
【通行地役権】
Aさん:山の中にある別荘の所有者
Bさん:Aさんの別荘に隣接する土地の所有者
Cさん:Aさんの別荘に通じる唯一の道路を所有する土地の所有者
Dさん:Aさんの友人
Eさん:不動産登記の専門家
【シーン1】Aさんの別荘
Aさん
「Dさん、久しぶりに別荘に来てくれてありがとう。ここは自然が豊かで、都会の喧騒を忘れられるんだ」
Dさん
「いやいや、こちらこそお誘いいただいてありがとうございます。ここは本当に素敵なところですね。でも、ここに来るまでの道がちょっと大変でしたね」
Aさん
「そうなんですよ。この別荘は公道から離れていて、Cさんという人が所有する土地を通らないと行けないんです。その土地には道路があるんですが、Cさんは私たちに通行料を払わせるんですよ」
Dさん
「えっ、それって法律的に大丈夫なんですか?」
Aさん
「実は、私はこの別荘を買ったときに、Cさんと通行地役権というものを契約したんです。それによって、私はCさんの土地を通行することができる権利を得た代わりに、毎月一定額の通行料を支払うことになったんです」
Dさん
「なるほど。通行地役権というのは、他人の土地を通行する権利のことなんですね」
Aさん
「そうです。通行地役権は、民法第280条に規定されている地役権という物権の一種です。地役権とは、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利です。通行以外にも、送電線や用水路などを設置するためにも設定できます」
Dさん
「へえ、面白いですね。でも、通行料を支払う必要があるのはちょっと不便ではありませんか?」
Aさん
「確かにそうですね。でも、Cさんと契約したときは、あまり気にしなかったんですよ。でも、最近になって通行料もバカにならなくなってきました」
Dさん
「そうなんですか。それは大変ですね。でも、通行地役権は契約で設定されるものだから、Cさんと話し合って契約内容を変更したり解除したりできないんですか?」
Aさん
「そうしたいんですけどね。でも、Cさんは全然話し合いに応じてくれないんですよ。私が契約を変更したり解除したりしようとすると、「契約は契約だから守れ」と言って聞かないんです」
Dさん
「それは困りましたね。じゃあ、他に何か方法はないんですか?」
【シーン2】Eさんの事務所
Eさん
「こんにちは。私は不動産の専門家です。今日は通行地役権についてご相談ですね」
Aさん
「はい。私は山の中にある別荘を所有しているのですが、その別荘に通じる唯一の道路がCさんという人の土地にあります。私はCさんと通行地役権を契約しているのですが、毎月高額な通行料を支払わなければならなくて、困っています」
Eさん
「そうですか。それは大変ですね。では、Cさんと契約内容を変更したり解除したりすることはできませんか?」
Aさん
「できないんです。Cさんは話し合いに応じてくれないんですよ」
Eさん
「そうなんですか。それでは、通行地役権の契約書を見せていただけますか?」
Aさん
「はい、こちらです」
Eさん
「(契約書を見ながら)なるほど。この契約書によると、通行地役権は期間を定めずに設定されていますね。つまり、永久に通行料を支払わなければならないということですね」
Aさん
「えっ、そうなんですか?それは知りませんでした」
Eさん
「通行地役権は契約で自由に内容を決めることができますが、その分、契約書の内容に注意しなければなりません。この契約書では、通行料の金額や支払い方法も明記されていますが、契約の変更や解除に関する条項はありませんね」
Aさん
「そうなんです。私はこの別荘を買ったときに、Cさんからこの契約書を渡されて、そのままサインしたんです。内容をよく見ていなかったのが悪かったんですね」
Eさん
「あと、この契約書には、通行地役権の対象となる道路の幅や位置が明確に示されていませんね。これでは、登記することができません」
Aさん
「登記することができないということは、どういうことですか?」
Eさん
「通行地役権は物権ですから、不動産登記法によって登記する必要があります。登記することで、第三者に対しても通行地役権を主張することができます。しかし、登記するためには、通行地役権の内容や対象物件を特定できる必要があります。この契約書では、道路の幅や位置が不明確ですから、登記することができないのです」
Aさん
「そうなんですか。でも、登記しなくても、Cさんと私の間では通行地役権が成立しているわけですよね」
Eさん
「そうですね。登記しなくても、当事者間では通行地役権が有効です。しかし、登記しない場合には、一つ注意しなければならないことがあります」
Aさん
「何でしょうか?」
Eさん
「それは、Cさんがその土地を他人に売却したり贈与したりした場合です。その場合には、通行地役権が消滅する可能性があります」
Aさん
「えっ、消滅するんですか?それは困りますね」
Eさん
「そうなんです。登記しない通行地役権は、第三者に対して効力を発揮しません。つまり、Cさんがその土地を他人に譲渡した場合には、その他人は通行地役権を無視して、道路を閉鎖したり改造したりすることができるのです」
Aさん
「それはまずいですね。では、私はどうすればいいんでしょうか」
Eさん
「一つの方法は、Cさんに登記することを求めることです。登記することで、通行地役権が第三者に対しても保護されるようになります。しかし、Cさんが登記に応じない場合には、裁判所に登記の強制執行を申し立てる必要があります。それには時間や費用がかかりますし、証拠も必要です」
Aさん
「そうなんですか。それは大変そうですね」
Eさん
「もう一つの方法は、Cさんの土地を買い取ることです。Cさんが売りたいという気持ちがあれば、交渉してみる価値はあります。そうすれば、通行料を支払う必要もなくなりますし、道路の管理も自由にできるようになります」
