
不法原因給付についての民事の判例は、以下のようなものがあります。
[最高裁判所第一小法廷 昭和41年7月28日判決]
会社が債権者からの差押を免れるためにした不動産の仮装売買が不法原因給付にあたらないとされた事例。
会社は、第三者が会社の財産管理処分の任にあたっていた取締役と図り、会社所有の不動産につき売買を仮装して、自己の名義に所有権移転登記手続を経由した。その後、会社は第三者に対して不動産の所有名義を返還することを知悉していた。
最高裁判所は、この場合、第三者は民法708条本文にいう不法原因給付を主張して不動産所有名義の返還請求を拒むことができないと判断した。
愛人契約の判例
愛人契約とは、妻のいる男性が、妻以外の女性と継続的な性的関係を結ぶこと又はその関係を維持することを目的に、金銭その他の給付を行うことを約する合意のことです。
このような合意は、公序良俗に反するものとして、無効とされます(民法90条)。
無効な合意に基づいて給付されたものは、原則として返還請求できるはずですが、愛人契約においては、不法原因給付(民法708条)という特別な規定があります。
この規定により、不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができないとされます。
ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りではありません。
つまり、愛人契約においては、男性が女性に金銭や財物を渡した場合、その返還を求めることはできません。
しかし、女性が男性に金銭や財物を渡した場合や、男性が女性に金銭や財物を渡した目的が愛人関係の維持ではなく、他の正当な理由であった場合は、その返還を求めることができます。
以下に、愛人契約に関する判例をいくつか紹介します。
[最高裁判所昭和24年12月20日判決(民集3巻11号2127頁)]
男性が女性に家屋敷地を贈与した場合について、その返還請求権の有無を争った事例
最高裁判所は、贈与の目的が愛人関係の維持であったことを認めた上で、贈与契約は公序良俗に反し無効であるとしました。
しかし、男性が女性に対して家屋敷地の返還を請求することはできないと判断しました。
その理由は、不法原因給付の規定が適用されるからです。
最高裁判所は、「不法原因給付」について、「不法な原因」とは、「善良風俗又は公序良俗に反するもの」と解釈しました。
また、「不法な原因が受益者についてのみ存した」という場合について、「受益者が給付者よりも不法な原因に関与して重大である場合」と解釈しました。
そして、
「本件贈与契約は,両当事者間における婚外交際関係,すなわち,婚姻制度及び家庭生活秩序を侵害するものであって,善良風俗又は公序良俗に反するものであるから,不法な原因であることは明らかである。しかも,本件贈与契約における不法な原因は,両当事者間において共通のものであって,受益者についてのみ存したものではない。したがって,本件贈与契約は,民法第七百八条の規定により,給付者は,その給付したものの返還を請求することができない」
と判示しました。
[最高裁判所昭和26年12月20日判決(民集5巻12号2419頁)]
男性が女性に金銭を貸した場合について、その返還請求権の有無を争った事例
最高裁判所は、貸付の目的が愛人関係の維持であったことを認めた上で、貸付契約は公序良俗に反し無効であるとしました。
しかし、男性が女性に対して金銭の返還を請求することはできないと判断しました。
その理由は、不法原因給付の規定が適用されるからです。
最高裁判所は、
「本件貸付契約は,両当事者間における婚外交際関係,すなわち,婚姻制度及び家庭生活秩序を侵害するものであって,善良風俗又は公序良俗に反するものであるから,不法な原因であることは明らかである。しかも,本件貸付契約における不法な原因は,両当事者間において共通のものであって,受益者についてのみ存したものではない。したがって,本件貸付契約は,民法第七百八条の規定により,給付者は,その給付したものの返還を請求することができない」
と判示しました。
[最高裁判所昭和28年11月25日判決(民集7巻11号2017頁)]
女性が男性に金銭を貸した場合について、その返還請求権の有無を争った事例
最高裁判所は、貸付の目的が愛人関係の維持であったことを認めた上で、貸付契約は公序良俗に反し無効であるとしました。
しかし、女性が男性に対して金銭の返還を請求することはできると判断しました。
その理由は、不法原因給付の規定が適用されないからです。
最高裁判所は、
「本件貸付契約は,両当事者間における婚外交際関係,すなわち,婚姻制度及び家庭生活秩序を侵害するものであって,善良風俗又は公序良俗に反するものであるから,不法な原因であることは明らかである。しかしながら,本件貸付契約における不法な原因は,受益者(男性)についてのみ存したものであり,給付者(女性)について存したものではない」
と判事しました。
以上、不法原因給付の判例です。
判例についてもっと詳しく知りたい方は裁判所のウェブサイト等をご覧ください。
