
所有権
[令和4年12月16日最高裁判所第三小法廷]
この判決では、不動産登記法第39条第1項に基づく所有権移転登記の申請人として、所有権移転契約当事者以外の者が適格であるかどうかが争われました。
最高裁判所は、所有権移転契約当事者以外の者が申請人となることは原則として認められないが、例外的に契約当事者から委任を受けた者や契約当事者に代わって登記を申請することが必要であると認められる者などは申請人として適格であると判断しました。
[令和4年11月30日最高裁判所第二小法廷]
この判決では、不動産登記法第21条第1項に基づく所有権移転登記の抹消登記の申請人として、所有権移転登記を受けた者以外の者が適格であるかどうかが争われました。
最高裁判所は、所有権移転登記を受けた者以外の者が申請人となることは原則として認められないが、例外的に所有権移転登記を受けた者から委任を受けた者や所有権移転登記を受けた者に代わって登記を抹消することが必要であると認められる者などは申請人として適格であると判断しました。
[平成16年10月28日最高裁判決]
この判決では、不動産の所有者であるXから当該不動産の賃貸に係る事務や他の土地の所有権移転登記手続を任せられていた甲が,Xから交付を受けた当該不動産の登記済証,印鑑登録証明書等を利用して当該不動産につき甲への不実の所有権移転登記手続をした場合について、Xが甲に対して当該所有権移転登記手続の無効及び抹消登記手続を請求することができるとしました。
また、Xがその後乙へ当該不動産を譲渡しようとした場合についても、乙は善意無過失であってもXから所有権を取得することはできないとしました。
二重譲渡
[昭和45年1月23日最高裁判決]
この判決では、不動産の二重売買において、双方の買主がそれぞれ売主に対して処分禁止の仮処分を執行した後、第一次仮処分債権者が本案の勝訴判決に基づいて所有権移転登記を経由した場合、その買主は第二次仮処分債権者に対し自己の所有権を対抗することができるとしました。
[昭和42年11月27日最高裁判決]
この判決では、不動産が甲から乙丙丁と順次譲渡され所有権移転登記は、甲が同意しないのに甲から直接丁に対し経由された場合において、甲が登記を無効としてその抹消を求めることが許されないとしました。
[昭和52年9月7日最高裁判決]
この判決では、不動産が二重に譲渡された後、双方の買主がそれぞれ売主を債務者とする処分禁止の仮処分を執行した場合において、第一次仮処分債権者たる買主が本案たる所有権移転登記請求訴訟に勝訴し、その確定判決に基づき売主から所有権移転登記を経由したときは、右買主は、第二次仮処分債権者たる買主に対し自己の所有権取得を対抗することができるものと解すべきであるとしました。
時効取得と登記
[平成18年1月17日最高裁判決]
この判決では、不動産の取得時効完成後に当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した者が背信的悪意者に当たる場合について、その判断基準を示しました。
具体的には、不動産の譲渡を受けた時に、時効取得者が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており、時効取得者の登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在するときは、背信的悪意者に当たるとしました。
[平成16年10月28日最高裁判決]
この判決では、不動産の所有者であるXから当該不動産の賃貸に係る事務や他の土地の所有権移転登記手続を任せられていた甲が,Xから交付を受けた当該不動産の登記済証,印鑑登録証明書等を利用して当該不動産につき甲への不実の所有権移転登記手続をした場合について、Xが甲に対して当該所有権移転登記手続の無効及び抹消登記手続を請求することができるとしました。
また、Xがその後乙へ当該不動産を譲渡しようとした場合についても、乙は善意無過失であってもXから所有権を取得することはできないとしました。
[平成13年10月26日最高裁判決]
この判決では、農地所有者が、その土地を耕作して占有する者に行った明渡し請求に対し、占有者が、本件土地は先代が賃借権を時効取得したものを相続したものであるとした事案において、農地の賃借権の時効取得については、農地法3条の規定の適用はなく、知事等の許可がなくても時効取得が認められるとされた事例です。
共同相続と登記
[昭和38年2月22日最高裁判決]
この判決では、共同相続した不動産について、乙が勝手に単独(全部乙)で所有権を取得するという登記をして、さらに第三取得者の丙が乙から登記を移してもらった場合、甲は丙に対して、自分の持分を登記がなくても主張できるとしました。
乙の登記は、甲の持分の部分は無権利の登記で、登記には公信力がないので、丙も甲の持分の部分は権利を取得する理由がないからです。
[平成30年3月28日最高裁判決]
この判決では、共同相続人の共有の相続登記がされている農地について、「相続分の贈与」を原因として共同相続人の1人に対する他の共同相続人の持分の移転登記が申請された場合には,登記官は,農地法3条1項の許可を証する書面の添付が必要であるとしました。
農地法3条1項は,農地を譲り受ける者が農業経営者であることを確保するために設けられた規定であり,「相続分の贈与」もその対象となるからです。
[平成13年10月26日最高裁判決]
この判決では,土地の売主の共同相続人がその相続した代金債権を保全するため買主に代位して他の共同相続人に対し所有権移転登記手続を請求することができるとしました。
買主は,売主から土地を取得した時点で,売主が土地を占有していたことから,売主が土地を所有していることを信じても無過失であったと認められ,その後売主が死亡して土地が共同相続されたことも知らなかったとすれば,買主は,売主から土地を取得した時点で成立した所有権移転登記手続請求権を有することになります。
その場合,売主から土地代金債権を相続した共同相続人は,その債権を保全するために,買主に代位して他の共同相続人に対し所有権移転登記手続を請求することができます。
以上、不動産物権に関する判例です。
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