【相続人と相続分】誰がどれだけ相続するのか?相続回復請求権とは?わかりやすく解説!

【相続人と相続分】誰がどれだけ相続するのか?相続回復請求権とは?わかりやすく解説!

▼この記事でわかること
相続人と相続分~誰がどれだけ相続するのか?ケース毎に具体的に解説!
同時死亡の推定
相続人の不存在
相続回復請求権とは
相続回復請求権に関する判例紹介
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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相続の基本


 相続についての解説を始めるにあたりまして、まずは相続人および相続分の確定からスタートします。
 わかりやすく、具体的な事例に沿って解説します。

 なお、相続は死亡によって開始します。(民放882条)
 したがいまして、ある人物の相続事件において、その人物の死亡以前に死亡した人には相続人の資格がありません。
 これを同時存在の原則といいます。
 これは、相続の問題を考える上での基本事項です。


相続人と相続分
※すべて「Aが死亡し、誰がどの割合でAを相続するか?」が問題となります。

ケース1
Aと配偶者Bの間には嫡出子Cがいる。


 まず、配偶者常に相続人となります。
 そして、第1順位の相続人です。
 よって、両者が相続人となります。

 配偶者と直系卑属※が相続人となる場合、配偶者の取り分が2分の1と決められています。
 したがって、このケースは、BとCが相続人であり、相続分は両者が2分の1です。
※直径卑属とは直系の子供や孫等のこと。直系尊属は直系の親や祖父・祖母等のこと。この辺りの詳しい解説は「【親族と親等】【血族と姻族とその違い】【相続と戸籍】【親子関係と戸籍の届出】【家族法と財政問題】をわかりやすく解説」をご覧ください。

ケース2
Aには配偶者Bおよびその間の嫡出子C、非嫡出子Dがいる。


 まず、配偶者Bおよび子CDが相続人です。
 この場合、配偶者Bの取り分が2分の1です。
 その残りをCDの2人で分けますが、嫡出子と非嫡出子の相続分は同じです。
 したがって、このケースの相続分は、配偶者Bが4分の2、CおよびDが4分の1ずつです。 

ケース3
Aには配偶者Bおよびその間の嫡出子CDがいた。しかし、DはAの死亡以前に死亡している(子が親に先立った)。Dに子EFがいる


 まず、配偶者Bの取り分が2分の1です。
 その残りを子CDで分けるところですが、DはAの死亡以前に死亡しているので相続しません。
 そこで、Dの取り分をDの子EFが分け合います。
 これを代襲相続といいます。(民法887条2項)

 相続分はEFが各1、Aが2、配偶者Bが4です。
 つまり、Eは8分の1、Fも8分の1、Cが8分の2、Bが8分の4となります。

ケース4
Aには配偶者Bがいる。しかし子はいない。Aに実親X、養親YZがいる場合


 まず、子がいない場合の第2順位の相続人は直系尊属です。
 そして、直径尊属と配偶者が相続人となる場合、配偶者の取り分は3分の2です。
 したがって、この場合、XYZの取り分が各1、配偶者Bの取り分が6です。
 つまり、X・Y・Zはそれぞれ9分の1、Bが9分の6です。

ケース5
Aには配偶者Bがいる。しかし子はいない。Aに実親XおよびYがいたが、YはAの死亡以前に死亡した。しかし、Yの親Zは存命である。


 相続人は配偶者BとXのみです。
 直系尊属が相続人となる場合は、親等の近いものが先順位です。
 つまり、この場合、代襲相続の逆パターンは存在しないのです。

 結論として、このケースの相続人はBとXであり、相続分はB3分の2、X3分の1です。
 もっとも、本事例で、XYの双方が死亡していれば、Zは相続します。(代襲相続ではない)

ケース6
Aには配偶者Bがいる。しかし、Aに子と直径尊属はいない。Aには同じ両親から生まれた弟YZがいる。しかし、ZはAの死亡以前に死亡した。Zに子Cがいる場合。


 まず、子および直径尊属がいない場合の第3順位の相続人は兄弟姉妹です。
 そして、兄弟姉妹と配偶者が相続人となる場合、配偶者の取り分は4分の3です。
 この事例の相続人は、配偶者Bおよび弟Y、弟Zを代襲するZの子C(甥または姪)です。
 相続分は、YCが各1、配偶者Bが6です。
 つまり、Yが8分の1、Cが8分の1、Bが8分の6です。

【補足】甥の子は相続するか

 ケース6で、Aの死亡以前にCが死亡しその子Dがいたとしても、DはCを再代襲しない。(民法889条2項は887条2項を準用するが、887条3項を準用していない)
 つまり、甥の子が、祖父を相続分することはあり得ない。
 この点、被相続人のひ孫が相続し得ることと相違があります。
 通常、甥の子と祖父は、顔も知らない仲ということが多いでしょう。
 なので、民法は相続人の範囲を甥姪のところで打ち切っているのです。

ケース7
Aには配偶者Bがいる。しかし、Aに子とに直系尊属はいない。Aには同じ両親から生まれた弟Yと、片親を共通するZがいる。


 まず、このケースでは、両親が同じ弟であるYの取り分がZの倍となります。
 したがって、相続分は、Zが1、Yが2、配偶者Bが9です。
 つまり、Zが12分の1、Yが12分の2、Bが12分の9です。

