
~物語のあらまし~
Aは、Bという不動産業者から、都心にあるマンションの一室を購入することにした。
Bは、Aに対して、そのマンションは築5年で耐震性や設備が優れており、近くには駅やスーパーもあり、将来的にも価値が上がることを保証すると言った。
Aは、Bの言葉を信じて、契約書にサインし、頭金として300万円を支払った。
しかし、実際には、BはAをだましていた。
そのマンションは築15年で老朽化が進んでおり、耐震性や設備も不十分だった。
また、近くには駅やスーパーはなく、かわりに工場やゴミ処理場があった。
さらに、そのマンションは建設時に不正な手段で用地を取得しており、元の所有者から訴えられている可能性が高かった。
Aは、引き渡しの日にその事実を知って愕然とした。
Bに詰め寄ろうとしたが、Bはすでに姿を消していた。
Aは、契約を取り消すことができるかどうかを調べるために、Cという弁護士に相談することにした。
C
「Aさん、こんにちは。私はCと申します。弁護士です」
A
「こんにちは。私はAです。不動産の契約で詐欺にあったのですが、どうすればいいかわからなくて......」
C
「そうですか。それは大変なことですね。まず、詳しい状況を教えてください」
A
「はい。私はBという不動産業者から都心にあるマンションの一室を購入することにしました。Bは...(中略)...そんなことを言っていました。」
C
「なるほど。それでは、Bは明らかに虚偽の事実を述べてAさんをだましたわけですね」
A
「そうです。だから契約を取り消したいんです。」
C
「分かりました。では、民法第96条1項によれば、詐欺による意思表示は取り消すことができます。つまり、AさんはBに対して契約の取消しを主張することができます」
A
「本当ですか?それなら良かったです。」
C
「しかし、注意しなければならない点があります。民法第96条3項によれば、詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができません。つまり、もしBがそのマンションの権利を別の人に譲渡してしまっていたら、その人が善意でかつ過失がなければ、Aさんは契約の取消しを主張できないということです」
A
「えっ?そんなこともあるんですか?」
C
「はい。善意の第三者とは、当事者及びその包括承継人以外の者で詐欺によって形成された法律関係の外形を信頼して新たな法律関係に入った者をさします。
例えば、Bがそのマンションの権利をDという人に売却したとします。
Dがそのマンションの瑕疵(欠陥)や訴訟の危険を知らなかった場合、Dは善意の第三者となります。(知っていれば悪意の第三者)
また、Dが慣習上必要とされる確認等を怠らなかった場合、Dは無過失の第三者となります。
となると、Dは善意無過失の第三者ということになります。
この場合、AさんはDに対して契約の取消しを主張できません」
A
「それは不公平だと思います。私がだまされたのに、なぜ私が損をしなければならないんですか?」
C
「それは、民法の原則として、法律関係の安定性や信頼保護を重視するからです。
もしAさんがDに対して契約の取消しを主張できたら、Dは何の落ち度もないのに権利を失ってしまいます。それはDにとって不当ですし、社会的にも混乱を招くことになります。
そこで、民法では、詐欺による意思表示の取消しに制限を設けています」
A
「でも、私も何も悪くないのに......」
C
「Aさんにも落ち度はありませんか?Bの言葉を疑わずに契約したのですから」
A
「それは...そうかもしれませんが......」
C
「もちろん、Aさんが完全に無力なわけではありません。Bに対しては契約の取消しを主張できるだけでなく、損害賠償請求もできます。
また、Dが悪意であった場合や、善意であっても過失があった場合は、契約の取消しを主張できます。
さらに、そのマンションの所有権移転登記がされていなければ、登記上の所有者であるAさんは登記優先原則(民法177条)により善意無過失の第三者に対抗することができます」
A
「そうですか...でも、それでも不安です。Bがどこにいるかわからないし、Dがどんな人かわからないし......」
C
「心配しないでください。私がAさんの代理人としてBやDと交渉します。必要なら裁判も起こします。Aさんは私に任せてください」
A
「ありがとうございます。Cさんにお願いします」
C
「どういたしまして。では、早速動きましょう」
以上、初学者向けにやさしく民法の詐欺についての簡単な物語をお送りいたしました。
物語へのツッコミどころはさておき、まずは民法の詐欺についてのイメージを掴んでいただければ幸いです。
また、専門用語で難しく感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、ご安心ください。
詐欺についてもっと詳しくわかりやすい解説は、
⇒【詐欺の超基本】善意&悪意の第三者って何?/詐欺取消後に現る悪意の第三者問題をわかりやすく解説!
