
▼この記事でわかること
・根抵当権の元本確定についての考え方
・確定期日を定めた場合
・確定請求の場合
・1・2・3・4号確定
・3号確定と4号確定の問題
(上記クリックorタップでジャンプします)
今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。

根抵当権の元本確定
ますはじめに、根抵当権の元本確定についての基本的な考え方は、根抵当権者の利益の保護ということにあります。
どういうことかといいますと、例えば、銀行取引が債権の範囲である場合、銀行が、根抵当権により担保されるものと思って債務者に融資したところ実はすでに元本の確定事由が発生していた、というような場合には、この貸付金が無担保債権になってしまうからです。
つまり、銀行に不測の損害を与える可能性があるからです。
そこで、この可能性をいかに防止するかという点を考慮されます。
それでは、元本確定について、わかりやすくパターン毎に解説して参ります。
元本確定期日を定めた場合
この場合、その期日をもって元本確定します。
そして、元本確定期日の登記をしていなくても合意の効力は生じます。
また、元本確定期日の変更は可能です。(民法398条の6 1項)
なお、元本確定期日は、その設定または変更の時から5年以内の範囲で定めなければなりません。(民法398条の6 3項)
ちなみに、元本確定期日の変更は、その変更前の期日より前に登記しなければ、担保すべき元本は、その変更前の期日に確定します。(民法398条の6 4項)
つまり、令和3年12月22日が確定期日として登記されている場合、同年同月21日までにその変更の登記をしない限りは、たとえ当事者間で期日を延長する合意をしていたとしても、根抵当権は令和3年12月22日をもって確定します。
元本確定請求の場合
・設定者の元本確定請求
確定期日の定めのない場合、設定から3年を経過すると、設定者は元本確定請求をすることができます。(民法398条の19 1項)
これは、長期にわたる設定者の担保負担を防止する仕組みです。
請求すると「その請求から2週間の経過」をもって確定します。(民法398条の19 1項)
2週間の期間を置いてから確定する理由ですが、根抵当権者の不測の損害を防ぐためです。
・根抵当権者の元本確定請求
確定期日の期日の定めのない場合、根抵当権者は、いつでも元本確定請求をすることができます。(民法398条の19 2項)
これは、銀行が取引先を見放したケースです。根抵当権者の「請求の時」に確定します。(民法398条の19 2項)
なぜ、この場合は「2週間の経過」という期間がないのかというと、銀行(根抵当権者側)が確定請求したので、銀行に不測の損害があるわけないですよね。
なので、2週間の経過を待たず「請求の時」に確定するのです。
なお、このケースでは、根抵当権者は元本確定登記を単独申請できます。
通常は、根抵当権の元本確定登記は、根抵当権者を義務者、設定者を権利者として登記します。
しかし、根抵当権者による確定請求の場合は、そもそも設定者は夜逃げしているかもしれません。
したがって、このケースでは、例外的に根抵当権者は元本確定登記を単独申請できるとしているのです。
民法398条の20の確定事由
【1号確定】
これは、根抵当権者が抵当権不動産につき、競売もしくは担保不動産収益執行または物上代位による差押えを申し立てたケースです。
この場合、申立て時に確定します。
ただし、これは、競売手続、担保不動産収益執行が開始しまたは差押えがあったときに限ります。
なお、このパターンは根抵当権者が自ら競売等を申し立てた事例です。
つまり、根抵当権に不測の損害はありません。
したがって、申立て時に即座に確定します。
【2号確定】
これは、根抵当権者が抵当不動産に対して滞納処分による差押えをしたケースです。
この場合、差押えの時に確定します。
ちなみに、このケースでの滞納処分とは、相続税や固定資産税の滞納のことです。
そして、このケースも1号確定と同様根抵当権者自らの差押えですが、2号確定では、債権者が国または地方公共団体になります。
【3号確定】
これは、根抵当権者が、抵当不動産に対する競売手続の開始または滞納処分による差押えがあったことを知ったときの確定です。
この場合、根抵当権者がその事実を知ってから2週間の経過で確定します。
この3号確定パターンは、例えば、1番抵当権者が競売の申立てをして、その手続の開始を2番根抵当権者が知ったケースです。
この場合、2番根抵当権は、根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始等を知った時から2週間を経過した時に確定します。
この2週間という期間も、いきなり確定すると根抵当権者に不測の損害が生じる可能性があるためです。
【4号確定】
これは、債務者または根抵当権設定者が、破産手続開始の決定を受けたときの確定です。
この場合、開始決定の時に確定します。
このケースは破産事件に進行するので、破産債権を打ち止めにする趣旨です。
3号確定と4号確定の問題

