
不当利得についての判例は、多くの場合、不当利得者が利得に法律上の原因がないことを認識した後に利益が消滅した場合でも、返還義務が発生するという判断がされています。
以下のような判例があります。
[最高裁判所第三小法廷 平成3年11月19日判決]
金銭の交付によって生じた不当利得の利益が存しないことについては、不当利得返還請求権の消滅を主張する者が主張・立証すべきである。不当利得をした者が利得に法律上の原因がないことを認識した後の利益の消滅は、返還義務の範囲を減少させない。
この判例は、以下のような事情で起こった事件です。
・原告は、被告に対して、昭和60年9月に借金の返済を求める訴訟を提起した。
・被告は、昭和60年10月に、原告に対して、自己の預金通帳と印鑑を渡し、その預金を借金の返済に充当するよう依頼した。
・原告は、被告の預金通帳と印鑑を受け取り、その預金を自己の口座に移し替えた。
・しかし、被告の預金は、被告が他人から詐欺や横領で得たものであり、その他人から不当利得返還請求権が発生していた。
・その他人は、原告に対して、不当利得返還請求権を行使し、原告はその他人に対して預金を返還した。
・原告は、被告に対して、不当利得返還請求権を行使し、預金の返還を求める訴訟を提起した。
・被告は、自分は預金に法律上の原因がないことを認識していなかったと主張し、また、原告が預金を返還したことで利益が消滅したと主張した。
・一審、二審の裁判所は、原告の請求を認めた。
・最高裁判所も、原告の請求を認める判決を言い渡した。
[最高裁判所第一小法廷 昭和49年9月26日判決]
甲が乙から騙取又は横領した金銭を自己の債権者丙に対する債務の弁済にあてた場合でも、乙の損失と丙の利得との間には、不当利得の成立に必要な因果関係があると解すべきである。甲が乙から騙取又は横領した金銭により自己の債権者丙に対する債務を弁済した場合において、右弁済の受領につき丙に悪意又は重大な過失があるときは、丙の右金銭の取得は、乙に対する関係においては法律上の原因を欠き、不当利得となる。
これらの判例からわかるように、不当利得返還請求権は、民法703条に基づくものであり、不当利得者が利益を享受したことにより他人が損失を被った場合に発生します。
不当利得者は、その利益を返還する義務を負います。
また、不当利得者がその後どういう行為をしたかや、その行為によって利益が消滅したかどうかは関係ありません。
重要なことは、不当利得者がその時点で法律上の原因なく他人から金銭等を受け取ったかどうかです。
以下、他の判例もいくつか挙げておきます。
[最高裁判所第三小法廷 平成16年10月26日判決]
甲が乙と共に相続した預金債権のうちの乙の法定相続分に当たる部分について何らの受領権限もないのに受領権限があるものとして金融機関から払戻しを受けていながら,その払戻しに係る金員について乙が提起した不当利得返還請求訴訟において,一転して,上記払戻しは民法478条の弁済として有効であるとはいえず,乙が上記金融機関に対して乙の法定相続分に当たる預金債権を有していることに変わりはなく,乙には不当利得返還請求権の成立要件である「損失」が発生していないと主張するに至ったなど判示の事情の下では,甲が上記主張をして乙の不当利得返還請求を争うことは,信義誠実の原則に反し許されない事例。
甲は、乙と共に相続した預金債権のうちの乙の法定相続分に当たる部分について、何らの受領権限もないのに受領権限があるものとして金融機関から払戻しを受けた。その後、乙は甲に対して不当利得返還請求をしたが、甲は一転して、払戻しは民法478条の弁済として有効であると主張した。
最高裁判所は、この場合、甲が上記主張をして乙の不当利得返還請求を争うことは、信義誠実の原則に反し許されないと判断した。
[最高裁判所第三小法廷 平成7年9月19日判決]
甲が乙から借りた金銭を返済するために、丙から借りた金銭を用いた場合、丙は乙から不当利得返還請求をすることができる事例。
ただし、丙が甲から借りた金銭を返済する際に、甲がその金銭を乙への返済に充当することを知っていた場合は、丙は不当利得返還請求をすることができない。甲は乙から借りた金銭を返済するために、丙から借りた金銭を用いて乙に支払った。その後、丙は甲から借りた金銭の返済を求める訴訟を提起したが、甲は破産宣告されて財産がなかった。丙は乙から不当利得返還請求をすることができるかという問題が争われた。
最高裁判所は、この場合、丙が甲から借りた金銭を返済する際に、甲がその金銭を乙への返済に充当することを知っていた場合は、丙は不当利得返還請求をすることができないと判断した。
[最高裁判所第三小法廷 平成16年4月13日判決]
甲が乙から詐欺で得た金銭を自己の債務者である丙に対する債務の弁済に充当した場合、乙は丙から不当利得返還請求をすることができる事例。
甲は乙から詐欺で得た金銭を丙に渡し、丙はその金銭を甲から借りた金銭の返済として受け取った。その後、乙は甲から詐欺で得た金銭の返還を求める訴訟を提起したが、甲は破産宣告されて財産がなかった。乙は丙から不当利得返還請求をすることができるかという問題が争われた。
最高裁判所は、この場合、丙が甲から受け取った金銭が詐欺で得たものであることを知っていなかったとしても、知るべきだったということが推定されるとし、丙は不当利得返還請求をすることができないと判断した。
以上、不当利得の判例です。
判例についてもっと詳しく知りたい方は裁判所のウェブサイト等をご覧ください。