Aさん
「そうですね。でも、Cさんの土地の価格は高そうですね」
Eさん
「それは確かにそうですね。でも、もしCさんの土地を買えなくても、Bさんという人の土地を買える可能性はありませんか?Bさんという人は、あなたの別荘に隣接する土地の所有者だったと思いますが」
Aさん
「そうですね。Bさんの土地なら、公道に接していますから、Cさんの土地を通らなくても別荘に行けるようになりますね」
Eさん
「そうです。Bさんの土地を買えば、通行地役権の問題から解放されますし、別荘の敷地も広くなりますね」
Aさん
「確かにそうですね。では、Bさんに交渉してみようと思います」
Eさん
「それが良いと思います。もしBさんが売りたいという気持ちがあれば、不動産登記法に従って売買契約を結んでください。そして、不動産登記所に移転登記を申請してください。私はその手続きをお手伝いしますよ」
Aさん
「ありがとうございます。助かります」
以上、初学者向けにやさしく民法の通行地役権についての簡単な物語をお送りいたしました。
まずは民法の通行地役権についてのイメージを掴んでいただければ幸いです。
また、専門用語で難しく感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、ご安心ください。
通行地役権についてもっと詳しくわかりやすい解説は、
⇒【地役権】その性質とは/地役権の登記と放棄/未登記でも対抗できる場合/永小作権を初学者にもわかりやすく解説!
にございますので、よろしければご覧ください。
以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございます。
⇒⇒⇒アガルートアカデミーで宅建試験・行政書士試験・公務員試験の合格講座を探す!
Aさん:山の中にある別荘の所有者
Bさん:Aさんの別荘に隣接する土地の所有者
Cさん:Aさんの別荘に通じる唯一の道路を所有する土地の所有者
Dさん:Aさんの友人
Eさん:不動産登記の専門家
【シーン1】Aさんの別荘
Aさん
「Dさん、久しぶりに別荘に来てくれてありがとう。ここは自然が豊かで、都会の喧騒を忘れられるんだ」
Dさん
「いやいや、こちらこそお誘いいただいてありがとうございます。ここは本当に素敵なところですね。でも、ここに来るまでの道がちょっと大変でしたね」
Aさん
「そうなんですよ。この別荘は公道から離れていて、Cさんという人が所有する土地を通らないと行けないんです。その土地には道路があるんですが、Cさんは私たちに通行料を払わせるんですよ」
Dさん
「えっ、それって法律的に大丈夫なんですか?」
Aさん
「実は、私はこの別荘を買ったときに、Cさんと通行地役権というものを契約したんです。それによって、私はCさんの土地を通行することができる権利を得た代わりに、毎月一定額の通行料を支払うことになったんです」
Dさん
「なるほど。通行地役権というのは、他人の土地を通行する権利のことなんですね」
Aさん
「そうです。通行地役権は、民法第280条に規定されている地役権という物権の一種です。地役権とは、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利です。通行以外にも、送電線や用水路などを設置するためにも設定できます」
Dさん
「へえ、面白いですね。でも、通行料を支払う必要があるのはちょっと不便ではありませんか?」
Aさん
「確かにそうですね。でも、Cさんと契約したときは、あまり気にしなかったんですよ。でも、最近になって通行料もバカにならなくなってきました」
Dさん
「そうなんですか。それは大変ですね。でも、通行地役権は契約で設定されるものだから、Cさんと話し合って契約内容を変更したり解除したりできないんですか?」
Aさん
「そうしたいんですけどね。でも、Cさんは全然話し合いに応じてくれないんですよ。私が契約を変更したり解除したりしようとすると、「契約は契約だから守れ」と言って聞かないんです」
Dさん
「それは困りましたね。じゃあ、他に何か方法はないんですか?」
【シーン2】Eさんの事務所
Eさん
「こんにちは。私は不動産の専門家です。今日は通行地役権についてご相談ですね」
Aさん
「はい。私は山の中にある別荘を所有しているのですが、その別荘に通じる唯一の道路がCさんという人の土地にあります。私はCさんと通行地役権を契約しているのですが、毎月高額な通行料を支払わなければならなくて、困っています」
Eさん
「そうですか。それは大変ですね。では、Cさんと契約内容を変更したり解除したりすることはできませんか?」
Aさん
「できないんです。Cさんは話し合いに応じてくれないんですよ」
Eさん
「そうなんですか。それでは、通行地役権の契約書を見せていただけますか?」
Aさん
「はい、こちらです」
Eさん
「(契約書を見ながら)なるほど。この契約書によると、通行地役権は期間を定めずに設定されていますね。つまり、永久に通行料を支払わなければならないということですね」
Aさん
「えっ、そうなんですか?それは知りませんでした」
Eさん
「通行地役権は契約で自由に内容を決めることができますが、その分、契約書の内容に注意しなければなりません。この契約書では、通行料の金額や支払い方法も明記されていますが、契約の変更や解除に関する条項はありませんね」
Aさん
「そうなんです。私はこの別荘を買ったときに、Cさんからこの契約書を渡されて、そのままサインしたんです。内容をよく見ていなかったのが悪かったんですね」
Eさん
「あと、この契約書には、通行地役権の対象となる道路の幅や位置が明確に示されていませんね。これでは、登記することができません」
Aさん
「登記することができないということは、どういうことですか?」
Eさん
