
【損害賠償の範囲】どこまでの損害を賠償するのか?損害賠償額の予定とは?初学者にもわかりやすく解説!
▼この記事でわかること
・損害賠償の範囲
・損害賠償額の予定とは
(上記クリックorタップでジャンプします)
今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者にもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。

損害賠償の範囲
損害賠償の請求、という言葉は様々なケースで登場します。
そして、あるケースで〇〇は〇〇に対し損害賠償の請求ができるのか?ということがよく問題となります。
では、いざ損害賠償の請求ができるとき、その損害のどこまでを賠償請求できるのでしょうか?
事例1
Aは養鶏業者Bにヒヨコ10羽を納入した。しかし、そのうちの1羽が病気であった。その後、病気が伝染しヒヨコが全滅、さらに養鶏場の鶏にも伝染し大被害が出た。また、養鶏業者Bも心労から病気になり入院した。
この事例1で、病気のヒヨコを納入したのはAのミス・落ち度です。
その結果として、債務の履行はあったがそれは債務の本旨に従ったものではなく債務不履行となった、というケースになります。
このケースで、養鶏業者BはAに対し損害賠償の請求ができます。
さて、ここでこんな問題が浮上します。
Aは養鶏業者Bに対し、どの範囲までの損害賠償の責任を負うのでしょうか?
Aが健康なヒヨコ1羽の給付義務を負うのはもちろんですよね。
ですが、病気のヒヨコ1羽の代償として養鶏業者Bの入院加療費用まで賠償責任を負うことになるのでしょうか?
民法416条では、次のように規定します。
・原則として債務不履行により通常生ずる損害賠償の範囲
・例外として「特別の事情」を当事者が予見すべきであったときは、その特別の事情により生じた損害の範囲
したがいまして、上記の基準を事例ごとに当てはめて、損害賠償の範囲を考えることになります。
なお、特別の事情を予見すべき「当事者」とは、債務者(事例のA)を指すのが通説です。
つまり、債権者(事例のB)にとって予見可能でも、債務者が予見できなかったことを賠償させるのは酷だという考えです。
この考え方を、相当因果関係説といいます。
養鶏業者Bにも過失があった場合
養鶏場の衛生状態が悪かったために被害が拡大したような場合、つまり、養鶏業者Bの側にも過失があった場合はどうなるのでしょうか?
仮にヒヨコを納入したAの側に損害賠償義務があるとしても、この場合にAに全損害の賠償をさせるのはちょっと不公平ですよね。
ということで、民法は次のように規定します。
(過失相殺)
民法418条
債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。
この民法418条の規定により、裁判所は、養鶏業者Bに過失がある場合には、損害賠償の額を減額し、場合によっては納入者Aの責任ナシとすることも可能です。
損害賠償額の予定
損害賠償額の予定とは、不履行の場合の賠償額を事前に決める契約です。
事例2
工務店AはBとの間で、建物新築の請負契約をし、納期から1日遅れるごとに10万円という損害賠償の予定をした。そして、Aの納期は10日遅れた。
さて、この事例2で、何も損害が生じていなくても、工務店AはBに対して1日10万×10日分=100万円を支払うべきでしょうか?
結論。
工務店AはBに対し100万円を支払うべきです。
なぜなら、それが契約内容だからです。
したがいまして、BはAの債務不履行の事実(納期から遅れたこと)を立証すれば、損害額の立証をせずとも100万円もらえます。
では、続いて、次の場合はどうなるでしょう?
Bに200万円の損害が生じていた場合
この場合、Bは工務店Aに対し100万円の請求ができるのみです。
なぜなら、1日10万円という合意に拘束力があるからです。
つまり、それが契約内容だからということです。
では、続いて、次の場合はどうなるでしょう?
