【錯誤】の判例

【錯誤】の判例

 錯誤の種類や要件によって、判例は様々な場合がありますが、ここでは代表的なものをいくつか紹介します。


表示行為の錯誤の事例


契約書の購入代金の欄に「100000円」と記載したつもりが、「1000000円」と書いてしまった場合(最高裁昭和36年5月31日判決)

 この場合、表意者は表示上の錯誤により意思表示を取消すことができます。

契約書の購入代金の欄に「100ドル」と書くべきだったのに1ドルと1ポンドは同じ価値だと誤信していたため「100ポンド」と書いてしまった場合(最高裁昭和32年12月19日判決)

 この場合、表意者は内容の錯誤により意思表示を取消すことができます。


基礎事情の錯誤の事例


馬を良馬だと信じて購入したが、実際は病気であった場合(大審院大正6年2月24日判決)

 この場合、表意者は性状の錯誤により意思表示を取消すことができますが、そのためにはその性状が法律行為の基礎とされていることが表示されていたか、相手方がその性状を知っていたか、重大な過失によって知らなかった場合であることを示さなければなりません。

絵画を本物だと信じて購入したが、実際は贋作であった場合(最高裁昭和45年5月29日判決)

 この場合、表意者はその他の動機の錯誤により意思表示を取消すことができますが、同様にその動機が法律行為の基礎とされていることが表示されていたか、相手方がその動機を知っていたか、重大な過失によって知らなかった場合であることを示さなければなりません。


その他判例


[レオパレス訴訟]

 レオパレス21社が建築基準法違反のマンションを販売したことで、オーナーらが契約解除や損害賠償を求めた訴訟です。
 東京地裁は2020年12月にオーナーらの訴えを認め、レオパレス21社に対して契約解除や約1億円の賠償を命じました。
 判決では、オーナーらはレオパレス21社からマンションが合法的に建築されているという虚偽の情報を受けて契約したため、動機の錯誤があったと判断しました。

【補足】

 2020年4月1日から施行された民法総則改正では、錯誤に関する規定も変更されました。
 改正前は、「法律行為の要素」に錯誤がある場合に無効とされていましたが、改正後は、「法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なもの」である場合に取消しとされました。
 また、動機の錯誤についても明確な規定が設けられました。


動機の錯誤に関する判例


馬を良馬だと信じて購入したが、実際は病気であった場合(大審院大正6年2月24日判決)

 先述にもあった判例です。
 この場合、表意者は性状の錯誤により意思表示を取消すことができます。

絵画を本物だと信じて購入したが、実際は贋作であった場合(最高裁昭和45年5月29日判決)

 こちらも先述にある判例です。
 この場合、表意者はその他の動機の錯誤により意思表示を取消すことができます。


 以上、錯誤に関する判例です。
 もっと詳しく知りたい方は裁判所のウェブサイト等をご覧ください。
→錯誤についてのわかりやすい解説はこちらをご覧ください←
 
関連記事