
【登場人物】
A:不動産会社の社長
B:Aの部下で営業担当
C:Bの友人で不動産購入希望者
D:Aの元部下でBと同じく営業担当だったが、先月退職した
BがCを連れてAの会社にやってきた。
AはBに対して、Dが退職した後も代理権を与えた旨を表示していなかったことを告げる。
A
「Bさん、ちょっと話があるんだけど」
B
「はい、社長。どうしました?」
A
「実は、Dさんが辞めた後も、彼に代理権を与えたままにしていたようなんだ」
B
「えっ?それってどういうことですか?」
A
「Dさんが辞める前に、ある物件の売買契約を結んでいたんだけど、その契約書には私の名前と印鑑が押されていたんだ。Dさんが私の代理人として契約したということになっている」
B
「でも、Dさんはもう辞めたんですよね?それなら問題ないんじゃないですか?」
A
「そういうわけにはいかないんだ。Dさんが辞めた後も、彼にはもう代理権がない旨を第三者に対して表示していなかったからね。つまり、Dさんはまだ私の代理人として行動できるという外観があるんだ」
B
「外観?それって何ですか?」
A
「表見代理っていうんだよ。無権代理行為について、本人に責任を負わせる制度だ。Dさんが私の代理人として契約した場合、その契約は私に対して有効になる可能性があるんだ」
B
「えー!それってめちゃくちゃじゃないですか!」
C
「すみません、ちょっと聞き耳を立ててしまったんですけど、私も不動産を買おうと思っていて、Bさんに相談してきたんです。でも、この話を聞くと心配になりますね。仮に、Dさんが私と契約したら、本当にAさんから物件を買えるんですか?」
A
「そうだね。それは状況によるけど、一応説明しておくよ。表見代理は3種類あってね。一つ目は、私が今言ったように、他人に代理権を与えた旨を表示した場合の表見代理だ。これは民法109条で規定されている。この場合は、相手方が善意無過失であれば、契約は有効になる可能性が高いよ」
C
「善意無過失っていうのは?」
A
「相手方がDさんが代理権を持っていると信じることに正当な理由があるということだ。例えば、Dさんが私の名刺や社印を持っていたり、私のメールアドレスや電話番号を使って連絡してきたりしたら、そういう理由になるかもしれないね」
C
「なるほど。でも、それってちょっと不公平じゃないですか?今は、AさんはDさんに代理権を与えていないのに、契約の責任を負わされるんですよね?」
A
「そう思うかもしれないけど、これは相手方の信頼を守るための制度だからね。相手方はDさんが私の代理人だと信じて契約したわけだから、その信頼を裏切るわけにはいかないんだ。もちろん、私はDさんに対して損害賠償を請求することはできるけどね」
C
「そういうことなんですね。じゃあ、他の2種類の表見代理はどういうものなんですか?」
A
「もう一つの表見代理は、Dさんが私の代理権の範囲を超えて契約した場合の表見代理だ。これは民法110条で規定されている。この場合は、相手方が善意無過失であれば、契約は有効になる可能性があるよ。ただし、相手方がDさんが権限外の行為をしたことを知っていたり、知らなくても知るべきだったりしたら、契約は無効になるよ」
C
「権限外の行為っていうのは?」
A
「例えば、私がDさんに代理権を与えたときに、物件の価格や条件について一定の範囲内でしか交渉できないという制限を付けたとするよ。でも、Dさんがその制限を無視して、相手方と契約したとするよ。それが権限外の行為だね」
C
「なるほど。でも、その制限を相手方はどうやって知るんですか?」
A
「それは難しい問題だね。一般的には、私がその制限を表示しなければならないんだけど、それができない場合もあるよね。例えば、Dさんが私に内密で契約したり、相手方がDさんにだけ信頼して契約したりしたら、私の表示は届かないかもしれないね。そういう場合は、相手方がDさんの行為に疑問を持つべき事情があったかどうかで判断されることになるよ」
C
「疑問を持つべき事情っていうのは?」
A
「例えば、物件の価格や条件が市場の相場と大きく乖離していたり、Dさんが契約書に不備や不審な点があると言って修正を求めたりしたら、そういう事情になるかもしれないね」
C
「そうですね。じゃあ、最後の一つの表見代理はどういうものなんですか?」
A
「最後の一つの表見代理は、Dさんが私の代理権を失った後に契約した場合の表見代理だ。これは民法112条で規定されている。この場合は、相手方が善意無過失であれば、契約は有効になる可能性があるよ。ただし、相手方がDさんが代理権を失ったことを知っていたり、知らなくても知るべきだったりしたら、契約は無効になるよ」
