【相続欠落と相続廃除】欠落と廃除の違いとは?/欠落&廃除と代襲相続の関係をわかりやすく解説!

【相続欠落と相続廃除】欠落と廃除の違いとは?/欠落&廃除と代襲相続の関係をわかりやすく解説!

▼この記事でわかること
相続欠落とは
相続廃除とは
相続欠落と相続廃除の違い
欠落&廃除と代襲相続の関係
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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 相続欠落と廃除はいずれも、相続権を剥奪する制度です。
 両者の違いは、相続欠落は国のルールとして一定の不正行為をした者に制裁を加えるものであり、廃除は被相続人の感情の問題として特定の相続人の相続権を奪うものであるという点にあります。


相続欠落


 以下の事由に該当すると、相続資格を失います。(民法891条)

・故意に被相続人または相続について先順位もしくは同順位にある者を死亡するに至らせ、または至らせようとしたために、刑に処せられた者。
→故意による殺害が要件です。殺人、殺人未遂、殺人予備は含みますが、傷害致死は含まれません。
→刑に処せられることにより欠落事由に該当します。

・被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、または告訴しなかった者
→その者に是非の弁別がなければ欠落事由に該当しません。
→殺害者が自己の配偶者もしくは直系血族であれば、欠落事由に該当しません。配偶者や直系血族の告発は人情においてしのびないであろうからです。

・詐欺、強迫によって被相続人の遺言、その撤回、取消し、変更を妨げた者。

・詐欺、強迫によって被相続人の遺言、その撤回、取消し、変更をさせた者。

・遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿した者

 相続欠落の事由に該当すると、当然に相続資格喪失の効果が発生します。
 相続欠落は、国のルールとしての制裁であるので、被相続人の意思とは、制度上無関係です。

【参考】相続欠落に関する判例

・被相続人の、相続に関する遺言書が方式を欠き無効であるとき(遺言書に押印がなかった)、遺言者の死後に相続人が押印をしたケースは遺言書の偽造または変造にあたるが、遺言者の意思を実現する目的でなされたときは、その者は相続欠落に該当しない。

・相続に関する遺言書を破棄した場合でも、相続人の破棄行為が相続に不当な利益を目的としていなければ、その者は相続欠落に該当しない。

 以上のように、判例は相続欠落に該当するかどうかについて、その相続人の意図を問題としています。
 その意図が不正でなければ、形式的には偽造、変造、破棄に該当しても相続欠落者とはなりません。


相続廃除


 廃除とは、被相続人の感情を重視し、家庭裁判所の審判、調停により推定相続人の相続権を奪う制度です。
 推定相続人とは、ある人が現時点で死亡したと仮定した場合に相続人となるはずの人のことです。

 廃除の要件は以下の2つです。(民法892条)

・推定相続人に遺留分があること。
→遺留分のない相続人(兄弟姉妹および場合によっては甥姪)の廃除はできません。
 なぜなら、これらの者に相続財産を承継させたくないのであれば、遺言を書けば済むことであるので、わざわざ家庭裁判所に廃除の請求をする必要はありません。
 つまり、廃除は、推定相続人の遺留分を奪う制度です。
 遺留分とは、兄弟姉妹や甥姪以外の法定相続人に保障される、最低限の遺産取得割合です。

・推定相続人が、被相続人に対して虐待、重大な侮辱、その他の著しい非行があった場合。

【補足】兄弟姉妹に遺留分がないわけ

 推定相続人が、被相続人の遺産を承継することをあてにしていた場合、その目論見が外れると、推定相続人の生活が困窮し国家が生活保護をしなければならない事態が生じ得ます。
 この事態を避けるために、推定相続人に一定割合の遺産を与えるための仕組みが遺留分の制度であることはすでに述べました。
 ところで、民法は、子が親の遺産をあてにする、また、親が子の遺産をあてにするというところまでは人情としてこれを許しています。
 しかし、兄弟の遺産をあてにするようでは、人間として失格であると考えています。よって、兄弟姉妹には遺留分がないのです。


相続欠落と廃除の違い

ここがポイント女性

・廃除をすることができるのは遺留分のある推定相続人だけ
→相続欠落はすべての相続人が対象

・廃除は遺言ですることができる。
→遺言による廃除の効果は、死亡にさかのぼる。だから、廃除された者は相続をすることはできません。

・被相続人は、いつでも、廃除の取消しを裁判所に請求できる。(民法894条1項 遺言による取消しも可能)
→相続欠落は国のルールだから、被相続人が「許してやる」という制度は民法上存在しません。

・廃除された者に遺贈をすることは可能。
 単に被相続人の感情の問題だからです。
 廃除はするが、多少の資産は残してやろうと思うのは自由です。
→相続欠落者は、被相続人から遺贈を受けることができません(民法965条)。国による制裁だからです。


欠落&廃除と代襲相続の関係


 代襲相続とは、子に代わって孫が親を相続する仕組みです(孫から見れば祖父を相続)。
 例えば、Aが死亡した場合にAの子のBも死亡していたとき、Bの子CがBに代わってAを相続(代襲相続)することです。
 では、相続欠落&廃除のケースでの代襲相続はどうなるのでしょうか?

事例
Aの子がB、Bの子がCである(CはAの直系卑属)。この状況で、Aが死亡し相続を開始した。


問1.BがAの相続につき欠落事由に該当する場合、Cは代襲相続するでしょうか?
 
 結論。
 Cは代襲相続します(民法887条2項)。つまり、CはAを相続します。

問2.BがAから廃除されている場合、Cは代襲相続するでしょうか?

 結論。
 Cは代襲相続します。(民法887条2項)

問3.Bが相続を放棄した場合、Cは代襲相続しますか?

 結論。
 Cは代襲相続をしません。
 相続の放棄の効力は絶対的です。
 BはもともとAの相続人ではなかったものとみなされます。
 相続人でない者の子が代襲相続をすることは考えられません。

【相続の放棄】

 プラスの相続財産を放棄することもできますが、一般には、相続放棄は被相続人が大借金を残したケースに利用される制度です。 
 相続の放棄は、その旨を家庭裁判所に申述することにより行う。(民法938条)
 申述とは申し述べることです。
 これにより、相続人は一切の負債を免れることができます。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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