Aの納期が遅れた事はBの不手際も原因だった場合
債務不履行について、債権者側(事例のB)に過失がある場合、特段の事情がなければ、裁判所は過失相殺をすることができます。
よってこの場合は、Bの不手際=Bの過失の割合に応じて、予定賠償額から減額します。
というわけで、今回は以上になります。
宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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・損害賠償の範囲
・損害賠償額の予定とは
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今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、初学者にもわかりやすく学習できますよう解説して参ります。

損害賠償の範囲
損害賠償の請求、という言葉は様々なケースで登場します。
そして、あるケースで〇〇は〇〇に対し損害賠償の請求ができるのか?ということがよく問題となります。
では、いざ損害賠償の請求ができるとき、その損害のどこまでを賠償請求できるのでしょうか?
事例1
Aは養鶏業者Bにヒヨコ10羽を納入した。しかし、そのうちの1羽が病気であった。その後、病気が伝染しヒヨコが全滅、さらに養鶏場の鶏にも伝染し大被害が出た。また、養鶏業者Bも心労から病気になり入院した。
この事例1で、病気のヒヨコを納入したのはAのミス・落ち度です。
その結果として、債務の履行はあったがそれは債務の本旨に従ったものではなく債務不履行となった、というケースになります。
このケースで、養鶏業者BはAに対し損害賠償の請求ができます。
さて、ここでこんな問題が浮上します。
Aは養鶏業者Bに対し、どの範囲までの損害賠償の責任を負うのでしょうか?
Aが健康なヒヨコ1羽の給付義務を負うのはもちろんですよね。
ですが、病気のヒヨコ1羽の代償として養鶏業者Bの入院加療費用まで賠償責任を負うことになるのでしょうか?
民法416条では、次のように規定します。
・原則として債務不履行により通常生ずる損害賠償の範囲
・例外として「特別の事情」を当事者が予見すべきであったときは、その特別の事情により生じた損害の範囲
したがいまして、上記の基準を事例ごとに当てはめて、損害賠償の範囲を考えることになります。
なお、特別の事情を予見すべき「当事者」とは、債務者(事例のA)を指すのが通説です。
つまり、債権者(事例のB)にとって予見可能でも、債務者が予見できなかったことを賠償させるのは酷だという考えです。
この考え方を、相当因果関係説といいます。
養鶏業者Bにも過失があった場合
養鶏場の衛生状態が悪かったために被害が拡大したような場合、つまり、養鶏業者Bの側にも過失があった場合はどうなるのでしょうか?
仮にヒヨコを納入したAの側に損害賠償義務があるとしても、この場合にAに全損害の賠償をさせるのはちょっと不公平ですよね。
ということで、民法は次のように規定します。
(過失相殺)
民法418条
債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。
この民法418条の規定により、裁判所は、養鶏業者Bに過失がある場合には、損害賠償の額を減額し、場合によっては納入者Aの責任ナシとすることも可能です。
損害賠償額の予定
損害賠償額の予定とは、不履行の場合の賠償額を事前に決める契約です。
事例2
工務店AはBとの間で、建物新築の請負契約をし、納期から1日遅れるごとに10万円という損害賠償の予定をした。そして、Aの納期は10日遅れた。
さて、この事例2で、何も損害が生じていなくても、工務店AはBに対して1日10万×10日分=100万円を支払うべきでしょうか?
結論。
工務店AはBに対し100万円を支払うべきです。
なぜなら、それが契約内容だからです。
したがいまして、BはAの債務不履行の事実(納期から遅れたこと)を立証すれば、損害額の立証をせずとも100万円もらえます。
では、続いて、次の場合はどうなるでしょう?
Bに200万円の損害が生じていた場合
この場合、Bは工務店Aに対し100万円の請求ができるのみです。
なぜなら、1日10万円という合意に拘束力があるからです。
つまり、それが契約内容だからということです。
では、続いて、次の場合はどうなるでしょう?
Aの納期が遅れた事はBの不手際も原因だった場合
債務不履行について、債権者側(事例のB)に過失がある場合、特段の事情がなければ、裁判所は過失相殺をすることができます。
よってこの場合は、Bの不手際=Bの過失の割合に応じて、予定賠償額から減額します。
というわけで、今回は以上になります。
宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
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