【寄与分と特別受益と相続分の譲渡】法定相続分の修正~妻の日常労働分は?遺贈との優劣は?わかりやすく解説!

【寄与分と特別受益と相続分の譲渡】法定相続分の修正~妻の日常労働分は?遺贈との優劣は?わかりやすく解説!

▼この記事でわかること
寄与分とは~妻の日常労働は?
寄与分の具体例、遺贈との優劣
特別受益者の相続分
相続した物が滅失していたら?
相続分の譲渡
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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寄与分と特別受益


 相続人間の、実質的な公平を図るために法定相続分を一部修正する仕組みとして、寄与分と特別受益の制度があります。


寄与分


 共同相続人中に、被相続人の財産の維持、増加について特別の寄与をした者がいる場合に、その者を優遇するための仕組みが寄与分の制度です。
 例えば、田舎で農家をしていた父の仕事を、無償に近い形でまめに手伝っていた長男と、東京でサラリーマンをしていた二男の間では、長男を優遇しようという制度です。

 以下の点が寄与分として考慮されます。(民放904条の2第1項)

・被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付
・被相続人の療養看護その他の方法


妻の日常労働は寄与分として評価されるか


 寄与分の要件は、「被相続人の財産の維持、増加について特別の寄与」です。
 妻の日常の家事は、通常の寄与であるから寄与分としては考慮されません。

 民法は、一方配偶者が他方配偶者の面倒をみるのは当然であり、だからこそ配偶者の法定相続分は他の相続人よりも、もともと多めにしていると考えている。
 つまり、妻の日常家事労働の分は、法定相続分にすでに織込み済みであるということです。


寄与分についての具体例


事例
Aが死亡し、その嫡出子BCが相続をした。Aの相続財産の価額が6000万円であり、Bの寄与分が2000万円である。


 さて、この事例で、BCそれぞれの相続分はいくらでしょうか?
 寄与分があるときの相続分は以下のように算定します。
 
1、全体の相続財産の価値から寄与分を引きます。
6000万ー2000万=4000万円

2、上記の金額を各相続人に法定相続分どおりに取得させます。
Bの取り分 4000万×1/2=2000万円
Cの取り分 4000万×1/2=2000万円

3、最後に特別の寄与をした者に寄与分を足します。
Bの取り分 2000万+2000=4000万円

 以上の計算により、
 Bが4000万円
 Cが2000万円を取得します。


【補足】寄与分と内縁の妻

 内縁の妻が特別の寄与をした場合に、寄与分が認められるでしょうか?

 結論。
 認められることはありません。
 その理由は、寄与分を規定する民法904条の2は、その冒頭で「共同相続人中に......」と書いているからです。
 つまり、相続人には寄与分が認められますが、相続人ではない内縁の妻の寄与分を定めた条文は、民法には存在しないのです。


寄与分と遺贈の優劣


 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価値から、遺贈の価額を控除した残額を超えることはできません。(民法904条の2第3項)
 遺贈分を差し引いてから、その限度で寄与分を定めろという意味です。
 つまり、寄与分と遺贈の間では、遺贈が優先することになります。
 故人の意思を優先するという趣旨の規定です。


特別受益者の相続分

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 寄与分の逆バージョンが特別受益者の制度です。(民法903条)
 共同相続人中に被相続人から遺贈を受け、または婚姻、養子縁組もしくは生計の資本として贈与を受けた者があるとき、その者を特別受益者として相続において冷遇をします。

事例
父Aが死亡し妻Bと嫡出の兄弟2人CDが相続をした。相続財産は5000万円である。兄Cは婚姻に際して、生前の父から金1000万円の贈与を受けていた。


 さて、この事例で、BCDそれぞれの相続分はいくらになるでしょうか?
 特別受益者がいるときの相続分は以下のように算定します。

1.相続財産の価額に贈与の価額を加える。
5000万+1000万=6000万円

2.上記の金額を、各相続人に法定相続分どおりに取得させる。
Bの取り分 6000万×1/2=3000万円
Cの取り分 6000万×1/4=1500万円
Dの取り分 6000万×1/4=1500万円

3.最後に特別受益者の取り分から贈与された額を引く。
Cの取り分 1500万ー1000万=500万円

 以上の計算により、
 相続財産である5000万円は、
 Bが3000万円
 Cが500万円
 Dが1500万円を取得します。


【補足】Cが受けた贈与が3000万円の場合

 父Aが死亡し妻Bと嫡出の兄弟2人CDが相続し、相続財産は5000万円である場合に上記の計算をすると、
 Bが4000万円
 Cがマイナス1000万円
 Dが2000万円となります。
 この場合、Cは相続に際して金1000万円を持ち戻す必要があるでしょうか?

