【取得時効&消滅時効】の判例

【取得時効&消滅時効】の判例


取得時効の判例


 以下では、取得時効に関する代表的な判例を紹介します。

[最高裁判所平成30年12月11日判決]
 この判例では、不動産の所有権を取得時効で獲得した者が、その後に元の所有者から所有権移転登記を求められた場合、その要求を拒絶したことで暗黙的に取得時効の援用をしたものと判断しました。
 また、不動産の所有権を取得時効で獲得した者が、その後に元の所有者から抵当権を設定された第三者に対して、登記なくして取得時効による所有権取得を対抗できると判断しました。

[最高裁判所平成15年10月31日判決]
 この判例は、取得時効により不動産を取得し、その旨の登記を有する者は、その後に登記を経由した第三者に対抗するため、その設定登記を起算点とする再度の時効取得は認められないとしたものです。
 この判例では、取得時効による所有権取得は実体法上の移転であって登記法上の移転ではないため、登記法上の移転後に再度時効取得することはできないとしました。
 また、登記法上の移転後に時効取得することができれば、登記法上の移転前に時効取得した者が不動産登記法第177条第1項第1号により登記申請をしなければならない義務から逃れることになり、不動産登記制度の目的に反するとしました。

[最高裁判所昭和42年7月21日判決]
 この判例では、土地境界紛争で相手方が自己所有地であることを主張していた土地を自己所有地であることを主張しながら占有した場合、その土地について元の所有者から1年以内に回復請求がなければ、相手方の自主占有が成立し、元の所有者の取得時効は中断されると判断しました。

[最高裁判所昭和41年11月22日判決]
 この判例では、不動産の所有権を取得時効で獲得した者が、その後に元の所有者から抵当権を設定された第三者に対して、登記なくして取得時効による所有権取得を対抗できると判断しました。

[最高裁判所昭和35年7月27日判決]
 この判例では、不動産を購入した者が移転登記をせずに占有した場合、その占有が他主占有から自主占有に変わったときから取得時効が起算すると判断しました。


消滅時効の判例


 まず、令和2年4月1日施行の民法改正によって、消滅時効に関する規定が大きく変わりましたので、その点ご留意ください。

[令和2年12月15日付け最高裁判所第三小法廷判決]
 この判例では、同一の当事者間に数個の金銭消費貸借契約に基づく各元本債務が存在する場合において,借主が弁済を充当すべき債務を指定することなく全債務を完済するのに足りない額の弁済をしたときは,特段の事情のない限り,上記各元本債務の承認(平成29年法律第44号による改正前の民法147条3号)として消滅時効を中断(改正後でいう時効の更新)する効力を有すると判断しました。

[最高裁判所平成10年4月24日判決]
 この判例では、契約解除後に発生した原状回復義務不履行による損害賠償請求権の消滅時効起算点は、本来の債務(原状回復義務)の履行を請求できる時から進行すると判断しました。

[最高裁判所昭和60年2月12日判決]
 この判例では、保証人が主たる債務者に対する求償権の消滅時効起算点は、免責行為(弁済や主債務を消滅させる行為)の時から起算すると判断しました。また、免責行為の前に事前求償権を取得した場合でも同様であるとしました。

[最高裁判所昭和41年4月20日判決]
 この判例では、債務者が自己の負担する債務について時効が完成した後に、債権者に対し債務の承認をした場合でも、時効完成の事実を知らなかった場合は、その後その債務について完成した消滅時効の援用をすることは許されないものと判断しました。


 以上、時効に関する判例です。
 判例についてもっと詳しく知りたい方は裁判所のウェブサイト等をご覧ください。
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