
【登場人物】
鈴木:財布を購入した第三者
佐藤:鈴木の友人
【物語のあらまし】
田中太郎は、電車に乗っているときに財布を盗まれる。
犯人は、中身を抜いた財布を、街で声をかけた鈴木に売りつける。
鈴木は、財布を購入しそのまま占有する。
佐藤は、鈴木の新しい財布に興味を持ち、話を聞くが、財布には一枚のカードが残っていた。
鈴木
「ねえ、その財布新しくしたの?」
佐藤
「うん、さっきそこで買ったんだ」
鈴木
「えっ、そこで?」
佐藤
「あそこにいた男からさ。」
鈴木
「あそこにいた男って、あの怪しげなやつ?」
佐藤
「そうそう。あの人が持っていたんだけど、すごく気に入っちゃって」
鈴木
「気に入ったからって、そんな人から買わないでしょフツーは。大丈夫なの?」
佐藤
「大丈夫だよ。ちゃんとお金払ったし。」
鈴木
「お金払ったからって、それが本当に彼のものだったとは限らないよ。もしかしたら盗品かもしれないじゃない」
佐藤
「盗品?そんなことないよ。彼は自分で買ったって言ってたし」
鈴木
「言ってたって、それが本当かどうかわからないでしょ。もし盗品だったら、君はどうするつもりなの?」
佐藤
「どうするって...何もしないよ。この財布はもう僕のものだから」
鈴木
「君のものだと?それはどういうこと?」
佐藤
「だってさ、民法192条によると、『取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する』とあるじゃない。僕は彼からこの財布を売ってもらったんだから、取引行為だよね。それに平穏に公然と占有してるし、善意で無過失だって言えるよ。だから、僕はこの財布の所有権を即時取得したんだよ」
鈴木
「そうかなあ...。即時取得って、そんなに簡単なものじゃないよ」
佐藤
「簡単じゃないって、どういうこと?」
鈴木「まず、善意で無過失だって言えるのかな。君は本当に彼がこの財布の権利者だと信じて買ったの?」
佐藤
「うん、信じたよ。」
鈴木
「でもさ、彼はすごく怪しげな感じだったよね。普通に考えたら、そんな人が持っている財布が本当に自分のものだとは思えないよ。君はそこに何か疑問を感じなかったの?」
佐藤
「いや、別に...」
鈴木
「別にじゃなくて、ちゃんと考えてよ。君は彼に対して不注意だったんじゃないの?それに、この財布には名前や住所が書いてあるカードが入ってるよ。これを見ても何も思わなかったの?」
佐藤
「えっ、カード?」
鈴木
「ほら、これ。田中太郎って書いてあるよ。これが本当の持ち主なんじゃないの?」
佐藤
「ええっ!?本当だ!これは......」
鈴木
「これは、君が即時取得したとは言えない証拠だよ。君は彼からこの財布を買ったときに、このカードを見落としてしまったんだね。それは明らかな過失(落ち度)だよ。
つまり、君は財布についての事情を知らなかったという意味で善意だけど、落ち度があったから無過失ではないんだ。
過失があるときは、即時取得は成立しないんだよ」
佐藤
「そうなの?」
鈴木
「そうなんだよ。だから、君はこの財布の所有権を取得していないんだよ。もし本当の持ち主が現れたら、君はこの財布を返さなきゃいけないんだよ」
佐藤
「えー!それは嫌だよ!僕はお金払ったんだから!」
鈴木
「お金払ったからって、それが正当な権利者から買ったとは限らないでしょ。君は彼から占有を移転されただけで、所有権を移転されていないんだよ。占有権と所有権は別物だからね」
佐藤
「でもさ、それって不公平じゃない?僕は何も悪くないのに、財布もお金も失うことになるんだよ?」
鈴木
「それは確かに不公平かもしれないけど、それが法律の定める結果なんだよ。君が不利益を被ることになっても、本当の権利者の権利を守ることが優先されるんだよ。君には落ち度もある。君は彼から買うときにもっと注意すべきだったんだよ」
佐藤
「うーん、そうかなぁ」
鈴木
「残念だけど仕方ないよ。君は財布の売主である彼に対して損害賠償を請求できるけど、それは別の話だよ。今はとにかく、この財布を返すべきだよ」
佐藤
「うーん、わかったよ。仕方ないなぁ」
鈴木
「そういうことだから、次からは気をつけてね。怪しげな人から物を買わないこと。そして、物を買うときはしっかりと権利の有無を確認すること」
佐藤
「うん、わかったよ。ありがとう」
以上、初学者向けにやさしく民法の即時取得についての簡単な物語をお送りいたしました。
まずは民法の即時取得についてのイメージを掴んでいただければ幸いです。
また、専門用語で難しく感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、ご安心ください。
即時取得についてもっと詳しくわかりやすい解説は、
⇒【動産の所有権(物権)】【即時取得】【簡易の引渡し&占有移転&占有改定】を初学者にもわかりやすく解説!
にございますので、よろしければご覧ください。
以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございます。
⇒⇒⇒アガルートアカデミーで宅建試験・行政書士試験・公務員試験の合格講座を探す!
