
【登場人物】
田中:土地と建物の所有者で、銀行から抵当権付きで借金をしている。
鈴木:田中の建物を借りて住んでいる賃借人。
山田:銀行の担当者で、田中の借金の回収にあたっている。
佐藤:競売によって田中の土地を買受けた人物。
(シーン1:田中の家)
鈴木
「田中さん、こんにちは。今月分の家賃を持ってきました」
田中
「あ、鈴木さん、どうも。すみません、今ちょっと忙しいんですよ」
鈴木
「どうしたんですか?顔色が悪いですよ」
田中
「実はね、銀行から借りたお金が返せなくて、土地と建物が競売にかけられちゃったんだ」
鈴木
「えっ、マジですか?それは大変ですね。じゃあ、この家はどうなるんですか?」
田中
「わからないよ。競売が終わるまで待つしかないんだけど、もしかしたら引っ越さなきゃいけなくなるかもしれないよ」
鈴木
「そうなんですか。でも、この家は田中さんが建てたものじゃないですか。それを手放すなんて、悔しいですね」
田中
「そうだよ。でも、仕方ないよ。借金は返さなきゃいけないし、銀行には逆らえないしさ」
鈴木
「でも、もし競売で土地だけが売れて、建物は残ったらどうなるんですか?」
田中
「それは...わからないな。法律的にどうなるんだろう?」
(シーン2:銀行)
山田
「田中さんの土地と建物の競売は無事に終わりました。土地は佐藤さんが買受けることとなり、建物には入札者がいませんでした」
佐藤
「そうですか。では、私は土地だけを所有することになるのですね」
山田
「はい、そうです。ただし、建物については注意が必要です」
佐藤
「注意というと?」
山田
「建物には法定地上権が発生しています。これは民法第388条によるもので、抵当権設定時に土地と建物が同一所有者に属していた場合に、抵当権実行によって所有者を異にするときに当該建物に成立する地上権です」
佐藤
「地上権というと?」
山田
「地上権というのは、他人の土地上に自己の所有する建物を設置することができる権利です。つまり、この場合は田中さんが引き続き建物を所有し、その使用・処分・管理をすることができるということです」
佐藤
「えっ、それってどういうことですか?私は土地を買ったのに、その上の建物は他人のものなんですか?」
山田
「はい、そういうことです。法定地上権は法律上当然に生じるものなので、特約によって排除することはできません 。佐藤さんは土地の所有者として、建物の所有者である田中さんに対して地代を請求することができますが、自分で使用することはできません 」
佐藤
「それは困りますね。私はこの土地に自分の家を建てたいと思っていたのですが」
山田
「それは申し訳ありませんが、無理ですね。田中さんが自分から建物を取り壊すか、あるいは佐藤さんに売却するかしない限り、法定地上権は消滅しません 。佐藤さんは競売に参加する前に、土地と建物の関係をよく調べるべきでしたね」
佐藤
「そうですね。私は競売の仕組みをよくわかっていなかったのです。これからは気をつけます。でも、田中さんも大変ですね。借金を返すために土地を失ったのに、建物だけ残ってもしょうがないですよね」
山田
「そうですね。法定地上権の制度は、建物の保護を目的としていますが、実際には当事者双方に不利益をもたらすこともあります 。この制度は改めるべきだという意見もありますが、なかなか難しい問題ですね」
佐藤
「そうですね。私もこの制度についてもっと勉強しておくべきでした。山田さん、ありがとうございました」
以上、初学者向けにやさしく民法の法定地上権についての簡単な物語をお送りいたしました。
まずは民法の法定地上権についてのイメージを掴んでいただければ幸いです。
また、専門用語で難しく感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、ご安心ください。
法定地上権についてもっと詳しくわかりやすい解説は、
⇒【法定地上権の超基本】4つの成立要件/法定地上権が成立しない共同担保のケースとは?わかりやすく解説!
にございますので、よろしければご覧ください。
以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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田中:土地と建物の所有者で、銀行から抵当権付きで借金をしている。
鈴木:田中の建物を借りて住んでいる賃借人。
山田:銀行の担当者で、田中の借金の回収にあたっている。
佐藤:競売によって田中の土地を買受けた人物。
(シーン1:田中の家)
鈴木
「田中さん、こんにちは。今月分の家賃を持ってきました」
田中
「あ、鈴木さん、どうも。すみません、今ちょっと忙しいんですよ」
鈴木
「どうしたんですか?顔色が悪いですよ」
田中
「実はね、銀行から借りたお金が返せなくて、土地と建物が競売にかけられちゃったんだ」
鈴木
「えっ、マジですか?それは大変ですね。じゃあ、この家はどうなるんですか?」
田中
「わからないよ。競売が終わるまで待つしかないんだけど、もしかしたら引っ越さなきゃいけなくなるかもしれないよ」
鈴木
「そうなんですか。でも、この家は田中さんが建てたものじゃないですか。それを手放すなんて、悔しいですね」
田中
「そうだよ。でも、仕方ないよ。借金は返さなきゃいけないし、銀行には逆らえないしさ」
鈴木
「でも、もし競売で土地だけが売れて、建物は残ったらどうなるんですか?」
田中
「それは...わからないな。法律的にどうなるんだろう?」
(シーン2:銀行)
山田
「田中さんの土地と建物の競売は無事に終わりました。土地は佐藤さんが買受けることとなり、建物には入札者がいませんでした」
佐藤
「そうですか。では、私は土地だけを所有することになるのですね」
山田
「はい、そうです。ただし、建物については注意が必要です」
佐藤
「注意というと?」
山田
「建物には法定地上権が発生しています。これは民法第388条によるもので、抵当権設定時に土地と建物が同一所有者に属していた場合に、抵当権実行によって所有者を異にするときに当該建物に成立する地上権です」
佐藤
「地上権というと?」
山田
「地上権というのは、他人の土地上に自己の所有する建物を設置することができる権利です。つまり、この場合は田中さんが引き続き建物を所有し、その使用・処分・管理をすることができるということです」
佐藤
「えっ、それってどういうことですか?私は土地を買ったのに、その上の建物は他人のものなんですか?」
山田
「はい、そういうことです。法定地上権は法律上当然に生じるものなので、特約によって排除することはできません 。佐藤さんは土地の所有者として、建物の所有者である田中さんに対して地代を請求することができますが、自分で使用することはできません 」
佐藤
「それは困りますね。私はこの土地に自分の家を建てたいと思っていたのですが」
山田
「それは申し訳ありませんが、無理ですね。田中さんが自分から建物を取り壊すか、あるいは佐藤さんに売却するかしない限り、法定地上権は消滅しません 。佐藤さんは競売に参加する前に、土地と建物の関係をよく調べるべきでしたね」
佐藤
「そうですね。私は競売の仕組みをよくわかっていなかったのです。これからは気をつけます。でも、田中さんも大変ですね。借金を返すために土地を失ったのに、建物だけ残ってもしょうがないですよね」
山田
「そうですね。法定地上権の制度は、建物の保護を目的としていますが、実際には当事者双方に不利益をもたらすこともあります 。この制度は改めるべきだという意見もありますが、なかなか難しい問題ですね」
佐藤
「そうですね。私もこの制度についてもっと勉強しておくべきでした。山田さん、ありがとうございました」
以上、初学者向けにやさしく民法の法定地上権についての簡単な物語をお送りいたしました。
まずは民法の法定地上権についてのイメージを掴んでいただければ幸いです。
また、専門用語で難しく感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、ご安心ください。
法定地上権についてもっと詳しくわかりやすい解説は、
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