
無権代理
Q: 無権代理とは何ですか?
A: 無権代理とは、代理権を持たない者が他人の代理人として契約をした場合のことです。
例えば、AさんがBさんの代理人としてCさんと契約をしたが、AさんにはBさんから代理権が与えられていなかったとします。
この場合、Aさんは無権代理人となります。
Q: 無権代理の契約は有効ですか?
A: 無権代理の契約は、原則として無効です。
しかし、本人(上の例ではBさん)が無権代理行為を追認すれば、契約は有効になります。
追認とは、本人が無権代理行為を承認することです。
追認は、相手方(上の例ではCさん)に対して意思表示をしなければなりません。
追認があれば、契約は初めから有効なものとみなされます。
Q: 本人は追認しなければなりませんか?
A: いいえ、本人は追認する義務はありません。
本人は追認することもできますし、追認を拒絶することもできます。
追認拒絶とは、本人が無権代理行為を否定することです。
追認拒絶も、相手方に対して意思表示をしなければなりません。
追認拒絶があれば、契約は無効であることが確定します。
Q: 相手方はどうすればいいですか?
A: 相手方は、本人に対して催告権や取消権を行使することができます。
催告権とは、相手方が本人に対して追認または追認拒絶を求めることです。
催告権の行使によって、本人は一定期間内に追認または追認拒絶をしなければなりません。
取消権とは、相手方が無権代理行為による契約を取り消すことです。取消権の行使によって、相手方は契約から離脱することができます。
Q: 無権代理人にはどんな責任がありますか?
A: 無権代理人には、相手方に対して履行または損害賠償の責任があります。
相手方は、無権代理人に対して契約の履行を求めることもできますし、契約の不履行による損害賠償を求めることもできます。
ただし、無権代理人が自分に代理権があることを証明した場合や、本人が追認した場合は、この責任を免れることができます。
表見代理
Q: 表見代理とは何ですか?
A: 表見代理とは、無権代理行為につき、あたかも有効な代理権が存在するかのような外観が存する場合に、代理行為その外観を信じた相手方を保護するために、当該無権代理行為の法律効果と同等の責任を本人に帰属させる制度をいいます。
この表見代理は、民法上、3つの種類に区分されます。
一つは、民法109条が規定する代理権授与の表示による表見代理、二つ目は、権限外の行為の表見代理、三つ目は、代理権消滅後の表見代理です。
Q: 表見代理の効果は何ですか?
A: いずれの場合も、効果は同じです。無権代理としてなされた法律行為の効果と同等の責任が本人に課せられることになります。
法律論として誤解しやすいところですが、表見代理が成立する場合に、無権代理行為が有権代理行為になる、というわけではありません。
条文は、無権代理としてなされた契約が有効に本人に帰属すると定めているわけではなく、法律上の効果として、無権代理行為につき、本人が「責任を負う」と定めているにとどまります。
Q: 代理権授与の表示による表見代理とは何ですか?
A: 代理権授与の表示による表見代理とは、本人が第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した場合に、その他人が第三者との間でした行為について、その責任を本人が負うことをいいます。
例えば、AさんがBさんに対してCさんに代理権を与えた旨をメールで伝えたが、実際にはCさんには何も伝えていなかったとします。
この場合、CさんがBさんの代理人としてDさんと契約をしたら、Aさんはその契約の責任を負わなければなりません。
Q: 代理権授与の表示による表見代理の要件は何ですか?
A: 代理権授与の表示による表見代理の要件は次の通りです。
・本人が第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示すること
・その他人が第三者との間で法律行為をすること
・第三者がその他人の権限があると信ずべき正当な理由があること
ただし書きでは正当な理由が必要であることが示されています。
正当な理由とは善意無過失であることを意味します。
つまり、第三者がその他人が代理権を与えられていないことを知っていたり、過失によって知らなかったりした場合は、表見代理は成立しません。
Q: 権限外の行為の表見代理とは何ですか?
A: 権限外の行為の表見代理とは、代理人がその権限外の行為をした場合に、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときに、その責任を本人が負うことをいいます。
例えば、AさんがBさんに対してCさんに代理権を与えたが、その範囲は100万円以下の契約に限るとしたとします。
この場合、CさんがBさんの代理人としてDさんと200万円の契約をしたら、Aさんはその契約の責任を負わなければなりません。
Q: 権限外の行為の表見代理の要件は何ですか?
A: 権限外の行為の表見代理の要件は次の通りです。
・代理人がその権限外の行為をすること
・第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があること
ここでも正当な理由が必要であることが示されています。
正当な理由とは善意無過失であることを意味します。つまり、第三者が代理人の権限外であることを知っていたり、過失によって知らなかったりした場合は、表見代理は成立しません。
Q: 代理権消滅後の表見代理とは何ですか?
A: 代理権消滅後の表見代理とは、本人が第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した後にその代理権が消滅した場合に、その他人が第三者との間でした行為について、その責任を本人が負うことをいいます。
例えば、AさんがBさんに対してCさんに代理権を与えた旨を表示したが、その後にCさんが死亡したとします。
この場合、Cさんの死亡後にDさんがCさんの遺族からCさんの名義で契約書に署名してもらったら、Aさんはその契約の責任を負わなければなりません。
Q: 代理権消滅後の表見代理の要件は何ですか?
A: 代理権消滅後の表見代理の要件は次の通りです。
・本人が第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示すること
・その後にその他人の代理権が消滅すること
・その他人またはその遺族等が第三者との間で法律行為をすること
・第三者がその他人またはその遺族等の権限があると信ずべき正当な理由があること
ここでも正当な理由が必要であることが示されています。
正当な理由とは善意無過失であることを意味します。
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