鈴木:財布を購入した第三者
佐藤:鈴木の友人
【物語のあらまし】
田中太郎は、電車に乗っているときに財布を盗まれる。
犯人は、中身を抜いた財布を、街で声をかけた鈴木に売りつける。
鈴木は、財布を購入しそのまま占有する。
佐藤は、鈴木の新しい財布に興味を持ち、話を聞くが、財布には一枚のカードが残っていた。
鈴木
「ねえ、その財布新しくしたの?」
佐藤
「うん、さっきそこで買ったんだ」
鈴木
「えっ、そこで?」
佐藤
「あそこにいた男からさ。」
鈴木
「あそこにいた男って、あの怪しげなやつ?」
佐藤
「そうそう。あの人が持っていたんだけど、すごく気に入っちゃって」
鈴木
「気に入ったからって、そんな人から買わないでしょフツーは。大丈夫なの?」
佐藤
「大丈夫だよ。ちゃんとお金払ったし。」
鈴木
「お金払ったからって、それが本当に彼のものだったとは限らないよ。もしかしたら盗品かもしれないじゃない」
佐藤
「盗品?そんなことないよ。彼は自分で買ったって言ってたし」
鈴木
「言ってたって、それが本当かどうかわからないでしょ。もし盗品だったら、君はどうするつもりなの?」
佐藤
「どうするって...何もしないよ。この財布はもう僕のものだから」
鈴木
「君のものだと?それはどういうこと?」
佐藤
「だってさ、民法192条によると、『取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する』とあるじゃない。僕は彼からこの財布を売ってもらったんだから、取引行為だよね。それに平穏に公然と占有してるし、善意で無過失だって言えるよ。だから、僕はこの財布の所有権を即時取得したんだよ」
鈴木
「そうかなあ...。即時取得って、そんなに簡単なものじゃないよ」
佐藤
「簡単じゃないって、どういうこと?」
鈴木「まず、善意で無過失だって言えるのかな。君は本当に彼がこの財布の権利者だと信じて買ったの?」
佐藤
「うん、信じたよ。」
鈴木
「でもさ、彼はすごく怪しげな感じだったよね。普通に考えたら、そんな人が持っている財布が本当に自分のものだとは思えないよ。君はそこに何か疑問を感じなかったの?」
佐藤
「いや、別に...」
鈴木
「別にじゃなくて、ちゃんと考えてよ。君は彼に対して不注意だったんじゃないの?それに、この財布には名前や住所が書いてあるカードが入ってるよ。これを見ても何も思わなかったの?」
佐藤
「えっ、カード?」
鈴木
「ほら、これ。田中太郎って書いてあるよ。これが本当の持ち主なんじゃないの?」
佐藤
「ええっ!?本当だ!これは......」
鈴木
「これは、君が即時取得したとは言えない証拠だよ。君は彼からこの財布を買ったときに、このカードを見落としてしまったんだね。それは明らかな過失(落ち度)だよ。
つまり、君は財布についての事情を知らなかったという意味で善意だけど、落ち度があったから無過失ではないんだ。
過失があるときは、即時取得は成立しないんだよ」
佐藤
「そうなの?」
鈴木
「そうなんだよ。だから、君はこの財布の所有権を取得していないんだよ。もし本当の持ち主が現れたら、君はこの財布を返さなきゃいけないんだよ」
佐藤
「えー!それは嫌だよ!僕はお金払ったんだから!」
鈴木
「お金払ったからって、それが正当な権利者から買ったとは限らないでしょ。君は彼から占有を移転されただけで、所有権を移転されていないんだよ。占有権と所有権は別物だからね」
佐藤
「でもさ、それって不公平じゃない?僕は何も悪くないのに、財布もお金も失うことになるんだよ?」
鈴木
「それは確かに不公平かもしれないけど、それが法律の定める結果なんだよ。君が不利益を被ることになっても、本当の権利者の権利を守ることが優先されるんだよ。君には落ち度もある。君は彼から買うときにもっと注意すべきだったんだよ」
佐藤
「うーん、そうかなぁ」
鈴木
「残念だけど仕方ないよ。君は財布の売主である彼に対して損害賠償を請求できるけど、それは別の話だよ。今はとにかく、この財布を返すべきだよ」
佐藤
「うーん、わかったよ。仕方ないなぁ」
鈴木
「そういうことだから、次からは気をつけてね。怪しげな人から物を買わないこと。そして、物を買うときはしっかりと権利の有無を確認すること」
佐藤
「うん、わかったよ。ありがとう」
以上、初学者向けにやさしく民法の即時取得についての簡単な物語をお送りいたしました。
まずは民法の即時取得についてのイメージを掴んでいただければ幸いです。
また、専門用語で難しく感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、ご安心ください。
即時取得についてもっと詳しくわかりやすい解説は、
⇒【動産の所有権(物権)】【即時取得】【簡易の引渡し&占有移転&占有改定】を初学者にもわかりやすく解説!
にございますので、よろしければご覧ください。
以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございます。
- 関連記事
-
-
【制限行為能力者と同意と追認】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【占有】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【消滅時効】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【無権代理】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【表見代理】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【復代理】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【動産の物権変動】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【即時取得】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【指図による占有移転】を初学者向けにやさしくファンタジーで解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【不動産の二重譲渡】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【不動産登記と時効】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【通行地役権】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【抵当権】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【根抵当権】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-
【法定地上権】を初学者向けにやさしく物語で解説!初学者向け☆やさしい小説民法!
-