ケース8
Aは配偶者Bと死別している。AB間には嫡出子CDがいるが、DはAの死亡以前に死亡している。AはDの子Eと養子縁組をしている。


 まず、このケースでは、CおよびEが相続人となります。
 問題は、Eが養子としての取り分の他に、Dの代襲相続人としての地位において相続をすることができるという点です。
 結論をいえば、相続できます。
 したがって、Cの相続分が3分の1、Eの相続分が3分の2です。

 孫を養子とするケースは、実務でもわりと見かけます。
 この場合、当事者の意思として孫を跡取りと考えています。
 したがって、養子となった孫の、二重の資格での相続を認めても不合理ではないのです。

ケース9
AはYZ夫婦の養子となった。YZ間には嫡出子BおよびCがいるが、AはBと婚姻をした。Aに子がなく、YZおよびAの実親もすでに他界している。


 ます、BはAの配偶者でもあり兄弟姉妹でもあります。
 この場合に、Bが配偶者の他に兄弟姉妹の地位における相続分を主張することができるでしょうか?

 結論。
 これはできません。
 基本的に民法は、配偶者の取り分を多めに設定していると考えています。
 したがって、この場合、二重の資格での相続は認められません。
 このケースではBの相続分が4分の3、Cの相続分が4分の1です。


同時死亡の推定


 例えば、親子が死亡したが、どちらが先に死亡したかが不明な場合があります。
 同一の事故で死亡した場合もあるし、一方は病院で死亡し年月日時分まで明確であるが、他方の死期が曖昧であって先後が不明な場合もあります。

 この場合には、親子は同時に死亡したものと推定されます。(民法32条の2)
 その結果、親子は、お互いがお互いを相続しないという結論となります。

 なお、この場合に孫が存在すれば、孫が代襲相続をすることは可能です。


相続人の不存在


 相続人がいない、あるいは、いるかどうかが不明な場合には、相続財産は法人となります。
 この場合の手続の概略は、以下のとおりです。

1・家庭裁判所が相続財産管理人の選任をする。

2・相続人探索、相続債権者および受遺者に対する公告をする
 →相続人がいた場合、手続終了します。

3・相続人不存在が確定した場合
 →相続財産管理人が相続債権者および受遺者に弁済をします。
 →残余財産が、特別縁故者(例えば内縁の妻)への分与の対象となります。(民法958条の3)
 →特別縁故者の申し出がないか、あっても家庭裁判所に認められなかった場合には、相続財産は国家に帰属します。(民法959条)
 ただし、相続財産が共有持分権であれば他の共有者に帰属します。(民法255条)


相続回復請求権


 表見相続人(相続人ではないが相続人らしい外観をする者)が、相続財産を侵害している場合に、真実の相続人は相続回復の請求をすることができます。(民法884条)
 この請求権は、相続人(または法定代理人)が、相続権を侵害された事実を知った時から5年間、あるいは、相続開始時から20年間経過すると時効により消滅します。
 この制度は、短期の消滅時効期間を設け、相続権の帰属に伴う法律関係を早期に確定させる趣旨であると言われています。


相続回復請求権に関する判例アラカルト

26家庭裁判所
1・相続回復請求権の5年の短期消滅時効の起算時である「相続権を侵害された事実を知る」とは、単に相続開始の事実を知るだけでなく、自分が真正相続人であることを知り、かつ、自分が相続から除外されていることを知るということを意味する。

2・共同相続人のうちの1人または数人が、相続財産のうち自己の本来の持分を超える部分についても自己の相続分であると主張してこれを占有管理し、真正相続人の相続権を侵害している場合、本条の適用を否定する理由はないが、その者が悪意であり、またはそう信じることについて合理的な理由がない場合には、他の共同相続人からの損害の排除の請求に対して相続回復請求権の時効を援用することができない。

3・相続回復請求権の消滅時効を援用しようとする者は、相続権侵害の開始時点において、他に共同相続人がいることを知らず、かつこれを知らなかったことに合理的理由があったことを主張立証しなければならない。

4・単独相続の登記をした共同相続人の1人が、本来の持分を超える持分が他の共同相続人に属することを知っていたか、あるいは単独相続をしたと信じるについて合理的理由がないために、他の共同相続人に対して相続回復請求権の消滅時効を援用できない間は、その者から不動産を譲り受けた第三者も消滅時効を援用できない。

 以上、相続回復請求権の消滅時効が成立するかどうかに関する判例です。
 これらは、時効が成立すれば相続回復が不可能となるので、最高裁まで事件がもめているのです。
  
 基本的に、2~4の判例の趣旨は、長男が「財産は全部俺のものだ」と、他の兄弟がいることを知りつつ遺産を独り占めしているケースにおいては、長男が相続回復請求権の5年の短期消滅時効を援用することはできないということです。(そんなヤツの時効の主張は許されない)

 なお、民法884条は、元来は全く相続権のない者が、真正相続人の相続権を侵害している場合を典型例として規定しています。
「共同相続人のうちの1人または数人が~真正相続人の相続権を侵害している場合、本条の適用を否定する理由はないが」というのは、そういう意味です。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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