
代物弁済の判例
代物弁済の法的性質については、要物契約説と諾成契約説とが対立していたが、最高裁判所は、代物弁済による所有権移転の効果は代物弁済契約の意思表示により生じるとしつつ、債務消滅原因として代物弁済を主張する場合には目的物の対抗要件の具備まで主張立証することを要するとする諾成契約説を採用しています。
代物弁済に関する判例は、以下のようなものがあります。
[最高裁判所昭和40年4月30日判決]
代物弁済によって債務が消滅した場合でも、債権者がその後に本来の給付を受けたことによって、その給付は不当利得となり、返還請求が可能である。
[最高裁判所昭和57年6月4日判決]
代物弁済によって所有権移転が成立した場合でも、その後に目的物が滅失したことによって、債権者は本来の給付を再び請求できる。
[最高裁判所平成27年7月17日判決]
代物弁済は取引行為であり、即時取得が成立する。したがって、代物弁済を受けた債権者がその後に破産した場合でも、破産管財人は代物弁済を受けた目的物を破産財団に取り戻すことはできない。
第三者への弁済の判例
第三者への弁済に関する判例は、以下のようなものがあります。
[最高裁判所昭和63年7月1日判決]
借地上の建物の賃貸人は、その敷地の地代の弁済について法律上の利害関係を有する第三者であり、債務者の意思に反して弁済をすることができる。
[最高裁判所平成29年3月14日判決]
同一の当事者間に数個の金銭消費貸借契約に基づく各元本債務が存在する場合における借主による充当の指定のない一部弁済と債務の承認(平成29年法律第44号による改正前の民法147条3号)による消滅時効の中断について、第三者から受けた金銭を充てた場合でも、その金銭を受けた時点で借主がその金銭を自己のものとして自由に処分できたとすれば、その金銭は借主から債権者に対してされた弁済とみなすことができる。
受領権者の外観を有する者への弁済の判例
受領権者の外観を有する者への弁済に関する判例は、以下のようなものがあります。
[最高裁判所昭和37年8月21日判決]
債権者の代理人と称して債権を行使する者についても民法478条が適用される。
[最高裁判所昭和41年10月4日判決]
定期預金契約の締結に際し、当該預金の期限前払戻の場合における弁済の具体的内容が契約当事者の合意により確定されているときは、右預金の期限前の払戻であっても、民法478条の適用を受ける。
[最高裁判所昭和59年2月23日判決]
記名式定期預金につき真実の預金者と異なる者を預金者と認定してその者に貸付をした後、貸付債権を自働債権とし預金債権を受働債権としてした相殺が民法478条の類推適用により真実の預金者に対して効力を生じるためには、当該貸付時において、その者を預金者本人と認定するにつき金融機関として負担すべき相当の注意義務を尽くしたと認められれば足りる。
選択債権の判例
選択債権に関する判例は、以下のようなものがあります。
[最高裁判所昭和34年3月31日判決]
選択権を有する者がその選択権を行使するために必要な期間は、その債務の性質及び当事者間の関係に応じて相当と認められる期間である。
[最高裁判所昭和41年4月13日判決]
選択権を有する者がその選択権を行使した場合においても、その行使によって生じた債務関係は、その行使以前に存在した債務関係と同一のものであり、その行使以前に生じた担保物権は、その行使後も存続する。
[最高裁判所平成10年7月14日判決]
選択権を有する者がその選択権を行使した場合においても、その行使によって生じた債務関係は、その行使以前に存在した債務関係と同一のものであり、その行使以前に生じた連帯保証人の保証義務は、その行使後も存続する。
以上、代物弁済・第三者への弁済・受領権者の外観を有する者への弁済・選択債権の判例でした。
判例についてもっと詳しく知りたい方は裁判所のウェブサイト等をご覧ください。
→代物弁済・第三者への弁済・受領権者の外観を有する者への弁済・選択債権についてのわかりやすい解説はこちらをご覧ください←
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