C
「代理権を失ったっていうのは?」
A
「例えば、私がDさんに対して代理権を取り消したり、または今回のようにDさんが辞めたりしたら代理権を失ったことになるね」
C
「そうですね。でも、そのことを相手方はどうやって知るんですか?」
A
「それも難しい問題だね。一般的には、私がそのことを表示しなければならないんだけど、それができない場合もあるよね。例えば、Dさんが私から隠れて契約したり、相手方がDさんにだけ信頼して契約したりしたら、私の表示は届かないかもしれないね。そういう場合は、相手方がDさんの行為に疑問を持つべき事情があったかどうかで判断されることになるよ」
C
「疑問を持つべき事情っていうのは?」
A
「例えば、Dさんが私の名刺や社印を持っていなかったり、私のメールアドレスや電話番号が変わっていたり、Dさんが退職したことが公表されていたりしたら、そういう事情になるかもしれないね」
C
「なるほど。表見代理って、結構複雑ですね。でも、面白い話です。ありがとうございます」
A
「いえいえ。表見代理は、民法の中でも重要な制度だからね。不動産の売買契約は、特に注意が必要だよ。Bさん、Cさんには良い物件を紹介してあげてね」
B
「はい、社長。Cさん、これから物件を見に行きましょうか」
C
「はい、お願いします。Aさん、お忙しいところありがとうございました」
A
「どういたしまして。またお会いしましょう」
以上、初学者向けにやさしく民法の表見代理についての簡単な物語をお送りいたしました。
まずは民法の表見代理についてのイメージを掴んでいただければ幸いです。
また、専門用語で難しく感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、ご安心ください。
表見代理についてもっと詳しくわかりやすい解説は、
⇒【代理の超基本】表見&無権代理とは/3つの表見代理とは/表見代理に転得者が絡んだ場合をわかりやすく解説!
にございますので、よろしければご覧ください。
以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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A:不動産会社の社長
B:Aの部下で営業担当
C:Bの友人で不動産購入希望者
D:Aの元部下でBと同じく営業担当だったが、先月退職した
BがCを連れてAの会社にやってきた。
AはBに対して、Dが退職した後も代理権を与えた旨を表示していなかったことを告げる。
A
「Bさん、ちょっと話があるんだけど」
B
「はい、社長。どうしました?」
A
「実は、Dさんが辞めた後も、彼に代理権を与えたままにしていたようなんだ」
B
「えっ?それってどういうことですか?」
A
「Dさんが辞める前に、ある物件の売買契約を結んでいたんだけど、その契約書には私の名前と印鑑が押されていたんだ。Dさんが私の代理人として契約したということになっている」
B
「でも、Dさんはもう辞めたんですよね?それなら問題ないんじゃないですか?」
A
「そういうわけにはいかないんだ。Dさんが辞めた後も、彼にはもう代理権がない旨を第三者に対して表示していなかったからね。つまり、Dさんはまだ私の代理人として行動できるという外観があるんだ」
B
「外観?それって何ですか?」
A
「表見代理っていうんだよ。無権代理行為について、本人に責任を負わせる制度だ。Dさんが私の代理人として契約した場合、その契約は私に対して有効になる可能性があるんだ」
B
「えー!それってめちゃくちゃじゃないですか!」
C
「すみません、ちょっと聞き耳を立ててしまったんですけど、私も不動産を買おうと思っていて、Bさんに相談してきたんです。でも、この話を聞くと心配になりますね。仮に、Dさんが私と契約したら、本当にAさんから物件を買えるんですか?」
A
「そうだね。それは状況によるけど、一応説明しておくよ。表見代理は3種類あってね。一つ目は、私が今言ったように、他人に代理権を与えた旨を表示した場合の表見代理だ。これは民法109条で規定されている。この場合は、相手方が善意無過失であれば、契約は有効になる可能性が高いよ」
C
「善意無過失っていうのは?」
A
「相手方がDさんが代理権を持っていると信じることに正当な理由があるということだ。例えば、Dさんが私の名刺や社印を持っていたり、私のメールアドレスや電話番号を使って連絡してきたりしたら、そういう理由になるかもしれないね」
C
「なるほど。でも、それってちょっと不公平じゃないですか?今は、AさんはDさんに代理権を与えていないのに、契約の責任を負わされるんですよね?」
