
停止条件付の売買契約の判例
[最高裁判所第二小法廷の昭和36年5月26日判決]
この判決は、農地法に基づく知事の許可を得ることを条件として農地の売買契約をした場合に、売主が故意に知事の許可を得ることを妨げた場合に、買主が条件を成就したものとみなすことができるかどうかを争点とした事案でした。
最高裁判所は、本件契約は停止条件付きの売買契約ではなく、知事の許可を得ることが不可能であることを知っていた売主が買主に対して不法行為を犯したものであると判断しました。
[最高裁判所第三小法廷の平成22年11月16日判決]
この判決は、建築確認申請書に基づく建築確認通知書の交付を得ることを条件として建物及び土地の売買契約をした場合に、その条件が成就しなかった場合に、売主が買主から手付金等を返還請求できるかどうかを争点とした事案でした。
最高裁判所は、本件契約は停止条件付きの売買契約であり、その条件が成就しなかった場合には、当事者間における債権債務関係は発生しないものであると判断しました。
停止条件付きの賃貸借契約の判例
[東京地方裁判所の平成30年10月31日判決]
この判決は、転貸人が既存テナント退出に伴い後継テナントを募集したところ、これに応じた賃借申込人との交渉がなされ、契約条件について合意に達したにもかかわらず、賃借申込人が契約締結を拒否し、一方的に交渉を打ち切ったとして、転貸人が新賃借人からの賃料収入が得られるまでの間の賃料相当損害金等の支払いを求めた事案でした。
東京地方裁判所は、本件契約書には「本件契約は、転貸人及び転貸人の保証会社からの最終審査承認後に成立するものとする」という停止条件が記載されており、その承認がなされなかったことから、本件契約は成立しなかったと判断しました。
[東京地方裁判所の平成27年9月17日判決]
この判決は、マンションの一室について、貸主との間で賃貸借契約書に記名押印をした借主が、貸室の入居日は決まっておらず鍵の引渡を受けていないことから未だ契約は成立していないとして、貸主に支払った契約代金の返還を求めた事案でした。
東京地方裁判所は、本件契約書には「本件契約は、連帯保証人から連帯保証書及び身分証明書等を提出された時点で成立するものとする」という停止条件が記載されており、その提出がなされなかったことから、本件契約は成立しなかったと判断しました。
停止条件付きの贈与契約の判例
[国税不服審判所の平成16年12月22日裁決]
この判決は、裁判上の和解に基づく停止条件付の贈与を受けた場合に、贈与税の納税義務の成立時期がいつであるかを争点とした事案でした。
国税不服審判所は、本件和解調書は、Jとの売買契約の成立を停止条件とした贈与契約であると認め、その条件が成就した平成12年7月4日が贈与による財産取得の時であると判断しました。
[最高裁判所第三小法廷の平成19年3月13日判決]
この判決は、親族間で争われた贈与証書に基づく贈与金等請求訴訟において、和解調書により停止条件付の贈与契約を締結した場合に、贈与者が死亡した後にその相続人が贈与物を返還請求できるかどうかを争点とした事案でした。
最高裁判所は、本件和解調書は、売買代金等から被告Hが取得する金額を控除した残余金を原告らが取得することを確認するものであり、原告らは被告Hから贈与物を受領していないことから、本件和解調書は停止条件付の贈与契約ではなく、将来的な贈与契約締結の約束であると判断しました。
解除条件付きの売買契約の判例
[最高裁判所第三小法廷の平成8年11月12日判決]
この判決は、同一当事者間で締結された二個以上の契約のうち一の契約の債務不履行を理由に他の契約を解除することができる場合について論じた事案でした。
最高裁判所は、同一当事者間の債権債務関係がその形式は甲契約及び乙契約といった二個以上の契約から成る場合であっても、それらの目的とするところが相互に密接に関連付けられていて、社会通念上、甲契約又は乙契約のいずれかが履行されるだけでは契約を締結した目的が全体としては達成されないと認められる場合には、甲契約上の債務の不履行を理由に、その債権者は、法定解除権の行使として甲契約と併せて乙契約をも解除することができると判断しました。
[最高裁判所第三小法廷の平成22年11月16日判決]
この判決は、建築確認申請書に基づく建築確認通知書の交付を得ることを条件として建物及び土地の売買契約をした場合に、その条件が成就しなかった場合に、売主が買主から手付金等を返還請求できるかどうかを争点とした事案でした。
最高裁判所は、本件契約は解除条件付きの売買契約であり、その条件が成就しなかった場合には、当事者間における債権債務関係は発生しないものであると判断しました。
解除条件付きの賃貸借契約の判例
[最高裁判所第二小法廷の平成8年9月13日判決]
この判決は、抵当権者が短期賃貸借契約の解除を求めた事案でした。
最高裁判所は、民法395条ただし書にいう抵当権者に損害を及ぼすときとは、原則として、解除請求訴訟の事実審口頭弁論終結時において、抵当不動産の競売による売却価額が同条本文の短期賃貸借の存在により下落し、これに伴い抵当権者が被担保債権の弁済として受ける配当等の額が減少するときをいうと判断しました。
[東京地方裁判所の平成30年2月16日判決]
この判決は、賃借人が雨漏り対応の不備などを理由として、一方的に賃料等を減額して支払うことから、賃貸人が建物賃貸借契約を解除したとして事務所の明渡し及び未払賃料等の支払を求めた事案でした。
東京地方裁判所は、賃借人の錯誤無効、数量指示賃貸借等の主張を棄却し、賃貸人の請求を全て認容しました。
解除条件付きの贈与契約の判例
[最高裁判所第二小法廷の昭和57年4月30日判決]
この判決は、贈与者が遺言で自己の死亡を条件として財産を贈与した場合に、その遺言が無効であるとして贈与無効確認を求めた事案でした。
最高裁判所は、遺言は死因行為であるから、自己の死亡を条件とすることはできないと判断しました。
[最高裁判所第三小法廷の平成16年7月13日判決]
この判決は、贈与者が自己の死亡を条件として財産を贈与した場合に、その贈与契約が有効であるかどうかを争点とした事案でした。
最高裁判所は、自己の死亡を条件とすることは遺言による処分と同様に公序良俗に反しない限り有効であると判断しました。
以上、停止条件と解除条件の判例でした。
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