
賃料債権と物上代位
[最高裁平成14年3月12日判決]
抵当権者が抵当不動産の所有者(賃貸人)から受け取るべき賃料債権を物上代位の対象とし、その賃料債権の一部を競馬場で賭けた賃借人(第三債務者)に対して転付命令を出した事案。
最高裁は、抵当権者が物上代位の目的となる債権に対する転付命令の効力について、これが第三債務者に送達される時までに抵当権者により当該債権の差押えがなされなかったときは,その効力を妨げられないと判断しました。
[最高裁昭和63年4月12日判決]
抵当不動産の所有者(賃貸人)が自己の賃料債権を第三者(譲受人)に譲渡し、その後抵当権者が賃料債権を物上代位の対象として差し押さえたものである。譲受人は自己の賃料債権を競馬場で賭けた賃借人(第三債務者)に対して転付命令を出したが、その前に抵当権者に対して譲渡通知を行った事案。
最高裁は、抵当権者が物上代位の目的債権を差し押さえた場合において、その債権の譲渡者が第三者に対する対抗要件を備えた後に債権者に対して債権の譲渡を通知したときは,その通知は無効であると判断しました。
[最高裁平成13年3月13日判決]
抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は,抵当不動産の賃借人は,抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって,抵当権者に対抗することはできない。
[最高裁平成14年3月28日判決]
抵当不動産の所有者が抵当権設定登記後に第三者に対して賃料債権を譲渡した場合においても,抵当権者は,譲渡された賃料債権に対して物上代位権を行使することができる。
その他物上代位
[最高裁平成10年1月30日判決]
抵当権者が物上代位権を行使しようとした債権が第三者に譲渡された場合に、抵当権者は自ら債権を差し押さえて物上代位権を行使できるかどうかが争われた事案。
最高裁は、抵当権者は、物上代位権を使おうとしている債権(目的債権)が譲渡されて、債権が第三者に対する対抗要件(通知or承諾)を備えた後でも、自分で債権を差し押さえて、物上代位権を使うことができると判断しました。
[最高裁昭和60年5月23日判決]
共同抵当の目的である債務者所有の不動産と物上保証人所有の不動産に債権者を異にする後順位抵当権が設定され、物上保証人所有の不動産が先に競売された場合に、債務者所有の不動産から弁済を受けるときにおける後順位抵当権者同士の優劣が争われた事案。
最高裁は、物上保証人所有の不動産の後順位抵当権者は、物上保証人に移転した債務者所有の不動産に対する一番抵当権から優先して弁済を受けられると判断しました。
[最高裁平成2年7月13日判決]
抵当権者が物上代位の目的債権を差し押さえた場合において、その債権の譲渡者が第三者に対する対抗要件を備えた後に債権者に対して債権の譲渡を承諾したときは,その承諾は無効である。
[最高裁平成5年7月13日判決]
抵当権者が物上代位の目的債権を差し押さえた場合において、その債権の譲渡者が第三者に対する対抗要件を備えた後に債務者が債務不履行となったときは,その債務不履行は抵当権者に対しても効力を生じる。
以上、物上代位に関する判例です。
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