この2つの確定の場合、根抵当権者の関与がないままに根抵当権が元本確定してしまいます。
そのため、これらの手続が滞ったときに、逆転ホームランで、根抵当権が元本確定しなかったものとみなされるケースが生じます。
・3号確定の場合
競売手続開始または差押えの効力が消滅したときです。
例えば、先の例(1番抵当権者が競売の申立てをして、その手続の開始を2番根抵当権者が知ったケース)で、1番抵当権者が申立てを取り下げた場合です。
・4号確定の場合
破産手続開始の効力が消滅したときです。
ただし、ここで、さらに逆転ホームランを打たれる可能性もあります。
というのは、根抵当権が確定したものとして、これを取得した第三者が現れた場合、その第三者の利益のために、やはり根抵当権の元本は確定となります。
ちなみに、このケースでの「第三者」とは、整理回収機構のようなものと考えてください。
もっとわかりやすく言えば、銀行の根抵当権の被担保債権を、不良債権処理のために買った人です。
なお、この場合、根抵当権の元本が確定していれば、根抵当権は抵当権と化して、債権とともに第三者(整理回収機構)に移転します。
しかし、元本が確定していないとみなされてしまえば、枠(確定前根抵当権)はピクリとも動かず銀行のものです。
それでは困るので、再度の逆転ホームランがあるのです。
なお、そのケースで、銀行(根抵当権者)は根抵当権の元本確定の登記を単独申請することができます。
【補足】
1号確定か3号確定かがわかづらいものもあります。
以下に2つのケースを挙げます。
・根抵当権についての転抵当権者が競売等を申し立てたケース
この場合、根抵当権者は競売等を申し立てていません。
申立てをしたのは、根抵当権の転抵当権者であり根抵当権者自身ではありません。
したがいまして、これは3号確定のケースとなります。
・共有根抵当権について共有者の一方が競売等を申し立てたケース
この場合は、根抵当権者が競売等を申し立てています。
したがいまして、これは1号確定のケースです。
そして、申立てをした者以外の根抵当権の共有者がこれを知らなくても、根抵当権の元本は確定します。
(共有根抵当について詳しい解説は「【共同根抵当権と共有根抵当権】その特徴と違い/累積根抵当とは?わかりやすく解説!」をご覧ください)
というわけで、今回は以上になります。
宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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・根抵当権の元本確定についての考え方
・確定期日を定めた場合
・確定請求の場合
・1・2・3・4号確定
・3号確定と4号確定の問題
(上記クリックorタップでジャンプします)
今回はこれらの事について、その内容、意味、結論、理由など、わかりやすく学習できますよう解説して参ります。

根抵当権の元本確定
ますはじめに、根抵当権の元本確定についての基本的な考え方は、根抵当権者の利益の保護ということにあります。
どういうことかといいますと、例えば、銀行取引が債権の範囲である場合、銀行が、根抵当権により担保されるものと思って債務者に融資したところ実はすでに元本の確定事由が発生していた、というような場合には、この貸付金が無担保債権になってしまうからです。
つまり、銀行に不測の損害を与える可能性があるからです。
そこで、この可能性をいかに防止するかという点を考慮されます。
それでは、元本確定について、わかりやすくパターン毎に解説して参ります。
元本確定期日を定めた場合
この場合、その期日をもって元本確定します。
そして、元本確定期日の登記をしていなくても合意の効力は生じます。
また、元本確定期日の変更は可能です。(民法398条の6 1項)
なお、元本確定期日は、その設定または変更の時から5年以内の範囲で定めなければなりません。(民法398条の6 3項)
ちなみに、元本確定期日の変更は、その変更前の期日より前に登記しなければ、担保すべき元本は、その変更前の期日に確定します。(民法398条の6 4項)
つまり、令和3年12月22日が確定期日として登記されている場合、同年同月21日までにその変更の登記をしない限りは、たとえ当事者間で期日を延長する合意をしていたとしても、根抵当権は令和3年12月22日をもって確定します。
元本確定請求の場合
・設定者の元本確定請求
確定期日の定めのない場合、設定から3年を経過すると、設定者は元本確定請求をすることができます。(民法398条の19 1項)
これは、長期にわたる設定者の担保負担を防止する仕組みです。
請求すると「その請求から2週間の経過」をもって確定します。(民法398条の19 1項)
2週間の期間を置いてから確定する理由ですが、根抵当権者の不測の損害を防ぐためです。
・根抵当権者の元本確定請求
確定期日の期日の定めのない場合、根抵当権者は、いつでも元本確定請求をすることができます。(民法398条の19 2項)
これは、銀行が取引先を見放したケースです。根抵当権者の「請求の時」に確定します。(民法398条の19 2項)
