【債権譲渡の対抗要件】確定日付ある証書/債務者の承諾/債権譲渡と相殺

▼この記事でわかること
債権譲渡の対抗要件の基本
債権譲渡の通知が二重でされた場合
債務者の承諾
債権譲渡と相殺
(上記クリックorタップでジャンプします)
 今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。
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債権譲渡の対抗要件の基本

 債権は自由に譲渡できます。
 そして、債権譲渡の対抗要件(法律の保護のもと主張するための要件)は、債務者への通知または債務者の承諾です。
 では、次のような場合は、一体どうなるのでしょうか?

事例1
AはBに対して500万円の貸金債権を持っている。Aはこの債権をCに譲渡しBにその事実を通知した。つぎに、Aはこの債権をDにも譲渡し、Bに確定日付ある証書でその事実を通知した。


 さて、この事例1で、Bの債権者はCになるのでしょうか?それともDになるのでしょうか?
 Aは、Bに対する貸金債権を、CにもDにも譲渡しています。
 つまり、これは債務者Bへの債権をめぐるCvsDの対決です。
 もっと正確に言えば
(ただの通知あり)BvsD(確定日付ある証書の通知あり)
です。

債権譲渡前
債権者 債務者
 A → B

[債権譲渡が行われる]
譲渡人 譲受人
 A → C
   ↑
債権譲渡(通知あり)

[さらに債権譲渡が行われる]
譲渡人 譲受人
 A → D
   ↑
債権譲渡(確定日付ある証書通知あり)

債権譲渡後
債権者 債務者
 C → B

債権者 債務者
 D → B

Bの債権者はC or D?

 これが不動産であれば、先に「登記」を備えた者が勝ちます。不動産においては「登記」が対抗要件だからです。
 では、債権譲渡においての対抗要件とは何になるのでしょう?
 まずは、民法の条文を見てみましょう。

(債権の譲渡の対抗要件)
民法467条2項
前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の
第三者に対抗することができない。

 この民法467条2項の条文によると「確定日付のある証書によってしなければ~対抗することができない」とあります。
 確定日付とは、当事者が後に変更することの不可能な公的な日付です。わかりやすい具体例としては、公正証書の日付、内容証明郵便の郵便局が記載する日付などがあります。
 つまり、確定日付のある債権譲渡の通知を備えた方が勝つということです。
 なんで確定日付が必要なの?
 確定日付ある証書(債権譲渡の通知)を対抗要件にすれば、例えばBとCが結託して「Cの方が先でしたよ」とウソをつくこともできなくなります。
 このような形で、CvsDの公平な対決ができることになります。

 では改めて、事例1で、Bの債権者はCになるのでしょうか?それともDになるのでしょうか? 
 もう答えは出ましたね。
 結論。Bの債権者は、確定日付のある通知を具備したDになります。
 債務者Bへの債権をめぐるCvsDの対決の勝者はDになります。
 よって、債務者Bが支払い義務を負うのはDに対してです。Cではありません。
 たとえCがBに請求書を送ったところで、Bは応じる必要はありません。
 あれ?じゃあCにした確定日付のない債権譲渡の通知は無意味なの?
 そういう訳ではありません。
 確定日付のある債権譲渡の通知は「債務者以外の第三者」に対する対抗要件です。なので、確定日付のない通知でも、債務者に対しては対抗できます。
 したがって、Dに対しては対抗できないCですが、確定日付はないものの譲渡の通知はあるので、債務者Bに対しては債権譲渡を対抗することができます。
 なので、もしD(第三者)が登場しなければ、Cは堂々とBの債権者としてその債権を行使することができます。

