説は、必要となり次第行って参ります。
なお、「強迫」についての詳しい解説は「【強迫の超基本】善意の第三者が現れようが強迫の契約は無効」を、「詐欺」について詳しい解説は「【詐欺の超基本】善意&悪意の第三者って何?」をご覧ください。
というわけで、今回は以上になります。
宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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