 民法903条2項はこれを否定しています。
 上記のケースでは、Cの相続分はゼロとなるが、もらいすぎた形の金1000万円を元に戻す必要はなく、もらいっぱなしでもかまいません。
 その結果、
 Bの相続分は5000万円×2/3
 Dの相続分は5000万円×1/3となります。


相続した物が滅失


 特別受益者が、被相続人の生前に贈与を受けたが、相続開始前には、その物が滅失していたらどうなるでしょうか?
 例えば、貴重な骨董品(金1000万円相当)の贈与を受けたが、これが壊れた場合です。

 このケースにおいては、その滅失が受贈者の行為による場合であれば、その責任を取られます。
 すなわち、相続開始時において、その骨董品はなお原状のままである(壊れていない)ものとみなして、贈与の価額を金1000万円と定めます。(価額の算定基準時は相続開始時)。

 同様の操作は、受贈者の行為により、贈与の目的財産に価額の増減があった場合にも行います。(民法904条)


特別受益者がいる場合の相続分


 Aが死亡し、妻B・子C・子Dがあり、Cが特別受益者で受けるべき相続分がない場合の、相続分の考え方は以下のとおりです。

1.本来の相続分
B:2
C:1
D:1

2.修正後の相続分
CはAの生前に、すでに上記の1の取り分を受領しています。
B:2
C:1
D:1

 以上から、Bの相続分は2/3、Dの相続分は1/3となります。


相続分の譲渡


事例
Aが死亡し、BCDの3名が相続をした。(相続分は各3分の1)。


問1
Dは自己の3分の1の相続分をCに売却できるか?

 結論。
 相続分の譲渡は可能です。
 これは、相続財産に対する相続分という観念的な存在を、まるごと売却(贈与等も可)をする仕組みです。


【補足】遺産分割

 通常の相続事件はつぎのように進行します。

1.法定相続分が決まる。(遺言がなければ民法の規定により自動的に決まる)
 この時点で相続財産は相続人の共有となります。(民法898条)
2.共同相続人間で遺産分割協議を行う。
3.協議の結果、遺産に含まれる個別の資産が、相続人の固有財産となります。


問2
Dは自己の3分の1の相続分を第三者であるEに売却できるか?

 結論。
 できます。
 第三者に対する相続分の譲渡も可能です。

 この場合には、EがDの相続分を取得し、BCEの3人で遺産分割をすることになります。
 この場合、Eは遺産分割の当事者となりますから、自ら家庭裁判所に遺産分割の調停または審判の申立てをすることができます。


【補足】相続分の取戻し

 上記、共同相続人の1人(D)から第三者(E)に相続分が譲渡された場合には、他の共同相続人(BC)は、その価額と費用を賠償して、第三者から相続分を譲り受けることができます。(民法905条1項)
 つまり、EがDに支払った対価と費用を賠償して、Eから相続分を取り戻すことができる訳です。

 これは、相続分が第三者に譲渡されると、アカの他人との遺産分割を余儀なくされる他の共同相続人の便宜を考慮した制度です。
 例えば、上記の事例でBがEから相続分を取り戻せば、相続人はBCの両名となり、アカの他人であるEとの遺産分割を回避できます。
 この場合、BC間で、Bが3分の2、Cが3分の1という相続分を基本として遺産分割をすることになります。


【補足】取戻し期間

 民法905条1項の権利は、1ヶ月以内に行使しなければなりません。(同条2項)
 しかし、この条文には「起点」がありません。
 いつから「1ヶ月」なのかが不明なんです。
 解釈上は、他の共同相続人に相続分譲渡の通知(債権譲渡の通知と同趣旨)がされた時からとされています。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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