【無権代理】の判例

【無権代理】の判例

 無権代理行為には、本人の追認や相手方の表見代理の主張などが関係することが多く、様々な事案があります。
 ここでは、代表的な判例をいくつか紹介します。

[最高裁判所昭和45年7月28日判決]
この判例は、白紙委任状や売渡証書などが濫用された場合における無権代理行為の効力について判断したものです。

 この判例では、無権代理人の責任の要件として、無権代理人が自らの資格で法律行為をしたと相手方に信じさせたこと(表見代理)が必要であるとしました。
 また、相手方が表見代理を主張する場合には、相手方が無権代理につき善意であったこと(無過失)が必要であるとしました。
 したがって、白紙委任状や売渡証書などを用いて無権代理行為をした者は、相手方に対して責任を負うことになりますが、相手方も自らの善意や無過失を立証しなければなりません。


[最高裁判所昭和37年4月20日判決]
この判例は、本人が無権代理人を相続した場合における無権代理行為の効力について判断したものです。

 この判例では、本人が自ら法律行為をしたと同様の法律上の地位ないし効果を生ずるものと解するのが相当であるとしました。
 つまり、本人は自らの資格で追認拒絶することができますが、本人の資格で追認拒絶することはできません。
 また、本人は無権代理人の責任をも承継することになります。
 したがって、本人は相手方から無権代理行為の効果としての履行を請求されることはありませんが、相手方が無権代理につき善意であったときは、自らの責任として損害賠償を請求されることがあります。


無権代理と相続の判例


[最高裁判所昭和63年3月1日判決]
この判例は、無権代理人を本人とともに相続した者がその後更に本人を相続した場合における無権代理行為の効力について判断したものです。

 この判例では、当該相続人は本人の資格で無権代理行為の追認を拒絶する余地はなく、本人が自ら法律行為をしたと同様の法律上の地位ないし効果を生ずると解しています。
 つまり、無権代理行為は当然有効となり、相手方は当該相続人に対して履行を請求することができます。


[最高裁判所昭和40年6月18日判決]
この判例は、無権代理人が他の相続人の相続放棄により単独で本人を相続した場合における無権代理行為の効力について判断したものです。

 この判例では、本人が自ら法律行為をしたのと同様の法律上の地位を生じると判示しています。
 つまり、無権代理行為は当然有効となり、相手方は当該相続人に対して履行を請求することができます。


[最高裁判所昭和37年4月20日判決]
この判例は、無権代理人が本人を単独相続した場合における追認拒絶の可否について判断したものです。

 この判例では、傍論ではありますが、無権代理人が本人の資格において追認拒絶することは信義則に反するから、無権代理行為は当然有効となると述べています。
 つまり、無権代理人は自らの資格で追認拒絶することができますが、本人の資格で追認拒絶することはできません。


 以上、無権代理の判例になります。
 判例についてもっと詳しく知りたい方は裁判所のウェブサイト等をご覧ください。
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