
制限行為能力者には、未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人の4種類があります。
それぞれの判断能力の程度や保護者の権限に違いがあります。
制限行為能力者に関する民事の判例は多数ありますが、代表的なものをいくつか紹介します。
[最判昭和30年3月31日]
未成年者が自分の財産を売却する場合、親権者の同意が必要。
しかし、親権者が目的を定めて処分を許した財産であれば、未成年者は自由に処分することができる。
たとえば、親権者が「学費のために使え」と言って現金を渡した場合、未成年者はその現金を自分の判断で使うことができる。
[最判平成10年7月14日]
成年被後見人は日常生活に関する行為以外は自ら行うことができない。
しかし、その行為が成年後見人の代理権の範囲内であれば、成年後見人が代理して行うことができる。
たとえば、成年被後見人が自分の不動産を売却する場合、成年後見人がその代理権を持っていれば、成年後見人が契約書に署名して売却することができる。
[最判平成15年11月27日]
被保佐人は民法13条1項各号に定められた重要な財産行為や家庭裁判所の審判によって同意を要するとされた行為をするには、保佐人の同意を得なければならない。
しかし、日常生活に関する行為や保佐人の同意を要しないとされた行為は自ら行うことができる。
たとえば、被保佐人が自分の預金口座からお金を引き出す場合、その口座開設や預金額によっては保佐人の同意や審判が必要だが、そうでなければ自ら引き出すことができる。
[最判平成19年3月13日]
被補助人は家庭裁判所の審判によって同意を要するとされた特定の法律行為をするには、補助人の同意を得なければならない。
しかし、その他の行為は自ら行うことができる。
たとえば、被補助人が自分の自動車を売却する場合、その売却が同意を要するとされた審判の対象であれば、補助人の同意が必要だが、そうでなければ自ら売却することができる。
追認に関する判例
追認についての判例は以下のようなものがあります。
[最判昭和32年12月14日]
未成年者が親権者の同意なしに自分の土地を売却した場合、その契約は取り消すことができる。
しかし、未成年者が成年に達した後にその契約を追認した場合、その契約は有効になる。
ただし、特別の方式(登記)を要する行為であるため、追認する際にもその方式を具備しなければならない。
[最判平成13年3月13日]
未成年者が親権者の同意なしに自分の預金口座からお金を引き出して貸金業者から借金した場合、その借金は取り消すことができる。
しかし、未成年者が成年に達した後にその借金を一部でも返済した場合、その借金は全額追認したものとみなされる。
[最判昭和40年10月19日]
未成年者が親権者の同意なしに自分の株式を売却した場合、その売却は取り消すことができる。
しかし、未成年者が株式売却代金を受け取った後に親権者からそれを知らされた場合、その受領は売却契約の一部履行であるため、その契約は追認したものとみなされる。
責任能力に関する判例
責任能力とは、自己の行為に対して法的な責任を負う能力です。
責任能力がない者は、その行為によって他人に損害を与えたとしても、損害賠償義務を負いません。
しかし、責任能力がない者を監督する法定の義務を負う者は、その者の不法行為によって他人に損害を与えた場合、自己の不法行為として損害賠償義務を負います。
責任能力に関する判例は以下のようなものがあります。
[最判昭和48年10月9日]
責任能力の有無は、その行為がなされた時点での精神状態によって判断される。
精神障害者が精神障害者保健福祉法(旧精神保健法)に基づく入院中に不法行為をした場合、その入院は責任能力の有無の証拠となるが、決定的なものではない。
[最判昭和49年3月22日]
責任能力がある未成年者が不法行為をした場合、その未成年者は自己の不法行為として損害賠償義務を負う。
また、その未成年者を監督する親権者も、監督義務違反とその未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係があるときは、自己の不法行為として損害賠償義務を併存的に負う。