「通行地役権は物権ですから、不動産登記法によって登記する必要があります。登記することで、第三者に対しても通行地役権を主張することができます。しかし、登記するためには、通行地役権の内容や対象物件を特定できる必要があります。この契約書では、道路の幅や位置が不明確ですから、登記することができないのです」
Aさん
「そうなんですか。でも、登記しなくても、Cさんと私の間では通行地役権が成立しているわけですよね」
Eさん
「そうですね。登記しなくても、当事者間では通行地役権が有効です。しかし、登記しない場合には、一つ注意しなければならないことがあります」
Aさん
「何でしょうか?」
Eさん
「それは、Cさんがその土地を他人に売却したり贈与したりした場合です。その場合には、通行地役権が消滅する可能性があります」
Aさん
「えっ、消滅するんですか?それは困りますね」
Eさん
「そうなんです。登記しない通行地役権は、第三者に対して効力を発揮しません。つまり、Cさんがその土地を他人に譲渡した場合には、その他人は通行地役権を無視して、道路を閉鎖したり改造したりすることができるのです」
Aさん
「それはまずいですね。では、私はどうすればいいんでしょうか」
Eさん
「一つの方法は、Cさんに登記することを求めることです。登記することで、通行地役権が第三者に対しても保護されるようになります。しかし、Cさんが登記に応じない場合には、裁判所に登記の強制執行を申し立てる必要があります。それには時間や費用がかかりますし、証拠も必要です」
Aさん
「そうなんですか。それは大変そうですね」
Eさん
「もう一つの方法は、Cさんの土地を買い取ることです。Cさんが売りたいという気持ちがあれば、交渉してみる価値はあります。そうすれば、通行料を支払う必要もなくなりますし、道路の管理も自由にできるようになります」
Aさん
「そうですね。でも、Cさんの土地の価格は高そうですね」
Eさん
「それは確かにそうですね。でも、もしCさんの土地を買えなくても、Bさんという人の土地を買える可能性はありませんか?Bさんという人は、あなたの別荘に隣接する土地の所有者だったと思いますが」
Aさん
「そうですね。Bさんの土地なら、公道に接していますから、Cさんの土地を通らなくても別荘に行けるようになりますね」
Eさん
「そうです。Bさんの土地を買えば、通行地役権の問題から解放されますし、別荘の敷地も広くなりますね」
Aさん
「確かにそうですね。では、Bさんに交渉してみようと思います」
Eさん
「それが良いと思います。もしBさんが売りたいという気持ちがあれば、不動産登記法に従って売買契約を結んでください。そして、不動産登記所に移転登記を申請してください。私はその手続きをお手伝いしますよ」
Aさん
「ありがとうございます。助かります」
以上、初学者向けにやさしく民法の通行地役権についての簡単な物語をお送りいたしました。
まずは民法の通行地役権についてのイメージを掴んでいただければ幸いです。
また、専門用語で難しく感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、ご安心ください。
通行地役権についてもっと詳しくわかりやすい解説は、
⇒【地役権】その性質とは/地役権の登記と放棄/未登記でも対抗できる場合/永小作権を初学者にもわかりやすく解説!
にございますので、よろしければご覧ください。
以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございます。
- 関連記事
-
-
【表見代理】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【復代理】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【動産の物権変動】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【即時取得】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【指図による占有移転】を初学者向けにやさしくファンタジーで解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【不動産の二重譲渡】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【不動産登記と時効】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【通行地役権】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【抵当権】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【根抵当権】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【法定地上権】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【留置権】を初学者向けにやさしくファンタジーで解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【質権】を初学者向けにやさしくファンタジーで解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【先取特権】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【譲渡担保】を初学者向けにやさしくファンタジーで解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-