にございますので、よろしければご覧ください。
以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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Aは、Bという不動産業者から、都心にあるマンションの一室を購入することにした。
Bは、Aに対して、そのマンションは築5年で耐震性や設備が優れており、近くには駅やスーパーもあり、将来的にも価値が上がることを保証すると言った。
Aは、Bの言葉を信じて、契約書にサインし、頭金として300万円を支払った。
しかし、実際には、BはAをだましていた。
そのマンションは築15年で老朽化が進んでおり、耐震性や設備も不十分だった。
また、近くには駅やスーパーはなく、かわりに工場やゴミ処理場があった。
さらに、そのマンションは建設時に不正な手段で用地を取得しており、元の所有者から訴えられている可能性が高かった。
Aは、引き渡しの日にその事実を知って愕然とした。
Bに詰め寄ろうとしたが、Bはすでに姿を消していた。
Aは、契約を取り消すことができるかどうかを調べるために、Cという弁護士に相談することにした。
C
「Aさん、こんにちは。私はCと申します。弁護士です」
A
「こんにちは。私はAです。不動産の契約で詐欺にあったのですが、どうすればいいかわからなくて......」
C
「そうですか。それは大変なことですね。まず、詳しい状況を教えてください」
A
「はい。私はBという不動産業者から都心にあるマンションの一室を購入することにしました。Bは...(中略)...そんなことを言っていました。」
C
「なるほど。それでは、Bは明らかに虚偽の事実を述べてAさんをだましたわけですね」
A
「そうです。だから契約を取り消したいんです。」
C
「分かりました。では、民法第96条1項によれば、詐欺による意思表示は取り消すことができます。つまり、AさんはBに対して契約の取消しを主張することができます」
A
「本当ですか?それなら良かったです。」
C
「しかし、注意しなければならない点があります。民法第96条3項によれば、詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができません。つまり、もしBがそのマンションの権利を別の人に譲渡してしまっていたら、その人が善意でかつ過失がなければ、Aさんは契約の取消しを主張できないということです」
A
「えっ?そんなこともあるんですか?」
C
「はい。善意の第三者とは、当事者及びその包括承継人以外の者で詐欺によって形成された法律関係の外形を信頼して新たな法律関係に入った者をさします。
例えば、Bがそのマンションの権利をDという人に売却したとします。
Dがそのマンションの瑕疵(欠陥)や訴訟の危険を知らなかった場合、Dは善意の第三者となります。(知っていれば悪意の第三者)
また、Dが慣習上必要とされる確認等を怠らなかった場合、Dは無過失の第三者となります。
となると、Dは善意無過失の第三者ということになります。
この場合、AさんはDに対して契約の取消しを主張できません」
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もしAさんがDに対して契約の取消しを主張できたら、Dは何の落ち度もないのに権利を失ってしまいます。それはDにとって不当ですし、社会的にも混乱を招くことになります。
そこで、民法では、詐欺による意思表示の取消しに制限を設けています」
A
「でも、私も何も悪くないのに......」
C
「Aさんにも落ち度はありませんか?Bの言葉を疑わずに契約したのですから」
A
「それは...そうかもしれませんが......」
C
「もちろん、Aさんが完全に無力なわけではありません。Bに対しては契約の取消しを主張できるだけでなく、損害賠償請求もできます。
また、Dが悪意であった場合や、善意であっても過失があった場合は、契約の取消しを主張できます。
さらに、そのマンションの所有権移転登記がされていなければ、登記上の所有者であるAさんは登記優先原則(民法177条)により善意無過失の第三者に対抗することができます」
A
「そうですか...でも、それでも不安です。Bがどこにいるかわからないし、Dがどんな人かわからないし......」
C
「心配しないでください。私がAさんの代理人としてBやDと交渉します。必要なら裁判も起こします。Aさんは私に任せてください」
A
「ありがとうございます。Cさんにお願いします」
C
「どういたしまして。では、早速動きましょう」
以上、初学者向けにやさしく民法の詐欺についての簡単な物語をお送りいたしました。
物語へのツッコミどころはさておき、まずは民法の詐欺についてのイメージを掴んでいただければ幸いです。
また、専門用語で難しく感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、ご安心ください。
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