[最判平成28年3月1日]
責任能力がない精神障害者が不法行為をした場合、その精神障害者は損害賠償義務を負わない。
しかし、その精神障害者と同居する配偶者は、その者を監督する法定の義務を負う者ではないが、日常生活における接触状況や監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情があるときは、民法714条1項が類推適用されて損害賠償義務を負う。
監督義務に関する判例
監督義務とは、責任無能力者や制限行為能力者を監督することによって、その者が第三者に損害を与えることを防止する義務です。
監督義務は、民法714条1項によって親権者や成年後見人などに課されています。
監督義務者は、その義務を怠った場合、自己の不法行為として損害賠償義務を負います。
監督義務に関する判例は以下のようなものがあります。
[最判昭和45年10月9日]
親権者が未成年者の自転車の使用を禁止していたにもかかわらず、未成年者が自転車に乗って他人に損害を与えた場合、親権者は、未成年者の自転車の使用を禁止することで監督義務を履行したとは言えず、監督義務違反として損害賠償義務を負う。
[最判平成3年7月12日]
親権者が未成年者の自動車運転免許取得を許可していたにもかかわらず、未成年者が自動車に乗って他人に損害を与えた場合、親権者は、未成年者の自動車運転免許取得を許可することで監督義務を怠ったとは言えず、監督義務違反として損害賠償義務を負わない。
[最判平成27年4月9日]
親権者が未成年者のサッカーボールの使用を制限していたにもかかわらず、未成年者がサッカーボールを蹴って他人に損害を与えた場合、親権者は、未成年者のサッカーボールの使用を制限することで監督義務を履行したと言える場合がある。
具体的には、未成年者が責任能力がなく、サッカーボールを蹴ったことで道路上に出ることが常態でなく、親権者が危険な行為に及ばないよう日頃から通常のしつけをしていた場合などである。
以上、制限行為能力に関する判例でした。
判例についてもっと詳しく知りたい方は裁判所のウェブサイト等をご覧ください。
→制限行為能力についてのわかりやすい解説はこちらをご覧ください←
それぞれの判断能力の程度や保護者の権限に違いがあります。
制限行為能力者に関する民事の判例は多数ありますが、代表的なものをいくつか紹介します。
[最判昭和30年3月31日]
未成年者が自分の財産を売却する場合、親権者の同意が必要。
しかし、親権者が目的を定めて処分を許した財産であれば、未成年者は自由に処分することができる。
たとえば、親権者が「学費のために使え」と言って現金を渡した場合、未成年者はその現金を自分の判断で使うことができる。
[最判平成10年7月14日]
成年被後見人は日常生活に関する行為以外は自ら行うことができない。
しかし、その行為が成年後見人の代理権の範囲内であれば、成年後見人が代理して行うことができる。
たとえば、成年被後見人が自分の不動産を売却する場合、成年後見人がその代理権を持っていれば、成年後見人が契約書に署名して売却することができる。
[最判平成15年11月27日]
被保佐人は民法13条1項各号に定められた重要な財産行為や家庭裁判所の審判によって同意を要するとされた行為をするには、保佐人の同意を得なければならない。
しかし、日常生活に関する行為や保佐人の同意を要しないとされた行為は自ら行うことができる。
たとえば、被保佐人が自分の預金口座からお金を引き出す場合、その口座開設や預金額によっては保佐人の同意や審判が必要だが、そうでなければ自ら引き出すことができる。
[最判平成19年3月13日]
被補助人は家庭裁判所の審判によって同意を要するとされた特定の法律行為をするには、補助人の同意を得なければならない。
しかし、その他の行為は自ら行うことができる。
たとえば、被補助人が自分の自動車を売却する場合、その売却が同意を要するとされた審判の対象であれば、補助人の同意が必要だが、そうでなければ自ら売却することができる。
追認に関する判例
追認についての判例は以下のようなものがあります。
[最判昭和32年12月14日]
未成年者が親権者の同意なしに自分の土地を売却した場合、その契約は取り消すことができる。
