【先取特権】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!

【先取特権】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!

【登場人物】
A:Cの会社の従業員
B:Aの同僚
C:AとBの勤める会社の経営者
D:Cの取引先の債権者



 AとBは、Cの会社で働いているが、2か月も給料が支払われていない。
 Cは、経営難で倒産寸前であることを隠している。
 Dは、Cに対する債権を回収するために、Cの会社に乗り込んできた。

D
「おい、C!お前に貸した金はどうなった?もう待ちくたびれたぞ!」

C
「すまない、D。今はちょっと厳しいんだ。もう少し待ってくれないか?」

D
「待ってくれないか?ふざけるな!お前は何度もそう言ってきたが、一向に返済する気配がないじゃないか!」

C
「本当に申し訳ない。でも、今売り上げが上がりそうな案件があって、それが成功すればすぐに返せるんだ」

D
「そんな嘘をつくな!お前の会社はもうダメだろう!このままじゃ、俺もろとも倒産するぞ!」

C
「そんなことはない。信じてくれ。もう少しだけ時間をくれ」

D
「時間をくれだと?もう限界だ!お前の会社にある動産を差し押さえるぞ!俺は先取特権を持ってるんだからな!」

 そんな二人のやり取りを見ていたAとB。

A
「なあオイ。先取特権ってなに?」

B
「先取特権っていうのは、一定の類型に属する債権を有する者に付与される法定担保権のことだよ。債務者の財産について他の債権者に先立って自分の債権の弁済を受ける権利があるんだ」

A
「へえ、そうなんだ。でも、どうしてDさんが先取特権を持ってるの?」

B
「Dさんは、うちの会社に商品を売ったり賃貸したりしたんだろう。その場合は、動産の先取特権が発生するんだよ。民法第311条に書いてあるよ」

A
「じゃあ、Dさんは、うちの会社にある商品や賃貸物件を差し押さえられるってこと?」

B
「そういうことだね。しかも、その動産を第三者に引き渡す前に差し押さえれば、その第三者に対しても先取特権を行使できるんだよ。民法第304条に書いてあるよ」

A
「すごいね。でも、それじゃあ、俺たち従業員はどうなるの?給料はもらえないの?」

B
「安心してよ。俺たち従業員も先取特権を持ってるんだよ。雇用関係から生じた債権については、一般の先取特権が発生するんだよ。民法第308条に書いてあるよ」

A
「一般の先取特権?それってなに?」

B
「一般の先取特権っていうのは、債務者の総財産を目的物とする先取特権のことだよ。総財産っていうのは、動産だけじゃなくて、不動産や債権なども含まれるんだよ。つまり、うちの会社にある全ての財産に対して、俺たちは優先弁済権を有するんだよ」

A
「そうなんだ。でも、Dさんも先取特権を持ってるんでしょ?Dさんと俺たちとでは、どっちが優先されるの?」

B
「それは、一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合においては、特別の先取特権が一般の先取特権に優先するっていう規定があるんだよ。民法第329条に書いてあるよ」

A
「そうなんだ。せめて給料くらいはもらいたいよね」

B
「そうだね。でも、先取特権があるからと言っても、自分で行動しないと意味がないんだよ。先取特権は自動的に発生するけど、自動的に実行されるわけじゃないんだ。俺たちは自分で手続をしないといけないんだ」

A
「そうなんだ。じゃあ、早く手続きを始めようよ」

B
そうしよう。社長には申し訳ないけど、俺たちも生活があるからね」

D
「お前ら!何を話してるんだ?早く仕事に戻れ!」

C
「やめてくれ、D!俺の会社を壊す気か!」

D
「お前が壊したんだろう!早く金を返せ!」

C
「助けてくれ!誰か!」




 以上、初学者向けにやさしく民法の先取特権についての簡単な物語をお送りいたしました。
 まずは民法の先取特権についてのイメージを掴んでいただければ幸いです。

 また、専門用語で難しく感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、ご安心ください。
 先取特権についてもっと詳しくわかりやすい解説は、
【先取特権】民法の原則を曲げる?/一般の先取特権/動産の先取特権/不動産の先取特権/第三取得者とは?わかりやすく解説!
 にございますので、よろしければご覧ください。

 以上になります。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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