
他人物売買の判例
他人の物の売買についての民事の判例とは、売主が他人の所有物や権利を売買の目的とした場合に、その契約が有効であるかどうか、また売主がどのような義務や責任を負うかに関する裁判の判断です。
以下に、他人の物の売買に関する代表的な判例をいくつか紹介します。
[最高裁判所昭和51年6月17日判決]
売主が他人の所有物を売却した場合でも、その売買契約は有効であるとしました。
また、真の所有者から返還請求を受けた買主は、売主に対して目的物の留置権を行使することができるとしました。
[最高裁判所平成23年10月18日判決]
他人の所有物を目的とする売買契約を締結した売主は、所有権移転登記申請書類に署名捺印する義務があるとしました。
また、署名捺印しない場合は債務不履行となり、買主は解除や損害賠償を請求することができるとしました。
数量指示売買
数量指示売買とは、売買の対象物の実際の数量を確保するために、その一定の面積、容積、重量、員数や尺度などを契約に表示し、かつ、その数量を基礎として代金額が定められた売買をいいます。
数量指示売買についての民事の判例は、以下のようなものがあります。
[最高裁判所平成13年11月22日判決]
土地の売買が数量指示売買に当たるとされた事例です。
売主が提示した坪単価から値下げの折衝を経て代金額が決まり、契約書には公簿面積が記載されていましたが、測量したところ実測面積が公簿面積よりも少ないことが判明しました。
最高裁は、この場合、買主は代金減額請求や契約解除、損害賠償請求をすることができるとしました。
[最高裁判所昭和57年1月21日判決]
土地の売買が数量指示売買に当たらないとされた事例です。
売主は土地の面積を表示しましたが、それは代金額決定の基礎としてされたにとどまり、契約の目的を達成するうえで特段の意味を有するものではありませんでした。
最高裁は、この場合、売主は土地が表示どおりの面積を有したとすれば買主が得たであろう利益(履行利益)について損害賠償すべき責めを負わないとしました。
[最高裁判所平成13年11月27日判決]
数量指示売買において数量が超過する場合に、売主が代金増額請求できるかどうかについて判断した事例です。
最高裁は、この場合、買主において超過部分の代金を追加して支払うとの趣旨の合意を認め得るときは、売主が追加代金を請求し得ることはいうまでもないが、民法565条は数量指示売買において数量が不足する場合又は物の一部が滅失していた場合における売主の担保責任を定めた規定に過ぎないから、同条の類推適用を根拠として売主が代金の増額を請求することはできないとしました。
補足:数量不足
[最高裁判所昭和57年1月21日判決]
面積を表示して売買された土地が表示どおりの面積を有しない場合に、売主が買主に対する履行利益の賠償義務を負わないとしました。
ただし、契約の目的を達成するうえで特段の意味を有する表示である場合は、この限りではないとしました。
物の一部滅失の判例
物の一部滅失とは、売買の目的物の一部が売主の責めに帰することができない事由によって消滅し、又は損傷したことをいいます。
物の一部滅失についての民事の判例は、以下のようなものがあります。
[最高裁判所昭和39年11月30日判決]
売買の目的物である自動車の一部が売主に引渡される前に盗難された場合に、買主が契約解除をすることができるかどうかについて判断した事例です。
最高裁は、この場合、売主は目的物を引渡す義務を履行できないとしました。
また、目的物の一部滅失が契約解除の原因となるかどうかは、その滅失した部分が目的物全体に占める割合や重要性、修復の可否や費用などを総合的に考慮して判断するとしました。
[最高裁判所平成13年11月22日判決]
売買の目的物である土地について存した先取特権又は抵当権の行使により買主がその所有権を失った場合に、買主が契約解除をすることができるかどうかについて判断した事例です。
最高裁は、この場合、目的物の一部滅失にあたるとしました。
また、売主は目的物を引渡す義務を履行できないとしました。
さらに、買主は契約解除のほか、費用償還請求や損害賠償請求をすることができるとしました。
以上、他人物売買等の半例です。
判例についてもっと詳しく知りたい方は裁判所のウェブサイト等をご覧ください。
→売主の義務(旧:担保責任)についてのわかりやすい解説はこちらをご覧ください←