AC間とAD間の債権譲渡の通知
どちらも確定日付ある証書でされた場合

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 債務者以外の第三者に対する債権譲渡の対抗要件は、確定日付のある証書による通知です。
 では、DだけでなくCも確定日付ある証書による通知を受けていた場合、どうなるのでしょう?
 この場合、早い者勝ちとなります。
 では、早い者勝ちの「早い」とは、何が早いことを指すのでしょうか?
 次の2つの考え方ができます。
1、確定日付の「日付」の前後
2、確定日付ある証書が債務者に「到着した時間」の前後
 結論。判例は2の考え方を採用します。
 え?でもそれってちょっと曖昧じゃね?
 そうかもしれません。しかし、民法は債権譲渡の対抗要件については、あくまで債務者を不動産においての登記簿のように考えています。  
 不動産は早く登記した者勝ちです。したがって、登記簿である債務者に早く着いた者の勝ちという2の考え方に帰着するという訳です。
 なお、対抗問題は国のルールです。契約自由の原則が立ち入れることではありません。

【補足】債権譲渡登記
 実は、法人の金銭債権については、債権譲渡の登記をすることができます。
 この登記は、確定日付ある証書による通知とみなされ、これによって第三者対抗要件を備えることができます。
 しかし、この場合でも、債務者に対する対抗要件は債務者への通知または承諾になります。

ちょこっとコラム
債権譲渡通知の同時到達


 ところで、CD両者に送った確定日付ある債権譲渡の通知が2通同時に到着した場合はどうなるのでしょうか?
 つまり、AC間の債権譲渡とAD間の債権譲渡の関する通知が、同時に郵便局から配達されたケースです。
 そしてなんと、民法はこの事態を想定していません。
 なので、こうなると困った事態になります。
 このケースで、判例は、債務者は同順位の譲受人が他に存在することを理由として弁済の責任は免れるとはできないとしています。
 しかし、これが、債務者に「二重払いをせよ」という意味であるわけがありません。
 そのため、その先の解決法をどうするかが不明という事態になっています。

差押通知と債権譲渡通知の同時到達

 上記に続いて、差押通知と債権譲渡通知の同時到達というケースも存在します。
 つまり、AB間の債権をCが差押えをし、またAD間の債権譲渡を確定日付ある証書でし、その両通知が同時になされたケースです。
 この場合、判例では次のような論理を展開します。
1・裁判所からの差押命令とAからの債権譲渡通知が債務者Bに送付された
2・だがその到達の前後が不明
3・この場合は同時到達とみなす
4・なのでCとDはお互いに優先権を主張できない
5・債務者Bがその債務にあたる金員を供託した場合、CとDは相互の債権額に按分して供託金の還付を(つまり支払いを)受けることになる

債務者の承諾

 債権譲渡の対抗要件には、債権譲渡の通知だけでなく、債務者の承諾もあります。

事例2
債務者Bは、Aに対して弁済をした。その後、Aがその債権をCに譲渡し、それを債務者Bは承諾した。


 さて、この場合、債務者Bは、Aに弁済した事をCに対抗することができるでしょうか?
 結論。債務者BはCに対抗することができます。
 なんか当たり前じゃね?
 はい。ですが実は、民法改正前は、事例2のケースで債務者Bが「異議を留めずに承諾」した場合、なんとBは、Aに弁済した事をCに対抗することができませんでした。
 しかし、民法改正により、その「異議を留めない承諾」による抗弁の喪失の仕組みは廃止となりました。
 債権譲渡の当事者でもない債務者が、単にこれを承諾したのみで、その債務者に予期しない結果が生じることを不当と考えたからです。
 なお、債務者の承諾は、譲渡人と譲受人、どちらに対してしても有効です。
 
債権譲渡と相殺
女性講師
 続いて、債権譲渡に相殺が絡んだケースを解説して参ります。
(相殺についての詳しい解説は「【相殺の超基本】自働債権と受働債権って何?」をご覧ください)
 まずは事例をご覧ください。

事例3
Bを債務者とする債権(甲債権)を、AがCに譲渡した。その債権譲渡の通知の前に、Bが譲渡人Aへの反対債権(乙債権)を取得した。


 さて、この事例で、債務者Bは、Aに対する反対債権(乙債権)による相殺を、譲受人Cに対抗できるでしょうか?

[債権譲渡前(甲債権)
債権者 債務者
 A → B

[債権譲渡が行われる(甲債権)]
譲渡人 譲受人
 A → C
   ↑
[この債権譲渡通知の前に]
譲渡人 債務者
 A ← B
   ↑
反対債権取得(乙債権)
この債権による相殺をBはCに対抗できる?

