【通謀虚偽表示】の判例

【通謀虚偽表示】の判例

 通謀虚偽表示についての民事の判例は、以下のようなものがあります。

[名古屋地裁平成18年2月24日判決]
被告が原告に対し、自分の所有する不動産を売却する旨の契約書を作成させたが、実際には売却するつもりはなく、仮装売買であった。その後、原告が不動産を競売で落札し、第三者に転売したが、被告がその不動産に仮差押えをしたため、原告は第三者との契約を解除された。原告は被告に対して損害賠償を請求したが、裁判所は原告と被告との契約が通謀虚偽表示で無効であると判断し、原告の請求を棄却した。

[最高裁判所昭和45年9月22日判決]
被告が原告に対し、自分の所有する土地を売却する旨の契約書を作成させたが、実際には売却するつもりはなく、仮装売買であった。その後、原告が土地を登記しようとしたが、被告がその土地に抵当権を設定していたことが判明した。原告は被告に対して抵当権の抹消登記を求めたが、被告は拒否した。原告は被告に対して抵当権の取消しを請求したが、裁判所は原告と被告との契約が通謀虚偽表示で無効であると判断し、原告の請求を棄却した。

[最高裁判所明治39年12月13日判決]
被告が原告に対し、自分の所有する財産を譲渡する旨の契約書を作成させたが、実際には譲渡するつもりはなく、仮装譲渡であった。その後、原告は財産を引き渡すよう求めたが、被告は拒否した。原告は被告に対して財産引渡しを請求したが、裁判所は原告と被告との契約が通謀虚偽表示で無効であると判断し、原告の請求を棄却した。

 以上の判例からわかるように、通謀虚偽表示は当事者間では無効ですが、善意の第三者に対しては無効を主張できないというのが一般的な法理です。
 しかし、第三者の善意や無過失、対抗要件などについては、学説や判例によって見解が異なる場合があります。


[補足]通謀虚偽表示の取消しの方法や期間


 通謀虚偽表示の取消しの方法は、当事者間では無効を主張することで、第三者に対しては無効を対抗することで行われます。
 無効を主張することは、当該意思表示に基づく法律関係が成立していないことを確認することで、無効を対抗することは、当該意思表示に基づく法律関係が成立していることを否定することです。

 通謀虚偽表示の取消しの期間は、民法上特に定められていません。
 しかし、一般的には、民法167条の時効の規定が参考になります。
 この規定によると、不動産権利や債権などの時効は10年です。
 したがって、通謀虚偽表示から10年以上経過した場合には、取消しの権利が消滅する可能性があります。


 以上、通謀虚偽表示の判例についての解説でした。
 判例についてもっと詳しく知りたい方は裁判所のウェブサイト等をご覧ください。
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