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以下のような判例があります。
[最高裁判所第三小法廷 平成3年11月19日判決]
金銭の交付によって生じた不当利得の利益が存しないことについては、不当利得返還請求権の消滅を主張する者が主張・立証すべきである。不当利得をした者が利得に法律上の原因がないことを認識した後の利益の消滅は、返還義務の範囲を減少させない。
この判例は、以下のような事情で起こった事件です。
・原告は、被告に対して、昭和60年9月に借金の返済を求める訴訟を提起した。
・被告は、昭和60年10月に、原告に対して、自己の預金通帳と印鑑を渡し、その預金を借金の返済に充当するよう依頼した。
・原告は、被告の預金通帳と印鑑を受け取り、その預金を自己の口座に移し替えた。
・しかし、被告の預金は、被告が他人から詐欺や横領で得たものであり、その他人から不当利得返還請求権が発生していた。
・その他人は、原告に対して、不当利得返還請求権を行使し、原告はその他人に対して預金を返還した。
・原告は、被告に対して、不当利得返還請求権を行使し、預金の返還を求める訴訟を提起した。
・被告は、自分は預金に法律上の原因がないことを認識していなかったと主張し、また、原告が預金を返還したことで利益が消滅したと主張した。
・一審、二審の裁判所は、原告の請求を認めた。
・最高裁判所も、原告の請求を認める判決を言い渡した。
[最高裁判所第一小法廷 昭和49年9月26日判決]
甲が乙から騙取又は横領した金銭を自己の債権者丙に対する債務の弁済にあてた場合でも、乙の損失と丙の利得との間には、不当利得の成立に必要な因果関係があると解すべきである。甲が乙から騙取又は横領した金銭により自己の債権者丙に対する債務を弁済した場合において、右弁済の受領につき丙に悪意又は重大な過失があるときは、丙の右金銭の取得は、乙に対する関係においては法律上の原因を欠き、不当利得となる。
これらの判例からわかるように、不当利得返還請求権は、民法703条に基づくものであり、不当利得者が利益を享受したことにより他人が損失を被った場合に発生します。
不当利得者は、その利益を返還する義務を負います。
また、不当利得者がその後どういう行為をしたかや、その行為によって利益が消滅したかどうかは関係ありません。
重要なことは、不当利得者がその時点で法律上の原因なく他人から金銭等を受け取ったかどうかです。
以下、他の判例もいくつか挙げておきます。
[最高裁判所第三小法廷 平成16年10月26日判決]
甲が乙と共に相続した預金債権のうちの乙の法定相続分に当たる部分について何らの受領権限もないのに受領権限があるものとして金融機関から払戻しを受けていながら,その払戻しに係る金員について乙が提起した不当利得返還請求訴訟において,一転して,上記払戻しは民法478条の弁済として有効であるとはいえず,乙が上記金融機関に対して乙の法定相続分に当たる預金債権を有していることに変わりはなく,乙には不当利得返還請求権の成立要件である「損失」が発生していないと主張するに至ったなど判示の事情の下では,甲が上記主張をして乙の不当利得返還請求を争うことは,信義誠実の原則に反し許されない事例。
甲は、乙と共に相続した預金債権のうちの乙の法定相続分に当たる部分について、何らの受領権限もないのに受領権限があるものとして金融機関から払戻しを受けた。その後、乙は甲に対して不当利得返還請求をしたが、甲は一転して、払戻しは民法478条の弁済として有効であると主張した。
最高裁判所は、この場合、甲が上記主張をして乙の不当利得返還請求を争うことは、信義誠実の原則に反し許されないと判断した。
[最高裁判所第三小法廷 平成7年9月19日判決]
甲が乙から借りた金銭を返済するために、丙から借りた金銭を用いた場合、丙は乙から不当利得返還請求をすることができる事例。
ただし、丙が甲から借りた金銭を返済する際に、甲がその金銭を乙への返済に充当することを知っていた場合は、丙は不当利得返還請求をすることができない。甲は乙から借りた金銭を返済するために、丙から借りた金銭を用いて乙に支払った。その後、丙は甲から借りた金銭の返済を求める訴訟を提起したが、甲は破産宣告されて財産がなかった。丙は乙から不当利得返還請求をすることができるかという問題が争われた。
最高裁判所は、この場合、丙が甲から借りた金銭を返済する際に、甲がその金銭を乙への返済に充当することを知っていた場合は、丙は不当利得返還請求をすることができないと判断した。
[最高裁判所第三小法廷 平成16年4月13日判決]
甲が乙から詐欺で得た金銭を自己の債務者である丙に対する債務の弁済に充当した場合、乙は丙から不当利得返還請求をすることができる事例。
甲は乙から詐欺で得た金銭を丙に渡し、丙はその金銭を甲から借りた金銭の返済として受け取った。その後、乙は甲から詐欺で得た金銭の返還を求める訴訟を提起したが、甲は破産宣告されて財産がなかった。乙は丙から不当利得返還請求をすることができるかという問題が争われた。
最高裁判所は、この場合、丙が甲から受け取った金銭が詐欺で得たものであることを知っていなかったとしても、知るべきだったということが推定されるとし、丙は不当利得返還請求をすることができないと判断した。
以上、不当利得の判例です。
判例についてもっと詳しく知りたい方は裁判所のウェブサイト等をご覧ください。
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