なぜ、この場合は「2週間の経過」という期間がないのかというと、銀行(根抵当権者側)が確定請求したので、銀行に不測の損害があるわけないですよね。
なので、2週間の経過を待たず「請求の時」に確定するのです。
なお、このケースでは、根抵当権者は元本確定登記を単独申請できます。
通常は、根抵当権の元本確定登記は、根抵当権者を義務者、設定者を権利者として登記します。
しかし、根抵当権者による確定請求の場合は、そもそも設定者は夜逃げしているかもしれません。
したがって、このケースでは、例外的に根抵当権者は元本確定登記を単独申請できるとしているのです。
民法398条の20の確定事由
【1号確定】
これは、根抵当権者が抵当権不動産につき、競売もしくは担保不動産収益執行または物上代位による差押えを申し立てたケースです。
この場合、申立て時に確定します。
ただし、これは、競売手続、担保不動産収益執行が開始しまたは差押えがあったときに限ります。
なお、このパターンは根抵当権者が自ら競売等を申し立てた事例です。
つまり、根抵当権に不測の損害はありません。
したがって、申立て時に即座に確定します。
【2号確定】
これは、根抵当権者が抵当不動産に対して滞納処分による差押えをしたケースです。
この場合、差押えの時に確定します。
ちなみに、このケースでの滞納処分とは、相続税や固定資産税の滞納のことです。
そして、このケースも1号確定と同様根抵当権者自らの差押えですが、2号確定では、債権者が国または地方公共団体になります。
【3号確定】
これは、根抵当権者が、抵当不動産に対する競売手続の開始または滞納処分による差押えがあったことを知ったときの確定です。
この場合、根抵当権者がその事実を知ってから2週間の経過で確定します。
この3号確定パターンは、例えば、1番抵当権者が競売の申立てをして、その手続の開始を2番根抵当権者が知ったケースです。
この場合、2番根抵当権は、根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始等を知った時から2週間を経過した時に確定します。
この2週間という期間も、いきなり確定すると根抵当権者に不測の損害が生じる可能性があるためです。
【4号確定】
これは、債務者または根抵当権設定者が、破産手続開始の決定を受けたときの確定です。
この場合、開始決定の時に確定します。
このケースは破産事件に進行するので、破産債権を打ち止めにする趣旨です。
3号確定と4号確定の問題

この2つの確定の場合、根抵当権者の関与がないままに根抵当権が元本確定してしまいます。
そのため、これらの手続が滞ったときに、逆転ホームランで、根抵当権が元本確定しなかったものとみなされるケースが生じます。
・3号確定の場合
競売手続開始または差押えの効力が消滅したときです。
例えば、先の例(1番抵当権者が競売の申立てをして、その手続の開始を2番根抵当権者が知ったケース)で、1番抵当権者が申立てを取り下げた場合です。
・4号確定の場合
破産手続開始の効力が消滅したときです。
ただし、ここで、さらに逆転ホームランを打たれる可能性もあります。
というのは、根抵当権が確定したものとして、これを取得した第三者が現れた場合、その第三者の利益のために、やはり根抵当権の元本は確定となります。
ちなみに、このケースでの「第三者」とは、整理回収機構のようなものと考えてください。
もっとわかりやすく言えば、銀行の根抵当権の被担保債権を、不良債権処理のために買った人です。
なお、この場合、根抵当権の元本が確定していれば、根抵当権は抵当権と化して、債権とともに第三者(整理回収機構)に移転します。
しかし、元本が確定していないとみなされてしまえば、枠(確定前根抵当権)はピクリとも動かず銀行のものです。
それでは困るので、再度の逆転ホームランがあるのです。
なお、そのケースで、銀行(根抵当権者)は根抵当権の元本確定の登記を単独申請することができます。
【補足】
1号確定か3号確定かがわかづらいものもあります。
以下に2つのケースを挙げます。
・根抵当権についての転抵当権者が競売等を申し立てたケース
この場合、根抵当権者は競売等を申し立てていません。
申立てをしたのは、根抵当権の転抵当権者であり根抵当権者自身ではありません。
したがいまして、これは3号確定のケースとなります。
・共有根抵当権について共有者の一方が競売等を申し立てたケース
この場合は、根抵当権者が競売等を申し立てています。
したがいまして、これは1号確定のケースです。
そして、申立てをした者以外の根抵当権の共有者がこれを知らなくても、根抵当権の元本は確定します。
(共有根抵当について詳しい解説は「【共同根抵当権と共有根抵当権】その特徴と違い/累積根抵当とは?わかりやすく解説!」をご覧ください)
というわけで、今回は以上になります。
宅建試験や行政書士試験や公務員試験などの民法の学習、独学、勉強、理解の助力としていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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