 結論。債務者Bは、譲受人Cに対し相殺を対抗できます。
 したがって、債務者Bは、譲受人Cから(甲債権による)弁済を請求をされても拒むことが可能です。
 なお、Bが相殺を対抗することについて、甲債権と乙債権どちらも弁済期の前後は問いません。

さらに保証債務が絡んだケース

 続いては、こちらの事例をご覧ください。

事例4
Bを債務者とする債権(甲債権)を、AがCに譲渡した。その債権譲渡の通知より前に、BはAの委託により第三者と保証契約をしていた。その後、債権譲渡の通知より後に、Bが保証債務を履行し、Aに対する求償権(乙債権)を取得した。


 今度は保証債務も絡んできて、なんだかかなりややこしくなって来ました。
 ですので、まずは、わかりやすくするため簡単に事例を整理します。
債権譲渡前、AはBの債権者です。

債権者 債務者
 A → B
   (甲債権)

同時に、Aは第三者に対する(乙債権)の債務者でもあります。

債務者 債権者
 A ← 第三者
   (乙債権)

くわえて、Bは、Aの委託により乙債権の保証人、すなわちAの保証人です。そして、これはAからCへの甲債権の債権譲渡の通知より前(対抗要件具備時より前)のことです。

[債権譲渡が行われる(甲債権)]
譲渡人 譲受人
 A → C
   ↑
[この債権譲渡の通知前]
債務者 債権者
 A ← 第三者
   ↙(乙債権)
  B
 保証人

 その後、AからCへの甲債権の債権譲渡の通知の後(対抗要件具備時より後)に、Aの保証人でもある債務者Bが第三者に対してその保証債務を履行します。そして、債務者Bが主債務者でもあるAに対し求償権(乙債権)を取得する、というのが事例4の一連の流れになります。

[債権譲渡通知後(甲債権)]
(主債務者)
 譲渡人 債務者
  A ← B
    ↑
 求償権取得(乙債権)

 さて、ではこの事例4で、債務者Bは、Aに対する乙債権(求償権)を自動債権とする相殺を、譲受人Cに対抗することができるでしょうか?
 結論。債務者Bは乙債権による相殺を譲受人Cに対抗することができます。
 なお、この仕組みは、民法改正により新設されたものです。
 改正後の民法では、次の場合、債務者が譲渡人への相殺を、譲受人に対抗できます。

1・B(債務者)のA(債権者)への反対債権(乙債権)の発生原因がある
2・対抗要件具備(債権譲渡の通知または債務者の承諾)
3・その後に乙債権が生じた

 上記は、1から3へ時系列順となっています。
 改正民法は、債務者が相殺できる場面を拡大しました。
 債務者の相殺への期待権をより強く保護したしたという訳です。
  
 続いて、今度はこちらの事例をご覧ください。

事例5
B(注文者)を債務者とする将来の請負代金債権(甲債権)を、A(工務店)が、Cに譲渡した。その対抗要件具備の後に、AとCがその請負契約をした。


 では、この事例5で、Bはその請負契約によって生じたAへの損害賠償請求権(乙債権)による甲債権の相殺をCに対抗することができるでしょうか?
 結論。対抗できます。
 これも、民法改正により新設された仕組みです。
 次の時系列の場合、債務者は譲渡人への相殺を対抗することができます。

1・AB間の契約(Z契約とする)により生じる将来債権(甲債権)をAがCに譲渡する
2・対抗要件具備(債権譲渡の通知または債務者の承諾)
3・その後にABが契約を締結する
4・BがZ契約による反対債権(乙債権)を取得する

 この仕組みは、AB間の取引の継続を前提にしています。
 同一契約から生じる反対債権による相殺(事例では請負代金債務の相殺)への期待は、より強く保護されるべきであるという思想に基づく規定です。


 というわけで、今回は以上になります。
 宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。
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Author:根本総合行政書士
東京都行政書士会所属
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行政書士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、個人情報保護士、情報セキュリティマネジメント、マイナンバー実務検定1級

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