【不動産登記と時効】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!

【不動産登記と時効】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!

【登場人物】
・不動産を時効取得しようとする夫婦(太郎と花子)
・元の所有者(一郎)
・第三者の買主(二郎)



太郎
「花子、この土地はもう私たちのものだよ。時効で所有権を取得したんだから」

花子
「本当?でも、登記はまだしてないでしょ。大丈夫なの?」

太郎
「大丈夫だよ。この土地は20年前に一郎さんから買ったんだけど、代金を払って引き渡しも受けたのに、登記はしなかったんだ。でも、その後ずっとこの土地を使ってきたし、誰からも何も言われなかったから、時効が成立したんだよ」

花子
「時効って何年で成立するの?」

太郎
「民法162条によると、20年間、所有の意思をもって、平穏にかつ公然と他人の物を占有したら、その所有権を取得できるんだって。私たちはその条件を満たしてるからね」

花子
「じゃあ、早く登記しないとね。時効による所有権の取得を第三者に対抗するためには、登記が必要なんでしょ」

太郎
「そうだね。でも、今すぐにはできないんだ。時効による所有権の取得を主張するためには、援用という手続きが必要なんだって。援用というのは、時効の利益を享受する意思表示のことで、内容証明郵便で一郎さんに送らないといけないんだ」

花子
「そうなんだ。じゃあ、早く援用してね」

太郎
「うん。今日中にやるよ」

 一方、一郎は経済的に困窮しており、太郎に売却した代金もとっくに使い果たしてしまっていた。
 そこで、太郎が登記をしていないこと(つまり登記上の所有者は一郎のまま)を知っている二郎に対して、同じ土地を売却しようと考えていた。

一郎
「二郎さん、この土地を売ります。安くしますから」

二郎
「本当ですか?でも、この土地は20年前に太郎さんに売ったんじゃないですか?」

一郎
「そうなんですが、太郎さんは登記をしていませんでした。だから、私がまだ所有者です。私が売却して登記すれば、あなたが新しい所有者になれますよ」

二郎
「それはちょっと怖いですね。太郎さんが時効で所有権を取得したらどうしますか?」

一郎
「大丈夫ですよ。時効は援用しないと効力がありませんから。太郎さんは援用しないでしょう」

二郎
「それでも心配ですね。万が一裁判になったらどうしますか?」

一郎
「裁判になっても勝てますよ。時効完成後に現れた第三者(あなた)に対しては、時効取得者(太郎さん)は登記しないと所有権の取得を対抗できないんです。私が売却して登記すれば、あなたが優先的に所有権を取得できるんですよ」

二郎
「そうなんですか。それなら安心ですね。じゃあ、買いますよ。いくらですか?」

一郎
「5000万円でどうですか?」

二郎
「それは安いですね。じゃあ、契約しましょう」

 こうして、一郎と二郎は売買契約を結び、登記を移した。
 しかし、その直後に太郎から一郎へ内容証明郵便が届く。
 後日、二人は対面する。

太郎
「一郎さん、その内容証明郵便ですが」

一郎
「これは時効の援用ですね。太郎さんはこの土地の所有権を時効で取得したと主張していますね」

太郎
「そうですよ。私は20年間、この土地を占有してきましたからね。時効が成立していますよ」

一郎
「でも、私はこの土地を二郎さんに売りました。登記も済ませましたよ」

太郎
「えっ!?それはだめですよ。私が時効で所有権を取得したんですから。あなたは売れませんよ」

一郎
「いやいや、時効は援用しないと効力がありませんから。私は時効援用前に売却したのです。そして登記を備えた二郎さんこそが所有者です」

太郎
「それは違いますよ。時効の起算点は占有を開始した時点に固定されますからね。私が占有を開始した時点では、二郎さんはまだ現れていませんでしたからね。だから、私は登記しなくても、二郎さんに対して時効による所有権の取得を対抗できますよ」

一郎
「そんなことありませんよ。時効完成後に現れた第三者(二郎さん)に対しては、時効取得者(太郎さん)は登記しないと所有権の取得を対抗できないんですよ。私が売却して登記すれば、二郎さんが優先的に所有権を取得できるんですよ」

太郎
「そうじゃないですよ。二郎さんは背信的悪意者ですよ。二郎さんはこの土地を買ったときに、私が長年この土地を占有している事実を知っていましたよね。それなのに、私が登記していないことを利用して、この土地を買おうとしたんですよね。それは信義に反する行為ですよ」

一郎
「そんなことありませんよ。二郎さんは正当な買主ですよ。私も正当な売主ですよ」

太郎
「違いますよ。私が正当な所有者ですよ」




 以上、初学者向けにやさしく民法の不動産登記と時効についての簡単な物語をお送りいたしました。
 まずは民法の不動産登記と時効についてのイメージを掴んでいただければ幸いです。

 また、専門用語で難しく感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、ご安心ください。
 不動産登記と時効についてもっと詳しくわかりやすい解説は、
【時効取得と登記】所有権争い~時効完成前後に現る第三者/さらに二重譲渡と抵当権が絡んだ場合をわかりやすく解説!
 にございますので、よろしければご覧ください。

 以上になります。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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