しかし、未成年者が成年に達した後にその契約を追認した場合、その契約は有効になる。
ただし、特別の方式(登記)を要する行為であるため、追認する際にもその方式を具備しなければならない。
[最判平成13年3月13日]
未成年者が親権者の同意なしに自分の預金口座からお金を引き出して貸金業者から借金した場合、その借金は取り消すことができる。
しかし、未成年者が成年に達した後にその借金を一部でも返済した場合、その借金は全額追認したものとみなされる。
[最判昭和40年10月19日]
未成年者が親権者の同意なしに自分の株式を売却した場合、その売却は取り消すことができる。
しかし、未成年者が株式売却代金を受け取った後に親権者からそれを知らされた場合、その受領は売却契約の一部履行であるため、その契約は追認したものとみなされる。
責任能力に関する判例
責任能力とは、自己の行為に対して法的な責任を負う能力です。
責任能力がない者は、その行為によって他人に損害を与えたとしても、損害賠償義務を負いません。
しかし、責任能力がない者を監督する法定の義務を負う者は、その者の不法行為によって他人に損害を与えた場合、自己の不法行為として損害賠償義務を負います。
責任能力に関する判例は以下のようなものがあります。
[最判昭和48年10月9日]
責任能力の有無は、その行為がなされた時点での精神状態によって判断される。
精神障害者が精神障害者保健福祉法(旧精神保健法)に基づく入院中に不法行為をした場合、その入院は責任能力の有無の証拠となるが、決定的なものではない。
[最判昭和49年3月22日]
責任能力がある未成年者が不法行為をした場合、その未成年者は自己の不法行為として損害賠償義務を負う。
また、その未成年者を監督する親権者も、監督義務違反とその未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係があるときは、自己の不法行為として損害賠償義務を併存的に負う。
[最判平成28年3月1日]
責任能力がない精神障害者が不法行為をした場合、その精神障害者は損害賠償義務を負わない。
しかし、その精神障害者と同居する配偶者は、その者を監督する法定の義務を負う者ではないが、日常生活における接触状況や監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情があるときは、民法714条1項が類推適用されて損害賠償義務を負う。
監督義務に関する判例
監督義務とは、責任無能力者や制限行為能力者を監督することによって、その者が第三者に損害を与えることを防止する義務です。
監督義務は、民法714条1項によって親権者や成年後見人などに課されています。
監督義務者は、その義務を怠った場合、自己の不法行為として損害賠償義務を負います。
監督義務に関する判例は以下のようなものがあります。
[最判昭和45年10月9日]
親権者が未成年者の自転車の使用を禁止していたにもかかわらず、未成年者が自転車に乗って他人に損害を与えた場合、親権者は、未成年者の自転車の使用を禁止することで監督義務を履行したとは言えず、監督義務違反として損害賠償義務を負う。
[最判平成3年7月12日]
親権者が未成年者の自動車運転免許取得を許可していたにもかかわらず、未成年者が自動車に乗って他人に損害を与えた場合、親権者は、未成年者の自動車運転免許取得を許可することで監督義務を怠ったとは言えず、監督義務違反として損害賠償義務を負わない。
[最判平成27年4月9日]
親権者が未成年者のサッカーボールの使用を制限していたにもかかわらず、未成年者がサッカーボールを蹴って他人に損害を与えた場合、親権者は、未成年者のサッカーボールの使用を制限することで監督義務を履行したと言える場合がある。
具体的には、未成年者が責任能力がなく、サッカーボールを蹴ったことで道路上に出ることが常態でなく、親権者が危険な行為に及ばないよう日頃から通常のしつけをしていた場合などである。
以上、制限行為能力に関する判例でした。
判例についてもっと詳しく知りたい方は裁判所のウェブサイト等をご覧ください。
→制限行為能力についてのわかりやすい解説はこちらをご覧ください←