→不法原因給付についてのわかりやすい解説はこちらをご覧ください←
[最高裁判所第一小法廷 昭和41年7月28日判決]
会社が債権者からの差押を免れるためにした不動産の仮装売買が不法原因給付にあたらないとされた事例。
会社は、第三者が会社の財産管理処分の任にあたっていた取締役と図り、会社所有の不動産につき売買を仮装して、自己の名義に所有権移転登記手続を経由した。その後、会社は第三者に対して不動産の所有名義を返還することを知悉していた。
最高裁判所は、この場合、第三者は民法708条本文にいう不法原因給付を主張して不動産所有名義の返還請求を拒むことができないと判断した。
愛人契約の判例
愛人契約とは、妻のいる男性が、妻以外の女性と継続的な性的関係を結ぶこと又はその関係を維持することを目的に、金銭その他の給付を行うことを約する合意のことです。
このような合意は、公序良俗に反するものとして、無効とされます(民法90条)。
無効な合意に基づいて給付されたものは、原則として返還請求できるはずですが、愛人契約においては、不法原因給付(民法708条)という特別な規定があります。
この規定により、不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができないとされます。
ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りではありません。
つまり、愛人契約においては、男性が女性に金銭や財物を渡した場合、その返還を求めることはできません。
しかし、女性が男性に金銭や財物を渡した場合や、男性が女性に金銭や財物を渡した目的が愛人関係の維持ではなく、他の正当な理由であった場合は、その返還を求めることができます。
以下に、愛人契約に関する判例をいくつか紹介します。
[最高裁判所昭和24年12月20日判決(民集3巻11号2127頁)]
男性が女性に家屋敷地を贈与した場合について、その返還請求権の有無を争った事例
最高裁判所は、贈与の目的が愛人関係の維持であったことを認めた上で、贈与契約は公序良俗に反し無効であるとしました。
しかし、男性が女性に対して家屋敷地の返還を請求することはできないと判断しました。
その理由は、不法原因給付の規定が適用されるからです。
最高裁判所は、「不法原因給付」について、「不法な原因」とは、「善良風俗又は公序良俗に反するもの」と解釈しました。
また、「不法な原因が受益者についてのみ存した」という場合について、「受益者が給付者よりも不法な原因に関与して重大である場合」と解釈しました。
そして、
「本件贈与契約は,両当事者間における婚外交際関係,すなわち,婚姻制度及び家庭生活秩序を侵害するものであって,善良風俗又は公序良俗に反するものであるから,不法な原因であることは明らかである。しかも,本件贈与契約における不法な原因は,両当事者間において共通のものであって,受益者についてのみ存したものではない。したがって,本件贈与契約は,民法第七百八条の規定により,給付者は,その給付したものの返還を請求することができない」
と判示しました。
[最高裁判所昭和26年12月20日判決(民集5巻12号2419頁)]
男性が女性に金銭を貸した場合について、その返還請求権の有無を争った事例
最高裁判所は、貸付の目的が愛人関係の維持であったことを認めた上で、貸付契約は公序良俗に反し無効であるとしました。
しかし、男性が女性に対して金銭の返還を請求することはできないと判断しました。
その理由は、不法原因給付の規定が適用されるからです。
最高裁判所は、
「本件貸付契約は,両当事者間における婚外交際関係,すなわち,婚姻制度及び家庭生活秩序を侵害するものであって,善良風俗又は公序良俗に反するものであるから,不法な原因であることは明らかである。しかも,本件貸付契約における不法な原因は,両当事者間において共通のものであって,受益者についてのみ存したものではない。したがって,本件貸付契約は,民法第七百八条の規定により,給付者は,その給付したものの返還を請求することができない」
と判示しました。
[最高裁判所昭和28年11月25日判決(民集7巻11号2017頁)]
女性が男性に金銭を貸した場合について、その返還請求権の有無を争った事例
最高裁判所は、貸付の目的が愛人関係の維持であったことを認めた上で、貸付契約は公序良俗に反し無効であるとしました。
しかし、女性が男性に対して金銭の返還を請求することはできると判断しました。
その理由は、不法原因給付の規定が適用されないからです。
最高裁判所は、
「本件貸付契約は,両当事者間における婚外交際関係,すなわち,婚姻制度及び家庭生活秩序を侵害するものであって,善良風俗又は公序良俗に反するものであるから,不法な原因であることは明らかである。しかしながら,本件貸付契約における不法な原因は,受益者(男性)についてのみ存したものであり,給付者(女性)について存したものではない」
と判事しました。
以上、不法原因給付の判例です。
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