A
「そう思うかもしれないけど、これは相手方の信頼を守るための制度だからね。相手方はDさんが私の代理人だと信じて契約したわけだから、その信頼を裏切るわけにはいかないんだ。もちろん、私はDさんに対して損害賠償を請求することはできるけどね」
C
「そういうことなんですね。じゃあ、他の2種類の表見代理はどういうものなんですか?」
A
「もう一つの表見代理は、Dさんが私の代理権の範囲を超えて契約した場合の表見代理だ。これは民法110条で規定されている。この場合は、相手方が善意無過失であれば、契約は有効になる可能性があるよ。ただし、相手方がDさんが権限外の行為をしたことを知っていたり、知らなくても知るべきだったりしたら、契約は無効になるよ」
C
「権限外の行為っていうのは?」
A
「例えば、私がDさんに代理権を与えたときに、物件の価格や条件について一定の範囲内でしか交渉できないという制限を付けたとするよ。でも、Dさんがその制限を無視して、相手方と契約したとするよ。それが権限外の行為だね」
C
「なるほど。でも、その制限を相手方はどうやって知るんですか?」
A
「それは難しい問題だね。一般的には、私がその制限を表示しなければならないんだけど、それができない場合もあるよね。例えば、Dさんが私に内密で契約したり、相手方がDさんにだけ信頼して契約したりしたら、私の表示は届かないかもしれないね。そういう場合は、相手方がDさんの行為に疑問を持つべき事情があったかどうかで判断されることになるよ」
C
「疑問を持つべき事情っていうのは?」
A
「例えば、物件の価格や条件が市場の相場と大きく乖離していたり、Dさんが契約書に不備や不審な点があると言って修正を求めたりしたら、そういう事情になるかもしれないね」
C
「そうですね。じゃあ、最後の一つの表見代理はどういうものなんですか?」
A
「最後の一つの表見代理は、Dさんが私の代理権を失った後に契約した場合の表見代理だ。これは民法112条で規定されている。この場合は、相手方が善意無過失であれば、契約は有効になる可能性があるよ。ただし、相手方がDさんが代理権を失ったことを知っていたり、知らなくても知るべきだったりしたら、契約は無効になるよ」
C
「代理権を失ったっていうのは?」
A
「例えば、私がDさんに対して代理権を取り消したり、または今回のようにDさんが辞めたりしたら代理権を失ったことになるね」
C
「そうですね。でも、そのことを相手方はどうやって知るんですか?」
A
「それも難しい問題だね。一般的には、私がそのことを表示しなければならないんだけど、それができない場合もあるよね。例えば、Dさんが私から隠れて契約したり、相手方がDさんにだけ信頼して契約したりしたら、私の表示は届かないかもしれないね。そういう場合は、相手方がDさんの行為に疑問を持つべき事情があったかどうかで判断されることになるよ」
C
「疑問を持つべき事情っていうのは?」
A
「例えば、Dさんが私の名刺や社印を持っていなかったり、私のメールアドレスや電話番号が変わっていたり、Dさんが退職したことが公表されていたりしたら、そういう事情になるかもしれないね」
C
「なるほど。表見代理って、結構複雑ですね。でも、面白い話です。ありがとうございます」
A
「いえいえ。表見代理は、民法の中でも重要な制度だからね。不動産の売買契約は、特に注意が必要だよ。Bさん、Cさんには良い物件を紹介してあげてね」
B
「はい、社長。Cさん、これから物件を見に行きましょうか」
C
「はい、お願いします。Aさん、お忙しいところありがとうございました」
A
「どういたしまして。またお会いしましょう」
以上、初学者向けにやさしく民法の表見代理についての簡単な物語をお送りいたしました。
まずは民法の表見代理についてのイメージを掴んでいただければ幸いです。
また、専門用語で難しく感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、ご安心ください。
表見代理についてもっと詳しくわかりやすい解説は、
⇒【代理の超基本】表見&無権代理とは/3つの表見代理とは/表見代理に転得者が絡んだ場合をわかりやすく解説!
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以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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